蒲生邸事件 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 5691
レビュー : 593
  • Amazon.co.jp ・本 (686ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167549039

感想・レビュー・書評

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  • タイムスリップしてしまった主人公。しかも行き着いた先は、歴史で習った二・ニ六事件の真っ只中の軍人のお屋敷!!
    続きが気になって気になって、どんどん読ませてしまうあたり流石宮部先生です。
    主人公の孝史が当時の民衆を眺めながら一人「とあること」に気づいた瞬間は、私も雑踏の中で自分一人だけ音が途切れた空間にいるような感覚に陥りました。
    でも「ここぞ」というときに今一つグッと来なかったのは、孝史やふきや平田や貴之といった主要人物にあまり感情移入できなかったせいかな…。。
    人生経験を積んでから、もう一度読み返したいと思います。

  • 早、執筆当時と今との時間の隔たりに驚く。

    高校時代に読んだ本を、久しぶりに読み返してみました。

    海軍3部作などを読んだ今、見返すとまた違うかしら、と。

    90年代の、自分が高校生だった頃には違和感が無かったのに、今読むと、高校生がこんな言葉を思うのか?
    かと思えば湯たんぽがわからなかったりという、作品が書かれてから20年の隔たりを感じるように。

    そうか、湯たんぽは2000年代にブームが来たからわかるけど、90年代だと全然生活に湯たんぽが無かったのかななんて思い出しながら読みました。

    NHKかな、ドラマ化されていた記憶もあって、いしだ壱成さんと奥菜恵さんのイメージがちらつくこともありましたが、いしださんはともかく奥菜さんは今の姿を知ってしまっているのでなかなかふきには重ならず。

    今や、執筆当時の宮部みゆきさんの方が近い年齢になった今は、宮部さんが何をきっかけで構想を深め、この事件と平田たちの設定を結び付け、孝史を連れてきたのかしら、という事を考えながら読みました。

    火車(だいすき)と理由の間における作品。ほんとうに、複数路線の小説を、いろいろ描かれる作家さんですね。

  • 最初は主人公:孝史の身勝手さに不満も感じたが、読み進むうちに何となく理解できた。最後のところでの謎がすべて解けて、出会いがあり・・
    厚い本で、途中で投げ出したくなりましたが、後半から楽しく読み進めることができた。
    実際の出来事かと思ったが、後書きでまったくの架空の話とあったが、本当にあった話とおもってしまった。

  • 最後のシーンが好き♪

  • 宮部みゆきのタイムトラベル・ミステリー。226事件勃発で緊張感が走る街。混乱の中、とある陸軍大将邸では奇妙な事件が起きていた……というもの。
    それほど入り組んだトリックというわけではありませんが、歴史の業を扱ったテーマ性に惹かれました。
    過去を見下ろせる立場にいる未来人が、自分の立場にどう向き合い、どう立ち向かおうとするのか。「現在」に生きる意味。細部は変えられても、歴史の流れは変わらない。だからこそ。

  • 2019.08.04

    好きなタイムトラベルものなのだが、のめり込むまで時間がかかった。
    最後は切ない。だけど、とても綺麗だ。

  •  二・二六事件が、テーマだ。二・二六事件と言えば、大宮白鳥座の大画面で観た映画『動乱』が印象に強い。その映画では、高倉健が青年将校を、吉永小百合がその恋人を演じたが、憲兵という複雑な立場を演じる米倉斉加年、永田鉄山を斬撃する相沢三郎中佐を演じる田村高廣の存在感も強烈であった。その二・二六事件が本書の物語の時代背景となり、舞台となる、当時のミステリと完全に思い込んでいたぼくは、ページを開いて間もなく呆気に取られることになる。
     何と、この作品は、タイムトラベラーものなのであった。現代に生きる18歳男子の主人公が、あることがきっかけで二・二六事件の起こる夜に時間移動してしまう、という反則技もいいところの小説。そう、主人公がどこにでもいる平均的で、勉強も大してやっていないから、二・二六事件の内容や戦争に傾いてゆく時代背景さえ全くわかっていない現代っ子なのだ。そしてこの点こそ、本作品の味噌なのである。
     本書は、実は読みそびれていた一冊でもある。ぼくに書店で買われてから、6度の引っ越しを経て、ずっとぼくとともに移動を続け、今現在、北海道のとある丘の上にある我家の書棚に収まってなお、未だに読まれることなく眠っていた一冊。本書は前述のとおりタイムトラベルものなのだが、今こうして手に取ってみると、自分もまたこの本を通して、作品が書かれた時代にタイムスリップしてきたみたいな気になる。ちなみにこのハードカバーをアマゾンで買おうとしても検索にヒットしない。いくつかの形で文庫化されたものだけが、市場に現存する。そういう意味では旅を続けたこの本は貴重な存在と言える。
     さて、もう一度言うが、これは23年前の1996年に出版された本である。物語のスタート設定はさらにその2年前の1994年。さらに作品のその時制から、主人公はタイムスリップして二・二六事件当時の1936年2月26日に飛んでしまう。つまり読者であるぼくが生きている現実の時間も、ストーリー内を生きる主人公の現実の時間も、超えて、物語は1936年の2月に起こることになるのだ。読書そのものがそもそも時間旅行的な体験であるということに、ハタと気づく。何だか、めまいがしてくるけれども。
     タイムスリップを起こさずに二・二六事件を背景にした当時の人だけにやるスリラーだったとすると、本書は完全に別のミステリー作品に仕上がるだろう。別の事件として。別の物語として。しかし、本書はタイムスリップという仮想の条件を加えた物語なので、通常のミステリーとは完全に袂を分かつ。事件の性質もそういうSF的趣向を加味して対処することになる。
     SFはちょっと苦手だという方にも楽しめるのは、歴史の勉強が不十分な現代の若者の眼を通して、2月26日の戒厳令の夜を凄し、雪降る帝都を歩き回れるということである。その時代の人からの視点ではなく、現代の平和ボケした脳味噌とそこから直列に繋がった若者の眼差しとで。
     なぜ作者はこんな手法をこの歴史的大事件に使ったのだろう、という疑問に曝されながら読み始めたぼくは、いつかその意味を理解し始める。現代との対比的な形でこの事件を見る少年の視点は、戦無世代の作者を含めて、今これを読むぼくらの視点でもあったのだ、と。避けられなかった戦争と、多くの犠牲の歴史とを、エンターテインメント作品を通して改めて捉えることが狙いでもあるのだと。
     アニメ映画『君の名は』は、この作品が書かれた当時には無論なかった。想起される破滅と、これを避ける行動、という意味ではアニメ映画でははっきりしているが、もう避け得なかった戦争は結果を覆すことができない。だからこそ、こんな形で再現するしかなかったのだろう。宮部みゆき流話法をそういう意味付けで楽しんでもらえれば有難いところである。

  • 長い!でも中盤から展開が良くなり、解決に向かっていく。過去へのタイムトラベラーの話と推理が入り混じった感じ。辻褄合わせって、やっぱり難しい。そこはやはり時空を超えると必ず生じる問題。

  • タイムトラベルもの特有のキュッと締め付けられる切ないラスト。さすが宮部みゆき。

  • 歴史は決まっているという考え、すごく共感した。
    変えられるのは歴史の大流から見れば些細なこと、本筋は変えられない。
    この事実をどのように解釈してタイムトラベルするか、二つの意見で動く対比が面白かった。
    ただ、深夜の若者トーク番組で2.26事件の状況説明させたり、火事後の孝史の状況説明を祖母への手紙にしたりと、唐突感があり違和感でしかなかった。

著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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