夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2011 (文春文庫 む 5-12)
- 文藝春秋 (2012年9月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167502126
作品紹介・あらすじ
村上春樹が語る村上春樹の世界。19本のインタビューで明かされる、いかに作家は生まれたのか、創作のプロセスについて-。公の発言が決して多くない村上春樹は、ただしいったんそれに応じるや、誰にも決して真似できない誠実さ、率直さをもってどこまでも答える。2011年6月に行われた最新インタビューをオリジナル収録。
感想・レビュー・書評
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68冊目『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2011』(村上春樹 著、2012年9月、文藝春秋)
著者が1997年から2011年までの間に受けたインタビュー19本が収録。米・台・中・仏・露など、日本のみならず世界中のメディアによるインタビューが収録されており、いかに著者が世界的な作家なのかがよくわかる。
この15年間で村上作品のスタイルがいかに大きく変化したのか、なぜそのような変化が起きたのかを読み解く鍵となる一冊。
「僕は理想主義者で楽観的で、愛を信じてはいますが」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ああ、面白かった!!
村上さんは、読書体験を積み重ね(インプット)、29歳で初めて小説を書いた。
「僕はこれまでに自分が読んできたヨーロッパやアメリカの作家の作品から、あらゆるものを片端からかき集めるようにして借用したわけです。文体や、ストラクチャーや、とにかく何もかもをごたまぜに。その結果、僕は自分自身の日本語の、オリジナルなスタイルを獲得することができた。(p.214)」
というのを読んで、文学版フリッパーズギターみたい!と思ってしまった。
村上春樹はロックスターなのだ、だから自分は惹かれるのだなと思った。
20年来、わたしは村上春樹の熱心な読者です。
内容はもちろん、登場する料理やら音楽やら、
そういうものから受けた影響も大。
ドアーズ、ビーチボーイズ、ビートルズ、ビル・エヴァンス、スタン・ゲッツ、ブラームスやベートーベン…思い返せば、随分と追いかけて聴いてきた。
今のわたしの音楽的趣味の基盤を作ったといえるほど。
だからこのインタビューはすごく興味深かった。
どんな小説を読んできたか、どんなふうにして小説を書いているのか、小説で何を表現したいのか、長編小説と短編小説を書くときの違い、これまでの小説はどこで書いたのか、日本について、日本の小説についてどう考えているか…そういうことがよくわかって、とても面白い。
話される言葉も小説の文体のようにリズムがよく、ぐいぐい読んでしまった。
ご自身のエッセイや安西水丸さんの村上さん評、あるいは「エルサレム賞」受賞時のスピーチなどから、その人となりについての基本的な知識やイメージは持っていて、この本を読んで意外に思うようなところはまったくなかったけど、何しろもこんなにまとまったインタビュー集は初めて。
もれ聞えてくる情報とはボリュームが違う! お腹いっぱい。楽しめました。
村上春樹さんは人として実にまっとうな方であり、ストイックで健康的な生活を送り、混沌とした世の中にあっても良い物語で世界が変わると信じ、常に前に進もうとしておられることがよくわかった。
また小説を読み返したい。-
2012/12/06
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nyancomaruさん
花丸とコメント、ありがとうございます!
春樹さんがご自身について語られる機会は決して多くないと思うので、このインタ...nyancomaruさん
花丸とコメント、ありがとうございます!
春樹さんがご自身について語られる機会は決して多くないと思うので、このインタビュー集は貴重です。
ぜひ読んでお腹いっぱいになってくださーい!2012/12/07
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カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞した際に、本来なら村上春樹が先に選ばれているはずだったと漏らしたほど、海外でも人気の高い作家・村上春樹の19編のインタビュー集である。大学時代の学生運動を経験から「耳に心地よい言葉」はあまり信用せず、人の言葉を借りることをせず、新しい「自前の語彙」を絞り出すように小説を書いてきたと応えている。良きリズムと、良きハ-モニ-、良きメロディー・ラインの文章が連続した小説の感触など、村上春樹自身が語る豊富なバリエーションには、ため息の留まる暇がない世界へと誘われてしまう。
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○アンダーグラウンドについて
ノンフィクションではなくナラティブの集合体。
被災者らは事実を語ったが、それは彼らの体験を通して目にされた光景でありそれは1つのナラティブである。
彼らの語ったことはすべてが真実ではない。しかし彼らがそれを真実とかんじたならば、僕にとっても正しい事実なのだ。
ノンフィクションは事実を尊重するが、僕はナラティブを尊重する。
かっこよすぎ! -
メディアには滅多に登場しないので、インタビューで語る村上さんの言葉は果実がぎっしり詰まっているかのように、ジューシーで美味しいものです。
内田先生(内田樹)がおっしゃっていましたが、邪悪なものとの出遭いで適切に振舞うために必要なこと、3つ。礼儀正しさ、身体感度の高さ、オープンマインド。村上さんにはこれが全て備わっているようです。村上春樹が世界中で読まれているその理由もそんな普遍的要素が彼の小説に備わっているからなのでしょう。
それにしても、小説家になるきっかけとなった天啓の場面、アスリートのような生活スタイルも然り、想像だけで行ったことのないところでも書けるとか、自分の書きたいように小説を書けるようになったとか、やっぱりプロの小説家って違うものだなぁと感心します。成熟の域に入って村上さんの創作意欲は益々盛んなようなので、この先の作品も楽しみです。これまでの作品の読み返しやこのインタビューに登場する 数々の小説も読んでおきたいと思ってしまいます。 -
制作活動に対してとにかくストイックなところ、
世の中に対して絶妙な距離を保っているところ、
ぶれることのない軸を持って生きているところ。
全てが好きです。私も自分だけの時間が流れる
世界で生きたいです。 -
インタビュアーの春樹愛がすごい。
村上春樹のぶれなさもすごいけど、頑固な感じがしない。
話し言葉がもうあの文体ってなぜ。 -
読んで本当によかった。借りて読んだけど、買ってもよかった。付箋を貼りたい箇所がたくさんあった。と言うか、こんなん出していいのかな、と思うくらい、一挙にまとめて読むと村上春樹と言う人となりと作品の世界観がよく理解できる。職人的だったり天才的だなと思う小説を書くうえでの細かなテクニックの話も面白かったし、彼の哲学・美学もたくさん知り得ることができて、ますますファンになった。次の新作を読むのが楽しみ。
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「次の新作を読むのが楽しみ。 」
4月に文藝春秋から長編出るそうですね。私も今から楽しみです(と、書いてるけど文庫派なので、文庫になるまで我...「次の新作を読むのが楽しみ。 」
4月に文藝春秋から長編出るそうですね。私も今から楽しみです(と、書いてるけど文庫派なので、文庫になるまで我慢するんですけどね)。。。2013/02/21
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バカですか?わたしは。586ページもあるものを年始2日目にして読み終えてしまったという。今実家。どれだけ何も無いんだよ実家。いやいや、ゆっくり過ごさせていただいてます。
今日この本を読みながら、転寝をしてしまい、小さな夢を見た。
夢の中で、私は本を読んでいて、そのお話を夢の中で想像している夢だった。
不思議なことで、そのお話の内容を、私は今でもよく覚えている。妙に想像が鮮やかで、話としては変なのだけど映像がとても美しい夢だった。
女の人が、道端でタクシーを捕まえ、運転手さんとつかの間お話をするという夢だった。
その運転手さんは、とても孤独な人で、そして木が好きな人だった。木を見つけるたびに、邪魔にならない程度に、その木について乗客に話して聞かせていた。この女の人(若くてボブの髪の毛の可愛らしい人)のときもそうだった。どうやら車を進めていくうちに、洋梨の木を通りすぎた。運転手は、洋梨の木にまつわるうっとりするようなお話を女の人の聞かせた。とても穏やかな時間が過ぎて言った。
そこから・・・私の脳は極端なつじつまを合わせ始める。女の人が、とても速い車が隣りの車線を通りすぎた瞬間、「その車を追いかけて下さい!」という。どうやら女の人には事情があるらしい。
運転手さんは、自分の話を穏やかに聴いてくれた女の人のことをとても好意的に思っていたので、なんとかその望みにこたえようとしたのだが、ちょっとした運転ミスを犯して女の人に怪我を負わせてしまう。
運転手さんが、怪我をした女の人が入院している病院にお見舞いに行くシーンに変わる。
謝罪と共に、何か償いをさせてくださいと運転手が申し出る。(そもそも原因は女の人にあるのだけどね。)女の人は、「また、お見舞に来てください。そのときは、あなたの話してくれた香りの良い洋梨を持って来てください」と言う。「今はまだ、実の熟すシーズンじゃない。」と運転手が答える。彼女は、「では、洋梨の木の葉をください。あなたの話してくれたお話の香りを、いつでも私が思い出せるように。」というような話をして終わる。
ここまで状況説明を書いてみて、わたしは死んでも作家にはなれんだろうと思ったのですが、まだ夢の中です。
「今読んでるこのインタビュー集にこんな話、載ってたっけ?っていうか、村上春樹はこんな(変な)話書いてたか?」と手にしている本を見返した所で目が覚めました。「これから十年は再び理想主義の時代になるべき」というページを開いたままの自分に気づき、全てが夢だと気づくという。
初夢は、なんだか覚えていませんが、何かを追いかけている夢だった気がします。私の夢は大概何かを追いかけているか、何かに追いかけられているか、歯が抜ける夢です。恐怖心が夢に出てきている気がします。でももしこの鮮やかに覚えている夢を「初夢」としていいのなら、とても穏やかに一年が過ごせそうな、暖かい気持ちになります。寝る前に頭に入ってきていた、膨大なイメージと活字がこの夢を見させてくれていたのであれば、わたしは想像力の偉大さと脳みその可能性についてとても敬服します。
なんのこっちゃ、この感想。-
村上春樹の文章は、読む者の無意識の深いところを刺激してくるのですね。私も、村上春樹の短篇集『回転木馬のデッドヒート』を読んだあと、ネクタイが...村上春樹の文章は、読む者の無意識の深いところを刺激してくるのですね。私も、村上春樹の短篇集『回転木馬のデッドヒート』を読んだあと、ネクタイがうまく結べなくなったことを思い出しました。2013/01/03
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