- Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167447076
感想・レビュー・書評
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古本屋で見つけなんとなく買った一冊。
ヤクザを誘拐してお金を稼ぐ話だった。
上手く行くわけないと思ったが、そう何度もうまくいくわけがなかった。
スピード感がありな話がどんどん進んで行くので、読むスピードもだんだん早くなっていく感じすぐに読み終わった感じがする。
黒川さんの小説はいくつか読んだが、この小説も主人公が悪だった。
ラストがちょっと気になった。
三人組がそれからどうなったか?
続きがあれば読んでみたいなと思った小説でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭───
街灯に明かりが入った。降りはじめた雨がルーフを叩き、フロントガラスにはじける。エンジンをかけてワイパーを作動させ、デフロスターのスイッチを入れる。
「見えんな------」稲垣が助手席のウインドーを下ろして、油膜とりのスプレーを吹きつける。白い泡が散り散りになって流れ落ちた。
「そろそろ一時間やで。いったい、いつになったら出てきよるんや」
じりじりする。友永はステアリングを強く握りしめた。
黒川博行、1995年の作品。
スピード感あふれたクライムサスペンス。
堅気の男たちがヤクザの組長を誘拐し身代金をせしめようという物語。
誘拐を企てた主要人物ははどうしようもないハグレ三人。
といっても、一人はほとんど喋らない展開なので、いつものように二人組での関西弁の掛け合いが続く。
組長を誘拐してからの何回かの身代金受け渡しの攻防がスリリング。
いつもながら、黒川さんのストーリー展開の上手さには惚れ惚れする。
この作品を読んで、二十年前にはすでに携帯電話は当たり前の持ち物だったのだ、とあらためて思った。
ポケベル、PHSが幅を利かせていたのは80年代後半~90年代前半だったか。
ポケベルでは、数字で合言葉を決めるっていうのもあったな。
初めてPHSを秋葉原の電気店で買った時は、子供が新しいオモチャを与えられた時のように、うれしくて友達に掛けまくったものだ。
約二十年前に書かれた作品ながら、古さは全く感じられない。
古くても読ませる黒川作品のエンタメ度の高さが存分に発揮されている作品だった。
特に最後の2ページ、三人組の一人の主人公友永が、突然思い立って行先を変えるところに、仲間への愛情が感じられた。 -
これは面白いや。軽妙かつハードボイルドで黒川節炸裂。とんでも無くひどい奴らなのに憎めない上に更には好きにすらなる。スピードある展開で一気に読めた。けど、読み終わったらすぐに忘れそうな、素早い消費に特化したエンターテインメントだなあ。車の点検待つ間の暇つぶしにブックオフで買った。
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「これ警察に届けますか」「あほんだら。眠たいことぬかすな」…「カマシはそれだけかいな、え」「お、おどれら」
わーい、ポンポンと交わされるこんな会話が聞きたくてワクワクしながら読み始めるのよねえ。調子の良いのは最初だけ。大概は思い通りにならなくて足掻きながらドツボにはまっていく愚かしくも愛おしい男たちが右往左往してるのが黒川作品の醍醐味ね。実際に目の前にこんな度外れた男がいたら引いてしまうけど、横から見てる分には楽しくて哀しくて応援したくなっちゃう。小説で良かった。2013.8 -
登場人物たちのクセが強い。
ついつい引き込まれてしまいました。 -
極道、チンピラ、ハグレモンの非日常(と有りたい)世界のドンパチノワール。
友永・稲垣・ほとんど言葉を出していないケンの3人が身代金欲しさに、暴走の次に暴走を繰り広げる。
友永の感覚が当然のごとく堕ちて行く人生感覚。
稲垣のナラティヴに見え隠れする「こうなってしまった」エピソード。『殺すぞ』以外の語彙がないと言う奴らと対する相手方も同じ穴の狢。
理事長絡みで金をせしめようとする大学の連中も似たり寄ったり
だから「大阪のやつらは」と言われるのも当然に思えてくる執筆は黒川氏43歳の時というから油が載り始めた頃・・飛び出す関西弁の萌芽が見えるし、ドンパチヤラカスアクションのスピーディーな展開は古色微塵もない。 -
KM
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おいおい。危ないことしてるなぁ。
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職を転々とし、鉄屑屋をやっていた友永のところに、流れ者の稲垣が現れ、誘拐を計画する。標的は、身代金を巻き上げてからも警察には行かない、ヤクザの首謀者だった…。
のっけから、助走もつけずに突然ヤクザを誘拐してしまうので、始終ピリピリとした緊張が続く。少なくとも、身代金を取ることなど無理な話であるのは、予想に難くないであろう。
ストーリーとしては、ヤクザの組長を縛り上げておいて、事務所とやり取りをして、失敗してが延々と続くため、いつもの黒川作品のようにハイスピードで景色が変わっていくような爽快感はあまり無いかもしれない。
しかしそこは黒川博行、ピリピリがビリビリになって、読むのが辛くなろうがなんだろうがストーリーを展開していく。ヤクザの車から取ってきたものが、ひょんなところから役に立つも、ピンチに次ぐピンチ。さてどう切り抜けるのか。
読ませる作品であるが、年度末のただでさえ胃が痛い時。なかなか辛(カラ)くてヒリヒリの、激辛カレー風味。飽きさせはしない。 -
大好きな黒川さんの小説。こちらはいつものヤクザ同士の戦いでも、ヤクザvs警察でもなく、ヤクザを一般人が誘拐するお話。関西弁の会話がいつもより少な目で物足りなかったが、なかなか楽しめた。