走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167502102

感想・レビュー・書評

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  •  村上春樹が、もし走ることでアスリートになってなかったら、きっと長編小説は書けなかっただろうと言っています。長編小説を書くということとマラソンを走り切るということは、きっと類似しているというのはわかるような気がしますね。
     どんなことでも地道に努力する積み重ねがなかったら、いい成績を上げることはできないのはよくわかる。そしてマラソンを走り切ることによって得られるecstasyといい小説を書き上げた時のecstasyは似ているのだろうと思います。
     この本は、私たちに人生において何かを為し遂げるために、傍に置いておく価値のある本だと思いました。オーディブルで聴いたのですが紙の本が欲しくなってamazonでゲットしました。

  • とても、とても勉強になる(考えさせられる)一冊です。
    村上氏が「走る」のは何故なのか? それは自分を究極まで追い込み、そして辿り着くのが、マラソンも小説の執筆も共通しているからなんですね。
    体力を使う(と思われる)走ることと、知力を必要とする(と思われる)小説ではかけ離れれ居るとおもわれそうですが、どちらにも共通するのは「相当な持久力と、創造性」だと気が付くことができました。
    村上氏の表現力豊かで心に残る言葉が綴られる小説にはこんなプロセスがあるんだな~ と、多くの気づきを貰った印象です。
    自分自身と闘い、そして結果をデザインしていくことは「ランナー」も「小説家」も共通する「禅」のような境地が必要なのでしょう。
    村上氏のその禅の境地を言語化し、エッセイとしてまとめたのが本書だと思います。

    例えば、映画監督(宮崎駿氏)なども自室に籠ってアイデアと格闘し、自分自身を追い込んでいく姿は有名ですよね。
    小説家に限らず、モノづくりを志している方には共感される本では無いでしょうか?

  • 「走る」ことがテーマのエッセイ集。

    ー 僕は小説を書くことについての多くを、道路を毎朝走ることから学んできた

    とのことなので、職業的小説家の村上さんにとってこの本はとても大切なエッセイ集だと思う。村上さんが自分と向き合いながら、自分を曝け出しているのが、伝わってくる。
    結構難産なエッセイ集だったんじゃないかな、なんて勝手に想像してしまった。
    そのせいか、いつもながら言葉は軽快だけど、読み手にもずっしりと響くものがあり、読み進めるのに思いのほか時間がかかる。
    というか、大切に読みたい、と思う本だった。

    僕もランナーのはしくれなので、「走る」という行為に生きる意味を重ね合わせることがある。

    ー もし苦痛というものがそこに関与しなかったら、いったい誰がわざわざトライアスロンやらフル・マラソンなんていう、手間や時間のかかるスポーツに挑むだろう?

    走ることは苦しいからこそ、「生きている」ことを感じさせてくれる。マラソン大会に出て「もう死んじゃう」と思いながら走ってゴールした後の幸福感や高揚感は本当にハンパではない。

    ー 走り終えて自分に誇りが持てるかどうか、それが長距離ランナーにとっての大きな基準

    自分に誇りを持つために、ランナーは走っているのだと思う。苦しい思いに打ち勝って自分なりの結果を残すこと、誰かと比べるのではなく、自分との戦いに勝利すること、それこそ誇りなのだ。

    …と言いつつ、最近サボり気味の僕は、腹が出てきて非常にやばい。自分に喝を入れるために、無意識のうちにこの本を読むことにしたのかもしれない。

    僕もラヴィン・スプーンフルを聴きながらカウアイ島を走ってみたいなぁ…


    ところで、音楽に関して、iPodでなくポータブルMDプレーヤーを選ぶ理由として、

    ー 今のところ僕はまだ、音楽とコンピューターをからめたくはない。友情や仕事とセックスをからめないのと同じように。

    と書いているけど、15年近く経って、今はどう考えているのかな?
    その日の気分で走るときに聴く音楽をApple Musicの中から選ぶ快適さを知ってしまった僕にとっては、全く実感の湧かない比喩だった。

  • 著者の30代の頃のマラソン写真がたくさん載っており、興味深い。走ることを日課にすることにした経緯や、あちこちでフル・マラソンなどに挑んだ話などのエッセイであるが、文章が面白い。


    走るときにはだいたいはロック・ミュージックを聴いている。〜レッド・ホット・チリ・ペッパーズやら、ゴリラズやら、ベックやら、あるいはクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル、ビーチ・ボーイズといった古い音楽。p28

    僕は実によく昼寝をする。だいたい昼食のあとで眠気を感じ、ソファにごろりと横になって、そのままうとうとと眠る。三十分くらいでぱっと目が覚める。目が覚めたときには身体のだるさが消えて、頭はとてもすっきりしている。南欧でいうシエスタ。p74

    小説家は体力勝負。
    100キロレース(北海道サロマ湖)では、75キロを過ぎて疲弊感がふっと消えてしまう意識の空白化が起こり、ランナーズ・ブルーと名付ける。p160

  • 金縛りにあうたび自覚する“頭”と“身体”のズレ…「容器としての自分」を考える3冊|コンサバ会社員、本を片手に越境する|梅津奏 - 幻冬舎plus
    https://www.gentosha.jp/article/22501/

    村上春樹「走ることについて語るときに僕の語ること」 私も走る、書き手とともに 岩波書店・小田野耕明さん |好書好日
    https://book.asahi.com/article/12916965

    文春文庫『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167502102

  • 村上春樹がランナーとは知らなかった。
    単行本刊行時点は2007年で50代だが、今は70代のはず。今も走っているのかな?

  • とても素直に淡々とマラソンに対する思いが描かれており、読む側も心地よく読める作品だと思います。
    個人的には村上さんの作品ではアンダーグラウンドや本作品のような事実に基づいたものが好きです。
    読むと走りたくなります。オススメ!

  • 村上さんの小説を読んだことなかったが、走る者として本書は読んでみたいと思っていた。ランナーの心理について共感するところがあった。

  • ここまで深く、それでいて爽やかに”走るわけ”を流れるように語られたら、それが本意ではないと言われても、走ってみたくなる。そんな素敵な本だった。長年の積読解消。

  • フルマラソン中の心理変化の箇所(30kmまでの、“今日はいいタイムで走れそう”、から、どんどん悲壮感が高まっていくあたり)は、いたく共感した。P5に書かれているマントラは、次回のフルマラソンで多分心の中で唱えると思う。

    P5
    Pain is inevitable. Suffering is optional.
    痛みは避けがたいが、苦しみはこちら次第。

    P72
    学校で僕らが学ぶもっとも重要なことは、「もっとも重要なことは学校では学べない」という真理である。

    P99
    ビールはもちろんうまい。しかし現実のビールは、走りながら切々と想像していたビールほどうまくはない。正気を失った人間が抱く幻想ほど美しいものは、現実世界のどこにも存在しない。



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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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