日本のいちばん長い日 決定版 (文春文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167483159

感想・レビュー・書評

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  • 綿密な調査に基づき、先の大戦で将来の日本の繁栄を希求し、恥辱に耐えて敢えて敗戦を受け入れる決断をした、日本の歴史上最も長い一日を活写したドキュメント。
    軍人のみならず、侍従や放送局の人達までが、活き活きと動き回る。

    その中でも特に、首相鈴木貫太郎の茫洋とし、泰然自若な態度が印象的だった。最早政治力など何の役にも立たない状況の中で終戦に導けたのは、天皇陛下からの絶対的な信頼と、無心無欲なその性格にあったのだろう。その適切な説明は本書87ページにあるので、是非参照頂きたい。

    陸軍大臣阿南惟幾が一命を賭して守ろうとした国体。それは正に二千六百年に及ぶ天皇、皇室の歴史であり、日本人の文化そのものであった。
    三島由紀夫が言う「文化防衛論」ともここで繋がるのだ。

  • 1945年8月14日にポツダム宣言受諾を聖断で決めてから15日の玉音放送まで、天皇、日本政府、陸海軍の24時間の動きを詳細に追ったドキュメント。聖断を覆し、玉音放送を妨げようとするクーデターの動きがリアルな緊迫感で語られる。もし、いくつかの偶然が少しだけズレて、8月15日に終戦できなかったら、ソ連の日本侵攻、さらなる国民の犠牲、そして戦後の国土分断などが起き、日本は今とは大きく異なる国になっていたかもしれない。(もちろん、他の可能性もある)昭和史を学び、戦争について考えるとき、読んで損はない1冊。

  • 本書は昭和天皇や閣僚達が御前会議において降伏を決定した昭和20年8月14日正午から、玉音放送により日本国民に終戦が告げられた8月15日正午までの24時間のうちに起きた、国体護持の為にポツダム宣言による無条件降伏に反対し、本土決戦を訴えた陸軍青年将校によるクーデターの計画と実行を、埋もれていた資料を基に、綿密な取材と証言により再現した終戦秘話である。戦局が圧倒的不利に陥った日本に無条件降伏を求める米英中のポツダム宣言が下されたのが7月27日。政府は和平の仲介依頼という対ソ工作を放置した即時受諾は賢明ではないとの判断から静観を決定。ところが、7月28日、鈴木貫太郎首相が記者団への回答に用いた「黙殺」という表現が、海外の新聞では「reject」(拒絶)と報ぜられる。これが原爆投下やソ連の対日参戦を正当化する為の口実に使われ、日本の敗北は決定的となる。第1回御前会議において昭和天皇が戦争終結を望まれ8月10日、政府はポツダム宣言の受諾を決定。降伏反対派の陸軍青年将校はクーデター計画を企てたが、阿南惟幾陸相は御聖断が下った上は、それに従うべきであると悟した。降伏反対論者の主張はこうである。国土を占領され、武装を解除され、戦犯が次々に処罰される状態では、国体の護りようがないので、最後の一人まで戦う事により、敵に大打撃を与え、少しでもよい条件で休戦すべきである。終戦処理のために14日午後1時、閣議が開かれ、昭和天皇の終戦詔書を宮内省で録音し8月15日正午、全国にラジオ放送する事が決定された。午後11時50分、昭和天皇の録音は宮内省の御政務室で行われた。同じ頃、クーデター計画を進めている畑中健二少佐は近衛師団長森赳中将を説得していた。一方、厚木302航空隊の司令・小園安名海軍大佐は徹底抗戦を部下に命令し、また東京警備軍横浜警備隊長・佐々木武雄大尉も一個大隊を動かして首相や重臣を襲って降伏を阻止しようと計画していた。降伏に反対するグループは、バラバラに動いていた。その頃、畑中健二少佐は蹶起に反対した森赳師団長を射殺、玉音放送を中止すべく、その録音盤を奪おうと捜査を開始し、宮城の占領と東京放送の占拠を企てた。しかし、東部軍司令官・田中静壹大将はこのクーデターの鎮圧にあたり、畑中健二少佐の意図を挫いた。
    本書の本論は8月14日正午から、8月15日正午までを一時間に区切った章立てとなっており、時系列を追った再現ノンフィクションとして実によく纏められている。しかし、それ以外の情報が皆無である。終戦を描くのであれば、戦争をせざるを得なかった経緯について、少なくとも幕末から最低限は説明する必要があるだろう。欧米の帝国主義、白人優位主義の脅威から日本は特に19世紀以降、晒されてきた。クーデターの首謀者にも関わらず、罪を問われず戦後を生き延びた稲葉正夫中佐、井田正孝中佐、竹下正彦中佐ら、また彼等に対する処罰を曖昧にした軍に対しては、本書だけを読めば違和感や嫌悪感さえ覚えざるを得ないのではないだろうか。しかし、歴史の大局に立てば彼らの国を護らんとする至誠の愛国心や昭和天皇への忠誠心も理解できなくはないはずである。著者は東京裁判史観に立って歴史小説を著している事が指摘される。東京裁判史観を世に問うとは即ち、日本人に押しつけた戦勝国の歴史解釈に従う「敗者の戦後」を歩み続けよと唱えるに等しい行為である。日米開戦時、日本を挑発したのは参戦の口実を求めていた米国である。時の米国大統領であるフランクリン・ローズヴェルトは「他国からの攻撃を受けた場合を除いて、米国民を戦場に送る事は絶対にしない」という公約を掲げて大統領に当選したからである。米国が日本の宣戦布告文書を受け取ったのは、真珠湾攻撃の約一時間後である。この為、米国はこの攻撃を「布告なき奇襲」「卑怯な騙し討ち」として国民に喧伝し、米国民の反日感情を煽った。宣戦布告前の攻撃は重大な国際法違反だが、日本政府は攻撃前に布告文書を手渡す手筈を整えていた。布告が遅れたのは、政府から電信された通告文のタイピングに日本大使館職員が手間取った為で、これに関しては外務省の最大の汚点だろう。しかし、実際には日本政府や日本軍の動きは、暗号解読によってすべて米国側に筒抜けになっていた。屑鉄などの軍需品を目一杯送った上で石油を止めて戦争を誘引し、真珠湾には旧式の戦艦しかなかったのだから、罪刑法定主義という近代法の原則を無視し、事後法で一方的に敗者を裁いた東京裁判を正義と認める事は「正義とは力でしかなく、法や道徳とは無関係である」と認める事になる。
    「多くの将兵が何の為に戦い、そして死んでいったのであろうか。生き残る人々がこの問いに正しく答える時にのみ、日本は救われるであろう」
    以上は阿南惟幾陸相が遺書を記した際に語ったとされる言葉である。

  • 空襲があっても、東京が焼け野原と化しても、お役所はお役所なのだなという感想が一番にあった。
    決められないことが悪いことではない。むしろ拙速決定が、あの戦争を招いたのだとしたら、決めないほうがいい。だが、間違いを間違いとして軌道修正することが、お役所は本当に難しいんだなと思った。
    合成の誤謬というか、ミクロ・マクロの視点の差というか、すれ違いがなんとももどかしい。

  • 読むべき価値のある本

  • 終戦70周年の夏に読んでみる。

    本書は映画化もされるとのことだが、個人的には同じ著者の「真珠湾の日」の方が面白かった。基本的に終戦時の東京周辺の話ばかりの本書に対し、「真珠湾の日」の方がスケールが大きく感じられるからかな。

  • 情報って大切やなと思います。



    ネットが裏社会って言ってた都知事候補がいましたがなんでそんなこと言うのかわかるような気がするんですよね。

    ネット以前までって庶民への「大量情報伝達」は「新聞」であったり「テレビ」であったり「書籍」といった媒体であったと思います。

    これまではマスメディアのような自分の都合の良い情報を伝える「情報統制」を可能とする機関がマスコミュニケーションをコントロールしてきたのかなと思います。

    それがネット社会になってマスメディアすなわち「情報源の上流」にいた、いわゆる「知識人」と言われる人たちが情報のコントロールをきかせられなくなってしまい、彼らが不安になっても仕方ない時代がきたのかなと思います。

    いわゆる「情報源」という「既得権益」を「ネット」に奪われそうなので「抵抗」してるようにしか僕には見えないんですがσ^_^;



    ただネット情報はまだ玉石混交で、僕ら庶民はまだまだ選別する能力に長けていません。

    新聞といった今も信頼できる「情報源」の地位はしばらく揺るがないのかなとも思います。

    今は過渡期にあると思うのですがいわゆる「知識人」の人たちが自分の都合が悪くなると「ネットは信用出来ない」というとますます庶民はネットに傾斜するようになると思うのです。

    「日本の一番長い日」を読んでて将校がラジオ放送局を抑えようとしてましたが、最近の都知事候補の発言を聞いて情報源を抑えることの大切さを再度認識しました。

  • 110
    あの日は皆、一所懸命だった!!

  • 何か大きな力があるんだろうか、と思いながら読みました。政治家には政治家の正義と覚悟があって、陸軍の偉い人達にも若い人達にも天皇にも侍従にも、それぞれが信じる正義と覚悟と果たすべき役割がある、と信じて動いた話でした。戦争がもう続けられない状態にあって、この首相と陸軍大臣に、彼らが就いていたことを、奇跡と言っていいのかどうなのか。若い人達の気持ちもわかる気がして、終わりは涙が止まりませんでした。

  • 16.06.26読了。陸軍大臣の国体護持、軍人論が印象的。また鈴木首相ののらりくらりとした統率のやり方も素晴らしい。この其々にまつわる本は後で読みたい。玉音放送のエピソードは知らないことばかりでした。

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう かずとし)
1930年、東京府東京市向島区(現在の東京都墨田区)生まれ。東京大学文学部国文科卒業後、文藝春秋新社に入社。編集者として活動しながら匿名記事も記す。1965年に大宅壮一の名義を借りて『日本のいちばん長い日』を執筆、発行。『漫画読本』『増刊文藝春秋』『週刊文春』『文藝春秋』編集長を歴任。1995年に文藝春秋を退社してから作家・評論活動専任となる。
1993年『漱石先生ぞな、もし』で新田次郎文学賞、1998年『ノモンハンの夏』で山本七平賞、2006年『昭和史』で毎日出版文化賞特別賞をそれぞれ受賞。2009年の語りおろし『昭和史 1926-1945』『昭和史 戦後篇 1945-1989』はベストセラーとなった。
妻の半藤末利子は、松岡譲と、夏目漱石の長女・筆子の四女で、夏目漱石が義祖父にあたる。

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