エチオピアからの手紙 (文春文庫 な 26-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167545055

感想・レビュー・書評

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  • 群馬出身。先生に借りて初めて読んだ。

    これは読み方の態度の問題なのだが、最近はゆっくり、悪く言えばだらだら本を読むことが多々あった。ほどほどの集中力でずーっと読んでいた感じ。
    今日の午前中に先生に激しく叱咤されて、流れるように文章を読もうと思って、できるだけ集中して読んだ。
    それができたのが四作目「木の家」、そして表題作「エチオピアからの手紙」。後戻りせずにノンストップで読んだから細かい設定とか抜け落ちているはずなのにとても鮮明にいま思い出せている気がする。
    「木の家」は死の近い末期癌患者だけを集めた病棟の担当になった医者の話で、とてもとてもよかった。死ぬと分かっていて処置をほどこす医者の気持ちをすごい受け取れた気がする。全編通して医者が患者を通して人の死と対峙する話が並べられ、また読みたい作家となった。

  • 12月新着
    東京大学医学図書館の所蔵情報
    https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=2003527300

  • 短編5編でお勧めです。若い医師に苦悩あり。内容的には結構濃密です。南木作品も好みです。

  • 破水は圧巻でした。
    著者のデビュー作だそうです。ただでさえ硬質な南木さんの文体が、若さゆえに更に肩に力が入り”如何にも”と言う感じの文学的な文章です。しかし一方で、推敲され尽くし、完成された文章でもあります。生硬だけど初々しく、清潔感に溢れる文体です。
    全ての作品が、医師を主人公に患者の死を取り扱っています。特に何作品かは、既に治癒の望みの無い患者に対し、積極的治療を排し、安楽に死を迎えさせるかに腐心する医者を描きます。
    医者である南木さん自身が悩んで来られたテーマなのでしょう(南木さんはその後、鬱病にかかってしまいます)。明確な答えは有りません。でも、葛藤の中で、これが正しいのだというあやふやな確信のようなものが感じられます。
    作者が描くべき事を描いた、そんな思いを感じる作品でした。

  • 南木圭士「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞するまでのデビューからの作品集。文学界新人賞「破水」、87回芥川賞候補作「重い陽光」、88芥川賞候補作「活火山」、92芥川賞候補作「木の家」、94芥川賞候補作「エチオピアからの手紙」。末期の癌患者の死を日常的に受け止めざるを得ない若き医師たちの苦悩とあきらめを描ききった短篇五篇。
    デビュー作「破水」では「腹腔の内側に疎らに張りめぐらされた哺乳類の雌ならどんな種にもそなわっている下等な神経網を介してかろうじて体感されるくぐもるようなリズムと、ゆるんだパッキンの生み出す音が完全に同期している」と、もってまわったうざい比喩表現をしているが、後の作品では洗練されてきている。
    自身の体験をベースにしているので話にリアリティがあるが、死に疲れ、死をつき詰めすぎている。この作家の神経はいずれまいってしまうだろうなと感じさせる。後にパニック障害と鬱を発症するらしいが、既に文章にでているような気がする。

  • 短編集.大学病院から,妊娠したまま赴任した農村部で週末医療に取り込む女医を描いた「破水」はすばらしい.新しい命を一人で抱えながら助からない命に向き合う話は印象的.試験的ホスピスを描いた「木の家」もいい.

  • 医師が書いた医学小説。少し疲れて、無力感を感じる医者が主人公のお話。短編ゆえか、余り心に響く小説ではなかったが、山の描写が綺麗だった。

  • 短編集。
    どれも人間の死や生を見続ける若い医師が主人公。
    心の葛藤がとてもよく描かれている。
    使命感が強すぎるとつぶされてしまう。
    きつい職業だと改めて感じる。

  • 深いなあ。時期が違ったらもっと感動したかも。

  • 南木 佳士を読み始めた頃の作品。
    エチオピアに医療チームとして派遣された作者の現地での出来事をヒントに描かれている。
    現地の患者達の貧しくとも逞しい様子も・・・温かなこの作家の眼差しを感じる作品。

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著者プロフィール

南木佳士(なぎ けいし)
1951年、群馬県に生まれる。東京都立国立高等学校、秋田大学医学部卒業。佐久総合病院に勤務し、現在、長野県佐久市に住む。1981年、内科医として難民救援医療団に加わり、タイ・カンボジア国境に赴き、同地で「破水」の第五十三回文學界新人賞受賞を知る。1989年「ダイヤモンドダスト」で第百回芥川賞受賞。2008年『草すべり その他の短篇』で第三十六回泉鏡花文学賞を、翌年、同作品で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞する。ほか主な作品に『阿弥陀堂だより』、『医学生』、『山中静夫氏の尊厳死』、『海へ』、『冬物語』、『トラや』などがある。とりわけ『阿弥陀堂だより』は映画化され静かなブームを巻き起こしたが、『山中静夫氏の尊厳死』もまた映画化され、2020年2月より全国の映画館で上映中。

「2020年 『根に帰る落葉は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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