- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167531089
感想・レビュー・書評
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読んだのは、たぶん7月の中旬くらい。
樋口有介にしてはイマイチかなぁー(^^ゞ
たぶん、主人公たる二人(礼司&季里子)の魅力が、樋口有介の小説(のファン)としてはイマイチなんだと思う。
普通すぎる?、…んだよね。
ただ、この小説に出てくる二人が“普通すぎる”っていうのは、『夏の口紅』がミステリー小説(「事件」がテーマではなく)ではなく、文芸作品(二人が出逢った夏の話)であるということで、そうなった面があるような気がするかな?
それは、たぶん、必然として。
ミステリー小説というのは「事件」という、主人公たちが特異な状況に置かれる話であるのに対して、これはあくまで「日常」の話だ。
「日常」というのは普通だから、目立つ「特異」はない。
もちろん、「初恋」という人生の大イベントwの話ではあるのだが、でも、「事件」がテーマのミステリー小説でない以上、小説としては、あくまで「日常」の話なのだ。
事件という「非日常」は、普通である登場人物たちから「特異」な面を引き出すが、これは「日常」の話だから、登場人物たちも「日常」のままでいる。
この二人が“普通すぎる”のは、そういう理由なんだろう。
(もっとも、その“普通すぎる”は、あくまで樋口有介の小説としては“普通すぎる”だw)
そんな『夏の口紅』だが、個人的な好みを言うなら、いかにも樋口有介の小説に出てくるキャラって感じの画家の友部さんとその娘をエピソードとして、ストーリーに絡ませられなかったんだろうか?って感じかな。
だって、友部さんの娘さんなんて、友部さんの口から「わたしに似ているから美人よ」って紹介されるだけなんだもん(^^ゞ
友部さんが魅力的なだけに、なぁ〜んか、ちょっともったいない。
あと、香織も、もっとストーリーに絡んできてもよかったんじゃないかなぁー。
ぶっちゃけ、ヒロインである季里子がイモっぽい(爆)だけに、もうちょっとその魅力をエピソードとして描いてほしかった気がするかな?
あとは、和可子も、別のストーリーとして描かれてもよかったように思う。
もっとも、樋口有介の作風としては、そういうのはないんだろうけどさ(^^)/
シラケたのは解説。
“樋口作品たちの語り手はひどく恰好をつけているけれど、ただ気障なのではない。彼らは照れているのだ”って、そんなこと、説明されてわかっちゃったらさ。照れている当人たちの立場、ねぇーじゃん!(爆)
今はなんでもそんな風に、解説してわかりやすくしちゃうから、小説でも、映画でも、ドラマでもつまらなくなっちゃうんだよ。
この解説している人って、作家らしいだけど、そんなこともわからないのかな?┐(´д`)┌詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文体が独特でかっこいい。
ハードボイルドに近い、心理描写を避けて、結果を書く。
いつの間にかはまっています。 -
樋口作品はミステリばかり読んでいたので、
こういう酸っぱいテーマの作品は新鮮(^ ^
登場人物が、みな世を拗ねていたり、
何かから絶賛逃避中だったり、
はたまた問題を抱えていたりと、で
「普通の人」が出て来ない気が(^ ^;
でも、誰もが皆「リアルな生」を生きていて、
もしや世の中に普通の人などいないのでは、
と思ってしまう危険な作(^ ^;
恥ずかし気もなく断言してしまうと、
主人公二人の「純愛」がテーマの作品。
二人をはじめ、周りの人間みながひねくれてるので、
とてもじゃないが話は一筋縄で進まない。
でも、本当に男女が惹かれ合うということ、
好きになるということ、もっと単純に
相手と一緒にいたいと願う気持ち...
ひねくれている筈の主人公二人は、
実は自分の思いに対しては
悲しい程ピュアだったりする。
だけど、と言うか、だからこそと言うか、
自分たちで問題を生み出したりもするが(^ ^;
いや〜、何か、若いというのも
悪いことばかりでもないね〜(^ ^ -
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十五年前に家を出たきり、会うこともなかった親父が死んだ。大学三年のぼくは、形見を受け取りに行った本郷の古い家で、消息不明の姉の存在を知らされ、季里子という美しい従妹と出会う。一人の女の子を好きになるのに遅すぎる人生なんてあるものか…夏休みの十日間を描いた、甘くせつない青春小説。
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改めて上記の内容紹介を読んで、たった十日間の出来事だったのか、とその内容の濃さに驚かされる。礼司にとって、この十日は、おそらくこれからの生き方をも変える十日となったことだろう。顔も覚えていない父親の死の知らせ、父の義理の娘・季里子との出会い、存在さえ知らなかった姉を探すこと。降って湧いたような難題が、これでもかというくらい礼司に襲い掛かってくる。律儀に――礼儀正しくと言ってもいいかもしれないが――クリアしようとする礼司も、あちこちに迷惑をかけっぱなしだった父同様、たしかに少々変わっているのかもしれない。だが、そのことによって、父の生きてきた道と、残したものを知ることができ、意外に憎めない思いとともに受け止めることができるようになったのかもしれない。奇を衒ったところは何もないが、みっしりと詰まった一冊である。 -
会話の部分が特に良かった。他の作品にはない雰囲気。この人の作品をもっと読みたくなった。
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昨年亡くなられた樋口さんの青春小説。数々の青春小説から探偵小説等、様々楽しませてもらいました。謹んでご冥福をお祈りすると共に、残された作品を読み続けたいと思います。
本作はとにかく義妹の李里子がかわいいので、翻弄される主人公が見所。謎があるような無いような。 -
15年前に母と離婚し、家を出たきり一度もあっていない父が亡くなった。
大学3年生になった礼司は、亡くなった父の形見を受け取りに本郷の親父が住んでいた家に向かう。
そこで自分には姉がいるという衝撃的な事実と、季里子という無口な従妹に出会う。
父は礼司に蝶の標本を残しており、姉にも同様のものが残されている。
姉の存在を探りながら、季里子との距離も徐々に詰めていく。
姉の過去をたどると自分が今、接点を持つ身近な人にたどり着く・・
そこでもまた衝撃的な事実が・・・
季里子は、徐々に礼司に心を開いていく。
この季節に読みたい本 -
2015.1
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主人公の礼司に腹違いの姉がいることを知り、姉を捜索する…というお話です。
表面上は青春小説らしく爽やかなテイストなのですが、中身はドロドロとしたお話だったのでアンバランスな感じがしました。
また、オチは安易な感じでしたし、父親の残した「蝶」という謎も未消化に終わったので、色んな意味でスッキリしない作品でした。 -
主人公のセリフでないつぶやきが秀逸。父親の訃報を起点とし、父親の遺品の意味と存在すら知らなかった姉捜しが始まる。奇妙な義理の従妹が義理の妹になり、そして特別な存在になる。彼女の、きっと捜してくれるから、捜してくれるはず、やっぱり捜してくれた。というありがちのパターンは十代の頃の出会いたくない恐怖の一つであったな。