あの戦争と日本人 (文春文庫 は 8-21)

著者 :
  • 文藝春秋
4.14
  • (35)
  • (44)
  • (21)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 397
感想 : 42
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167483210

作品紹介・あらすじ

歴史とは、一筋の流である。戦争史の決定版日露戦争が変えたものから、特攻隊、戦艦大和、原子爆弾などあの戦争を通して見据える、日本人の本質とは。「昭和史」に続く決定版!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 毎年8月になると太平洋戦争ものを読む。今年はこれ。歴史探偵、半藤さんの多くの取材から浮かび上がる明治維新、日清戦争、日露戦争、そして太平洋戦争への道。日露戦争後、地に足がつかず、現実的な判断ができなくなり、太平洋戦争へ突き進んだ。300万人もの戦没者をもたらした無謀な判断の数々。歴史にはやはりしっかりと向き合う必要がある。

  • 日露戦争までの日本人の苦悩の選択と昭和の戦争の安易な選択の対比がこれでもかとでてくる。
    それ自体興味深いが、筆者が1番言いたいのはあとがきにある新聞と日本人ではないかと思った。

  • 最初は飄々と戦争譚を話してるだけかなって思ったけど、読み進めたら深かった。
    戦争の中味を見たような気がした。
    昭和天皇の苦悩や明治と昭和の違いみたいな件もそうだったのかと唸った。
    戦争がどうして悲惨だったのかも理解できて、戦没者の無念を思わずにはいられない一冊です。

  • 半藤一利と言う人は優れた歴史家である。
    ただこの本の中の 特攻隊と日本人の章では、どうしても同意出来ない箇所がある。
    「自分の乗った航空機あるいは魚雷ごと突入して敵艦を撃沈するくらい。これは世界戦史の中でそれまで見たことのない常識外れのものでした。非情この上ない非人間的な作戦でした。」
    確かに特攻は作戦として外道の外道であると言う事にはオレも同意する。
    しかし、特攻が非人間的か否かは乗る人間の価値観で決まる。 乗る人間が身体、生命以上の価値を何らかに見出して、その事が特攻により守られる可能性があるなら必ずしも非人間的とは言えないと俺は考える、。

  • とにかく目から鱗のことばかり。司馬遼太郎の「坂の上の雲」に描かれている、愚直で無能な乃木大将と203高地をあっという間に陥した総参謀長児玉源太郎の見事な手際。史実とはだいぶ違っていたとのこと。また、秋山真之の暗号打電「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」も極秘の作戦計画が実施不能であることを示していたとは(文学的表現ではなかった!)。宮沢賢治はあの石原莞爾と同じ日蓮宗の宗教団体「国柱会」の熱心な信者だった。「雨ニモマケズ」の詩の最後に「南無妙法蓮華経」が繰り返し書かれていて、誰もが知っているあの詩は日蓮宗の根本精神を表したものだった。その「国柱会」の創始者田中智学が「八紘一宇」を最初に使った人、等々。
    史実をとことん究明しようとする著者の姿勢。著者の司馬史観への批判にも説得力がある。本書を読んで、理不尽な戦争へと駆り出されて心に癒し難い傷を負ったであろう司馬さんが、昭和の一時期を、その前後の歴史とは隔絶した特異な時期であると整理せざるを得なかった気持ちが改めて分かったような気がする。兵士に駆り出された司馬さんと勤労学生だった著者では「あの戦争」の捉え方もだいぶ違うのだろうなあ。
    司馬さんの遺志を継いだという「ノモンハンの夏」をはじめ、歴史探偵を自認する著者の他の作品を多く読んでみたくなった。

  • 2015/8/14読了

  • このところずっと読み続けている形となる昭和史モノ。
    前回の『日本のいちばん長い日』の流れで半藤一利氏の描く近代日本の姿を主に日露戦争時から第二次世界大戦の終戦までを時系列的に述べたモノである。

    ただの通史ではなく、それぞれの歴史の転機における主導層の動き、考えと世論、新聞、大衆の動き、考えを合わせ、当時の『日本人』というものが情勢をどう捉え、どういう思想を元に、どういう行動をなしたのかということが非常にわかりやすく整理された本である。

    話が変わるがボクはあとがきが好きである。
    なので、中身の読書に入る前にあとがきから読み進めてしまうケースが多い。
    中にはネタバレのようなあとがきもあるが、本書に対する作者の思いというモノがあとがきには書かれているケースが多いので、本全体の雰囲気を最初に捉えておくためにも、はじめにあとがきから読んでおいたほうが、ボクは後々の読書をしやすいのである。

    本書のあとがきではいきなりきな臭い話から始まっている。
    書名である『あの戦争と日本人』。
    なぜ、書名で『あの戦争』という言葉を使ったのか、使わざるを得なかったのか?ということから本書のあとがきは始まっている。

    その理由の中にも自虐史観だのなんだのとボクらが学校で習ってきた『太平洋戦争』という言葉に対する、保守反動的な圧力が働くのだという。
    日本ていつのまにこのような息苦しさを感じる国になったのだろうか?
    いちいち、作者に反論を寄せるのも大変だろうに...。

    それもこれも特に『昭和』という時代についてはまともに歴史を教えてこなかったが故だと思う。

    また、あとがきの中に『非連続』という言葉が綴られている。
    最初にあとがきを読んだときにはサッパリ意味がわからなかったが、本書を読了する中でこの『非連続』が意味することがよく理解できた。

    幕末から明治となり近代日本の夜明けを歴史の授業として習っていく中で、幕末以降の近代日本は明治・大正・昭和と繋がっているという感覚はないだろか?
    ボクは本書を読むまで繋げて理解していたのだ。
    薩長が中心となって明治政府を作り上げ、廃藩置県・富国強兵により天皇を中心とした中央集権的な近代国家として発展を遂げてきた。
    日清・日露・第一次世界大戦により国際的な列強の一角に肩を並べるに至り、世界の利権配分争いにより旧列強(英・米・仏)と新列強(独・伊・日)による第二次世界大戦が引き起こされ、新列強の三国の降伏により終戦。日本はアメリカによる占領政策下で象徴天皇制に基づく立憲君主制で再スタートを切る。
    といった、バカみたいに略しすぎだが明治・大正・昭和(戦前・戦中)までは幕末の薩長の体制を中心として、脈々と繋がってきたという理解なのである。

    それが全くの誤解であるというか、そもそも教えられてこなかったことに驚きだ。
    教えてこなかったのだからある意味当然なのだが、昭和の戦前・戦中までの話が今ひとつ理解できなかった要因に『統帥権』『天皇機関説』というモノがある。
    これまでこの二つのキーワードが出てくるとボクはもぉ〜お手上げだったのだ。
    大日本帝国憲法なるモノを掲げる立憲君主制国家でありながら、なぜ内閣は軍隊の暴走を止められなかったのか?
    統帥権干犯とか言われて軍部に脅されても、内閣には陸相も海相もいるわけだし。天皇自らが作戦を指揮するわけじゃないんだから、参謀本部・軍令部といったって無茶できんでしょ?
    また、天皇機関説がけしからんっ!といってもそもそも、内閣も軍隊も天皇は『玉』としか考えてないでしょ?幕末に倒幕の象徴として担ぎ上げた時代から??
    どの組織でも『天皇』という位であれば今上天皇でなくても代わりの『玉』がいればいいんでしょ?
    そしたら、昔から天皇は『象徴』でしかないじゃないすか。
    天皇機関説のナニが悪いの???
    とボクの灰色の脳味噌はこの二つのキーワードが理解不能でなにが問題なのかすら解らなかったのである。

    それが、本書を読んだことによりすっきりした。よくよくよぉ〜やく理解できたのである。
    やはりキモは『統帥権』なる謎の権利なのだ。
    しかも、この統帥権なるモノは山県有朋の発明により、大日本帝国憲法が作る前から成立していたと。
    要は内閣という行政府が出来る前から軍事に関することは天皇直轄の幕僚組織としてすでに
    独立した機関として成立していたと。
    とすると当然、遅れて成立した憲法なんぞにこの幕僚組織を定義する条項などないに等しいのである。
    国の舵取りを司る行政府のコントロールが一切及ばない外側に日本の軍は存在した。
    『政府の前に軍が存在している。』終戦を迎えるまでの日本はそんな国だったということである。

    また、この憲法以前に統帥権の独立ということが天皇機関説のミソでもあるのだ。
    天皇機関説は『象徴』は象徴であれど、憲法下において天皇を位置づけ、ようは『統帥権の独立を憲法下に再定義する』ということであり、だからこそ陸軍を中心に統帥権干犯を問題視して大騒ぎになったということらしい。

    なるほど、『統帥権』という謎の言葉の意味が効能を理解することによりわかりづらい昭和史というモノが見えやすくなった。
    また、このある意味制限があって無いようなモノである『統帥権』を魔法の杖のように軍が遣い出すことにより、明治以降粛々と成長を続けてきた近代日本と、明治の成果のみを観て生きてきた次の昭和世代に非連続な歴史が垣間見られるということも本書を通して読むと実によく理解できる。


    昭和史が苦手な人はまずこの本から読むべきだと思う。

  • よく、歴史「を」学ぶのではなく、歴史「から」学ぶことが大事と言われる。
    が、半藤さんの本を読むと、そもそも歴史「を」学ぶ段階すら十分ではなかったと痛感する。
    表面的な部分ではなく、いわば”裏側”や”状況証拠”も踏まえて考察していくのが本当に興味深い。
    この後は、同氏の「幕末史」「昭和史」にも当たっていきたい。

  • 『オール読物』の連載まとめで、雑誌編集者相手に語ったものを文章化。小ネタもあって口語体で読みやすい。特に、4章の統帥権と5章の八紘一宇の政治制度・政治思想的テーマの部分が面白かった。
    ただし、いつもの「半藤節」なので、史観に偏りはあるし、事実関係にも少々怪しいところもあるのでその辺は留意して読む必要はある。

  • 「半藤一利」が描いた日本の戦争史決定版『あの戦争と日本人』を読みました。

    「半藤一利」作品は、昨年の8月に読んだ「江坂彰」との共著『日本人は、なぜ同じ失敗を繰り返すのか 撤退戦の研究』以来ですね。

    -----story-------------
    歴史とは、一筋の流である。
    戦争史の決定版

    日露戦争が変えたものから、特攻隊、戦艦大和、原子爆弾などあの戦争を通して見据える、日本人の本質とは。
    『昭和史』に続く決定版!
    -----------------------

    歴史探偵「半藤一利」が、自らの著書である『幕末史』と『昭和史』の二冊の間をつなぐように幕末・明治維新から太平洋戦争敗戦までの時代をわかりやすく語り下ろした戦争史です。

     ■幕末史と日本人
     ■日露戦争と日本人
     ■日露戦争後と日本人
     ■統帥権と日本人
     ■八紘一宇と日本人
     ■鬼畜米英と日本人
     ■戦艦大和と日本人
     ■特攻隊と日本人
     ■原子爆弾と日本人
     ■八月十五日と日本人
     ■昭和天皇と日本人
     ■新聞と日本人―長い「あとがき」として

    歴史って、その時代、その時代で切り取られているわけではなく、前の事実を踏まえて後の事実が生まれてくる一筋の流れなんだな… ということを改めて感じた作品でした、、、

    明治維新から、日露戦争、統帥権、戦艦大和、特攻隊… 悲劇への道程に見える一つひとつの事実は、いつ芽吹き、誰の思いで動き出したのかということが、わかりやすく解説されていました。

    幕末史での薩長の美談や、日露戦争での二〇三高地での無意味な作戦(既に旅順艦隊は殲滅していた)等… 教訓に学ぶことなく、都合よく作り変えた物語(講談)を、あたかも事実かのように取り扱い、隠蔽しちゃったことがターニングポイントになった気がしますね、、、

    「半藤一利」も語っていましたが、日露戦争後にきちっと事実を明らかにして、「日本はもう少し我慢しなくてはいけませんよ」、「国力に見合った国づくりをやっていかなきゃいけませんよ」ということを、指導者が語るべきだったんでしょうね… それをしなかったために、その後の日本人は勝利に酔って、謙虚さを失い、冷静におかれた現状を受け止めることもせず、やがて世界の孤児となり太平洋戦争に突入していくことになったんだなぁ、としみじみと感じました。

    でも、わかっちゃいるけど、歴史から学ぶことは、実際はなかなか難しいんだろうなぁ… と、現在の日本の政治をみながら考えちゃいましたね。

全42件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

半藤一利の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×