誰か―Somebody (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 6442
レビュー : 586
  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167549060

感想・レビュー・書評

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  • アンソロジーで短編を読んだことはあるけれど、宮部みゆきさんの長編は初めて読んだ。
    杉村の視点でたんたんと描かれていて、するすると読めてしまった。
    杉村さん、自分が何を持っていて、自分にとって何が大切かを知っているのが良い。

    「小さなスプーンおばさん」がアニメオリジナルだと思い込んでいたのが、実はアルフ・プリョイセンさんの本があることを教えてもらったし、歴史博物館を順路の逆にまわってみるのも面白そう。

  • 久しぶりに読んだ小説。今まで読んだ宮部みゆきの作品に比べると比較的ホラーの要素が弱く、人物描写に重きを置いたような作品だった。それでも次の展開が気になってどんどん読みたい気持ちにさせるあたりは流石。

    人は誰もが平穏な顔をしているが怖い過去を持っている。ピンチになれば何でもする、というセリフが妙に頭に残った。また、どんなバカでも相手の嫌なこと言われたくないことを的確につくことができる、というセリフも妙に納得いった。

    お金持ちの家に逆玉の輿で結婚した彼の葛藤の描き方も非常に上手だった。もう一波乱あったらさらに面白かったのかな~と思う。

  • 「名もなき毒」の方が面白かったけど、なかなかでした。

    毒舌と言われる私だけど、あんなに言ってしまう勇気はない…と言うか、そこまでの毒は持ち合わせてない…多分。

  • 「誰か―Somebody」
    杉村三郎シリーズ第1弾。


    最新シリーズ第5弾「昨日がなければ明日もない」の第1弾。どういうわけか第1弾を読まずに以降を読んでしまっていた為、振り返りで手に取った。


    杉村三郎が舌打ちをし、殴ってやらんばかりの怒りを抱き、どうしようもない空しさにくれる。


    義父・今多コンツェルン会長の個人運転手・梶田信夫の人生について本を出版したいという願いを持った娘二人の相談に乗った杉村は、梶田の人生を遡っていく。梶田は、自転車に轢き逃げされ、打ち所が悪く、そのまま亡くなっていた。杉村は二人の気持ちを汲み、現場を訪れ、行動を開始するが、意外な情景が広がり始める。


    父の事故死の真相と大好きな父の人生を形にしたいという思いから徐々に遠ざかっていく。きっかけは、姉の記憶にある誘拐事件であり、それが結婚を控える彼女を不安にさせていた。この不安が大きなキーになるのだが、恐らくもう一つのキーは、杉村が水津に出向いたことだろう。


    着メロに使われた曲をヒントに水津に一人で向かった杉村が見た光景は、余りにも衝撃的だった。当初の目的から離れた所に着地した結末には、腹立たしい。妹が抱いていた姉への思いが、結局は男女のいざこざ(それも胸糞悪い)に落ち着いた訳で、これは個人的に好みじゃないパターン。見られたくない悪業を見られ、それを杉村に詰められる。杉村としては理解できないから正論をつく。この言われように相手は逆切れする訳だが、正しいことを言ってるはずの杉村が虚しくなる。この水津のシーンは無くても良かった、姉の言葉を借りるならば、なんで水津に行ったんだ、となる。


    また、杉村が水津で見て聞いたことを姉に明らかにした点も賛否は分かれそう。個人的には、杉村の気持ちが理解でき、伝えた方が姉の為だと思う。じゃないと後でもっとよくないことが起きる可能性が大。ついでに言ってしまえば、結局はダシに使われたようなもんで、その使われ方も散々。よく殴らなかったなと思うくらいなものなのだ。怒りと空しさを込めても良いんじゃないか。


    「名もなき毒」でも散々な目に会った杉村三郎だが、初っ端も散々な目にあっていた。妾の旦那なんか言われて耐える杉村。分からん奴には殴っても良いんだよと伝えてあげたい。しかし、桃子のためにきっと我慢したのだろう。


    読了前に想像していた結末を裏切られた。ちょっと腹立たしい意味で。


  • 初めての宮部さんの作品。
    これほど有名な作家さんなのになぜ今まで手を出してこなかったのか不思議だが、読み始めて間もなく、あぁさすがだなぁと感嘆した。物語の序盤が平坦になりがちな作品は多いが、心地よいペースで読み手を引きつける流れが奥行きをつくって、盛り上がる終盤まで紡いでくれている。あとは、あえて細かい伏線まで文字で回収してくれているのが、読者の想像に任せる手法より読後の開放感があって好きだなぁ。
    なにより、主人公の人の良さが魅力的。理想とする価値観の持ち主だからこそ読んでいて共感するし違和感がなくて心地がいい。
    このシリーズを彼の両親に勧められて読んだのだが、大切な人、近しい人と同じ本を好きになれることがこんなに嬉しいとは知らなかった。

  • すごい面白かった!
    ずっと続きが気になるから読み始めたら一気。

    聡美の性格はなんとなく自分にも通じるものがあって終始共感。
    それだけに、杉村さんの最後の言葉の
    「あなたがどんなにビクビクして気をつけていても、何かが襲ってこないか確かめていても、それは何の備えにもならない」
    というフレーズが自分にも突き刺さる…

    確かに言う通りなんよなぁ。

  • 杉村三郎シリーズ、記念すべき第1弾。
    宮部みゆきは語りが巧いなぁとしきりに感服しました。デティールまで手を抜かないし、どの人物もいきいきと描かれているため、奥行きのある世界観になっています。

    今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たち(聡美、梨子)の相談を受ける。亡き父について本を書きたいという彼女らの思いにほだされ、一見普通な梶田の人生をたどり始めた三郎の前に、意外な情景が広がり始める…。

    派手な作品ではありませんが、紡がれる丁寧な描写によって、ぐいぐい引き込んでくれます。生真面目で心配性な姉の梶田聡美と、直情的で利発な妹の梨子が対照的。梨子のアイスティーを「ずずず」とストローで吸う場面であったり、カバンを「でん」と勢いよく置くところなど、細部の擬音の使い方が彼女の性格をよく表しています。だから現代ミステリーなのだけれど、生活場面の描写を読んでいる最中も楽しい。

    梶田信夫を轢いた自転車の人物が逃走したため、本の出版により犯人を捜し出せないかと意気込む梨子。一方、姉の聡美は自身が4歳のときに誘拐された事件と、父の事故死が関係しているのではないかと訝る。
    杉村は警察でも探偵でもない、お人好しのサラリーマンなので、事件の真相を直接的に暴いていくわけではありません。むしろ今多コンツェルンの娘婿という「逆玉の輿」と周囲から揶揄される弱めの立場。微力ながらも、徐々に真相に肉薄していくところは、いわゆる「名探偵もの」にはない説得力があります。
    また、終盤まで淡々としているのかなと思いきや、現実の逆襲というか、手厳しい展開が待っていますが、そこは読んでのお楽しみということで。

  • 探偵の片りんがあらわれていました。

  • 私にとって、初めてとなる宮部みゆき作品。

    前半の軽快かつ細やかな会話や人物・舞台描写。
    読み進めるにつれ、尻上がりに広がり・深まる、登場人物の人間性とその裏に潜む謎。

    おかげさまで、一気に宮部みゆきファンになりました。

  • 純粋なミステリーの情報量として考えると、人物描写が多く冗長に感じる。
    最後は人間の裏側が暴かれるので、後味がいいとも言えない。
    ただ、それらの要素が合わさることで純粋なミステリーだけでは表せない
    人間の深みのようなものを突きつけられているように思う。すごく綺麗にまとまった作品。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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