魔法のことば 自然と旅を語る (文春文庫)

  • 文藝春秋
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  • 本 ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167515041

感想・レビュー・書評

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  • 同じことでも、繰り返し繰り返し語り続ける。その語り口は優しい。
    星野道夫さんの自然に対する眼差し、人間に対する眼差しはとても優しいものだと思う。それがこの講演集から感じられた。『旅をする木』を読んでからこの本を読むと一層理解が深まると思う。

    【印象に残った部分】
    ・本当に長く仕事を続けるのに思いつきや小手先のテクニックでは通じないと考えていて、そこで支えになるのは自分がやりたいと思える対象への興味、それがどのくらいあるかということだったんです。
    ・育った環境は全然違うんだけれども、一回の一生としては同じなわけです。いろんな満足の人間が世界で生きていて、皆違う環境で生きていながら、一つだけ共通点があって、それは誰もが一回の一生しか生きられないということです。本当にかけがえのない一生というか、それはどんな民族のどんな人間にとっても同じことなわけですよね。そういうふうに人の暮らしを見ていくと、いろんな問題がありながらも、誰もがいちばんいい形で一生を送りたいという思いを持っていて、その部分は一緒だと思うんです。
    そういうふうに考えたときに、他の人がどんなふうに暮らしていて、どういう価値観を持って何を大切にしているかということ、つまり他人の生き方が気になる。他人の生き方が気になるという言い方は悪い意味に取られがちですが、僕はそれを知ることですごくホッとするんですね。


  • 大切に、少しずつ、少しずつ読ませて頂きました。
    アラスカに魅了されて自然と動物、人々の暮らしを撮り続けた故・星野道夫さんの各地での講演内容を綴った作品。
    テーマごとに焦点を変えて語られるアラスカでの暮らし。
    間隔をあけて読むことで、じわりじわりと星野さんの心動かされた体験や想いが言葉に乗って、静かに、力強く、心に響いてきます。

    著書「旅をする木」でも感じましたが、文字を追っているうちに、まるで目の前にアラスカの大自然が広がっているような錯覚に陥ってしまいます。
    きっと想像もつかないスケールの大自然。
    それを、初めて肌で感じたときの興奮やなんかが伝わってくる。
    白夜、オーロラ、カリブーの季節移動、ユーコン川の解氷、ツンドラの紅葉、エスキモーの暮らし。
    素敵な疑似体験。眠る前の贅沢なひとときを過ごしました。
    いつか私も壮大な大自然を肌で感じてみたい。
    読みながら厳かな気持ちになりました。


    『たとえ実際にそれを見ることができなくても、自分の意識、想像力の上での豊かさのようなものをもたらしてくれる。
    そういう意味で、遠い自然というのは近い自然と同じくらい人間にとって大切なのだと思います』

  • 寝る前に1章ずつ読んだ。同じことが繰り返し書いてあることが、逆に心地よく感じる。そして、その中でたまに新しいエピソードに出くわすと嬉しい

    2019.2.26

  • アラスカに魅せられた写真家・星野道夫の講演集。アラスカに生きることを決意した、彼の半生の記録です。極北の大地の壮大さ、カリブーの移動、クマの生態、そこに生きる人々の信仰と生活。遠い世界の話でありながら、どこか懐かしい。人間も、大自然の一部に溶け込む生物の1つなのだと思い出させてくれるお話ばかりです。池澤夏樹さんが解説で「この本は急いで読んではいけない」と書いているけど、本当にその通り。古老の昔話を聞くように、繰り返し繰り返し、心に刷り込ませるように、耳を傾けたい一冊です。
    満天の星空のもと、果てない雪原に一人で立っているような、心地よい孤独感を味わわせてくれる作品です。

  • アラスカを撮影した写真家の10回の講演録

    8月下旬から紅葉とオーロラを観にアラスカに行ってみたくなる。
    今年も、現地で生活されている方々は春の訪れの賭けだったりクジラ漁だったり夏至の野球だったりされているのだろうなという想像をするのも楽しい。

    同じ話が繰り返される部分もあるが、それって実は良いかもという気になる。微妙な違いもあったり、新しい話が付け加えたりと、講演録ならでは。

  • 星野道夫さんの本が好き。
    もちろん会ったことなんてないけど、文章からも素朴で温かい人柄が滲み出ている気がする。
    星野さんが綴るアラスカの様子は心を穏やかにしてくれる。そこに暮らす人や動物が愛おしくなる。
    この本は複数の講演会等でのお話をまとめた本なので、似たような話がいっぱい載ってる本という印象でした…

  • 東京であくせく働いているこの瞬間にも、アラスカではザトウクジラが空中を跳んでいるかもしれない。色々なものに同じ時間が流れているのだと感じること。それ自体が豊かなことではないか、と星野道夫は言う。

    この感覚はよくわかる。自由になれる感じがする。ゆっくり読みたい一冊。

  • どこか消費的・機械的に感想を書いてきたことに気づかされ、それを続けることを躊躇わせてくれた一冊。
    故・星野道夫さんの、いわば講演録なのだけれど(解説にある通り、重複している内容も多い。べつの場所・べつの人びとに向けて語られているから)、読んでいて、人間は苦手だけれど星野道夫さんにはお会いして、その声をじかに聴いてみたかったと思う。たぶん、物語というものをつくっていながら、自分でその底流と受け止めているはずの「生きている理由」をないがしろにしていることに、気づいた上で、文字だけでは追いきれないその先に進めたろう。とても悲しい。
    わたしたちが触れることのできる自然も、間に合わず「死んだ記憶」になりつつある自然も、わたしたちの所有物では決してない。むしろわたしたちを生かしている根源なのだ。……そう、もっと強く感じられたらと思う。

  • 星野道夫がアラスカへの思いを語った講演集。

    なぜアラスカなのか、アラスカの四季、
    アラスカの自然、アラスカの人々の暮らし。

    生前彼が講演で語ってきたものが集められています。

    重なり合うところも多いので前の章のことを忘れた頃に
    次の章を読むとよいかも。

  • 295/ホ/

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著者プロフィール

写真家・探検家

「2021年 『星野道夫 約束の川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

星野道夫の作品

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