楽園 上 (文春文庫 み 17-7)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167549077

作品紹介・あらすじ

未曾有の連続誘拐殺人事件(「模倣犯」事件)から9年。取材者として肉薄した前畑滋子は、未だ事件のダメージから立ち直れずにいた。そこに舞い込んだ、女性からの奇妙な依頼。12歳で亡くした息子、等が"超能力"を有していたのか、真実を知りたい、というのだ。かくして滋子の眼前に、16年前の少女殺人事件の光景が立ち現れた。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    「模倣犯」の続編という気持ちで読みだしたが、どちらかというと前畑滋子目線でのスピンオフのような作品。
    その時点で「ちょっと違う感」もあり、また模倣犯とは全くの別作品になるのは少しガッカリしたかな。
    個人的に、模倣犯の時も前畑滋子あんまり好きじゃなかったし(笑)
    また物語の展開が全然読めない為、上巻を読み終わった時点ではなんとも言えないかも。。。

    ってゆーか、この作品に限らず宮部みゆきの作品って、序盤で謎の場面とかばかりで全く展開が読めなくて、、、なんというかスロースターターすぎる!!笑
    たしかに、宮部流の終盤の巻き返しは確かに大好きだけどさ・・・

    不明点があまりにも多すぎるので、上巻の時点では評価し難い作品でした。
    宮部みゆきのこだわりでもあるタイトルの伏線回収も気になりますね。

    すべての謎が繋がり、物語が一本化される下巻の巻き返しに期待したいです。


    【あらすじ】
    未曾有の連続誘拐殺人事件(「模倣犯」事件)から9年。取材者として肉薄した前畑滋子は、未だ事件のダメージから立ち直れずにいた。
    そこに舞い込んだ、女性からの奇妙な依頼。
    12歳で亡くした息子、等が〝超能力〟を有していたのか、真実を知りたい、というのだ。
    かくして滋子の眼前に、16年前の少女殺人事件の光景が立ち現れた。

    16年前、土井崎夫妻はなぜ娘を手にかけねばならなかったのか?
    等はなぜその光景を、絵に残したのか?

    滋子は二組の親子の愛と増、鎮魂の情をたぐっていく。
    その果てにたどり着いた、驚愕の結末。それは人が求めた「楽園」だったのだろうか――。
    進化し続ける作家、宮部みゆきの最高到達点がここにある!


    【引用】
    1.滋子の目には、この三日間がその後16年間の沈黙の素であるように見える。この三日にすべてが決まってしまった。隠し通そう、と。

    2.なぜ、自ら手にかけた娘の亡骸を床下に、十六年も同じ場所で暮らしてゆくことができたのか?
    そのあいだには、楽しいこともあったろう。残った次女と家族三人で、笑い転げたこともあったろう。次女の成長を喜んだことも、彼女の将来を心配したこともあったろう。
    その足元には常に、長女の屍骸が埋もれているのに。

    3.また絵の数をかぞえながらページを繰って、十二作目のところで滋子は手を止めた。
    ただ止めたのではなかった。凍ってしまった。
    滋子はこの家を知っていた。
    首筋と二の腕に、ぞわりと鳥肌が浮いた。
    “山荘”だ。

    4.あの報道番組をご覧になっていたなら、ご記憶でしょう。
    わたしは犯人を、安っぽい模倣犯だと詰りました。でも、本当の模倣犯はわたしの方でした。
    わたしこそが、犯人をあの犯罪へと突き動かした衝動に魅せられて、彼らの後をついていった模倣犯でした。


    【メモ】
    p68
    冷静だ。抜け目ない。
    一方で、その三日間に地獄の苦しみを味わったはずだ。警察に行こう。捜索願を出すのではなく、娘を殺したと白状するのだ。その方がいいという思いに、揺れなかったわけがない。
    だが、土居崎夫妻にはもう一人の娘がいた。自分たちが自首すれば、この子は殺人犯の子どもになる。

    滋子の目には、この三日間がその後16年間の沈黙の素であるように見える。この三日にすべてが決まってしまった。隠し通そう、と。


    p69
    なぜ、自ら手にかけた娘の亡骸を床下に、十六年も同じ場所で暮らしてゆくことができたのか?
    そのあいだには、楽しいこともあったろう。残った次女と家族三人で、笑い転げたこともあったろう。次女の成長を喜んだことも、彼女の将来を心配したこともあったろう。
    その足元には常に、長女の屍骸が埋もれているのに。


    p139
    また絵の数をかぞえながらページを繰って、十二作目のところで滋子は手を止めた。
    ただ止めたのではなかった。凍ってしまった。
    滋子はこの家を知っていた。
    首筋と二の腕に、ぞわりと鳥肌が浮いた。
    “山荘”だ。
    この家のフォルム。窓の位置。見間違えるはずがない。あれから1日だって忘れたことはないのだから。
    九年前に滋子が関わった、あの連続殺人事件の犯人たちのアジトである。


    p212
    「刀自(とじ)さんですね」
    敏子はきょとんとする。「は?何ですか先生」
    「あ、ごめんなさい。とじ。家政を仕切るご婦人のことですよ」


    p320
    「わたしは、たぶん犯人には勝ったのだと思っています。まぁ、騙し討ちでしたけどね」
    野本刑事は、いっそう硬い表情になっている。
    「でも、事件そのものには負けてしまいました。事件の大きさ、闇の深さに、わたしは自分の願望・・・誤解を恐れずに申し上げるなら、当時初めて犯罪ノンフィクションを手がけたライターときてのわたしが望んでいた要素を、勝手に見出してしまいました。勝手な筋書きをつくって、勝手に踊りをおどりました。そして自滅したんです」

    「あの報道番組をご覧になっていたなら、ご記憶でしょう。わたしは犯人を、安っぽい模倣犯だと詰りました。でも、本当の模倣犯はわたしの方でした。わたしこそが、犯人をあの犯罪へと突き動かした衝動に魅せられて、彼らの後をついていった模倣犯でした」


    p492
    「あなたはもう少し真面目な方だと思っていた。まったく、時間を無駄にしてくれたものです」

    渡ってしまった。ルビコン河だ。
    あたしは認めた。完全に河を渡って対岸に立った。
    萩谷等は異能者であったと。
    もう、道はそれしかないのだ。ほかに考えようがない。迷いようもない。等が確かに他人の記憶を「見て」いたのだと考えないことには、辻褄の合わないことがあまりにも多い。
    等には見えたのだ。見えていたのだ。

    萩谷等は、どこの誰の記憶から見てとったのか。
    そこまで詳しく茜の死を知っていた人物と、等はどこで接触していたのか。

  • 主人公の前畑滋子。既視感があると思ったら案の定、『模倣犯』のライターだったとは!

    ひとこと、拍手を送りたくなる作品だった。
    人情味あふれるミステリー。あたたかい涙を流し頁を閉じた。

    殺人事件の多くは家族・身内によるもの。そこには他人にはうかがいしれない葛藤がある。身内に警察のお世話になってしまうほどの行状のよろしくない者がいて、その家族はどうしたらよいのか。切り捨ててしまえるのか。厄介者を抱えた家族はどのように幸せをつかめばよいのか。
    核家族中心の社会においては、けっこう見過ごされがちな大きな課題だ。

    「楽園」というタイトルの意味がまだ腑に落ちてはいない。しかし、神の怒りにより楽園を追われた人間たちが楽園に戻りたいともがくのが生きるということなのかと、自身の頭に納得させておこう。

  • 模倣犯からかなりの年数を経て、会社の人の勧めもあり読んでみた。

    模倣犯のおさらいが多く、なかなか話に進展が無い気がする。
    少しずつは前に進んでいるが、速度がゆっくりだと感じた。

    模倣犯を読んでいないと少し読みにくいかもしれない。

    後半に来てやっといくつかの事実が明らかになってきた。
    今後の展開に期待大。

  • 2日間朝から晩まで夢中で読み終えた。
    模倣犯のスピンオフ物語。

    描写力とぐんぐん引き込んでくるストーリー展開。

    本当に等君は特殊能力を持っているのか、
    間に入ってくる断章との繋がりは。
    どんな結末を迎えるのか。

    早く下巻が読みたい。


  • 2010年2月10日に第一刷が出て、15日に既に第二刷、それが届いたのが先週20日だったのだが、読み終えたのが今日です。5日で約1000ページを読んでしまいました。相変わらずのストーリーテラー振りです。

  • 面白い。続きが気になります。

  • 【1.読む目的】
    •趣味、娯楽
    •本を読んで感性を豊かに

    【2.気付きや気になった点、面白かった点等】

    【3.感想】
    •16年前の事件の伏線が回収されない、不完全燃焼!!と思ったら「模倣犯」の続話の設定だった模様(リサーチ不足
    •ところどころに入れこまれる昌子視点の章がどういう風にリンクするのか気になってどんどん引き込まれた。
    •まさに、おばけ屋敷。怖いんだけど、怖いもの見たさ
    •結局サイコメトラーなんかい、ってところがツッコミ要素。ミステリーだからそこまで謎が解かれたらよかったなぁ。

    • きのPさん
      kokko_tokyoさん
      いつも素晴らしいReview有難うございます(^^♪
      「結局サイコメトラーなんかい!」
      本当にそこに尽きま...
      kokko_tokyoさん
      いつも素晴らしいReview有難うございます(^^♪
      「結局サイコメトラーなんかい!」
      本当にそこに尽きますよね(笑)
      2020/05/31
  • まだまだこれから面白くなるかなと思った。

    台詞とせりふの間に挟まれる独り言的な部分があんまり好きじゃない。

    描写が正確で一人で寝るのが怖くなりました。

  • 「模倣犯」事件との、緩やかながらも濃厚な繋がりの物語。やはり、巧い!

  • 面白かった「模倣犯」つながりで手に取りました。
    下巻が楽しみ。

    都度でてくる「断章」、で書かれていることがつながってくるのか不気味。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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