夏の口紅 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.58
  • (16)
  • (27)
  • (37)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 259
感想 : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167531089

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 文体が独特でかっこいい。
    ハードボイルドに近い、心理描写を避けて、結果を書く。
    いつの間にかはまっています。

  • 樋口作品はミステリばかり読んでいたので、
    こういう酸っぱいテーマの作品は新鮮(^ ^

    登場人物が、みな世を拗ねていたり、
    何かから絶賛逃避中だったり、
    はたまた問題を抱えていたりと、で
    「普通の人」が出て来ない気が(^ ^;

    でも、誰もが皆「リアルな生」を生きていて、
    もしや世の中に普通の人などいないのでは、
    と思ってしまう危険な作(^ ^;

    恥ずかし気もなく断言してしまうと、
    主人公二人の「純愛」がテーマの作品。
    二人をはじめ、周りの人間みながひねくれてるので、
    とてもじゃないが話は一筋縄で進まない。

    でも、本当に男女が惹かれ合うということ、
    好きになるということ、もっと単純に
    相手と一緒にいたいと願う気持ち...

    ひねくれている筈の主人公二人は、
    実は自分の思いに対しては
    悲しい程ピュアだったりする。
    だけど、と言うか、だからこそと言うか、
    自分たちで問題を生み出したりもするが(^ ^;

    いや〜、何か、若いというのも
    悪いことばかりでもないね〜(^ ^

  • 主人公のセリフでないつぶやきが秀逸。父親の訃報を起点とし、父親の遺品の意味と存在すら知らなかった姉捜しが始まる。奇妙な義理の従妹が義理の妹になり、そして特別な存在になる。彼女の、きっと捜してくれるから、捜してくれるはず、やっぱり捜してくれた。というありがちのパターンは十代の頃の出会いたくない恐怖の一つであったな。

  • +++
    十五年前に家を出たきり、会うこともなかった親父が死んだ。大学三年のぼくは、形見を受け取りに行った本郷の古い家で、消息不明の姉の存在を知らされ、季里子という美しい従妹と出会う。一人の女の子を好きになるのに遅すぎる人生なんてあるものか…夏休みの十日間を描いた、甘くせつない青春小説。
    +++

    改めて上記の内容紹介を読んで、たった十日間の出来事だったのか、とその内容の濃さに驚かされる。礼司にとって、この十日は、おそらくこれからの生き方をも変える十日となったことだろう。顔も覚えていない父親の死の知らせ、父の義理の娘・季里子との出会い、存在さえ知らなかった姉を探すこと。降って湧いたような難題が、これでもかというくらい礼司に襲い掛かってくる。律儀に――礼儀正しくと言ってもいいかもしれないが――クリアしようとする礼司も、あちこちに迷惑をかけっぱなしだった父同様、たしかに少々変わっているのかもしれない。だが、そのことによって、父の生きてきた道と、残したものを知ることができ、意外に憎めない思いとともに受け止めることができるようになったのかもしれない。奇を衒ったところは何もないが、みっしりと詰まった一冊である。

  • 会話の部分が特に良かった。他の作品にはない雰囲気。この人の作品をもっと読みたくなった。

  • 主人公たちのかみ合わない会話にイライラさせられますが、その内容に思わずクスッと笑わせられます。それが新鮮で、すごくおもしろかった。言葉選びが天才だと思った。男の子目線の恋愛小説は苦手だったんですが、きゅんきゅんせずにはいられなかった。

    • koshoujiさん
      初めまして。
      あまりにも樋口有介作品「ピース」の評価が低く、ファンとしてはまことにやるせなく、「樋口有介な人」を探していました。
      彼の作...
      初めまして。
      あまりにも樋口有介作品「ピース」の評価が低く、ファンとしてはまことにやるせなく、「樋口有介な人」を探していました。
      彼の作品はミステリーとはいえ、本質はハードボイルド小説。
      楽しむのは謎解きとかではないように思うのです。
      私が好きなのはあの独特の文体で、細かい情景描写や独特のシニカルな言い回し、会話を楽しんでます。
      また、輪をかけて女性読者に評判が悪いのは、出てくる女性があまりにも都合よく美女ばかりということなんでしょうか。
      おっさんにとっては、ロマンのあるヒーロー小説の一面もあるわけで(笑)
      若者が主人公でも、独特のヒロイズムとシニカルさが好きですが。
      貴女のような若い女性が、彼の作品が結構お好きなようで、少しホッとしているところです。
      2012/07/08
    • りささん
      >koshoujiさん
      はじめまして。
      私も樋口有介作品大好きです!
      ネットのレビューを見ていても評判はあまり良くなく、私も同じようにやるせ...
      >koshoujiさん
      はじめまして。
      私も樋口有介作品大好きです!
      ネットのレビューを見ていても評判はあまり良くなく、私も同じようにやるせない気持ちになっています。
      たぶん、女性が完璧すぎるというのもありますが、主人公がさっぱりしているのと、似たような作風、推理小説にしては爽やかなところが受け入れられないんじゃないかと思います。
      ですが、樋口さんの小説は、そこもひとつの味というか良さであって、それ以上に人物の会話が素晴らしいのに、と残念に思っていました。
      ここ最近は、以前よりも本屋に樋口有介作品が並び始めたので、男性だけでなく女性ファンも増えるのではないでしょうか。
      これをきっかけにもっと人気が上がれば、と願っています(笑)
      2012/07/16
  • あぁ・・樋口センセの文章は色彩と音が豊かです。花の描写や風の音が目に浮かぶようです。読んでいるとそれらの色や音が頭に残ってまるで曼荼羅を聴いているようないい気分になってくる。トリップ状態ですね(笑)何を大げさな・・と思われるでしょうが、私にはそうなんですから仕方ない♪だから樋口センセの本を読んだ次の小説はなかなか乗れないことが多い。なんか流れるようには読めないんですよね  15年前に別れたっきり顔も覚えていない父親が死んで、突然現れた美少女・・なんとボクの妹だと言う・・・ちょっと不思議な一夏のボーイ・ミーツ・ガール!そう!樋口ワールドの始まりです。 人生を達観した青年を書かせたら日本一の樋口センセ!今回その解説が「省エネ高校生」を書いてらっしゃる米澤穂信さんというのも面白い組み合わせでした。興味深く読みました・・なるほど・・・

  • 十五年前に家を出たままの親父が死んで、大学三年のぼく・礼司に残されたのは、二匹の蝶と、「妹」と名乗る女の子・季里子。
    この不思議な女の子との出会いで、今年のぼくの夏休みは、とびきり暑くなりそうだ――。
    樋口有介がおくる甘くてほろ苦いひと夏の物語。



    いかにも樋口有介さんらしい青春小説。
    そういう意味で新鮮味には欠けるけれど、だからと言ってつまらないわけではない。
    安心して読める作品。

    亡くなった父親が遺品として蝶を残した意図、突然知らされることになった姉の存在、そして姉は今どこにいて何をしているのか……この物語をミステリと考えるならばこれらが物語の「謎」なのだろう。

    姉を探し求めている過程で、父親のことを知り自分のことを知る。
    いわゆるルーツ探しもまたこの物語の「ミステリ」部分なのかもしれない。
    ただ、このあたりに大仰なミステリ的仕掛けはなく、ただただ淡々と物語が進行していくので、これをミステリだと思ったら、読者はひどく退屈するだろう。

    この物語のキーパーソンは――わざわざ宣言するほどのことでもないが――季里子である。
    一風変わった少女との、ファンタジックな出会いがこの物語の魅力。
    年上の恋人をクールにあしらっていた礼司が、何も言わない季里子に翻弄されていく様が面白い。
    まさにこれは礼司の初恋なんだなと納得してしまう。

    ただ残念なのは、季里子が描き切れていないところ。
    物語が礼司の視点で進行している都合上、仕方ないのかもしれないが、もっと彼女をクローズアップしてほしかった。
    この風変わりで、だけど美しい少女が物語の中心なのだから。

  • 先日読んだ「海泡」の解説で、樋口有介せんせの夏に関する作品がつらづらっと挙げられていたので、よっしゃ読み返したろー!っていう個人的気運盛り上がり中。

    今作もまた主人公の男子はカッコつけてて、そしてカッコ悪い。
    特異だなと感じたのは、せんせの作品で好きなトコロは主人公とヒロインの会話の妙にあると考えてるのですが、今作のヒロイン、会話のコミュニケーションに難あり。
    いつもの小洒落た会話がなかなか繰り広げられないんですよねー。
    もちろん、ヒロイン以外の女性との会話にその味わいは見られるのですが。

    まあしかし、会話が無くても主人公の洒落た振る舞いは見どころあるわけで。
    10代のヒロイン、20代のお姉さん彼女、40代のお母さん、50代のおばさん…て、どの年代の女性に対しても臆すること無く賢く振る舞いますねえ。

    今作の解説は米澤穂信センセなのですが、そうした主人公の振るまいを気障ではなく照れているのだと評してますが、ああなるほどって感じ。
    そうしたいわゆる「照れ」なんかだと、「ぼくと、ぼくらの夏」の戸川くんがヒロインに対して告白するシーンとか、あれなんかまさに照れだし照れ隠しだと思います。

    ああ、「ぼくの」で思い出した。
    今作もヒロインが主人公を迎えるように仕向けて待っているようなシーンが。
    そういったところが樋口有介せんせの作品におけるヒロインの可愛らしさだと思うのですが如何に。

    主人公は女性の扱いに長けているように見えて、いつだってヒロインに振り回される。
    そこが面白いのです。

  • 15年前に母と離婚し、家を出たきり一度もあっていない父が亡くなった。
    大学3年生になった礼司は、亡くなった父の形見を受け取りに本郷の親父が住んでいた家に向かう。

    そこで自分には姉がいるという衝撃的な事実と、季里子という無口な従妹に出会う。

    父は礼司に蝶の標本を残しており、姉にも同様のものが残されている。

    姉の存在を探りながら、季里子との距離も徐々に詰めていく。

    姉の過去をたどると自分が今、接点を持つ身近な人にたどり着く・・

    そこでもまた衝撃的な事実が・・・

    季里子は、徐々に礼司に心を開いていく。

    この季節に読みたい本

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

樋口有介

一九五〇年、群馬県前橋市生まれ。八八年に『ぼくと、ぼくらの夏』で第六回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞。次作『風少女』が直木賞候補となる。主な著書に『彼女はたぶん魔法を使う』にはじまる〈柚木草平シリーズ〉、『猿の悲しみ』『遠い国からきた少年』の〈風町サエシリーズ〉、時代小説『船宿たき川捕物暦』のほか、『金魚鉢の夏』『風景を見る犬』『あなたの隣にいる孤独』『礼儀正しい空き巣の死』などがある。

「2021年 『ピース 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

樋口有介の作品

ツイートする
×