日本のいちばん長い日 決定版 (文春文庫 は 8-15)

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  • 文藝春秋
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感想 : 251
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167483159

感想・レビュー・書評

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  • 当たり前だけど歴史の教科書には書かれていないことって山ほどあるよね。ポツダム宣言を受諾してすんなり玉音放送が流れてそれによって日本全体が一気に変わった、と何となく思い込んでいたけどやはり紆余曲折があったんだなと。特に軍人にとってはそうだよね。一般人は勝敗関係なく早く戦争が終わって生活が改善されて欲しいと思う人が多かっただろうけど、軍人は最後のひとりになるまで戦うことが正義だと本気で考えていたんだからそう簡単に敗戦を受け入れられないというのもわからんではない。究極のトップダウンである「御聖断」に誰もが従うかと思いきや君側の奸に唆されているだけだという捻じ曲げた解釈も少なくなかったということに、信じたいものだけを信じてしまう怖さを見たような気がする。でも徹底的に教え込まれたらそうなっちゃうよな。意外と今でも起こりうることかもしれない。

  • 210.7-H
    文庫(文学以外)

  • 天皇の、「もう自分はどうなってもよいから、これ以上国民の犠牲を出さないようにしたい。国民を1人でも多く残して、将来に希望を残したい。」という意思、それを聞いた閣僚たちの反応。軍人たちの反発、そしてクーデター。天皇と、玉音放送の録音盤を必死で護ろうとした従者たち。玉音放送をめぐりこんなことが裏で起きていたなんて知らなかった。勉強になったし、もし少しでも時間がずれていたら自分は今この世に存在していなかったかも…と考えさせられた。

    —以下記録(若干ネタバレあり

    ポツダム宣言が7/27、日本内部では回答に関する意見がまとまらず、中途半端な黙秘が拒絶と捉えられてしまい、8/6の原爆投下。そしてその後も天皇制以外は無条件降伏するか、その他もいくつか条件を付けて降伏かと、揉めている間に8/9長崎への原爆投下。やはり閣僚では結論が出ず、天皇に聖断を仰いだところ、天皇は「降伏して1人でも多くの日本人を生き残ってもらいその人たちに将来ふたたび起きあがってもらうほか道はない」。しかし天皇の明快な決断があってもなお、連合国側からの回答の解釈で「本当にこれを飲んで国体は護られるか」揉める。陸軍将校たちは終戦を認めずクーデターを計画。8/14、天皇のお召しによる御前会議開催。天皇は揉める閣僚たちを制し涙ながらに「自分の出来ることはなんでもする。直接国民をさとしてもよい。国民をこの上無意味な犠牲から救うためには、ただ一つ降伏しか残されていない。この身がどうなってもよい」。物語はそんな中で迎えた8/14正午から、8/15正午の玉音放送までが詳細に記されている。

    神の存在である天皇が自ら放送をし戦争が終わると聞かされ、そしてそれを補佐することになった日本放送協会のメンバーたち。

    書記官、陸軍大臣、海相は、陸海軍、国民の納得する詔勅を練る。部下の暴挙を抑えるには、部下たちを絶望的な混乱から救い、身をもって正しい決断に導くには、どうしたらよいかと頭を悩ませる。海軍は壊滅的だったが、陸軍は戦況がよいところもあり現場は海軍ほどの負けている実感がそこまでなかった。予定時刻になっても文書は完成しない。14日夜だった玉音放送の予定を翌日正午に延期する。

    一方、8/13以来日本が降伏しない場合に備え敵機が8/15夜明けから攻撃を計画しており来襲が迫っている、、

    ようやくできた詔勅の清書が終わったのが14日21時。23時ごろ外務省が連合国にポツダム宣言受諾の旨発信。23時50分、天皇の録音完了。

    天皇は「自分がどうなろうと万民の生命を助けたい」と希望していたが、陸軍青年将校たちはこうした天皇の希望を畏れ多すぎるという理由で認めない。国民の生命を助けるなどという理由で無条件降伏することはかえって国体を破壊すること、すなわち革命的行為であり、それを阻止することこそ国体に忠だと信じていた。ゆえのクーデターが夜中から宮城で勃発。保管されている録音盤を見つけ出し翌日の玉音放送の阻止を試みる。(宮城事件)

  • 20210407

  • 2021/04/08
    『「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦』での内容を踏まえてと思っていたが、それ以上に内容全体に引き込まれた。
    まさに綱渡りでの終戦だったと思う反面、暗殺に明け暮れた維新前夜の雰囲気を思い浮かべた。
    当時に比べれば統制はあるものの、「国体」という概念が各当事者によって都合よく変わり、独り歩きしていたことが根底にあると感じた。
    だから自分の解釈を認めない者は全て君側の奸とされてしまう…。
    指導者層はある意味それを逆手にとって現場や国民を鼓舞していたのかもしれないが、負けない神話が大前提だったことに気が付いた時にはもう事態は収拾不能であったというべきか…戦争を始める勇気以上に、止める勇気が如何に重要で、厳しいものであるか、戦争を知らないからこそしっかりと心に刻むべきだと思う。

  • 一見読みにくい感じだが、
    一度読み始めると、
    終戦の玉音放送までの、24時間が克明に記録されており、
    引き込まれていった。

    これだけのことを経過して
    終戦が迎えられたのかと思うと、
    関わった全ての人に
    あたまが下がる思い。

    いい勉強になった。

  • 恥ずかしながら、このような歴史があったとは知りませんでした。確かに、そう簡単に終戦を決められる訳ありませんよね。「国体護持」というイデオロギー、今ではピンと来ませんが、如何にイデオロギーというか、思考の枠組が、人々の思考や行動様式を規定するものか見せつけられました。たった76年前の話。それぞれの人たちの生き方死に方に心が揺さぶられました。語り継ぐべき歴史ですね。この時代の歴史を勉強しなければと痛感。半藤さんの代表作、分かりやすく読みやすく納得感高かったです。他の作品も読ませていただきたいと思います。

  • 史実に忠実なところがいい

  • 終戦に際してこのような出来事があったなんてまるで知らなかった。終戦直前、当時の人々が何を考えていたのかがよくわかる一冊。

  • 元は文藝春秋の「戦史研究会」が企画、資料収集しまとめたものを大宅壮一のビッグネームで出版したもの。上記テキストは大宅編で半藤版はかなり手が入っている。読み比べるのも一興であろう。ただし角川文庫版は紙質が悪く活字も小さい。
    https://sessendo.blogspot.com/2020/09/blog-post_24.html

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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