大地の子 四 (文春文庫 や 22-4)

著者 :
  • 文藝春秋
4.22
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本棚登録 : 2418
感想 : 187
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167556044

作品紹介・あらすじ

「宝華、万歳!」「初出銑、万歳!」万雷の拍手と大歓声が湧き起った。七年がかりで完成した日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」の高炉に火が入ったのだ。この瞬間、日中双方にわだかまっていた不信感と憎悪が消え去った。陸一心の胸には、養父・陸徳志の、「お前、いっそのこと日本へ-」という言葉が去来する。

感想・レビュー・書評

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  • 全4巻ついに読了!
    いわゆる超大作系は、「坂の上の雲」「1Q84」などことごとく途中で挫折してきた。初めての完走が何より嬉しい笑

    巻末の解説にも書かれていたが、戦争、家庭、政治、恋愛etc…あらゆる面から日中の関わりを見ることができる。それ故、4巻という長編にも関わらず非常に読みやすい。そして、取材力には圧巻としか言えない。

    中国のスケールの大きさがこの物語を通して感じられた。中国史をもっと知りたい、そして中国にも行ってみたいなと感じた。
    ラストシーンは重みがあって良い

  • 壮大な物語だった。

    ドラマ化された?らしいが全くの知識無しに会社の方からお借りし読み始めた。


    騙され、裏切られ、
    もうこの苦しみから何としてでも逃れたい。
    その一心で読み終えた。

    物語のスケールが大きく、それとともに心への響きも大きい。

    読み切り、しばし放心状態。。。

  • 中国での取材は大変だったようです。

  • 久々に長編を読んだが、次々とページを進めたくなる展開だった。しかしながら、手を止め難いハラハラとしたこの内容が、事実に基づいたものだという事は、複雑な気持ちになる。
    日本の戦後も知らない私には、日本の開拓団の政策、それを国が棄てた、という事も相当衝撃だが、中国という国の恐ろしさもまざまざと感じた。
    完全な私見だが、コロナ禍の現在、コロナ発生初期の報道などから、現代においても、中国の体質はどこか、この作品の中の時代を引きずっているように感じてしまった。

    陸一心の乗り越えてきた数々の苦難、一心と別々になってしまった妹の生涯については、現実に中国残留孤児(※)と言われる人々に降りかかった事ばかりなのだろうと思うと、読むのも辛い。よく一心のは乗り越えてくれたと思う。そしてそんな恐ろしく辛い一心の半生でありながら、最後に中国を選んだという結果は、日本が開拓団を棄てた、戦争の罪の深さを感じさせる。

    読んでいて楽しいものでは無いが、読んでよかった本だと思う。作者 山崎豊子氏の訴えの強さも感じられた。
    (※)作者は「残留孤児」という「残留」という言葉には意思がある。残留したいという意思はないのだから、この言葉を付けた日本政府のずるさがある、本来「戦争犠牲孤児」が正しい、という見解を出している。

  • 運命の悪戯か、生き別れの妹の死が実父との再会のきっかけとなる。そして、再び陸一心に過酷な運命が… 養父を選ぶのか、実父を選ぶのか… 安穏とした時代を生きる我々には計り知れない過酷な陸一心の運命に涙…

  • 長編の最終巻。納得の結末。
    山崎豊子さん作品の中でも3本指に入るほど個人的に好きな作品でした。

  • 中国残留孤児の主人公が日中共同製鉄所建設プロジェクトに奔走する話。中国という国の融通がきかないお国柄に呆れるシーンは多々あるものの、そのような困難に何度も立ち向かっていくシーンは非常に勇気づけられる。養父母との関係や実父、妹との再開が主人公への感情移入を促進させられる。最終的にどちらを選ぶのか気になるところだったが、タイトル回収にて締めくくる様は納得の一言である。
    中国特有の難解な表現は多いものの、ストーリーは圧巻で目を見張る作品です。このような作品は個人的に避けていた節がありますが、また読んでみたい作品の1つです。

  •  全4巻の最終巻。
     宝華製鉄の火入れと陸一心の置かれた厳しい運命を描く。火入れの瞬間はまさにクライマックス。そこに至るまでの流れも様々なトラブルがあり、なかなか一筋縄ではいかない事態ばかり。それでもやはり大事業を成し遂げるというのは感無量の一言に尽きる。
     そして、陸一心にも決断の時が訪れる。このまま中国で中国人として生きるか、日本へ戻って日本人として生きるか。
     中国残留孤児として生きてきた運命に翻弄されながらも、屈することなく生きてきた陸一心の生き様に胸打たれる。

  • 戦争孤児となった日本人・松本勝男こと陸一心。

    ようやく生き別れた妹・あつ子にめぐり会うことができたが…

    松本耕次も中国で孤児となったあつ子の元に辿り着くが…

    松本耕次は、陸一心が我が子・松本勝男であることを、陸一心は松本耕次が父であることを知ることに。

    『仏壇に線香を1本、手向けてやってほしい』と松本耕次に言われたことが、陸一心を惑わす…
    そして、松本耕次の家を訪れ、亡き祖父、母、妹たちに線香を手向けたことで、再び、陸一心は窮地に…

    やはり、日本人という出自は、一生、陸一心を苦しめるのか…
    日本人だからと差別され続けるのか…
    この許し難い理不尽さはなんなのか…
    これだけ中国のために尽くしているのに…
    中国人以上に中国のために働いているのに…

    陸徳志は…
    松本耕次は…
    2人の父の陸一心への思いに違いはない。

    陸一心の中国への思いは…

    やはり40年間育まれた思いは強い。

    陸一心は『大地の子』だ。




  • あらすじ
    太平洋戦争の敗戦によって、満州で残留孤児となった主人公・陸一心(中国名)が、中国人養父母への愛情と日本の実父との愛憎に揺れながらも、文化大革命の荒波を越え、日中共同の製鉄プラント事業を完成させるまでの物語。
    感想
    これが山崎豊子かって感じがした。

  • 8月は、なんとなくこういう本を読みたくなる。初読。よくこんな彼の国の固有名詞出まくりな本を、彼の国の協力のもとに書けたな、と。日本の固有名詞は出さなくて良かったのか?

  • 再読。
    全巻通して感情移入してしまい、中国というありかた、善人悪人の描きかた、色々と考えさせられる壮大な話だったけど、最終章では心を整理するように気持ちを落ち着かせてくれました。

  • 目を伏せたくなるような展開もあるが、日本人として読むべき小説。
    全てが真実だと鵜呑みにはしない方が良いけれども。

  • 山崎豊子さんがいい!と友人からの声があり、読もうと思いつつも今日まで読めていなかった。

    自身も鉄と関わりがあるため、日中での錆などへの激しいやり取りをあり得る、あり得るとその部分に共感を覚えながら読了。

    残留孤児ではなく、「戦争孤児」と呼ぶべきだ。という山崎豊子さんの言葉はまさにその通りで、戦争の生々しい痕跡を描きあげているところにこだわりを感じた。

    主人公の陸一心の日本に行くべきか、の逡巡の際の「大地の子」。そういう風に捉えるか、と妙に納得した。

    山崎豊子さんの別の作品もぜひ読みたいと思う。

  • 190829.4巻合わせると結構時間かかった。
    中国の上層部の名前はあまり入ってこなかったけど、主要人物はしっかり把握できたと思う。
    フリガナも繰り返し適切なタイミングで出てくれるのが有難い。
    描写が細かく正確。なんでこんなに詳しいの?というのはあとがきにあったように取材と勉強の賜物なのだろう。
    恐れ入る。
    この作品に出会えて良かったと思う。バランス的には日本人にも悪人がいても良かったと思うけど。
    中国の徹底っぷりはホントに胃が重くなる。嫌な緊張感の連続である。
    前半の徹底した落としっぷりから、後半にかけての逆転感はやっぱり読んでて楽しい。元カノが転じてくるのも良かった。
    松本さんは日本人特有のゆるさが一心の状況とうまく噛み合わずトラブルメーカーとなる。
    ラストの落とし所が題名だとは、、
    読みごたえありすぎですわ。

  • 日本人の妹や父との再会を果たすも、一心の苦労は消えない。
    様々な苦難が待ち受ける。
    そしてまた、プロジェクトから外され、僻地へ飛ばされる場面も。
    最後には日本へ行くか、中国へ残るかという選択も迫られる。

    この作品を書くにあたり、山崎豊子さんの苦労がどれ程のものだったかと思うと、その気持ちの強さが心に響く。
    戦争に対する怒りが伝わってくる。
    その辺りのことは、あとがきや解説でも紹介されていた。
    これからも、多くの人に読んでもらいたい。

    2019.4.21

  • 陸、そしてその2人の父親。辛い人生だと思う。戦争三部作全ての主人公が強く、信念を持っている。彼ら自身自らの人生を最終的に幸せだと思っていないと私は感じた。当然各局面にはドラマがある。その小さな幸せの積み重ねと、最後の幸せ。私自身どっちを選ぶべきかまだ分かっていない。
    山崎豊子さんの本は本当に考えさせられる。全く時代背景は逆だけど、命だけは保証されているが生き方を見失っている今の社会に対し、人としての人生を考える為のとても良い教示書だと思う。

  • 「宝華、万歳!」「初出銑、万歳!」万雷の拍手と大歓声が湧き起った。七年がかりで完成した日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」の高炉に火が入ったのだ。この瞬間、日中双方にわだかまっていた不信感と憎悪が消え去った。陸一心の胸には、養父・陸徳志の、「お前、いっそのこと日本へー」という言葉が去来する。

  • 先輩に勧められて購入したものの、長編のため長い間本棚にあったが、読み始めたら物語に引き込まれ一週間で読み終わった。

    中国残留日本人孤児のニュースは子供の頃に定期的に見ていたが、この本で初めて実態を知ることができ、驚いた。

    時代や国家間の考え方の違いに挟まれた孤児達の苦しみが本からにじみ出ていて、読み進めるのは大変だった。

    主人公と周りの人間の苦悩とひたむきさに感動し、教育の重要性を改めて感じるとともに、山崎豊子の細部まで描写した取材力に驚いた。

  • 山崎豊子さんの作品は「白い巨塔」「沈まぬ太陽」「不毛地帯」などどれも素晴らしいが、本作品はその中でも最高傑作。日中戦争の歴史に巻き込まれた過酷すぎる運命に愕然とする。日本人も中国人も必読の一冊。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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