楽園 下 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2010年2月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784167549084

みんなの感想まとめ

母の物語とも言える温かさと、悲しみや痛ましさを含んだ優しさが印象的な作品です。宮部みゆきならではの緻密な情景描写や心理描写が際立ち、読者を引き込みます。前作『模倣犯』のキャラクターであるジャーナリスト...

感想・レビュー・書評

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  • 母の物語とも言えるような温かさがあり、悲しみや痛ましさを含みつつも全体として優しさに包まれていた。 そして、宮部みゆきさんらしい情景描写や心理描写の緻密さに改めて感動した。
    どうしても『模倣犯』と比べてしまうものの、上巻で散りばめられた超常現象や断章が下巻でぴたりと噛み合っていく展開は圧巻。
    事件は解決したが、重苦しさが残る中で迎えるラストには救いがあり、読後に温かな余韻が残った。

  • 【感想】
    早速下巻を読み終わりました!
    世間一般ではかなり評価が高いと聞いていましたし、とても期待して読み始めたのですが、なかなか辛いレビューになりそうです。。。
    本作品を面白かったと思っている方にとっては気分を害するレビューーかと思いますので、回れ右でお願い致します。。。。




    毒舌だが、かなり期待していただけに、読み終わった後に感じた肩すかしは相当だった。

    え?これだけ引っ張って、結局スピリチュアル路線なの?っていうのが一番の感想。
    勝手だが、こちらとしては本格的なミステリーだと思って読んでいただけに、ファンタジーな要素を加えられてしまうと拒否感が出てしまう。
    サイコメトラーとか超能力とか母親のカンとか、結局理屈が一切ない展開だったため、ちょっぴり非現実的で面白くなかったな・・・
    「模倣犯」の続編ということで、ハードルがかなり高かったのもあるけども、大きなどんでん返しはほぼナシっていうのはどうでしょう。
    もう少ししたら面白くなるかな?っていう期待を抱きながら、何もなくスンナリと読み終えてしまったような印象だった。

    あと、これはかなり私情を挟んじゃいますが・・・
    本作の主人公である前畑滋子が、本作でもやっぱり好きになれなかった。
    この方の「私が正義です」感や、「私は全部わかってますよ」感は、本当にイケ好かないというか。
    そもそも、いくら依頼された事とはいえ、他人の家庭に土足でドカドカと入り込み、自身の正義感を説く権利が彼女なんかにあるのか?
    ここまで来ると、マスコミっていう職種自体が僕は嫌いなのかも。。。

    茜が殺害された謎もその他の事件も、前半から気になっていた「断章」も、そして「楽園」というタイトル自身も、すべてが悪い意味で想定の範囲内でした。
    辛口・批評が続いて恐縮ですが、読者の期待を良い意味で上回る作品を、宮部みゆきには創ってほしかったですね。

    言い方悪いけど、宮部みゆきの今まで読んだ作品の中で、唯一面白くなかった作品でした。残念・・・・


    【あらすじ】
    ライター・滋子の許に舞い込んだ奇妙な依頼。
    その真偽を探るべく16年前の殺人事件を追う滋子の眼前に、驚愕の真実が露になる!
    彼の告白には、まだ余白がある。まだ何かが隠されている。
    親と子をめぐる謎に満ちた物語が、新たなる謎を呼ぶ。


    【メモ】
    p17
    ・タイトルの「楽園」とは、「あおぞら会」のこと??
    「素敵なところですね」滋子は率直にそう切り出した。
    「何から何まで綺麗に整っていて、清潔で。わたしが子供の頃にこういう場所があったなら、入り浸りになっていたでしょう。天国みたいです」
    お世辞ではないし、大げさな表現でもなかった。まさしくゴージャスなのだ。


    p213
    「私も家内も、これは天罰なんだと思っておりました」
    土井崎夫妻にとっては、シゲに金を払い続ける事が、いつしかどこかの時点で、茜を殺害した罪を償うことにつながってしまったのだ。
    実際問題として、いくらシゲの言いなりになろうと、夫妻の自責の念が薄れるわけはないし、罪が償却されてゆくわけもない。だが、そういう錯覚を買うことはできた。
    そう、土井崎夫妻はシゲの沈黙を買っていたのではない。彼らが金と引き換えに得ていたのは、この錯覚なのだ。


    p234
    「誠子には会えません。どの面下げて会うんです?何て言うんです?私らが本当のことを話せばあの子も救われるなんざ、あんたみたいな部外者の勝手な想像だ」


    p235
    高橋弁護士は言った。
    「あなたも過去に一度は大きな犯罪と渡り合ったことのある人だ。わかるでしょう?こういうことでは、全部がすっきり割り切れて、全員の気持ちが落ち着くなんてことはあり得ないんです。他人が救うことはできないし、誰かの告白で何かが解決するということでもないんです」


    p243
    「シゲは、生きてるのかな?」
    どうしても釈然としないのだ。土井崎元の告白には、まだ余白がある。語られていないものがある。まだ何かが残って、隠されている。そう思えてならない。


    p292
    茜は、自分を叔父さんたちの養女にしてほしいと言った。
    「いつもふくれっ面で、挨拶もろくにしない子ですのに、そのときだけは内緒話でもするみたいにこっそり近づいてきました」
    木村氏も強く頷いた。「叔父さん家の子供にしてくれたら、ちゃんと勉強するからって言うんですよ。驚きました」
    刹那だが、滋子の心にそのときのあの切実な表情、すがりつくような目の色がくっきりと浮かんだ。
    こんな家から出たい。好んで生まれてきたわけではないこの家、両親と境遇。何から何まで冴えないことばかり。
    ここからもっと明るく豊かな場所に移れるなら、自分だっていい子になれるんだ。


    p296
    「何でもかんでも自分が自分が自分がと自己主張するくせに、悪いことや拙い(まずい)ことだけ他人や社会のせいにするなんて、正しい日本人の考え方じゃありません。輸入物の思想です。昔から日本人は、まず我が襟を正すという生き方をしてきたんです」


    p332
    「三和明夫の頭の中を覗き見ることで、等くんは土井崎茜の死を知りました。彼にとっては不可解で、恐ろしいだけの光景だったことでしょう。なかなか絵にできなかったんでしょうし、それでいて絵にして吐き出さないと辛かったんだとも思います」
    風見蝙蝠のある家の床下で眠る、冷たい灰色の肌の少女。この女の子はこの家から出られなくて、悲しいんだよ。

    p335
    自殺、ではない。むしろこれは真の意味での「事故」なのだ。
    等はふたつの世界を生きていた。車に撥ねられたときは、望みもしないのに生まれながらに与えられたもうひとつの世界が、彼の視界を奪ってしまっていたのではないか。


    p412
    「茜はわたしの娘です。わたしがお腹を痛めて産んだ子です」
    「だからわたしが手にかけました。あの子がああいう人間になってしまった以上、それがわたしの責任です」
    16年の歳月をかけて、土井崎向子はそういう墓碑銘を刻んできたのだ。最初からそう思っていたわけがない。茜の傷を消毒してやった母親が、同じ手で、これほど確信に満ちて茜の首を絞めたのだ。


    p425
    海の向こうの宗教は、人間は原罪を抱えていると説く。神が触れることを禁じた果実を口にして、知恵を知り恥を知り、それによって神の怒りに触れ、楽園を追放されたのだという。
    それが真実であるならば、人々が求める楽園は、常にあらかじめ失われているのだ。

    それでも人は幸せを求め、確かにそれを手にすることがある。錯覚ではない。幻覚ではない。この世に生きる人々は、あるとき必ず己の楽園を見出すのだ。たとえ、ほんのひとときであろうとも。

  • 「模倣犯」のスピンオフと聞いて読んでみた。
    前回の事件から時は経っているけど、滋子は相変わらず突き進むタイプだなあ。
    なんだかふわふわとした事件で、ちょっと消化不良な感じ。

  • 模倣犯で重要な役柄を背負っていたジャーナリスト 前畑滋子が再び活躍するお話。

    さすが宮部先生。読み物としても大変面白いが、読ませるテクニックも凄い。
    文章表現も多彩で飽きることなく読み進められる。

    いくつか伏線の回収不足??が気になったが、私の気にしすぎなのかもしれない。
    宮部先生への期待が上回ってそう思ってしまっただけなのかもしれない。

    模倣犯の回想シーンが多い為、先に模倣犯を読んでおいた方が良さそう。
    私は何年も前に模倣犯を読んでいたが、何となく場面場面を思い出しながら読み進めることができた。

    宮部先生の作品の何がイイって、人情なのかなぁ・・・?
    登場人物それぞれ人間味があって、魅力的だと感じる。

    そのような魅力的なキャラと対峙する犯人の残忍さがその分強調され、
    読者は色々な視点で考えさせられる作品なのだと思う。

  • 彼女と私が同じ歳だとはやはり信じたくはない。一人ひとりの人物がどうしてこうもはっきりはっきり描けるのか。ただ、彼女はやっぱり描けないものがある。恋愛ものと骨太な政治構造である。今回は「模倣犯」のスピンオフ作品。前畑滋子が主人公である。しかし、少しあの事件にかすりはするが、基本的にまったく違う事件を扱う。前畑滋子は子どもを持たないフリージャーナリストである。宮部みゆきと被るところがある。宮部がみる「心の世界」がこの作品なのだと思う。

  • このエンディングはLynyrd Skynyrdの'Free Bird'かJB。
    コレで終わりかと思ったら、あ、アレもあったかという感じでまだまだ続く。波状攻撃。上巻のワケの分からない断章が重要なキーとなってトドメを刺してくるとは。まんまとヤられた。
    そして、手ぐすね引いて前畑慈子の9年前の因縁の事件『模倣犯』(文庫全5巻)が届くのを待っている。早よ届け。

  • かなりくらった。徐々に謎が解けていくわけだけど、爽快感とはハッキリと距離を置いた展開がずっしりと鉛のように腹に残る。特に終盤の滋子と土井崎妻の文字通り「対決」シーンのヒリヒリとした緊張感は圧巻。娘を労るための包帯で…っていうのが何というか、果てしなき業のようなものを感じた。それだけにラストの梅の花の描写があまりにも美しくささやかな救いだった。

  • 面白かったです、萩谷敏子がいい味出してました。
    しかし、主人公の慈子が模倣犯の人だったとは。まったく内容覚えてませんでした。

  • 2日くらいでほぼ一気読みだった。
    前に読んだことがあるはずなのに、すっかり忘れてしまい…
    他の本も途中まで読んで置いているのにそれを押しのけてずっとこちらを読んでいた。
    さすがの宮部さん。ぐいぐい読ませるなぁ。
    現代もの+超能力的なもの、は『龍が眠る』や『クロスファイア』で読み、大好きだ。
    いつも悲しみが伴う。今回の本では超能力だったと結論づけられてはいないけど、どの作品も実際の力の有る無しが主題ではない。
    それぞれの心の動き・ありようや、人との関係がそのことで壊れるまたは繋がる、怒り・悲しみ・恐怖といった感情の動きと着地、そういう、人のダイナミックな生を感じさせる。それを感じさせる宮部さんの筆致がいつもながら素晴らしいと思う。
    他の作品でもそうとうむごいことを書いたり描いたりしてるのに、怖さで終わらず苦しさやつらさが身に迫る文章。

    現代もの、また書いてほしい。切に願っています。

  • 素晴らしいスタートを切った作品を読み進めると、すぐにでも「この作品はどう終わるのか?」を考えてしまうのは、我ながら悪い癖なのかも。
    本作はピタッと来た!予想通りではなく予想を超えた結末ながら、良い終わり方であったな、と。まさに宮部みゆきの、最高到達点!

  • 後半一気に読みきりました。人間の悪意(模倣犯にももちろん繋がります)と、それだけではない泣ける感動があります。親の情にも考えさせられます。はじめて読んだ「火車」にも通じる暖かい読後感が残りました。

  • 「模倣犯」のその後というか、スピンオフ先品らしいが、「模倣犯」の話を話ったく忘れてしまっている私でも、それなりに楽しめました。

    それにしても、重い作品。ありそうで無さそうな家庭を上手く描いているが、そもそも、茜が人生を踏み外した理由が、少し甘い。

    また、誠子はある意味、悲劇のヒロインなのでああいう書き方しか無かったとは思うが、イマイチ、立ち上がってこない。

    私の中では、細かい欠点も目につくので大傑作とは言い難いが、改めて「模倣犯」を読んでみたいと思った。一時、宮部作品は新刊が出ると必ず読んでいたが、この先品くらいから、読まなくなってしまった。未読先品も増えたので、また、読み進めたい。が、似ている作品が多い気がする。

  • 過去の事件に良くも悪くも翻弄される主人公。超能力の話しがどこまで展開するかと思ったが、最後はハッピーエンドで終了し心が温まった。後書きで、「模倣犯」の続編と知り、読んだはずなのに、全く気づかなかったとは!

  • 事故で亡くなった息子の超能力は本物だったのか
    息子が描いた絵で浮かび上がった事件を調べていくうちに、何故夫婦は娘を手にかけたのかの真実と、何故息子が絵をかけたのかが明らかになった

    結局息子の能力は本物でそこは科学では証明できないことだけれども

    親子の愛とは考えさせられる内容だったな

    敏子、土井崎夫婦、誠子
    身近な人を亡くしたことでどう死と向き合うか、自分の中で折り合いをつけるか
    滋子は模倣犯事件とどう向き合うかを今回の事件をきっかけにゆっくりと消化していっていったのかなとも思う

    最後はとても感動的で
    敏子幸せになってくれー!と思った

    また前畑滋子主人公で読んでみたいなシリーズ化しないかなぁ

  • 我が子を事故で失った女性から子どもについての記録を作りたいとの依頼を受けたライター前畑滋子が調査していくお話。
    長い長いレポートを読んでいるような気分だった。だんだんと明らかになる物事、それぞれに問題を抱える関係者、途中で挟まれる謎の断章。気になってあっという間に読んでしまった。

  • 模倣犯の続編。存在を知らなかった。この世界観だと模倣犯でヒロミが見ていた姉の幽霊の意味合いちょっと変わってくるな!?という驚き。模倣犯に似て、姉の死がもたらす影の大きさよ。普通の野暮ったいおばさん、として登場した萩谷敏子の過去の暗さ、それに負けぬ本人の善良さ聡明さが好ましい。
    「変な家」と「変な絵」を読んだ後、建築家探偵で思い出して模倣犯を読み、続編でこちらも奇妙な絵から始まる話だというのが、不思議な偶然で面白かった。

  • 物語に引き込まれてどんどん読み進めたが、なぜかあまりスッキリしない。

    等くんの能力の話はあまり必要がないような気がする。もっと茜の話を深掘りして欲しかった。

  • 全体的には続きが気になってどんどん読み進め下巻は1日で読んでしまったけど、正直もう少しだけドロっとしてることを期待してたけどそこまででは無かったからか、1番気になる部分の解明がサラッとしていたからか、クライマックスだけが肩透かし感があった

    滋子自体は正直あまり好きになれなかったけど、敏子がいい人すぎて癒しすぎてなんとか幸せになってほしいと思った
    誠子には昭ちゃんと同じくどこか隠された陰の部分があるのかと思ったけど無かったことにはすこしがっかり

    滋子は模倣犯の人だったのかと終わってから知った
    模倣犯も10年くらい前に読んだけど面白かったとゆう印象はあるけどほとんど内容は覚えてないのでまた読みたくなった

  • あら?今気づいたけどこの女の子もしかして茜?

    違いそう

    「「「万事に言い訳が多かったから」」」グサッ

    大上義美だれ?と思いながら上巻に戻ったら感動した
    めちゃいいエンディングや
    下巻の途中はなんじゃそりゃ展開にもなったけどエンディング良かったので結果的に名作だ

  • 滋子が等の能力に関する事実を追い求める話とその過程で見つかる土井崎家の茜の事件が絡みあって、徐々に謎が解き明かされていく。
    事実がわかっていくことは残された者には必ずしもよいことではないが、悲惨な話になっていない。

    模倣犯すっかり忘れてしまっていた。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ・みゆき):一九六〇年東京都生まれ。八七年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。『火車』で山本周五郎賞、『理由』で直木三十五賞、『名もなき毒』で吉川英治文学賞、ほか多数の文学賞を受賞。『霊験お初捕物控』『ぼんくら』『三島屋変調百物語』シリーズ、『きたきた捕物帖』シリーズなど著書多数。


「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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