陰陽師 天鼓ノ巻 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2012年7月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167528249

みんなの感想まとめ

物語は、陰陽師とその仲間たちの日常を描きながら、深い人間ドラマや感情の交流を巧みに織り交ぜています。特に、博雅との軽妙なやりとりは、シリーズの魅力の一つとなっており、読者を引き込む要素となっています。...

感想・レビュー・書評

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  • 短編シリーズ8冊目。

    「瓶博士」
    橘忠季の屋敷で、怪我人などが相次ぎ、忠季自身も病で寝込んでしまった。そこへ忘歓という男が現れ、不幸の原因を取り除いてくれると言う。忘歓は大きな瓶を鬼門の方角に埋め、しばらくしてからそれを取り出す、ということを定期的に繰り返す。忠季の病も癒え、すっかり良くなるが、そうすると好奇心を抑えられなくなり、忠季は中を見てはいけないと言われた瓶の中身を見てしまう。中には赤ん坊が入っていた。恐ろしくなりそのまま埋め戻すが、ふたたび不幸が相次いで忠季も寝込んでしまい…。

    話を持ち込まれた晴明が例によって博雅と一緒に出掛け、実は瓶の中の赤ん坊を、最近赤子を亡くした男が盗み出したことが判明。その家を訪問すると、家から巨大な赤ん坊の手足がはみだしており…。忘歓も現れ、赤ん坊の尻尾を捕まえて瓶の中に戻す。実はこの赤ん坊、人間ではなく山海経にも出て来る「泰逢」という神獣で、悪い気を食べてくれるものだった。

    それはさておき晴明と博雅のいちゃいちゃが相変わらず(笑)「おれには、もうひとつ、生きていくのに必要なものがある」「何だ!?」「おまえさ、博雅」…って、もう四六時中こんなやりとりしてるんだもの、ごちそうさまです(笑)


    「器」
    橘諸忠がある日帰宅すると門の前に呆けたような女性が一人で突っ立っている。不憫に思い連れ帰るとなかなか美しい女だったが、記憶がなく、目も見えていないことが判明。諸忠は彼女を出家させ春陽尼と名付けて世話をしてやり、時折琵琶の演奏を頼んでいた蝉丸法師に、彼女に琵琶を教えるよう頼む。その春陽尼のもとへ、近ごろ夜な夜な子供の幽霊のようなものが現れ、愛おしくて抱きしめていると朝には消えてしまうという。蝉丸経由で晴明が呼ばれ…。

    五条大橋が大雨で壊れたこと、勧進坊という狂人が近ごろうろうろしているというエピソードがすべて伏線になっている。数年前に、ある夫婦が幼い娘を連れて、目の悪い妻の目が治るよう願掛けに出かけた帰り、娘が鴨川に流され、助けようと飛び込んだ夫も行方不明になる事件があった。春陽尼こそこの妻で、勧進坊は生きながらえた夫、どちらも娘を失った悲しみで記憶を失ったり狂ったりしていたのだった。娘の遺体は、五条大橋の柱のあたりにひっかかってみつからなかったのが、大雨で浮き上がってきており、幽霊として母親に会いに来ていたのだった。


    「紛い菩薩」
    藤原家盛の夢に、太った老人が出てきて、5年前の約束通り、14歳になった娘の那智を自分に嫁がせろと言う。家盛の屋敷は5年前に朝廷から下された土地で、大きな池があったのを半分埋めて家を建てたが、なぜか異常なほど蛇が家屋に出現し困っていたところ、夢に太った老人が出てきて菩薩と名乗り、なんとかしてやる代わりに娘を嫁にくれと言ってきたことがあった。どうせ夢だし、と思い家盛はOK,ただ娘はまだ9才なので5年くらい待ってくれと答えたのだった。その約束の5年後が来たのだが、家盛はやっぱりどうせ夢だしと思いスルーしたところ、翌日の夢にも老人が現れ、自分はもう力尽きてしまう、恐ろしいことになるぞと言い残して消えてしまう。その言葉通り、翌日からまた蛇が大量に出現し、那智姫に何かが取り憑いてしまって、毎日カエルを10匹食わせろと要求。そこで晴明が呼ばれ…。

    太った老人は菩薩様ではなくお堂の下に棲みついていた巨大なカエル。もともとこの土地にいた蛇の悪霊を、このカエルが押さえてくれていたのだが、寿命が来て死んでしまったのだった。晴明の蛇退治の方法がまるでハーメルンの笛吹(笑)浄蔵が長年来た服から縒った紐に呪をかけて、博雅が笛をふくと、その紐の後ろを蛇たちがぞろぞろついていっていなくなる。


    「炎情観音」
    藤原安時の娘・貴子姫が、よなよな謎の獣のようなものに噛まれる夢を見るようになる。目覚めると噛まれたところには痣が。しかしなぜか被害は体の右半分だけ。安時は密に貴子を連れて晴明を訪問。詳しく話を聞いた晴明は、安時が建てたお堂に博雅と共に赴き…。

    原因としてはおなじみの浮気男に捨てられた女性の怨恨。貴子姫に通うようになった男が捨てた前の女性が、よなよなお堂の如意輪観音像に噛み付いて憂さをはらしていた。ただその像は貴子が生まれたときに作られたもので、貴子の臍の緒が中に隠されていたため、貴子本体にも影響が出てしまったのだった。被害が右半分だけだったのは左側には阿弥陀様の仏像が置いてあったため。


    「霹靂神」
    晴明んちの庭を眺めながら、博雅と蝉丸の三人で昼間から楽しくお酒を飲んでいると、ふいにどこかで雷鳴が轟き天気が崩れる。夜になってまた三人でお酒を飲んで、蝉丸の琵琶、博雅の笛の合奏を始めると、どこからか太鼓を鳴らす音が。やがて庭に謎の童子が現れ、太鼓を鳴らして合奏に参加。みんなで楽しく過ごす。翌朝、庭に転がっていたのは羅城門にあるはずの制吒迦童子の像。どうやら前日の落雷が羅城門に落ちた際に、霹靂神(はたたがみ)が童子像に一時的に宿っていたものらしい。短いけど可愛らしいお話。


    「逆髪の女」
    毎度、桜を眺めてしみじみ飲んでいる晴明と博雅。そこへ蝉丸がやってくるが、なんと博雅の目に、蝉丸の背後に髪を逆立てた女性の姿が見える。問うと、実はずっと前から晴明には見えていて蝉丸自身も承知しているとのこと。女性の正体は、蝉丸の妻の草凪。まだ蝉丸の目が見えた若い頃、彼女を捨て別の女性に乗り換えた蝉丸を恨んで憤死、鬼となった今もまだ蝉丸につきまとっているが、蝉丸は彼女を不憫に思いそのままにしていたのだった。

    博雅が笛を吹くと、草凪は舞いはじめ、さらに彼女の髪を掴んでいる不動明王の姿が現れる。かつて蝉丸が自分に憑いているのが草凪だと知らずに不動明王に祈りながら、草凪を許したためだった。


    「ものまね博雅」
    帝の遣いで葛城山に詣でて戻ってきた博雅が翌朝目覚めると、なんと自分そっくりの男が枕元に。博雅の話すことをなんでも遅れて真似をし、見た目は寸分も違わない。最初は触れようとしても実体はなかったが、次第に実体を持ち始めている。困り果てた博雅はもちろん晴明に助けを求める。

    博雅の分身の正体は、葛城山の一言主神の一部である木霊。例によって博雅が葛城山で良い気分で笛を吹き大声で感想を述べたため、変なものがついてきちゃったパターン(笑)博雅の笛は、鬼ですら癒す反面、うかつに吹くと変なものがついてきちゃうから困りもの。


    「鏡童子」
    暗い道を歩いている8~9才の童子、どこへ向かっているのか自分が誰なのかもわからない。気づくと足元はすべてしゃれこうべ。そして十二支を引き連れた女性が現れ手招きをしてくる。さらに老人が現れ、これもこっちへ来いと童子を招き、二人は争う。そこへ巨大な猫が現れて童子を呼ぶ。懐かしい声がして童子がその猫の口に飛び込むと…。

    帝に頼まれて藤原兼家の屋敷へ鏡を届けに行くため方違えをした博雅だったが、鏡のせいで方角が逆となり、鏡の中に取り込まれてしまっていたのを晴明が助け出したという話。十二支を従えた紙は天一神(なかがみ)、老人は金神(こんじん)で、いずれも方位の神様。博雅に猫と見えていたのは歳徳神で、こちらは良い方角(恵方)の神様。勉強になるわー。

  • 「ゆくか」「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった。
    このマンネリパターンは許せるのだ!

  • 蝉丸大活躍の巻だった

  • ゆくか
    ゆこう
    ゆこう
    そういうことになった
     
    もはや、このやりとりを見るために陰陽師シリーズを読んでいると言っても過言ではない。
    そのくらい博雅とのやりとりが愛おしい。

    今回は珍しく道満は出てこない。
    そして蝉丸の登場が続く。
    蝉丸といえば百人一首の
    『これやこの 行くも帰るも別れては 
    知るも知らぬも 逢坂の関』
    があまりにも有名。
    子供の頃に最初に覚えた名前と歌だった。
    その蝉丸の亡き妻の話に泣けた。

  • 「瓶博士」泰逢ってのは中国神話からなんだな。
    「器」か、悲しい・・・。人間の器ってのは壊れやすいんだなあ・・・。
    「紛い菩薩」やっぱり勝手に土地ってめちゃくちゃにしちゃダメなんだな・・・。
    「炎情観音」いや、それって男が一番悪くないか??
    「霹靂神」久々にほのぼの晴明と博雅。
    「逆髪の女」蝉丸殿にそんな過去が・・・な、なんと・・・。それでいて今も嫁に監視されてるって・・・すげえな・・・。
    「ものまね博雅」こだまでしょうか、いいえ、晴明です。
    「鏡童子」まさかのショタ博雅。冷静に考えたら十二支って怖いよな…。

  • 今回は1話目から博雅と晴明の距離感がいつもよりも近い気がする!!と思いながら読みました。
    博雅のことを誰よりも愛おしいと思っているであろう晴明と、晴明のさり気ない一言に翻弄される博雅…
    いつも通りの安定の展開が心地よい^^

  • シリーズを読み始めた当初、晴明の能力に惹かれたが、いまは博雅の雰囲気に、まさに晴明の様に惹かれてきますね。

  • 言わずと知れた夢枕獏先生の『陰陽師』シリーズ。今年2012年で二十五年になるそうです。
    この巻には派手なアクションなどはありませんが、しっとりとした情感に満ちています。

  • 楽に読める

  • いつもながらに2人の探偵のような仲良しペアが謎を解き明かしていく。蝉丸が何話かにまたがってよく登場する。蝉丸は天皇の子息だったらしい。盲目になったのは通っていた女性に恨まれたから。

    印象に残った場面
    p52
    おれにはもうひとつ生きていくのに必要なものがある、それはおまえさ、博雅

    BL?!

    p60
    言葉は心を盛るための器である。
    悲しみであれ喜びであれ、器に盛られて、初めて理解できる。

    肉体もまた同じで、〈源博雅〉を盛るための器。
    言葉にできないものに出会った時は、歌を詠む、笛を吹く。

  • 『炎情観音』の康子が不憫でしたが恨みとは言え仏像に噛み付くのは罰当たりとか思わなかったのだろうか…。
    あの穏やかな蝉丸の過去が明かされた『逆髪の女』にも衝撃を受けました。不憫に思っても離れた心は戻せない、心は渡せないけれど生命はあげられた、と遺体に語りかけるあたりで現在の蝉丸の姿が見えました。
    彼が亡くなった時にどんなことになるのだろうか。

    『霹靂神』がほのぼのとしていてほっとします。

  • 今回は蝉丸巻

    「器」
    その美しさを理解できない人はいないんだろうか。

    「炎情観音」
    時代とはいえ、23、4でそうなってしまうのは哀しいな。
    次に行ければ良いのにな。

    「霹靂神」
    屋根の上で踊りながら鼓を叩く童子と笛と琵琶の音が
    目に浮かぶよう。童子かわいいな。
    そして楽しいな。

    「逆髪の女」(さかがみのひと)
    陰陽師は男ばかり心が離れるから、読んでて「けっ」って感じがするな。

    「ものまね博雅」
    タイトルからなんだか楽しそうな感じ。
    そのまま神になったかもしれない博雅、さすがだ。

    「鏡童子」
    あらゆる神に出会いすぎているな。
    猫が出てきたからてっきり保憲かと思った。
    自分のところに来させてどうするつもりだったのだろうか。

  • 蟬丸の過去
    博雅の受難

    あたりは少し毛色が違って面白かったけど、やっぱり晴明がズバッと解決!なお話が面白いな。

    古典好きでよかった!と関係なく思う。

  • 「器」が悲しかったなあ。子どもが犠牲になるお話は辛い。

  • 2018.4.1(日)¥180(-2割引き)+税。
    2018.5.2(水)。

  • 自分でも意外だったんですが、夢枕獏作品を読むのは初めてでした。
    五感にダイレクトに伝わってくる文体が好みど真ん中。
    他作品も読んでみたいと思いました。

  • 蝉丸大活躍。今回はほとんどの話に蝉丸が関わってきます。相変わらずいい琵琶弾いてます(実際には聞こえないけど)、盲目になった理由とは?そして表紙は蝉丸の奥さん(で良いのかな?)です。

  •  こんなにシリーズが続いているのに、マンネリ化していないってすごいですね。朝の電車でゆっくり読みたいと思い早めに家を出たのですが、人身事故で電車が止まりました。でもこの本を読んでいたので、待ち時間が楽しかったです。
     今回も女の恨みの物語がいくつか収録されています。表紙に描かれている逆髪の女はとても怖かったですが、物語を読むと博雅と同じように恐怖は薄れました。死ぬほど愛した人が、呪った愛しい人が、死んだ後にとりつくことを許し、妻と呼んでくれる。ある意味、史上最高の愛なのではないでしょうか。

  • NHKのヒストリアで、陰陽師の特集を見たあとだったので、余計に面白く感じた

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著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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