医学生 (文春文庫)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167545048

感想・レビュー・書評

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  • 医療・青春小説。

    新しく設立された秋田大学医学部を舞台に、四人の医学生たちの苦悩と成長が描かれていた。

    著者は、実際に医師として活動。
    その体験をもとにこの作品を執筆されている。

    この物語では、医療現場で直面するさまざまな難題や、命の重みが心に響く。

    挫折や不安を抱えながら秋田大学医学部に集まった和丸、京子、雄二、修三の四人の学生が、解剖実習や外来実習などを通じて成長し、自分の生き方を見つけていく姿が描かれている。
    彼らは医者を目指しながら、失恋や妊娠、患者の死といった様々な経験に向き合い、友情を深めていく…

    物語の後半では、彼らが15年後にどのように成長しているのかも描かれている。
    医療現場のリアルな日常や、それぞれの人生の選択にスポットが当てられていた。

    医学生としての日々の中で感じる不安や孤独、そして自己の成長が描かれたストーリーは、わたしたち読み手に感動を与え、医師という職業の真の意味を考えさせてくれる。

    この作品を読むことで、医者への尊敬の気持ちが一層強まった。
    医師免許を取得するまでの苦労や努力、さらにその先にある医療の現実を理解することで、医者という職業の重みを改めて認識した。

    また、病気の治癒には医者だけでなく、患者自身の力も大切だということも学んだ。

    著者の自伝的な要素が含まれたこの作品には、彼自身の人生への向き合い方や、医師としての葛藤が色濃く反映されている。

    医者になることの厳しさや、その裏に隠れた人間的なストーリーを知ることで、より深い理解が得られると思う…

    医療用語は本当に難しいですよね!
    あの難解な言葉を覚えている医療従事者の方々は、本当にすごいと思います!
    私には到底無理だ…。

  • 南木氏は現役の医師であり、芥川賞作家です。
    この物語は南木氏の学生時代の物語。
    主要な登場人物は4人ですが、学生時代のクラスメートが全員重なっているようです。
    学生時代を思い出しながら、とても面白く読めました。
    自分で作品を残すことが出来るというのが とてもうらやましいと思います。
    この本を読んで、私も何かを残したくなりました。。。

  • 青春

  •  作者の体験が元になっている、医大学生たちの小説。
     新設されたばかりの秋田大学医学部に、さまざまな理由で集まってきた四人の若者たちが主人公。ある者は第一志望の医大に落ちたコンプレックスを抱え、ある者は失恋に落ち込み、ある者は遊び半分で流されるまま入学し、ある者は妻子を抱えた身で三十歳を前に医師へなろうとチャレンジする。
     自分は何になって何をしたいのか、という青春小説らしい悩みを抱え、同じグループになった彼らは少しずつ挫折や成功を体験しながら成長していく。作者の実体験が元になっているだけあって、人体解剖や外来実習、口頭試問は非常にリアルだった。
     昭和の香りが色濃く残るストーリー展開だが、令和の今でも普遍的な青春小説として読むことができた。また、彼らが一介の学生から医師になっていく過程で、医師の限界というか、医師もひとりの人間なのだということに気づきながら悩みもがいて葛藤していく様に共感できた。

    ”治る病人は医者が足を引っ張らない限り、ほとんど自然に治ってゆき、治らない病気はどう頑張ったところで治らない。この十五年間でつかんだ事実といえばこれだけのような気がする。医者は決して人命などあずかっていない。真の意味で他人の命をあずかっているのは旅客機のパイロットやバスの運転手の方だろう。”(P.233-244)

  • すごく人間味あふれる本だと思いました。
    悪い意味ではなくただ淡々とリアルな人間生活が描かれており興味深い内容だと思いました。

    自分自身医者にお世話になるときにもう一度読み直したいと思います。

  • どう感じたんだろう…と振り返っても、どこか他人事に、面白かった〜としか言えないんだけど、でもなんだかすごく好きな小説だった。

    好きの理由を少しだけ掘り下げてみると…
    ・色々な設定にリアリティがある※自伝的だから
    ・キラキラしてない普通の登場人物達に親近感
    ・世の中って、働くって、ほんとそうだよね、という共感
    ・医学部ってこんな感じなのかと知ることができた
     →医者の友達が多い割に、医学部のこと、なんとなくしか分かってなかったんだなぁ。

    読書好きだなー、小説っていいなー、って思わせてくれた小説だった。

    そりゃそうか。芥川賞受賞作家の小説なんだから。

    ざっと4時間くらい、子育て中だが睡眠時間を削って夜中に読んだ。寝不足だけど、読書の世界に浸る時間が持てたことのほうが嬉しくて、寝不足なはずなのにむしろわたしは元気で過ごせる。

  • 舞台は田舎の医学部で、学生4人のそれぞれの成長が描かれています。
    都会の本命大学の滑り止めで入学した者、ただ惰性で医学部に入学した者、家庭の経済事情から入学した者、人生をやり直そうと入学した者、どの人物もリアリティがあります。

    目指すものが医師であろうと、必ずしも大志など必要ない、志など半ばで良いという事実や、医学部だろうと仮に文学部だろうと当人の意識の程度には個人差があるという点でも、彼らはみな人間としての未熟さを持つ大学生です。

    そこから医学生の現実を目の当たりにしていくことで、各々の意識が変化していきます。人体解剖実習、終末期医療の現場などの体験を通し、やがて訪れる自身の老いや死、生きているものへの渇望、人間らしい死とは何かとの思いに心が揺さぶられながらも、手一杯の学業に取り組む現実。

    4人の成長を見届けたとき、不思議と同級生を思うような気持ちになる青春がつまった一冊です。

  •  テンポが良く、簡潔かつ率直で読みやすい。医学部がテーマであるため死に直面する部分などシリアスな部分もあるものの、大衆小説っぽく気軽に読める本であり、筆者がこの本は自分の過去だといっているのにも非常に納得した。
     自分の専攻と近い分、カリキュラムや学生特有の空気感、日々の悩み等、読んでいて共通、共感する部分が多く、重苦しく凝り固まっていたモヤモヤした感情が若干ではあるものの昇華していくような気がした。読後、こんな風に悩むのは当然だし、答えなんてないし、こんな生き方をしていくのもありなんだろうな、と思えた。まだまだ青い

     以降、心に留めておきたい部分。思ったこと。共感した部分。
    ・医療に関わっていく上で、患者の死を他人事と思うのではなく自分事のように捉えることは、真摯ではあるけど自らの精神も削っている。
    ・医者は決して人命を預かっているのではない、人間が人間を救える範囲など限られている。
    ・神に近づこうとする人間と、自然の摂理に身を委ねる人間がいる。
    ・医者の役割は、予防、行政への関与、診断、治療、看取る、研究など様々な役割がある。
    ・綱渡りみたいな生活は長くは続かない。
    ・もしかしたらこの病気は己の内側ばかり見つめて小説を書いてきたことへの罰なのかもしれない。

  • 創立間もない秋田大学医学部に入った4人の学生の物語。医学部の学生がどんな思いで大学生活を送っているのかよく分かる。大学6年間に医師になる覚悟を持たなければならないところが、一般の4年制の他学部とは違うのだろうか。目的がはっきりして入学しているのだが、まだその目的に自信がもてない心のゆらつきが上手く描かれていると思う。

  • 秋田大学医学部2期生の青春群像.
    感情移入してしまう話でした.

    純文学ではないかもしれないが,
    本棚に残しておきたい本でした.

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著者プロフィール

南木佳士(なぎ けいし)
1951年、群馬県に生まれる。東京都立国立高等学校、秋田大学医学部卒業。佐久総合病院に勤務し、現在、長野県佐久市に住む。1981年、内科医として難民救援医療団に加わり、タイ・カンボジア国境に赴き、同地で「破水」の第五十三回文學界新人賞受賞を知る。1989年「ダイヤモンドダスト」で第百回芥川賞受賞。2008年『草すべり その他の短篇』で第三十六回泉鏡花文学賞を、翌年、同作品で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞する。ほか主な作品に『阿弥陀堂だより』、『医学生』、『山中静夫氏の尊厳死』、『海へ』、『冬物語』、『トラや』などがある。とりわけ『阿弥陀堂だより』は映画化され静かなブームを巻き起こしたが、『山中静夫氏の尊厳死』もまた映画化され、2020年2月より全国の映画館で上映中。

「2020年 『根に帰る落葉は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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