上高地の切り裂きジャック (文春文庫 し 17-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167480059

感想・レビュー・書評

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  • 本作は「上高地の切り裂きジャック」と「山手の幽霊」の2つの中編で構成された作品集。

    まず本作は「上高地の切り裂きジャック」と「山手の幽霊」の2つの中編で構成された作品集。
    まず「上高地の切り裂きジャック」は2000年の頃に石岡が解き明かした事件の話。

    次の「山手の幽霊」はまだ御手洗が日本にいた1990年の頃の話。

    この二つの怪奇譚に御手洗の推理が冴える。

    「上高地の~」はスピンオフ作品「ハリウッド~」の創作中に生まれた副産物のような感じだ(あれほどグロテスクではないが)。
    題名の「切り裂きジャック」から連想される残酷なイメージとは違って事件は単発、しかもどちらかといえば死亡推定時刻に関する話が多く、陰惨さの味わいは薄れている。

    またこの頃、島田氏が力を入れていた冤罪事件への取り組みの色合いもあり、ここでは容疑者とされていた牧原信吾の無罪をどうにか証明しようという方向でストーリーは進む。これは金川一事件というのがモチーフになっているらしい。

    しかし『最後のディナー』や『Pの密室』の頃に比べるとだいぶん石岡も以前のペースを取り戻しているようだが、犬坊里美の携帯電話の留守電組の話を聞いてショックを受ける件は50を間近に控えた男の台詞か?と思った。
    蓮見刑事に嫉妬するところもちょっとなぁと思うのだが。

    翻って「山手の幽霊」は、『~挨拶』や『~ダンス』の頃を髣髴とさせる御手洗の活躍ぶりが堪能できた。関係のないと思われた二つの事件がまたも大胆な設定で結びつく。これこそ御手洗ファンが読みたかった作品だろう。

    しかし両作とも共通するのは御手洗潔の超人的な推理力。いきなり真相が見えているように動き回る様、人に命令を下す様は確かに面白いが、超人的すぎて、少々辟易した。これと比べるとやはり私は吉敷シリーズの方が地味ながらも堅実で面白いのである。

    オレも歳を取ったかなぁ。

  • 冒険推理小説っぽいいい意味での現実離れした事件だった。
    御手洗はいいキャラだけど現実に近くにいたらちょっとイラッとするんだろうなと思った。
    ふたつの同じくらいの長さの物語があってどちらもテンポ良く読むことが出来た。
    多少コメディタッチなところもあったが「山手の幽霊」の
    最後の大岡の手記はなんとも言えないやりきれなさが残った。

  • 今回もかなり、それとそれどうやって結びつくの?!って感じの事件でしたが御手洗さん見事に解決。
    面白かったけど、山手の方のラストの独白がちょっとしんどかった。。。

  • 短編が3つ。表題作より真ん中の作品の方が印象に残った。(「山手の幽霊」)

  • 再読。
    表紙超気持ち悪い。

    事件の内容も、まあ女性に多分に非があるとはいえ、散々な扱いよう。気分悪。
    つーか、里美ちゃんの喋り方どうにかなりませんか。
    これが若い女性だと思っているなら即刻認識を改めて欲しいわ。
    石岡クンもネガティブ過ぎるわウジウジするわ、そりゃあ御手洗サンも見捨てて外国行くよ。なんでこんなキャラにしちゃったんだろう。
    「異邦の騎士」あたりの時は、まだ気骨があって清々しいキャラだったのに;

    幽霊話のほうは「無理あるだろう!」と思いつつ、面白いからまあいいか、という感じ。
    例の場所から出てきた例のアルバムやら雑誌やらを、じーっと眺めているという御手洗サンの姿を想像して笑ってしまいました。

  • 御手洗先生シリーズ2作収録。

    「下腹部が何故切り取ってあるのか?」
    この出尽くした質問に心から完敗してしまいました。

  • 【上高地の切り裂きジャック】はトリックが非常に地味なうえ、警官で解決出来るネタでした。御手洗はスウェーデンから、石岡からのメールと電話だけでアッという間に真相を見抜くのですが、もはや超人としか言いようがないです(笑)
    【山手の幽霊】はシリーズらしいスケールの大きさを感じさせましたが、トリックは「偶然によるものの連続」でご都合主義的です。
    「御手洗シリーズ」ファン向けの作品だと思います。

  • 島田荘司なら「切り裂きジャック・百年の孤独」の方が面白かろう…カバーもアレな感じだし。と思いつつ読んでみたら、御手洗モノにしては軽く読めてしまい残念。「山手の幽霊」の方が面白かったかな。御手洗の良さが出てるなあと思います。
    「上高地~」は里美の喋り方がいちいちイラッと来る(笑)島田荘司は女性描写があんまり上手くない気がしているのですが、これは特に…。(余りにも、こんな感じだろう、っていう描き方なんだよなあ…勿体無い!)

  • 表題作よりも、同時収録されている「山手の幽霊」のほうが面白かった。すごい発想。

  • 御手洗シリーズ。「上高地の切り裂きジャック」と「山手の幽霊」の2編。
    上高地〜の方は御手洗は電話でのみの登場です。御手洗を引き立てるために登場する無能警察の皆さんですが、さすがにこれは警察の捜査がザルすぎる…さすがにもうちょっと有能だろうと思いたいです。
    山手〜の方は馬車道時代の話です。石岡君は読者に愛されてるなぁとしみじみ(笑)

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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