プーさんの鼻 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2008年12月4日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784167548087

みんなの感想まとめ

子どもを育てることの喜びや苦悩を短歌で表現した作品は、親の心情に深く寄り添っています。特に、育児を通じて感じる日常の驚きや愛おしさが、31文字に凝縮されている点が魅力的です。作品を通じて、読者は子ども...

感想・レビュー・書評

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  • 『サラダ記念日』に続き読了。子どもの歌が圧倒的に多いため、親の立場にならないと感情移入しづらく、親友の赤子を思い出しつつ読み進めた。
    お気に入りは三百四十四首分の六首。


    年末の銀座を行けばもとはみな赤ちゃんだった人たちの群れ

    生きるとは手をのばすこと幼子の指がプーさんの鼻をつかめり

    匿名は仮面にあらず名を伏せて人は本音を語りはじめる

    「これもいい思い出になる」という男それは未来の私が決める

    外に出て歩きはじめた君に言う大事なものは手から放すな

    とりかえしつかないことの第一歩 名付ければその名になるおまえ

  •  新型コロナの緊急事態下だからこそみんなで読みたい本。
     文学としては邪道な読み方だけど、ああー子どもといるってこういうよろこびがあるのかを、保育園利用自粛中(「在宅保育」、家庭保育)・休園中に、家庭で再認識できる本だと思います。
     今はZOOMなどで子育てをめぐって話し合い、コロナが明けたら、そういう話題を日々お迎えに来たときや連絡帳とかで、みんなで話せたらと思う。子どもについて話が尽きないような園っていいですよね。
     また子どもをとりまく、恋愛、仕事なども詠まれているので、それぞれのそういう話のきっかけにもなって、自分のこともあらためてとらえなおす助けになりそうな本です。
     子どもに関する歌にかなり絞ったもので『生まれてバンザイ』もよいです。父親との関係などしんどさがある人はまずこちらの本からの方がよいかもしれません。
     https://booklog.jp/users/lifedevelop2020/archives/1/4887471041
     ↓
     発達研究もこの本ではじめられる。「2つの発達表」と照らして、子どもの様子を見ていく。文学に出てくる子どもの姿をとらえるのは一つの有力なやり方です。感性もよみがえる。(動画「発達研究をはじめよう」 https://www.youtube.com/watch?v=mHgjylwNUDA
     ↓
     プルーンの種のようなる眼(まなこ)して吾子が初めて見ている我が家
     おっぱいのこと考えて一日が終わる今日は何曜日だっけ
     ふるえつつ天抱くしぐさ育児書はモロー反射と簡単に呼ぶ
     泣くという音楽がある みどりごをギターのように今日も抱えて
     子を真似て私も本を噛んでみる確かに本の味がするなり
     この夏は猛暑の予感ぐらゆらとつかまり立ちを始めるおまえ
     あーじゃあじゃ、うんまばっぽー、この声がいつか言葉になってゆくのか
     ……
     園を休ませたら虐待してしまうかも、とかいう親御さんとゆっくりじっくり読んでいければと思う。こういう保育、というのでなく、子どものとらえ方を感じてほしいところ。子どもといっしょにその親子・家庭なりの子育てをつくっていく。正解はありません。
     保育士を目指す人、発達研究をする人(子育て中のあなたもいっしょに!)は、同じく俵万智さんの『かーかん、はあい』をおすすめします。絵本の紹介というより子どものやっていることをこう見るのか、という「見方」がやわらかいです。
     https://booklog.jp/item/1/4022505095
     ↓
     学生さんには、この本を含めて、以下の「この3冊」を紹介しています。万華鏡のように、見えてくるものがあると思います。
     https://booklog.jp/users/lifedevelop2020?tag=%E3%81%93%E3%81%AE3%E5%86%8A&display=front

     介護施設を利用自粛して在宅介護をしている人にも、こういった在宅介護のよさや楽しさがわかる本を届けて、話をしていければと思います。私はちょっと介護に関してこの本というのが思いつかないのでぜひ紹介してください。20200423

  • 第4歌集。
    これまでの歌集と異なり、かなり円熟したやうな印象を受ける。同じテーマが続いてゐるといふのもあるだらうが、短歌が自然と馴染んできたのだらうか。さっくりと切れるナイフのやうな鋭さはなく、ことりと机の上に置かれたマグカップのやうな生活感がある。
    このひとの生活は気づけば31文字で満たされてゐるのだらう。短歌的な思考とでも言はれるものだらうか。折に触れて心の動きを捉へた時、それが31文字になつてゐるのだと思ふ。よくも悪くも、短歌が当たり前になつた感覚。
    やはり子どもをもつたといふことは短歌を詠むといふ行為に少なくない影響を与へたのだらう。この身に宿した子どもといふなんとも不可解でそして愛おしい存在を詠む。自分の中にゐるといふのに、自分の力の到底及ばない存在。自分の感覚が最も通じない相手。だからこそ詠む者は心の動きに敏感でなければならなかつたのだらう。
    子どもは日々刻々と変りゆく。昨日できなかつたことが今日できるやうになつてゐる。日常といふ流れの中にはまつてしまへば見過ごされてゆくさうした驚きを捉へやうとすれば、じつくりと自分の中に沈み込んでいくやうな思考、切れ味はするどくもさつくりと深く傷を与へてしまふやうなことばでは、子どもを詠めない。話す人間を前にしてことば遣ひを無意識に変へるやうに、短歌もまた変はつてゆく。関係の中で生まれる短歌とはさういふことではないか。
    また子どもが成長していつたり、自身が老いてゆけば出会ふものもかはつていくはずである。さうしてまた、短歌は見せ方を変へる。

  •  以前はハードカバーで読んで、今回は文庫で購入。
    子供を生んで育ててる女性には共感を持てる短歌がたくさん。
    「バンザイの姿勢で眠り入る吾子よ そうだバンザイ 生まれてバンザイ」
    バンザイっと一緒に思ったら、楽しめる。

    育児日記をずっとつけているけれど、クドクドと書いた文章より、俵万智の短歌1つの方がその場面や、一瞬を鮮やかによみがえらせる。
    さすが!
    上記の歌でなんとか育児のつらい時期を乗り越えた。

  • あとがきに「子どもの歌が圧倒的に多い。ちょっとどうかと思うほどたくさん作ってしまった。」と書いてあるだけに、ホントそのとおり
    妊娠、出産、育児のありふれた光景を31文字にしていて、世のお母さん達は「うんうん」ってうなずくんだろうけど、子ナシの私は・・・

  • なんてやさしい歌集なんだろう。
    『サラダ記念日』『かぜのてのひら』『チョコレート革命』と順に追っていき、ずっと彼女の恋の歌に自分を重ねつつ味わってきた。
    2005年発行の第四歌集となる本書は作者が30代半ば~40代初めの歌を収めたもので、2003年に生まれたお子さんの歌が大変多く含まれる。
    子を持たない私は親の目線を知らない。だから本作品のほとんどの歌に共感はできない。
    でも一番好きな歌集を問われれば間違いなく『プーさんの鼻』と答える。

    いくつか、なんとなく俵さんらしくないというか、想いをそのまま詠まれた歌があるように感じた。決して悪い歌ではないのだけど、素直にひねらずすとんと詠まれた歌。
    例えば“おむつ替えおっぱいをやり寝かせ抱く母が私にしてくれたこと”。

    『かぜのてのひら』のあとがきにて、収める歌の選択にあたりもう二度と歌えないものだと思うと落とす勇気が鈍ってしまう、点が甘くなってしまった、というような事が書かれていた。
    『かぜのてのひら』には退職する高校の教え子たちと接する中で生まれた歌が多く収まっている。
    そして本書のあとがきでは、短歌は私と愛しい人との間に生まれるのだと綴られている。

    子供との間に生まれた歌、それはまぎれもなく愛としか呼べないものだ。
    生まれ落ちた愛を全て取っておきたかったのかもしれないと思った。
    親に愛されたという確かな記憶はその子の人生においてずっとずっと強い御守りになる。
    それがこんな風に形あるものになっていれば尚更。
    本書は歌集であり、育児記録であり、お子さんへのとてつもない贈り物なのだと思う。


    ◆特に好きな歌を三首だけ

    “何度でもぴょんぴょん跳ねる膝の上ここからここから始まってゆく”
    →本歌集ではリフレインが印象的な歌が多い気がした。お母さんのお膝の上でにこにことご機嫌な赤ちゃんが目に浮かぶ。一つ前に友人の死を悼む歌が配置されており、未来の希望に満ちあふれたこの歌が一層輝かしく感じられる。

    “たんぽぽの綿毛を吹いて見せてやるいつかおまえも飛んでゆくから”
    →未来への期待がたんぽぽの明るい黄色に重なるもいつか巣立ってゆく事へのさみしさがほのかに漂う。
    おまえ呼びに抵抗があるタイプの私である。だけど、本書の『おまえ』はむしろこれでなければという感があった。慈しみの対象としての『おまえ』という二人称。

    “「かーかん」と呼んだ気がする昼下がりコスモスだけが頷いている”
    →一首でも良いのだけど、歌集として連作で読んできたからこそ一入心を打たれた。おなかの中から始まり、生まれでて、名付けられ…この歌に至るまでの110頁余り、作者と一緒に成長を見守っている気持ちで読んできてからのこの一首。思わず泣かされる。
    やがて「かーかん」は何度も呼ばれ、「かーかん」にはしっぽが付く。それに何度だっていつだって応える歌がまた。

  • サクサク読めてよかった

  • 情景が目に浮かぶ。

  • 【いちぶん】
    子どもの歌、恋の歌、家族の歌……。短歌は、私のなかから生まれるのではない、私と愛しい人のあいだに生まれるのだ。
    (p.154)

  • 俵万智は、言葉の繰り返しがうまいなぁと思う。吾子とかみどりごとかいうのが中村草田男っぽい。

  • 詩や短歌の読み方というものは知らないけれど、ある日懐かしくて『サラダ記念日』を手に取った。中学?か高校?の教科書で見かけて以来。それから、俵万智さんの詩集は時々読むようになった。簡潔で、優しいのに、鋭い言葉の数々。浮かんでくる情景はくっきりと鮮明で、まるで写真を見ているよう。でも写真とは違い、いつまでたっても色褪せない。たった31文字の中に、これだけのものを込められるなんて、素直に、すごいな、と思う。

  • キョンキョンの書評の本を読んで,興味を持ったので図書館から借りてみた。

    興味深い表現がいっぱい。

  •  子どもに関する歌が多い歌集。「とりかえしつかないことの第一歩 名付ければその名になるおまえ」にハッとさせられた。その子が一生背負うことになる名前を決めるって大それたことで怖い、と正直に思った。とはいえ私は子育て未経験者なので、今は恋愛に関する歌の方がグッと印象的。
     「三文小説に三文の値打ちあることを思いて人と別れゆくなり」や、「留守電にメッセージなく真夜中に君が残した着信履歴」が絶望的に心に響く。読む時によって印象に残る歌は変わるだろうけど、特に母になった時がきたら必ず読み返したい歌集。

  • 母になってみると、わかるわかると思う歌ばかり。
    「どれもどれもよし」とか、とても納得。充実した時間を送って子どもが着々と育っていると、自分が何者かになれたかのように思えるから。
    10才以上年配の方が出産されたのは、本当にすごいなぁ。よくできたなぁと思うばかり。
    そういう意味では、「自分の時間がほしくないかと聞かれるけど、その時間を子どもと過ごしたいよ」みたいな歌には共感しかねた。自分の時間ほしいよー!
    年齢重ねてから母になったら、こう思ったのかも知れない。

  • 20代『サラダ記念日』の鮮烈なデビューから『チョコレート革命』を経て、『プーさんの鼻』。俵万智さんの歌は今、円熟期。子どもがお腹にいる時から歌い始められ、誕生後は日々の成長を、溢れるばかりの愛情と感嘆を込めて歌い上げて行く。「ろうそくの炎初めて見せやれば『ほう』と原始の声をあげたり」

  • プンプンの合間の箸休め的な一冊。

    ”アボガドの固さをそっと確かめるように抱きしめられるキッチン”

    サラダ記念日といい、チョコレート革命といい、
    この女性の食べ物の歌はなんというか、愛おしい。ずるい。笑



    ”まっすぐに怒るあなたに背中から毛布をかけるように愛した”

    良いなぁ、こういうの。



    ”言葉ではなくて事実を重ねゆくずるさを君と分かちあう春”

    やばいなぁ、こういうの。



    でも、この歌集のキモは、シングルマザーになってからの様々な歌。

    ”どこまでも歩けそうなる皮の靴いるけどいないパパから届く”

    ずるくて、でも愛おしくって、やばい良いなぁ。

  • その瞬間をとらえる短歌。
    うんうん。。わかる。わかる。
    ちょっとこれは駄作の気もする。

    あとがきの文体も好きだ。

  • 妊娠・出産・子育てなど、生活の何気ない感動一つ一つを、こんなにも鮮やかに切り取ってくださいました!
    さすが、俵万智さん☆

    母になった私達の気持ちを、驚くほどリアルに表現されてるのは、きっと短歌ならではかと。
    ドキッと気付かされたり、共感できて癒されたり…
    「ちょっと子育てに疲れちゃってるなぁ…」という方には特に、オススメしたい一冊です♪

    短歌どっさり!な代わりに、歌だけなので、かなりの想像力と解釈力が求められるかも?
    ちょっと大変〜という方は、『たんぽぽの日々』の方が、エッセイでもあるので、読みやすくてオススメです(^O^)

  • 「サラダ記念日」の俵さんの短歌集
    母親になった俵さんの短歌は、目線がやさしくなっています。

  • 「あなた」という言葉のもつ愛情が、恋人からわが子へと変遷を遂げた、俵万智のメルクマール的作品。愛らしいです。

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著者プロフィール

俵 万智(たわら・まち):1962年大阪府生まれ。歌人。早稲田大学第一文学部卒業。学生時代に、佐佐木幸綱氏の影響を受け、短歌を始める。1986年に角川短歌賞、1988年に現代歌人協会賞を受賞。『サラダ記念日』『プーさんの鼻』『考える短歌』など、歌集・著書多数。2021年度朝日賞受賞。歌誌「心の花」所属。最新刊は第七歌集『アボカドの種』。2023年、秋の褒賞で紫綬褒章を受章。

「2026年 『短歌ご一緒しませんか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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