TVピープル (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.30
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本棚登録 : 3427
レビュー : 305
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167502027

作品紹介・あらすじ

不意に部屋に侵入してきたTVピープル。詩を読むようにひとりごとを言う若者。男にとても犯されやすいという特性をもつ美しい女性建築家。17日間一睡もできず、さらに目が冴えている女。-それぞれが謎をかけてくるような、怖くて、奇妙な世界をつくりだす。作家の新しい到達点を示す、魅惑にみちた六つの短篇。

感想・レビュー・書評

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  • 短編の村上春樹が特にすき。

  • 加納クレタの話が読みやすくて好きだった。とにかく男に強姦されるというとんでも設定が春樹さんらしくて好き。

    あと元カノに別の人と結婚するまでできないという約束をされた男の話も春樹らしくて好き。そこまで病的に拘られる処女性って何なんだろうと思った。したいときにすればいいと思うよ。

    表題のTVピープルは微妙にホラーでなんかTVを見ない人にTVを与えたかったんだろうなとは思った。私もテレビみないのでTVピープルがやってきてしまうかもしれない。

    あとゾンビで紳士でフェミニストっぽい春樹が女性をボロカスにディスっててびびりました。まあ、あくまでも小説ですけど。のびきったゴムみたいなあそこって何?笑

  • 村上春樹の短篇は、物語が中途半端なところで終わることが多いため、消化不良に陥ることが大半なんだよなぁ。

    でも、時たま、とても良い短篇作品に出合うことがある。
    そういった自分にとっての当たりを見つけるために、ちょくちょく短編作品を読んでいるのだが、本著では、「眠り」がそれにあたる。

    主人公は、夫と息子を持つ、ごく普通の主婦。或る時から、彼女は、一切の睡眠が不要となり、空いた時間を自分の時間に活用するようになる。
    一見すると、とても幸福そうにみえるのだけど、”眠らなくてよい”ことへの不安、自分だけ”他人と異なること”への一種の背徳感、或いはそれに起因する夫や息子への蔑視、羨望が読みとれる。
    そのためか、始まりから終わりまで、ずっと虚無感が漂っているのだ。

    だが、この虚無感は「眠り」に限ったことではない。
    本著の短篇で登場する人物は、自らの意志では変えることのできない何かに縛られている。そして、そういった抵抗できない何かに対する”むなしさ”や”やるせなさ”を終始一貫して感じた。

    いままで読んだ著者の長篇では、主人公が抵抗できない何かに立ち向かっていた。
    結果がどうであれ、強い意志を彼らは持ち合わせているのだ。
    だけど、本著の人物はそれがない。まるで失敗作のようだ。
    でも現実にあてはめてみると、それが(すなわち抵抗できない何かに屈服することが)、大多数を占めるのかもしれない。
    そう考えると、長篇がある種の希望(いい言葉が思い付かない。希望とはまた違う気もするが…)を描く一方、本著は、長篇の底流に流れる影を描く、リアリスティックな叫びをあらわしているのかもしれない。

  • 村上春樹の短編ならこの話が特に面白いよと、この短編集に収録されている「眠り」を薦められた。本当に「面白い」と言ったかどうか思い出せない。歪んだパイプイスに座っていたような浮遊感から、知らない道を一時間ほど歩き回ってみた。

  • ちょっと不思議な話の短編集。TVピープルが一番好き。

    2019.7.28

  • ありきたりの日常が「ちょっと」違う違和感。「ちょっと」がこんなにも奇妙で不気味な世界になる。村上春樹作品の後半で度々味わう非日常の異世界感、そこを取り出したような短編集である。TVピープルやクレタ・マルタなど、その後の作品に通じるモチーフが登場し、村上氏のまた違った一面を味わえる。個人的なお気に入りは「我らの時代のフォークロア」である。

  • 「加納クレタ」が面白かった。

  • 6つのストーリーからなる短編集。
    潜在意識がこの本の共通のテーマであるような気がした。
    普段意識していない本当の自分の存在を垣間見たとき人はどのような行動に出るのか?
    村上春樹の作品には言葉では言い表せない読後感がいつもある。話の内容がうまく理解出来ない事もあるが独特の世界観に引き込まれてる。その感覚は病みつきになる人がいるのも頷ける。
    今回は特に引き込まれて読み進めることが出来た。

  • 1980年代終盤から1990年代初頭にかけての作品集。

    電話はダイヤル式。

    テレビは大きな立方体。

    昭和の終わりと平成の始まり。

    21世紀へ向けての期待感と空虚感。


    「TVピープル」
    我が家にやってきた「TVピープル」。勝手にテレビを設置して去ってしまった。だが、妻はそれに気づかない。雑誌の並びが変わるだけでも敏感なはずなのに。
    3人組の彼らは、会社にまでやってくる。でも私以外は誰も気づかない。

    「飛行機--あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか」
    20歳の彼は、7歳年上の彼女の家にいる。彼女には夫も子供もいる。
    彼女は彼の「ひとりごと」を指摘する。
    「人の心というのは、深い井戸みたいなものじゃないかって思うの。何が底にあるかは誰にもわからない。ときどきそこから浮かびあがってくるものの形から想像するしかないのよ」

    「我らの時代のフォークロア--高度資本主義前史」
    高校時代の同級生と中部イタリアのルッカで再会した。
    ミスタークリーンといわれた優等生は、ミスクリーンといわれた美女とつきあっていた。
    その時の告白が思わぬ形でされる。

    「加納クレタ」
    「水の音を聴く仕事」をする姉のマルタの手伝いをしている。
    ある理由から、世間と断絶して生活していた彼女に、訪問者がやってくる。

    「ゾンビ」
    男は女に語る。
    彼女のがにまたを。右の耳のすぐ内側のほくろを。わきがを。ブラウスの裾の汚れを。似合わないイヤリングを。
    もうやめて! その先にあるものは……。

    「眠り」
    彼女は全く眠れなくなった。
    眠れなくなって17日。
    疲れない。
    むしろ、頭が冴え渡る。
    与えられた時間に、彼女は読書を続ける。
    トルストイのアンナ・カレーニナの世界にどっぷりと浸っていく。



    言葉に出来ないもの。
    言い表せない空気のようなもの。

    誰にも見えないけれど、誰もが共感できる何かが描かれている。

    だから、村上春樹は世界で読まれている。

    そして、村上春樹をまた読みたくなるのだ。

  • 改めて村上春樹の短編は面白いと再認識させられた。シュールでオチもあまりなくてヘンテコな世界観だけど確かに考えさせられることがあって何より謎に面白い。特に「ゾンビ」は結婚を目前に控えた男女の心の内を残酷に描いていて、最後の彼の発言には恐怖を感じた。そして「眠り」は個人的に一番好きな作品。眠りとはなにか、死とは何なのかについて考えさせられる。「深い覚醒した暗闇」という死の表現が、あまりにも恐怖心を掻き立てるので、思わず死について真面目に考えて泣いてしまった。私は金縛りによく遭うので、金縛りの描写についてもお見事!と思いました。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。2019年8月7日発売の『文学界』でロングインタビュー「暗闇の中のランタンのように」掲載。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月末に刊行予定。

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