少女外道 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 355
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167440107

作品紹介・あらすじ

この感覚は、決して悟られてはならない――人には言えない歪みを抱きながら戦前~戦後の日本をひとり生きた女性を描く表題作のほか、名手・皆川博子の傑作短篇七篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。いずれの短編にも、どこか陰を持つ少女がいて、その陰ゆえに仄暗さを纏った淫靡な気配を持つものをはっきりと目にし、惹きつけられる。皆川さんの過去の短編集と比べると、扱うモチーフに強烈なインパクトがあるものを用いなくても、十分に不穏な妖しさを感じさせることができていると思う。

    解説に取り上げられている「お七」は、「カッサンドラ」や「トリスタン」等の掌編とともに「恋物語」に収録されている話だったか、それまでポツポツ皆川作品を読んでいた時にたまたま読んで、読みながらその文章のうねり、運びに唸ってしまうほど強く印象に残っている話なので、思い出したらまた読みたくなった。

  • 「少女外道」というタイトルとあらすじに惹かれて読みました。7話からなる短編集です。
    順番に感想を書きます。

    「少女外道」
    表題作です。
    あらすじには『(割愛)久緒は、あるとき怪我を負って苦悶する植木職人・葉次の姿を見て、自分が苦しみや傷に惹かれる「外道」であることを知る―。』とあります。
    期待して読んだのですが、わたしの想像していた「外道」とは少し違ったので、この本、ちょっとわたしの好みとずれてるんじゃないだろうか、大丈夫かなあと思いました。
    うまく言えませんが、本当に怪我をしてしまった人には不憫で惹かれないのです。
    そういう意味では主人公は本当に「外道」ですね(笑)

    「巻鶴トサカの一週間」
    これはけっこう気に入りました。
    特に最後の二人で車に乗っているところ。
    数か月前にわたしもお葬式に参列したので、火葬場の様子がよく描写されているなと思いました(どこのお家でもいっしょなんですね、きっと)

    「隠り沼の」
    時系列と登場人物が覚えきれず、何度か読み返しました。
    兎、焼いたからという言葉は冒頭の集会での話にリンクしているのでしょうか。

    「有翼日輪」
    最初のお話が想像と違ったことと、その後の2話も好みとちょっと違うなあと思っていたのですが、ここらへんからお?と思い直し始めました。
    とにかく結末がぞっとします。
    彼の中では足場から落ちてもギイは死なないことになっていたのでしょうか。
    憧れとそれを自分だけのものにしたい、という気持ちは女性的なイメージがあるように思います。
    でも金閣寺(三島由紀夫)も男性だったので、男女関係なく、そういう気持ちを持つと悲惨ですね。
    モールス信号に覚え方があるとは知りませんでした。
    思わずハーモニカと口に出してみました。

    「標本箱」
    これは気に入りました。
    しかし他のお話もそうですが、時代と一人称がころころ変わるので、頭を切り替えるのが大変です。

    「アンティゴネ」
    戦犯になった兄の遺骨を拾いにマニラに行く、というのが"アンティゴネ"のストーリーにリンクしているということでしょうか。
    それと梓と江美子のこともリンクしているのかもしれません。
    バレエの一件のあと、梓は江美子に声をかけなかったけれども。

    「祝祭」
    手鞠の中に指を入れるってどういう気持ちなんでしょうか。
    身代わりになりますように、ということなのか、いつでも傍に置いてほしいということなのか。
    針で刺したくらいで包帯なんて巻くかなあと思っていたのですが、伯母は見抜いていたのかもしれません。
    最後の1ページの文章がとても美しく、気に入りました。

    表紙にさんごの写真が小さく載っています。
    加工されたものは別として、さんごそのものの形は血管や骨に見えてあまり美しく思えないのですが、一枝ウン千万を欲しがる人がいるのですよね・・・。
    どこに飾るのでしょうか。玄関の棚の上とかですか。
    夜見たらまさに骨みたいで怖そうです。

  • 久々に“純文学”を読んだ、と思った。
    著者が70代の後半頃に書いたという作品集。エンターテインメント性は感じないけれど、そういう枠とは別の意味でとても面白いというか、興味深い。
    戦中、そして戦争の前後の昭和の時代の物語が多くを占めていて、そこはかとなくエロスとタナトスが漂っている。

    物語の中身や流れというよりは読んだときの感覚を大事にしたくなるような作品ばかりで、だから今回は敢えて詳しい中身には触れないでおく。
    時系列の飛び方に特徴がある物語もあって、きちんと読んでいないとその繋がりを見落としてしまう可能性もあるのだけど、分かるとその繋がり方に感心してしまう。

    死というものが常に漂うから、不思議な色香を感じてしまうのかもしれない。
    その2つが表裏一体だなんて、こんなにも感じる小説はなかなか無い。

    少女の頃、他人が傷つき苦しみ血を流すのを見てうっすら興奮を感じてしまう、そういう種類の「外道」。

    「巻鶴トサカの一週間」「隠り沼の」「標本箱」とくにこの3篇が好みだった。

  • 再読。数ある皆川作品の中でも特に好きな短編集。
    「少女外道」というタイトル通り、「少女」という存在が発見した(見る側にとっては発露というほうがしっくりくるような)「外道」についての作品ばかりが収められている。黒田夏子さんの解説を読んで気づいたけど収録作中で涙を流した少女は「祝祭」の少女だけ。涙を流すという行為が少女としては一等外道。

    何が外道だこれしきと感じる人もいるかもしれないけれど、客観的に見てどの程度外道であるかなんてどうでもよくて自分を外道だと思うその心が大事なのです。

  • 面白かったです。
    日常を超えた世界に憧れ、まわりの決める結婚をしないだけで「少女」たちが「外道」とされる…黒田夏子さんの解説で、惹かれる書名の意味がやっと解りました。
    それならわたしも「外道」なので、久緒や苗子や倫に近しいものを勝手に感じてしまいます。でもこんなに凛と立ててない。。
    「隠り沼の」と「標本箱」がとても好きです。囚われ、壊れたり逝ってしまったり。
    戦争の影響も色濃く漂うお話たちでした。

    「そのあとにつづく躰が生きている私の時間を、私は思った。空無の中で、空無を包み隠す肉体は、しぶとく生きている。」

  • 物語の時代背景は、戦前から戦後。軍国主義の風が吹き荒れる風潮の中で、おそらく女性はその地位を不当に貶められたであろう。「少女」ともなればなおさらのこと。虐げられる存在たる少女は、一方で「女」としての独特の厳格な道徳性をも求められる。時代の波の中で、何気ない日常を送りながら、要求される「道」を少しばかり「外」れてしまう少女たちの物語が、本書には七篇収められている。
    少女が日常生活の中で、おのれの心と周囲との小さな齟齬に気づいたとき、彼女の心は道を外れ始める。皆川博子はそんな少女の心情とそれとは無関係に流れてゆく日常生活を静謐に描く。文体のせいか、行間からはほのかな官能性が漂う。道を外れた少女の心は恐ろしいが、美しい文章に乗せられてむしろ耽美な浪漫性さえ帯びてくる。
    少女たちは周囲の「道」から外れたおのが心に閉じこもりながら、しかし、心の隙間から冷徹な視線で日常を見ている。周囲の大人たちは、そんなことには気づきもしない。少女ゆえ、道を外れても凶暴になったりはしない。どこか狂った少女はむしろ甘やかさをまとっている。
    甘美な調べに乗って読み進むと、いつしか読み手の心には凪いでいた水面に風がさざ波を立てたようなざわめきが残る。
    収められた物語の多くは過去・現在・未来の時制を往還しながら進んでゆくが、少女の心はいつしか彼岸に跳んでおり、これらの物語は「死」を予感させる。究極の安寧としての「死」は、これらの物語に通底するモチーフのように思える。だからいずれの物語も、読後、不穏な安心感をもたらしてくれる。

  • 久々に文学っぽいものを読んだ気にさせられた。
    とはいえ、少女小説っぽいのかな。

    人とは違う性的嗜好あるいは、そこに至りそうな何らかの感情を秘めた人物や各短編の主人公。不思議と湿っぽさがないファンタジー。

  • 5:直接的な描写があるわけではない、だからこその密やかな、淫靡な、背徳的な感情の数々。戦時中〜終戦の頃を描いた作品も多く、その時代ゆえ……というのもあるかも。
    水が滴るような、艶めかしく美しい描写にうっとり。皆川先生好き……!(今さら)

  • 苦しみや痛みに惹かれる傾向を「外道」というのが 迫力がある。出征する恋人のために手まりの中に自らの小指を入れる。後年それが 手まりの中で からころと音を立て・・・
    そんな 血の匂いを感じながらも美しい世界。
    古風な言い回しがとても美しい幻想的な小説でした

  • 『少女』『外道』『敗戦』なんかが全体に共通して絡んでくる短編集。

    皆川さんの本はなんと感想を言っていいのか…言葉にするのが難しい。
    とにかくこの雰囲気と文章の美しさが好き。
    ラストのしめかたもいつもすごく素敵だと思う。

    今回特に好きだったのは、『少女外道』『有翼日輪』『標本箱』かな。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ ひろこ)
1930年旧朝鮮京城生まれ。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁・旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞(長編部門)を、『恋紅』で第95回直木賞を、『開かせていただき光栄です‐DILATED TO MEET YOU‐』で第12回本格ミステリ大賞に輝き、15年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。著作に『倒立する塔の殺人』『クロコダイル路地』『U』など多数。2019年8月7日、『彗星図書館』を刊行。

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