心の砕ける音 (文春文庫 ク-6-11)

  • 文藝春秋 (2001年9月4日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784167527846

みんなの感想まとめ

運命の残酷さと人間の心の葛藤を描いた物語が展開されます。1930年代後半のアメリカ東部、兄弟のキャルとビリーは、美しい女性ドーラに心を奪われますが、彼女の突然の出現と消失が彼らの運命を大きく変えてしま...

感想・レビュー・書評

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  • 第二次世界大戦が始まる前、1930年代後半のアメリカ東部のメイン州が舞台。キャルとビリーのチェイス兄弟は、メイン州のポート・アルマという小さな町で生まれ育った仲の良い兄弟だ。その町に、ドーラ・マーチという若い美しい、謎に満ちた雰囲気の女性がバスに乗りやって来る。弟のビリーは、彼女に恋をし、そして、兄のキャルも自分が彼女に恋をしていることに気がつく。しかし、ドーラは突然町を去り、後には弟のビリーの死体が残されていた。兄のキャルは、ビリーの死の原因を知るために、ドーラの跡を追う。そして、ドーラの出生地で、真相を知ることになる。
    他のクックの物語と同じく、美しい文章と、そして、おそらく悲劇が起こるのだろうと予想させる文体とストーリー。そして、悲劇はやはり起こり、残された兄のキャルのドーラを追う孤独な旅が始まる。
    いつものように、最後まで、ほとんど一気に読んだ。自分にとっては、とても面白い小説だった。解説にも書かれているが、クックのいつもの話と異なるのは、最後に、兄のキャルが、この悲劇を乗り越えて、おだやかに、幸せに生まれ故郷で暮らす将来が暗示されていること、ハッピー・エンドとまでは言えないが、エンディングがおだやかなことである。

  •  弟の殺人事件の真相を追う兄の姿を回想と交えて描くミステリー。

     回想を交えながらゆっくりと主人公の心の機微を美しい表現で描いていくクック作品らしい小説だったと思います。

     ミステリとしてもひねりが効いているというか、思わぬ真相があり、そしてそうしたサプライズを娯楽として提供するのではなく、
    あくまで事件のもの悲しさを描くためのものだというのがクックのミステリの美しさなのかな、と思います。

     展開や文章は少しまどろっこしく感じるところもありましたが、ところどころの表現がまた文学的で美しくラストの穏やかさも印象的でした。

    2002年版このミステリーがすごい! 海外部門5位

  • 運命の残酷さを描かせたらトマス・H・クックに勝る人はいないだろう。そのくらい残酷さ、それもどうしようもない運命、まるで蜘蛛の巣にどんどんからまっていく無情さが読者を導いていく結末の悲しさといったら凄いことこの上ない。
    人間は最終的に決着をつけるために「しょうがない」と言って諦めることがある。その時の哀しさを思い出させる。

    本書では1人の女と全く正反対な気質の兄弟の、3人の運命の歯車が、1つの事件(正確には2つ)によって翻弄される。
    結末へと進むうちにどんどんやり切れない気持ちになっていった。
    がんばっても立ち向かっていけない不条理さ。本書でも暗くなれること間違いなし(笑)。
    時々、神様というモノが存在し、地上の人間を弄んでいるんじゃないか?って本当に思うことがある。
    クックの作品を読んでいると、クック自体に興味がどんどん湧いてきます。この人には何があったんだろう?って。

    新作がでるたびに読まなくては!と思ってしまう作家です。暗く嫌~~な気分になるのはわかっていても、やめられない!
    それは作品の中に流れる美しく哀しい雰囲気にのみこまれるからだろうな~きっと。堪能しました。

  • 弟の死を巡って、兄が探偵役で真相を探る物語。
    だんだんと謎が解けていくように話が進むので、最初は何を書いてあるのか、分からなくて、意味のない文章を読まされているようで、ちょっとイライラする。
    真相が近づくとどんでん返しがある。
    あっ、そっちですか〜。と。

    途中新聞記事で出てきた、船で逃げた殺人者の話は何に関係していたのか、分からなかった。

  • クックらしい、悔恨の念とか、どうしようもない悲しみだとか、暗い気持ちになるようなストーリーは相変わらずなんだけど、まさか、こんなどんでん返しの結末が待っていようとは。
    しかも、2重3重の。

    そのどんでん返しにしても、結末はやっぱりクックらしい、悲しみに満ち溢れている。

    時々、フラッシュバックのように現れる過去の場面、言葉。
    もちろん、それがどんでん返しへの伏線にもなっているんだけど、それがミステリーとしての楽しみというか、どういうことなんだろう? という、真相を知りたいという気持ちに駆られる。

    さすが、クックはうまいね。

    ラストは少し、ほんの少しだけ、救われる。

  • ミステリーでありながら、主人公キャルと不慮の死を遂げたその弟ビリー、そして失踪した弟の恋人ドーラを中心として彼らの心の中の淋しさ、悲しさに迫っていきます。弟の死の謎について最終段階で明らかになるのですが、ミステリーとしてはその謎解きよりも、彼らの心の孤独が強烈な印象です。そして謎が判明した後の歩みに救いがあったことが何よりこの小説を素晴らしいものにしていると思います。むしろ純文学といっても良い重みでした。
    全編にあまりにも美しく通奏低音のような悲しさが支配しているだけに。「心の砕ける音」というタイトルそのものがそれを象徴しています。時系列が度々錯綜しますが、全くわかりづらくなく、自然に読めるのも不思議な本です。

  • 用意されていたラストはそこまで驚くものではなかったが、端々にあふれる叙情的な悲哀はさすが。自分が求めていたクックの文章は堪能できた。

  • クックのミステリー小説は以前「緋色の記憶」を読んだ時もそうですが、過去 と現在が交錯して書かれているので自分が主人公になり代わったような感覚が 得られます。
    今回は兄と弟がひとりの謎の女性を巡って悲劇的な結末に至るストーリーを 辿ります。冒頭で出てくるシーンがこの兄弟の関係とその両親との後々の関係 までを象徴することになります。 兄弟の相反する性格と価値観と各々の両親から受け継いだ役割が成長した二人の生き方に現われながら、思ってもみなかった愛憎に翻弄される兄と弟の心境は人間の悲しさを醸し出します。 謎の女性ド―ラの正体は予想もしなかった人物だったのですが、真相を知り、この一家の行く末を見守った兄の穏やかな心境が救いになっています。

  • 著者の代表作、記憶4部作並のへヴィネス。が、読後感は4部作ほど悪くはない。
    しかし、そもそも従来のクック作品も世間で云われているほど救いのない話ではないのだが。

  • クックはどっぷりハマれる作品が多いので、余計なことを考えたくないときにオススメ。

  • 初めて読んだらきっと驚くだろうが、この人のプロットだいたい似たような感じだから一冊読めばいいかぁという感じ。

    「夜の記憶」のほうをおすすめする。


    ただ今回それぞれの人物の心の機微がトリックと相俟ってミステリらしからぬ人間臭さが出ていたのが記憶シリーズとは違うところかな。


    わたしは記憶シリーズのほうが好きだけど

  • メイン州のポート・アルマ 小さな町
     メイン州は東海岸最北端の州で、隣はもうカナダ

    主人公キャルヴィン(キャル)・チェイス

     キャルの父親は町で唯一の新聞社を経営していたのですが、今では経営をキャルの弟ビリーに任せています。一方、キャルは検事の下で働いています。両親は二人の子供が独立したあとに離婚しています。

     ある日、一人の女が町に来た。女はドーラ・マーチと名乗り、ビリーが社長をしている新聞に「職求む。当方独身女性。職種不問」という広告を出し、住み着く

     最初に彼女を雇ったのは1人暮らしの町長をしていた財産家。その老人に気に入られたドーラでしたが、老人は病気で死んでしまいます。財産を彼女に遺すという遺言があったにも関わらず、彼女は欲しくありませんと拒否し、今度はビリーの新聞社で働く
    謎の多い彼女にビリーが恋をする。キャルは帳簿を任せたり、色々な仕事を彼女に任せるようになったビリーを心配して、彼女のことを調べる
       
     こうしてキャルのドーラの過去探しが始まります。まず、最初の一手はドーラがビリーに話した唯一の過去の軌跡を辿ることでした。彼女はニューヨークにいたことがあると住所を教えていたのです。この町からニューヨークへ囚人を受け取りに行く男にこっそりと、その住所に行ってみてくれないかとキャルは頼みます。

     その男がニューヨークから持ち帰ったものは山の中で発見された野生の少女の記事でした実話雑誌。治療した医師団は、自分の名前も分からない少女にドーラ・マーチという名前をつけたという記事。ポート・アルマにいるドーラ・マーチには別の名前があるそれを知らせずまま
    ビリーが何者かに殺されてしまい、状況からみて犯人はドーラいない  
     キャルは検事局を辞めてドーラ探しを始める

     彼女の捜索を始めたキャルが最初に見つけたものは彼女の部屋に残されていたカリフォルニア州カーメル、ロレンゾ・クレイ蔵書」の詩集

     西海岸に辿り着いたキャルは、ドーラが残していった本の蔵書印にあった名前を頼りに私立探偵のように執拗にドーラを捜し求めて歩き、最後には見つけ出します。捜索の過程で、ドーラの本名も過去も分かったのですが、あとは彼女が殺したかどうかを聞く為にドーラに会います。

     ドーラの話を聞いたキャルは彼女が犯人でないことを知ります。犯人は別にいたのです。殺したのでなければ何故逃げたのだとドーラを問い詰めます。

      『「何があったんだい、ドーラ?」
       「どんな解決策も思いつけなかったのよ、キャル。ただそれだ
        けのことだった。わたしはだれも傷つけたくなかった。あなた
        も、ウィリアムも。あなたたちのどちらかと一緒になることは出
        来なかった。だから、逃げ出すしかなかったのよ」』

     このあと、ドーラと別れて町に帰ったキャルはビリーのあとを引き継いで新聞社の経営を引き受けます。家族全員を失い、愛するドーラを連れ帰ることは出来なかったのですが、未来の見える解決にしています。

  •  性格の全く違う兄弟とミステリアスな女性を巡るミステリー。ってもトリックをとくもんじゃない。心という深淵を目を凝らして覗くような、そんな話だ。過去と現在が交錯する構成、クックの得意の手法だが相変わらず上手い。てか、ますます上手くなった気がする。前の、○○の記憶シリーズは、人の心の暗さや喪失をクールに書いていたが、これはそういったクールさが押さえられている。うむ、微妙に作風変えたのかな。
     ともあれ、クックは面白いっす。多分、今年の「このミス」にも出てくるんだろうな。

  • 2009.05.18 読了

  • 海外の翻訳ものに付きまとう感はぬぐい切れず、ただそれはそれで面白く。まるで引用されたがっているかの様な形容が多いという印象。

  •  今月読んだクックの3冊の中では一番良かった。というより、これまで読んだクックの本の中では、唯一希望が残る話だった。いつものようにサプライズも用意されていた。

  • 淡々としてて、でも後味悪い

  • [05.10.27]<t市

  • トーマス・H・クックの作品はほとんど読んだが、「緋色の記憶」とこれはBEST。WOWOWでドラマ化された。

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著者プロフィール

1946年、東京生まれ。訳書に、シャルル・ペロー『眠れる森の美女――シャルル・ペロー童話集』(2016)、ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下巻、2012)(以上、新潮文庫)、イアン・マキューアン『未成年』(2015)、ジョン・バンヴィル『いにしえの光』(2013)、マイケル・オンダーチェ『ディビザデロ通り』(2009)(以上、新潮クレスト・ブックス)、トマス・H. クック『サンドリーヌ裁判』(早川書房、2015)、ジョン・バージャー/ジャン・モア『果報者ササル――ある田舎医者の物語』(みすず書房、2016)ほか多数。

「2016年 『果報者ササル ある田舎医者の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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