男坂 (文春文庫 し 16-2)

著者 :
  • 文藝春秋
3.26
  • (1)
  • (10)
  • (8)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 81
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167471026

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 純文学なんだろう。
    大矢さんの解説を読んで、更にこの短編の重さを教えられた。
    再読してみようかと思う。

  • 忘れ得ぬ人との邂逅、招かれざる者との再会など、何気ない日常における人生の機微を描いた珠玉の作品集。

  • ハードボイルドの第一人者シミタツの珠玉の短編集。
    40代をモチーフにしたものもあるが、基本的には団塊の世代から上の人生の最後の下り坂にさしかかった男たちの機微を見事なまでに描いている。

    読み始めは少しぼくには早いかな・・・的な感じだったんだが、読み進めるにつれ深層心理の奥深くまで届くようなその文体に正直心を奪われたまらなくなってしまった。

    皆、それぞれにいろんな過去があり、その葛藤の中で人生を決める者、あるいはどうしようもない時に流れによって今を生かされている者・・・。

    ぼくたちはある意味逆らうことのできない大きな波の上にいる。
    その波の上で自分自身と人生をどう折り合いをつけていくのか。
    それは自分自身で決めることであって、自分自身で納得するもの。

    この本からはある種の寂しさのようなものが感じられる。
    でもそれは決して人生のやり残し感ではない。
    むしろ精一杯誠実に生きてきた自分の足跡を振り返った時に、なぜかしら頬をつたうように落ちてくる涙のようなものだと思う。

    人生、辛いことの方が多い。

    でも、ぼくたちはそれを飲みこみ、あるいはそれを吐き出し生きている。
    その生き方の選択は人それぞれである。

    この本はそんないろんなことをじんわりと感じさせてくれる。

    長編を読むときは最初の1行でその世界に自分が合うか合わないかが、その本を購入する選択のキッカケのようなものであるが、志水辰夫さんの短編は最後の1行に男の哀愁の全てが凝縮されていてその各章の締めくくりが強烈に男のわびさびを感じさせる。

    ふいに晩年のアートペッパーの「THESE FOOLISH THINGS」が浮かび、男坂のひとつの章を読み終えたあと、ヘッドフォンで聴いてみた。
    晩年のペッパーの哀愁ただようサックスの音色とシミタツの文体がまじり、涙がとまらなかった。

    ぼくは今、男としてどのあたりの坂を歩いているんだろう。

    ・・・・そんなことを考えながら。

  • 普通、小説を読み終えた後の余韻には充実感や興奮、喜び、悲しみなんかがある。しかし、この作品のような形容しがたい余韻には滅多にお目にかかれるもんじゃない。

    どの短編作品も寡黙な中年男たちが主人公。彼らの人生は、不運な過去をきっかけに坂道を下っている。しかも、男たちの抱える様々な問題は何一つ解決されないまま、作品は唐突に終幕を迎える。
     
    とはいえ、その未完成な状態を放っとくのは、奥歯に物が挟まっているようで気持ち悪い。読み終えて、読者は男たちの今後を考えずにはいられない。なんとも面倒な小説だ。しかし、不快さはない。といって、快感でもない。不思議な余韻だ。

  • あえて描かない余白のある一冊。

  • 新規購入ではなく、積読状態のもの。
    2011/4/13〜4/16
    様々な人生を過ごしてきた男女の終盤戦を描く短編集。「扇風機」、「再会」、「サウスポー」、「パイプ」、「長くもない日」、「あかねの客」、「岬」の七編。個人的にはあかねの客が良い。デビュー当時の硬質な作品も良かったが、最近の枯れた味わいも素晴らしい。シミタツ節は健在。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1936年、高知県生まれ。雑誌のライターなどを経て、81年『飢えて狼』で小説家デビュー。86年『背いて故郷』で日本推理作家協会賞、91年『行きずりの街』で日本冒険小説協会大賞、2001年『きのうの空』で柴田錬三郎賞を受賞。2007年、初の時代小説『青に候』刊行、以降、『みのたけの春』(2008年 集英社)『つばくろ越え』(2009年 新潮社)『引かれ者でござい蓬莱屋帳外控』(2010年 新潮社)『夜去り川』(2011年 文藝春秋)『待ち伏せ街道 蓬莱屋帳外控』(2011年新潮社)と時代小説の刊行が続く。

「2019年 『疾れ、新蔵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

志水辰夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×