自然と旅を語る 魔法のことば (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2010年12月3日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784167515041

みんなの感想まとめ

自然と人間の関わりを深く掘り下げたこの作品は、アラスカの大自然を舞台に、星野道夫の心温まる体験や思索が綴られています。読者は、彼の言葉を通じて、白夜やオーロラ、カリブーの移動など、壮大な自然の景色を想...

感想・レビュー・書評

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  • 同じことでも、繰り返し繰り返し語り続ける。その語り口は優しい。
    星野道夫さんの自然に対する眼差し、人間に対する眼差しはとても優しいものだと思う。それがこの講演集から感じられた。『旅をする木』を読んでからこの本を読むと一層理解が深まると思う。

    【印象に残った部分】
    ・本当に長く仕事を続けるのに思いつきや小手先のテクニックでは通じないと考えていて、そこで支えになるのは自分がやりたいと思える対象への興味、それがどのくらいあるかということだったんです。
    ・育った環境は全然違うんだけれども、一回の一生としては同じなわけです。いろんな満足の人間が世界で生きていて、皆違う環境で生きていながら、一つだけ共通点があって、それは誰もが一回の一生しか生きられないということです。本当にかけがえのない一生というか、それはどんな民族のどんな人間にとっても同じことなわけですよね。そういうふうに人の暮らしを見ていくと、いろんな問題がありながらも、誰もがいちばんいい形で一生を送りたいという思いを持っていて、その部分は一緒だと思うんです。
    そういうふうに考えたときに、他の人がどんなふうに暮らしていて、どういう価値観を持って何を大切にしているかということ、つまり他人の生き方が気になる。他人の生き方が気になるという言い方は悪い意味に取られがちですが、僕はそれを知ることですごくホッとするんですね。


  • 大切に、少しずつ、少しずつ読ませて頂きました。
    アラスカに魅了されて自然と動物、人々の暮らしを撮り続けた故・星野道夫さんの各地での講演内容を綴った作品。
    テーマごとに焦点を変えて語られるアラスカでの暮らし。
    間隔をあけて読むことで、じわりじわりと星野さんの心動かされた体験や想いが言葉に乗って、静かに、力強く、心に響いてきます。

    著書「旅をする木」でも感じましたが、文字を追っているうちに、まるで目の前にアラスカの大自然が広がっているような錯覚に陥ってしまいます。
    きっと想像もつかないスケールの大自然。
    それを、初めて肌で感じたときの興奮やなんかが伝わってくる。
    白夜、オーロラ、カリブーの季節移動、ユーコン川の解氷、ツンドラの紅葉、エスキモーの暮らし。
    素敵な疑似体験。眠る前の贅沢なひとときを過ごしました。
    いつか私も壮大な大自然を肌で感じてみたい。
    読みながら厳かな気持ちになりました。


    『たとえ実際にそれを見ることができなくても、自分の意識、想像力の上での豊かさのようなものをもたらしてくれる。
    そういう意味で、遠い自然というのは近い自然と同じくらい人間にとって大切なのだと思います』

  • 寝る前に1章ずつ読んだ。同じことが繰り返し書いてあることが、逆に心地よく感じる。そして、その中でたまに新しいエピソードに出くわすと嬉しい

    2019.2.26

  • もっと読みたかったし、聴きたかった

  • アラスカに魅せられた写真家・星野道夫の講演集。アラスカに生きることを決意した、彼の半生の記録です。極北の大地の壮大さ、カリブーの移動、クマの生態、そこに生きる人々の信仰と生活。遠い世界の話でありながら、どこか懐かしい。人間も、大自然の一部に溶け込む生物の1つなのだと思い出させてくれるお話ばかりです。池澤夏樹さんが解説で「この本は急いで読んではいけない」と書いているけど、本当にその通り。古老の昔話を聞くように、繰り返し繰り返し、心に刷り込ませるように、耳を傾けたい一冊です。
    満天の星空のもと、果てない雪原に一人で立っているような、心地よい孤独感を味わわせてくれる作品です。

  • アラスカを撮影した写真家の10回の講演録

    8月下旬から紅葉とオーロラを観にアラスカに行ってみたくなる。
    今年も、現地で生活されている方々は春の訪れの賭けだったりクジラ漁だったり夏至の野球だったりされているのだろうなという想像をするのも楽しい。

    同じ話が繰り返される部分もあるが、それって実は良いかもという気になる。微妙な違いもあったり、新しい話が付け加えたりと、講演録ならでは。

  • 星野道夫さんの本が好き。
    もちろん会ったことなんてないけど、文章からも素朴で温かい人柄が滲み出ている気がする。
    星野さんが綴るアラスカの様子は心を穏やかにしてくれる。そこに暮らす人や動物が愛おしくなる。
    この本は複数の講演会等でのお話をまとめた本なので、似たような話がいっぱい載ってる本という印象でした…

  • 東京であくせく働いているこの瞬間にも、アラスカではザトウクジラが空中を跳んでいるかもしれない。色々なものに同じ時間が流れているのだと感じること。それ自体が豊かなことではないか、と星野道夫は言う。

    この感覚はよくわかる。自由になれる感じがする。ゆっくり読みたい一冊。

  • どこか消費的・機械的に感想を書いてきたことに気づかされ、それを続けることを躊躇わせてくれた一冊。
    故・星野道夫さんの、いわば講演録なのだけれど(解説にある通り、重複している内容も多い。べつの場所・べつの人びとに向けて語られているから)、読んでいて、人間は苦手だけれど星野道夫さんにはお会いして、その声をじかに聴いてみたかったと思う。たぶん、物語というものをつくっていながら、自分でその底流と受け止めているはずの「生きている理由」をないがしろにしていることに、気づいた上で、文字だけでは追いきれないその先に進めたろう。とても悲しい。
    わたしたちが触れることのできる自然も、間に合わず「死んだ記憶」になりつつある自然も、わたしたちの所有物では決してない。むしろわたしたちを生かしている根源なのだ。……そう、もっと強く感じられたらと思う。

  • 星野道夫がアラスカへの思いを語った講演集。

    なぜアラスカなのか、アラスカの四季、
    アラスカの自然、アラスカの人々の暮らし。

    生前彼が講演で語ってきたものが集められています。

    重なり合うところも多いので前の章のことを忘れた頃に
    次の章を読むとよいかも。

  • 295/ホ/

  • 以前、星野道夫の本の感想を書いた時に、読書メーターの利用者の方から紹介いただいた本。
    いくつもの講演原稿を収録したものなので、何度も繰り返されるエピソードがいくつもある。
    最初は、自分が間違えて同じところを何度も読んでしまったかと思ったほど。

    小説ならそんなことはあり得ない。
    けれどもこれは、星野道夫が何をどう見て、どう感じて生きているかを語る講演会の原稿なのだ。
    繰り返されるということは、それだけ彼の心に強い印象を与えたエピソードだということだ。

    例えば熊との距離感。
    野生の熊は怖くないと、彼は言う。
    なぜなら熊は人を怖れているから。
    しかし、人との距離感が狂ってしまった熊は恐ろしい、とも言う。
    人と近くにありすぎる熊は、人を怖れないから怖い、と。
    今の日本でも、人が熊のいるエリアに近づきすぎたために、熊が住宅地にやってくるなんてことになっている。
    鮭、山菜、木の実など、人間と熊が共通して好む食料を、奪い合うことになってしまっている。

    「生物の多様性」と「人の生き方の多様性」この二つが大事とも。
    多様性を認めるというのは、自分とは違うもの、目の前にいない存在をも認めることなんだろうと思う。
    来年のために、次に来る人のために、全部を取り尽くさない。
    多様性はそうやって担保されてきたのではないだろうか。
    現在は自分のためにすべてを取り尽くして

    日本では絶滅した狼も、アラスカでは生存できる。
    人間と共存しているわけではない。
    大きく距離を取っているから、狼を絶滅させずにすんでいるだけだけど。

    自分が見えていないところでも自然は存在し続けている。
    それを感じることが大切なのだ、と何度も繰り返し語られている。

  • 19歳のときに目にしたエスキモーの村の空撮写真に惹かれ、村長宛に手紙を書く。20歳の夏休みにアラスカに約3カ月滞在。帰国後、写真家になる決意をした星野道夫はその後、アラスカの厳しい自然の中で生きる動物達の生命力、はかなさ、愛らしい姿を撮り続けた。素朴で温かいエッセイからは人が動物と共存する暮らしぶりや命の尊さが伝わってくる。彼は壮烈な状況で早逝してしまったけれど、凡人の私からみると、何十倍もの濃密な人生を送ったのだ。目を輝かせて称賛する有吉さんの言葉を聞くとき、本や 写真集は残された人たちへの贈り物だなとしみじみ思う。「彼の声の響きを正しく耳に蘇らせるには、ちょっと工夫がいる。まず、ゆっくり読むこと。次に、一度にたくさん読んではいけない。彼は本当に大事なことしか言わなかった。そして本当に大事なことは何度でも言った」という池澤夏樹の解説も紹介してくださいました。
    (Recommended by Yoshiko Ariyoshi)

  • 星野道夫(1952~96年)氏は、千葉県市川市生まれ、慶大経済学部卒の写真家、エッセイスト。
    星野氏は、19歳のときにアラスカの写真集を見て夢中になり、その写真集に載っていたシシュマレフというエスキモーの小さな村の村長に手紙を書いて訪問し、ホームステイでひと夏を過ごしたことをきっかけに、1978年にアラスカに移り住み、その後、アラスカの魅力的な写真を撮り続けた。1996年に、TBSテレビ番組の取材のために滞在していたカムチャッカ半島でヒグマに襲われて死去(享年43歳)した。
    本書は、著者が1987~96年に日本の各地で行った講演10回分(東京都大田区立田園調布中学校の卒業記念講演、千葉県市川市動植物園での講演、北海道上川郡清水町で開いた写真展での講演、立教大学学生部セミナーでの講演、第4回国際イルカクジラ会議江の島フォーラムでの講演、等)をまとめて、2003年に出版、2010年に文庫化されたもの。
    講演で語られるのは、著者がなぜアラスカに惹かれ、移住まですることになったのか、オーロラ、白夜ほか、劇的に移ろうアラスカの四季と大自然、カリブー、グリズリー、クジラ、ベリー類などの野生の動植物、そこに住むエスキモーやインディアンの営みなどであるが、講演は聞き手が毎回異なるため、通読すれば(当然ながら)同じエピソードが何度も出てくる。池澤夏樹は解説で、それに関して「一つずつを時間をかけて、例えば一週間の間をおくような具合に、一回ごとの講演が心に定着するのを待って次に行くように、読むのがいい。そうすればエピソードの反復はむしろ心地よいものになる。近代人として効率を求めてはいけない。なんといってもこれは効率がすべてを損なってしまう前の社会の知恵を書いた本なのだから。」と書いている。
    数々のエピソードは、日本の大都市に住む私にはとても刺激的かつ印象的なのだが、著者がなぜアラスカに惹かれたのかの理由の一つとして、雄大な自然の中にも、人が暮らしているからだ(そこが南極大陸とは違う)といい、次のように語っている部分は特に心に残った。「育った環境は全然違うんだけれども、一回の一生としては同じなわけです。いろんな民族のいろんな人間が世界で生きていて、皆違う環境で生きていながら、一つだけ共通点があって、それは誰もが一回の一生しか生きられないということです。」 そして、私も、飛行機に乗るたびに、眼下を見下ろして、広大無辺の森林や荒野の中(ヨーロッパ線で見るシベリアなどはその典型)に人の営みの気配を見つけるのが好きで、最近では、Googleマップを使って同じようなことをするのだが、それが、著者と似たような思いによるものであることに気付いた。
    著者が亡くなってから四半世紀が経ち、我々の生活は大きく変わった。そして、アラスカのエスキモーやインディアンの生活は、同様に大きく変わった部分(通信手段など?)もあれば、変わらない部分(動物たちを狩り、ベリーなどを集めることは変わっていないのではないだろうか)もあるのだろう。しかし、野生の動植物や自然は大きく変わることなく(気候変動の影響は受けているのかも知れないが)存在し続けているはずだ。
    我々が忙しなく過ごしている今も、全く異なる時間軸で移ろう世界(自然)があるということを教えてくれる、心の清涼剤になるような一冊と言えるだろう。(挿入されている十数枚のカラー写真も実に美しい)
    (2023年1月了)

  • 大好きな本

  • 素敵なエピソードとスッと入ってくる話し言葉。ただし同じエピソードの繰り返しが何度かあります

  • 大切すぎて教えたくない、自分だけの場所がある。
    それが本ならば共有して、同じ場所にそれぞれがひとりで訪れ、
    一人の時間を過ごすことも出来る。
    本当にお気に入りで、何回も読み返す星野さんの文章が、私にとっては
    そんな場所のひとつだ。
    星野さんの凄いところは、写真家でありながら、文章もとても本質を捉えて
    シンプルに心の奥にそっと置いてくれるようなさりげなさと分かりやすさと
    優しさが含まれたものであるところだ。
    もちろん、その写真は言わずもがな………素晴らしい。

    大切なあの人に初めて送った本も星野さんのものだった。
    彼はあの本をまだ覚えてくれているだろうか。
    そんな思い出も含めて、とても大切な一冊。

  • 星野道夫さんの講演をまとめた一冊です。
    この本を読むと、星野道夫さんは偉大な写真家でもあり、稀代の文筆家でもあり、ストーリーテラーであったことが伝わってきます。

    池澤夏樹さんが「大事なことしか言わなかった。そして本当に大事なことは何度でも言った」と表現していますが、まさにこの本には大切なことが繰り返し書かれています。

    講演をまとめた一冊ということで、星野さんの息遣いや語りを感じられる本です。

  • 北海道の自然をスタートに、星野さんがアラスカ移住に繋がっていたとは、、、北海道に住んでいる者として、改めて身近な自然を意識して大切に思うきっかけになりました。広い広い視野を与えてくださる一冊です!

  •  アラスカに魅せられ、逝った星野氏という人の本。講演録であるため、同じ内容が繰り返し収録されている。解説者はゆっくり時間をかけて読めと説くが、むしろ何度も繰り返し読むのが良い。確かにすんなりと通読できてしまうので、その言葉の奥の凄い深みと世界に想いを馳せるのが難しい場合はある。が、繰り返し読むことでそれが少しずつ見える、感じられるようになるような気がする。

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著者プロフィール

星野 道夫(ほしの・みちお):1952年千葉県生まれ。写真家。19歳の時に、古書店で出合った一冊の写真集をきっかけにアラスカに強く惹かれるようになる。慶應義塾大学経済学部卒業後、アラスカ大学野生動物管理学部に入学。以降、極北の自然とそこに生きる野生動物や人々の暮らしを写真と文章で記録し発表。1996年、カムチャツカ半島で取材中ヒグマに襲われ急逝。1986年アニマ賞、1990年木村伊兵衛写真賞受賞。写真集に『Alaska 風のような物語』『アークティック・オデッセイ』『悠久の時を旅する』、エッセイ集に『アラスカ光と風』『旅をする木』、写真絵本に『ナヌークの贈りもの』『森へ』などがある。

「2025年 『ゴンべの森へ アフリカ旅日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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