将軍の娘〈下〉 (文春文庫)

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感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167527303

感想・レビュー・書評

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  • (上巻の感想からの続き)
    レイプ事件然り、またこの事件のシチュエーションを起こさせた前段の事件の内容然り、確固として存在する軍の縦割り社会の壁然り、扱う題材はかなりハードで陰鬱なのだが、デミルの筆は相変わらず洒脱で軽妙ささえ感じる。
    しかし、こういうシリアスシーンでの心理的駆け引きの薄氷を踏むような危うさでの緊張感はかっちり押さえており、読者の心をジェットコースターのように上へ下へ引き摺りまわし、その手はページを繰るのも止められない。今日本当は読み終わる予定ではなかったのだが、やはり最後が気になり、読んでしまった。デミルマジックにまんまと引っかかったのだ。

    『誓約』、『チャーム・スクール』同様、最後は真犯人の自殺で幕を閉じる、つまり軍のスキャンダルは前2作同様公には公表されずに闇のまま葬られるのだ。
    これがデミルが最後に米軍に対して行う慈悲なのか、それとも彼自身、軍を最後まで貶めることが出来ない制約を課しているのか、もしくは呪縛があるのかは判らないが、これが不服である。
    だから5ツ星ではなく4ツ星なのだが、もしかすると今後続くデミルの軍隊を扱った作品というのは同じような結末を迎えるのかもしれない。この是非はまた以降に持越ししておこう。

    しかしこれほどの人物を登場させ、その全てに区別がついたというのはすさまじい。デミルの今まで読んだ作品で人物が混同したことがない。
    今、私は極上の作家に出逢っている、そんな感慨が沸沸と湧き上がってくるのである。

  • 米軍基地内のなかなかのスキャンダルで破廉恥な展開で上巻は読むのがバカらしくなってしまうような内容だった。
    が、下巻に入ってから展開が変わってくる。

    重い事実も主人公の軽口に救われる。
    銃撃戦や格闘シーンがないのにスリリングで、もの凄いスピード感で話は進んでいく。

    いい男といい女が犯人を追いつめていく結末は落ち着くところで落ち着くのだが、そこまでの書きっぷりで見事!

  • 有名な作品ですが、こういう結末とは思いませんでした。

    うーん。なんか、凄い。

    この作品、映画化されているのですが、映画も見てみたくなりました。

    Amazonプライムでやって無いかなぁ・・・

  • ポール・ブレナー・シリーズ第一弾。ジョン・トラボルタで映画化されたね。

  • 分厚い本てのはやっぱり読むのがしんどいなぁとなる時があって、しかもそれがやたらと細かい描写ばかりで、そんな話は本筋には関係ないやんけ!と詫び寂も理解せずに文句を言いたくなる時もあったりだけど、ちょいちょいブラックというかアメリカンというか、なんかユーモアのあるところが挟まれてると、けっこういけてしまうんだな、これが。
    そんなこんなで文字数もなかなかのもんだけども、すいすいと読んでしまった。こんな風にハードボイルドあり、可愛い彼女が近くにいて、仕事も楽しんで、ってこうやって書くとなんだかなーって感じだけど、こんな風に楽しんで働けたら良いよねぇ。まぁでもこの文字数で3日くらいしか経ってないってんだからスラムダンクばりに濃厚な仕事なんだよなぁ。やっぱきつそうだわ。

  • 巧い作家だ。プロフェッショナルと呼ばれるためには、ネルソン・デミル並みの力量を持たねばならないのだろう。米国陸軍基地内で将軍の娘が殺された事件を巡るメインプロットはストレートなミステリなのだが、舞台背景も含めてテーマの掘り下げが広く深い。読み終えて心に残るのは、軍隊という異常な状況下で捩れていく人間の脆弱さであり、卑しい業がもたらす無残な奈落の有り様である。軍人という虚飾を剝がせば、権力欲と色情をまとった生々しいまでの本能が現れ、一旦亀裂が入れば一瞬で崩壊する危険極まりない体質であることを、元軍人であるデミルは自らの経験を元に容赦なく白日の下に曝すのである。

    飾らない文章は的確に情景を描写し、個性豊かな登場人物たちをきっちりと読者に印象付けていく。端役であろうとも手を抜かず、シーン毎に不可欠な役割を与えている。細部まで緻密に張られた伏線が、最終的には大きなうねりを経て一本へとまとまり、物語全体を揺り動かす。後半からクライマックスまで、徐々に高まっていくサスペンスは見事という他ない。
    事件の捜査にあたるのは陸軍犯罪捜査部(CID)捜査官ブレナーで、卓越した洞察力で軍部の権力者に切り込んでいくさまは爽快感に満ちる。コンビを組むのは束の間不倫関係にあった捜査官サラ。この二人の絶妙なやりとりも読みどころのひとつなのだが、再会後は互いに惹かれながらも素直になれない大人の恋愛模様を展開していく。主題である将軍の娘の歪んだ愛憎とは対称的に描かれており、挿話としてストーリーに彩りを添えている。

    冷徹で皮肉屋、仕事では徹底した玄人ぶりを発揮する主人公は、デミル作品に共通するヒーロー像のようだ。本作では派手な活劇こそないものの誇り高い男の行動を活写し、ハードボイルドのテイストさえも感じさせる。現代エンターテイメント小説界において最高峰の書き手であるネルソン・デミルの魅力を存分に楽しめる一冊だ。

  • 犯人の目処がついてから、結末までがちょっと長いような気がするけど、まぁ、一気に読ませます。

  • デミルの最高傑作のひとつ ポール・ブレナー・シリーズ

  • 複雑なピースの状況証拠を積み上げ真犯人を追いつめていく手法はいかにもデミルらしい。捜査の主権がFBIに移管するという時間的リミット直前までもつれるが、最後は、心のひだを一枚一枚白日に晒すように追い詰めていく。ともすればメンドくさい手法で読み方もじれったく、やや論理性より情緒性に重きを置かれる傾向にあるが、本作品では巧なキャラクター設定も奏功して成功している。

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