カウント・プラン (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2000年4月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784167447052

みんなの感想まとめ

多様な性癖や心理に迫る短編集で、心のねじれた人々の生々しさが描かれています。各短編はわかりやすく、変わった性癖を持つ登場人物たちが織りなす事件は、どろりとした緊張感を醸し出し、読者を引き込む力がありま...

感想・レビュー・書評

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  • これで黒川博行先生の作品を読むのは3作目。
    『左手首』(9784101370149)、『文福茶釜』(9784167447069)とたまたま偶然にもシリーズではなく単発作品集、且つたまたま偶然にも発表年を遡る順で読んできたのでありまして、最初に読んだ『左手首』は私のなかでエポックメイキング的な衝撃を受けた作品でしたが、更に発表年次を遡ったこの『カウント・プラン』はそのハードルをひらりと越えていった傑作品集でありました。

    一貫しているのは、登場人物が「生きているね」と感じられるところですね。特に本作はその「生きているね」の度合いがあまりにも高い。
    巻末の東野圭吾先生の《解説》の言葉を借りるならば、黒川先生の「世の中を見る目力」(p285)があまりにも鋭いのだと思う。
    取り扱う題材や事象に関する詳しさ、解像度の高さは本当になぜそんなことまでそんなに知っておられる(書ける)のか、と目を瞠るものがありますし、なんといっても会話であったり仕草によって作り上げる人物像の立体感が半端なくて、しかもそれを短編の文量でしてのける鮮やかさが快感。また、たっぷりの大阪弁のやり取りがものすごくリズミカルで実に楽しい。

    全5篇収録。

    《カウント・プラン》…あぁ、騙された。こんなにシンプルな道筋ながらもしっかり伏線が仕掛けられていて大横転。でもこれはほんの序の口。登場する「富南市」というのは架空の地名だが桃山台から大正駅までの経路とかは現実通り。たぶん。けど、調べたところ藤井寺を経由すると遠回りっぽい気がするのだがどうなんだろう。とはいえ20年前だしなあ。

    《黒い白髪》…坊さんと葬儀屋が喧嘩した、という始まり方がもうすでに面白い予感しかしない。田出井署(これも架空)刑事課の「“文句たれ”の種谷」(p115)、ぶつくさ言いながらも仕事ぶりはお見事。

    《オーバー・ザ・レインボー》…ビビッドな色彩の演出効果も相俟って、なんともやるせない余韻を引く結末。「おれの頭の中にはな、子供のころからキラキラの虹がかかってるんや」(p192)という一言だけで、あぁ…と察しがつくやるせなさ。「夏の大阪の水は煙草のヤニのような味がする。」(p140)という描写が失礼ながら大好き。また、六軒家川を越えたところにあるラーメン屋が不味い、という描写があるのだがなんと実際にラーメン屋があるのには驚き。もちろん味についてはフィクションだと思いますが…。昔の話だし。

    《うろこ落とし》…真相はなんとなく察しがついたものの、女性のグループに漂う深淵をちょっと覗いた心地。「へーえ、仲良し四人のうち、三人だけの秘密ですか」「女同士のつきあいって、そんなもんです。」(p216)というやり取りが生々しいな、と思いつつそれは男同士でもあることだと思うのでやや時代感。魚のうろこのように、人の化けの皮がポロポロ剥がれ落ちていく様は美しいものではないけどスッとするところもありますよね。ありませんか?

    《鑑》…「鑑」とは「鑑識」や「土地鑑」、「交友関係」などを指す警察用語。真骨頂にして最高潮。面白すぎるし真相のガックリ感がすごい。けど、世の中に発生する事件なんて、本作のように大した理由があるわけでもない偶然によるものが大半なんだろうなと思うと力が抜け落ちますね。「ダスト・ハンティング」(p261)、いわゆる女性の出したゴミを漁る変質者の行動・描写がやたらとリアル。そして本作は警察官側の描写も更に精細というか温度を感じられる。捜査会議でハムスターが議題にのぼった際に「口をはさんだのは丸山だった。「うちの娘も飼うてますねん」」(p265)というなんてことのない一文があり、本筋とは全く関係ないどころか丸山はここでこの一言を言うだけしか登場しないのだけど、けどこの一言によって、警察官にも家庭があって職務を離れれば普通のお父さんで、だから自分の街に女性を狙った犯罪者が現れたなら思わず口を出してしまった…という想像が働く。単なるおしゃべりの可能性もなくはないのだけど。点と点が繋がっていく感覚が快い一篇。


    実在の地名がたくさん登場するので調べながら読むとまた深み・味わいが増しますね。
    いいな、黒川作品。


    11刷
    2025.7.17

  • 賞を取った作品がのってるというので買ってみた一冊。

    変な性癖をもつ人が登場する話もある短編集だった。

    黒川氏の小説は長編しか読んだ事なかったので、短編集はどの話も物足りなかった。

    どの話も短編とあってわかりやすかった。
    変な性癖の事を知る事はできたが、心理はやはり理解できない。
    でも世の中病気かなにかわからんが、変な性癖を持つひとが多いのは確かだと思う。

    変な性癖の事が少しだけ知るとこができた小説でした。

  • 黒川先生が描く
    <心のねじくれた人々>には
    異常な程の生々しさがあった。

    それ故
    彼らの周辺で(案の定…)起こってしまう事件は
    どろりとした粘着性があり、
    解決の為に奔走する刑事達の汗塗れ感が半端なかったのだが、
    その<泥ぬぐい>作業はなかなか面白かったし、
    落とした後の唖然…と感も楽しかった。

    そして、読後ワクワクしていたのが
    東野圭吾さんの解説。

    本書についての面白さも、当然記してあるが、
    私が気に入ったのは、

    >最近になって「黒川博行はすごい」と感嘆の声を上げる人が増えてきたが、私にしてみれば、「何を今更」と言う気分だ。

    ずっと世間に対して言いたかった言葉を、やっと言えて、ホッとした東野さんのお顔が目に浮かぶ様であった。

  • 特に驚きや発見のない古い小説

  • オモロない。
    毎話毎に登場人物の刑事の名前が変わり、覚えられへんがな。長編でじっくりと読ませる方がええでい

  • 標題作は確かに面白かったが、他の作品はかなり微妙...。奇をてらい過ぎている感は否めない...。

  • ハードボイルドの今の作風になってきました。短編集なのであっという間に読めます。展開は想像できますが独特の描写が楽しめます。
    大阪と東京はずいぶんと文化が違うんだろ思いました。

  • 目に入ったものを数えずにいられない計算症の青年や隣人のゴミに異常な関心を持つ男など5話からなる短編集。
    .
    やっぱり短編好きじゃないな〜。
    表題のカウントプランが1番面白かった。.

  • 5作品による短編集。
    様々な性癖の人達。
    その人達の周辺で起こる事件。
    単純にアブナイ人が犯人なのかと思いきや違う。
    な〜んだ、残念。
    単純じゃないとこで、読み直しながら読み終えた。
    '16.08.18読書完了

  • 黒川博行が、偏った人間と、その周辺で派生する事件を扱った短編集。
    切り口と展開は斬新でよかったが、『文福茶釜』や『離れ折紙』ほどの鋭さがない。読む順番を間違えたか。
    それでもやはり、“大逸れてなさ”がよい。ほぼ予想通り、あるいは予想外でも醒めない程度にフィットする感じは、他の作家ではなかなか真似できないはず。
    特に「鑑」はよかった。短編ながら物語をあえて派手に広げ、一気に加速して終息する感じは、お手本の一つのだと思った。
    巻末、東野圭吾の解説もよい。さすがというか、やや自分本位な解説ではあるが、著者の魅力を端的にまとめていると思う。
    最近ハードボイルド長編の方にウェイトを置いているようだが、ぜひ短編をコンスタントに書いてほしいところである。
    3+

  • 日常の何気ない怖さをしみじみと

  • 推理小説の短編集。冒頭の表題作はなんでも数をかぞえてしまう男が登場するし、これはいい小説かもと期待したのだが、短編とわかってがっかりした。連作集というわけでもなく、各編がちょっと変わった設定で本格的な推理小説なんだと思うが、ぼーっと読んでいると仕掛け的なところが理解できず、さほど楽しめなかったかも。

  • 日本推理作家協会賞受賞作、ということで手にとってみました。

    表題作は、視界に入るものを全て数えないといられない、計算症の男性を中心にとある小売店で起きた事件を描いています。

    その他、鮮やかな色彩に執着する男性、女性のゴミを収集する男性などを中心とした犯罪小説が収められた短編集です。

    ありがちな事件が多いですがよい意味で、読者側の推理を裏切る作品ばかりなので読んだ後の満足感は高めです。

    いわゆる“犯人”が分かってしまう作品もありましたが、その動機に意外性があったりとなかなか楽しめました。

  • 推理小説で、あからさまに怪しいやつは大体において犯人ではない、わけだけども、今回は違った意味でスゲー怪しいやつらが出てきて、でもちょい役だったりして。
    しかしこういう怪しい人というのは、もしかして心を病んでいるのかもしれない、、とか、変なことを考え出すと妙な気持ちになったり。

  • 5つお話が入った短編集。

    内容は面白かった。でも文章が入ってきづらかった。淡々としているせいか、物語風味の報告書を読んでいるような感じで、あまりのめり込めなかった。

    どのお話にも、捜査をする刑事が何人か出てくるのだけれど、名前が記号みたいにしか感じられずなかなか覚えられなかった。覚えた頃には話が終わり、次のお話ではまた別の刑事たちが出てくるので、頻繁に『これ誰だっけ?』って思っていたような。いっそ統一して欲しいと思ってしまった。

    初めて読む作家さんだったけれど、他のは読まなくていいかもというのが正直な感想。でも解説が東野圭吾さんで、絶賛してるんだよねー。そこまで面白いとは思えなかったんだけど…。作品の感じだと、しっかり入り込める長編の方が楽しめるのかな、という気はしてる。

  • 2020.09.25.読了
    再読の可能性。
    安定の短編集

  • 2020.8.31-324

  • 短編集。
    安積という名の刑事が出たので、今野敏と勘違い。

  • 少し物足りない

  • クセのある5作品の短編推理小説。数をかぞえなくては気がすまない強迫神経症??や女性のゴミを収集して欲求を満たす男など変わった人間が出てくる。なかなか理解するのは難しい。黒川さんの作品は骨董品関係の方が好きだなぁ

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著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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