運命の人(四) (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2011年2月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784167556099

感想・レビュー・書評

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  • 温故知新という言葉通り、過去の沖縄を知っていきながら主人公は少しずつ沖縄問題と再度向かい合い、自分自身と向かい合い、妻と向かいあいながら、話が進んでいきます。

    沖縄の戦争がどうだったかは本、ニュースなどでの特集から知っていることはあったが、それ以上にこの本から勉強させてもらいました。今までは裁判が中心の話であったため、次が次がと気になるため、読むスピードも早かったのですが、ここに来て沖縄の戦中、戦後のことはじっくりと読みました。一字一句逃さないようにと。過去から多くを学び、そして受け止め、悔い改めること、反省するべきところは反省し、次へつなげるのが後世に残されたものの責務だと改めて思いました。

    「運命の人」というタイトル。
    主人公が運命の人、主人公を取り巻く人たちが運命の人。一度振りかざした剣を鞘に戻すのではなく、振りかざした理由を死ぬまで主人公は主張していくのだろうなと思いました。

  • 取材力がすごい。
    最初は裁判に負けてしまった記者の話で終結していくのだと思ったら、最終巻で思っていた展開と違う形になっていた。
    歴史は好きなので読書などを通じて色々勉強してきたつもりだったが、まだまだ知らないことが多いなと思う話であった。

  • 失意の内に弓成が向かった沖縄に舞台が移る。
    そこで本土決戦の証言を聞くことになるのだが、途中で文章を区切ることもなく、内容も相まって実に重苦しく綴られていた。集団自決のため、我が子を手にかけるとか地獄だ。そして今でも沖縄は矛盾を押し付けられている。
    それを伝えるべく弓成は再びペンを取る。三巻の感想で「変な理想に目覚め」と書いたが、弓成はここ沖縄で初めて確かな足場を得たのではないかと感じた。
    思うに任せず運命の荒波に飲まれたが、自分に課せられた使命を受け入れ再起した、運命の人とは弓成自身のことではないか、と最後まで読んで思った。
    ヌチドゥ宝=命あってこそ。生きてさえいれば。

  • TBSTV「運命の人」が最終回を迎えた。原作で言うと、最終巻をほぼ1日の二時間スペシャルにまとめたという感じである。またTVらしい脚色もあり(琉球ガラス職人の女性が米軍被害者の少女に直接会うというようなこと等)、どうかという点もなきにしもあらすであった(読売渡辺恒夫モデルがかっこよく描かれすぎ)が、原作にない2011年の風景もちらりと見せて終わらせたことには「よかった」と思う。近年にない良心的な作品であったのではないか。ちなみに原作はつい一週間ほど前に読み終えたのであった。

    「 日本全体のうちの0.6%に過ぎない面積に、米軍基地の75%が集中している異常な状態が、祖国復帰後13年経っている今なお続いていることを、本土のヤマトンチューはどれほど知っているだろうか。
    新聞記者時代、沖縄返還協定の取材に当たり、最初にスクープ記事を放ったのが、米軍の基地返還リストであった。
    当時、弓成は記事の中で返還される基地の少なさを批判したが、今にして思えば紙の上の憤りでしかなかった。沖縄に住んでこそ実感出来たこの不条理を、もっと国民全体が知らねばならない。その伝え役の一人にならねばと、強く自覚した。」(96p)

    最高裁にも敗れ、自暴自棄になった弓成は沖縄に一人安住の地を求める。其処で、新聞記者時代のスクープ合戦から離れたところで、真の「沖縄問題」に入って行く。

    此処で出て来る証言者の何人かは「実名」である(山崎豊子は良い関係が持てた取材相手を描く時、時々そのようなことをする)。

    そのうちの一人、反戦地主の島袋善祐氏の話を私も90年代の初めに聴いたことがある。職場の私的サークルで沖縄戦績めぐりをした時、ラッキーにも氏のバラ畑に訪ねて話を聞けたのだ。生粋の沖縄人らしい丸い輪郭に掘りの深い顔立ち、人懐こい笑顔と楽しそうに語る土地闘争の衝撃的内容が印象的だった。

    密約問題の本質は、この四巻目にいたり、やっと本題に入った。この様な構成を、私は支持する。
    2012年3月10日

  • 宝島を読んでもう少し沖縄の事を知りたいと思い、以前途中で挫折したこの小説を再読。
    でも奥さんがあまりにもかわいそうなのと、主人公と不倫相手に対してイライラしてしまったのとで、今回も読むのが辛かった。
    クリーンハンド:人を責めるものは自分の手がきれいでなければならない。まさにこの言葉通り。
    国の行った事は責められるべき事だとは思うけど、結局それを暴く側の人間がクリーンでないと、何を言っても響かなくなってしまう。残念な話。
    4巻で主人公が沖縄に実際に行って、沖縄の現状を描いているけれど、4巻の内容をもう少し詳しく描いて欲しかったな。

  • (一巻から四巻まで合わせたレビューです。)

    大好きな山崎さんの(もしかすると最後になるかもしれない)長編小説。

    沖縄返還時の機密文書漏洩事件(西山事件)をテーマに、
    相変わらずの取材力&構成力で読者をぐいぐい引っ張っていきます。

    この分野は完全に無知でしたが、小説を通じて、
    昔の自民党の政治のやり方を目にすることができました。
    主人公の機密文書を入手した手段は、
    倫理的によい方法だとは言えませんが、
    それ以上に、臭いものに蓋をする昔の自民党の政治家や官僚にも、
    沖縄の人たちだけでなく、日本人全員が
    もっと憤りを感じるべきなんでしょう。
    現在も普天間基地移設問題で民主党が揺れていますが、
    少しばかり当事者意識を持って
    この問題を受け止めれるようになった気がします。

    山崎さん、もう一冊書いて欲しいなぁ。。

  • <縄>

    考えてみると物語は実に多様な側面を持っていていくつかのテーマに基づいて描く場面でその様子を変えてゆく。僕は「沈まぬ太陽」くらいしか山崎の作品は読んでいないが,確かあちらも同じようにテーマと場面が何回か大きく変わって読むものを引き込んでゆく展開だった。山崎独特の小説手法なのだろうな。

    この第4巻 最終巻末には山崎自身による「文庫本のためのあとがき」が載っていた。第1巻を読む前にこのあとがきを読めば良かった、と思った。そうか、この作品は沖縄 の話だったんだ!

    場面場面で話をそれまでの他の章とは全く違ったところへ展開する。それも上手くそれとなく展開する。物語の本筋から逸れていようがいまいがそこで書きたいことを書く。これがまた面白い。こういう小説が描けるチカラはやはり凄い。

    それぞれのテーマに付いて,この様に沢山のストーリーを紡ぎ出せるのが凄い。 巻末にある膨大な参考資料一覧と取材の為お話しを伺った人達の多くの名前,これまた凄い。そう,凄い小説なのである!

  • 最終巻。沖縄での戦禍の様子が、様々な人の証言や情景描写で浮かび上がってくる。最後どう行き着くのかな...と気になりつつ読んだ。
    密約をめぐる事件に始まり、最終の着地は沖縄ということで、話の広がりが想像より幅広いため読者によって好き嫌いが分かれそうだけれど、沖縄を知る、という意味では読めて良かった作品。
    丹念な取材や調査に基づいて、膨大な史実や証言を小説という形に仕立て上げる山崎豊子さんの手腕がこの作品でも光り輝いてて、ただただ凄い。

  • 最終巻。
    予想だにしていなかった方向へ話が展開していく驚きを感じながらも小説としてまとまりのある作品となっていることに脱帽しました。

    外務省機密漏洩事件を機に、沖縄に関心を持ち続けていた主人公が移り住んだ沖縄で目の当たりにした現実。
    決してフィクションではない重みがひしひしと伝わってきました。

    私は沖縄には行ったことはなく、行きたいと思う理由はリゾートとして、という気持ちが大半だったけれど
    沖縄の歴史を学ぶことの大切さ、また軽々しく触れられないほどの、その歴史の持つ重く暗い意味に胸が締め付けられる思いでした。

    一方で夫婦の絆の強さについても、清々しい気持ちで学ぶことが出来た作品。
    ずっと読み継がれてほしいと思います。

  • 最高裁への上告を棄却され、家業も失った、失意の弓成は、死地を求めて、沖縄にたどり着く…

    第二次大戦、日本で唯一、地上戦が行われた地・沖縄で、戦争体験者たちから、当時の壮絶で悲惨な話を聞くうちに、立ち直っていく、弓成。

    そして、米軍海兵隊員による少女暴行事件、米軍ヘリ墜落事故…

    現代の基地問題へとつながっていく…

    やがて、機密文書が発見され、弓成の身の潔白も…

    結局は機密情報漏洩を隠蔽するために、弓成を有罪としたのか…
    国家権力がジャーナリズムを押し潰そうとしたのか…

    由里子とも再会を果たし、『長い間、すまなかった』と詫びる…

    『沖縄を知れば知るほど、この国の歪みが見えてくる。それにもっと多くの本土の国民が気付き、声をあげねばならないのだ』
    沖縄を伝えていかなければと、ペンをとる弓成。

    『運命の人』とは、弓成だったのか…
    現代の沖縄が抱える問題をもっと知らしめるという運命にあったのか。






  • 外務省の機密文書漏洩問題に絡む男女の不倫というスキャンダラスな面に視線が集まりがちであるが、原作を読み進めて行くにつれ、本書の主題は実は「沖縄」。

    著書は太平洋戦争で日本で唯一の地上戦が行われた沖縄戦の事を多くの人に知ってもらいたいという一心から、この小説の構想が出来上がったんだなと感じる。

    酸鼻極まる沖縄戦では15万人もの生命が奪われた。取材を重ねれば重ねる程、沖縄は本土の犠牲になり続けていることを思い知らされる。

    後書きにて、著者は「早期の文庫本化を出版社に依頼した」と語っている。戦時中、徹底した皇民化教育を施し、10代の若者を「本土の日本人以上の日本人たれ!」と鼓舞し続け挙句に見捨てる。この悪行の首謀者は紛れもなく日本人。この自虐行為が、今日まで連綿と続いている。

    今尚日米間に横たわる米軍基地問題。在日米軍基地の75%が沖縄に集中しており、市民は四六時中危険に曝されていると言っても過言ではない。基地問題の解決がまったく進まない状況は、本土に於いて終戦10年後には「もはや戦後ではない」という宣言し驚異な経済復興を遂げたものの、沖縄に於いては例外であることを著者は最も問いたかったんではないか。

  • 著者が書きたかったことが「OKINAWA」だったことに最終巻にして初めて思いいたり、正直面食らった

    ここで沖縄地上戦の話を読むことになるとは…

    高校生のとき沖縄戦について図書館で資料を読みふけって調べたことがあり
    (ホロコーストやポルポト政権的な事件が、無性にきになる時期がありました…)、

    人並みに沖縄の悲劇は知っていたので、どの出来事も中途半端な掘り下げに留まっているなと思わざるをえず

    沖縄戦を知らない読者には、とっかかりとして十分な記述だと思うし、沖縄に関心をもってほしいという著者の願いは叶ったといえるだろうが、

    知るものからしたら、主人公を他に据えて沖縄だけを主題にした作品を一本じっくり描いてほしかった

    「取材で得た事実を羅列しただけでは小説にはならない。
    テーマをどう構成し、人間ドラマを形作っていくか、考え抜き、ディテールにもこだわる。
    そうしてこそ作品に厚みが出て、真実を表現できる」ーー

    そのとおりだと思うし、三巻まではそれを感じられた(法廷部分はギリギリ)が…
    四巻は事実の羅列に感じた


    「表現の自由」「知る権利」を訴える新聞記者の立場から、期せず沖縄を想う立場に変わった主人公弓成と、彼を取り巻くすべての人が、「運命の人」だったと解釈

  •  国家権力vsジャーナリズム、完結編。
     本巻は、今までの法廷闘争が中心の話ではなく、日本復帰後の沖縄の現状に焦点を当てた内容になっている。個人的には全巻通して最も注目すべき内容に思える。ひめゆり学徒隊や鉄血勤皇隊の視点から描く沖縄地上戦の様相(方言矯正・集団自決など)、戦後の基地問題、米兵による少女暴行事件、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落などなど、戦後沖縄が今なお抱える問題の数々。そうした事象から見えてくる沖縄の現実、沖縄県人の思いなどが描かれており、非常に重たい内容ではあるが、しっかりと目を向けなければいけない部分である。

  • ドラマ終了後読み始めてちびちびゆっくり読み始めていたせいかこの巻を読了するまで2年かかってしまいました。

    最初はこれまでの機密漏洩事件の経緯に焦点が当たっていたのと違い沖縄問題についてのことが中心になっていて戸惑いました。
    ただ、文章への入れ込みにグイグイ引き込まれていきました。
    あとがきでも本題はむしろこの巻に書いてあることでそれまでの話は枕みたいなものだったんだな、と感じました。

    私は世代的にも機密漏洩事件について知らず沖縄にも旅行でも行ったことはなかったので考えることもありませんでした。
    しかし山崎先生があとがきで書いていた通りこの事について知り考えるきっかけになりました。

  • 舞台は一転沖縄へ。日本の教育は沖縄の歴史に対し、あまり詳細に語らず。この小説で久々に衝撃を受けた。

  • 4巻はガラリと話が変わって沖縄の現状についてのお話。戦前・戦後の沖縄について知るには良い本だと思いました。・・・が、小説としては面白く無かったです^^;。

  • 小説の形式をとっているが、元新聞記者でもある山崎豊子による沖縄フィールドワークの集大成。

    1-3巻が1970年代前半の沖縄返還交渉における密約問題とその後の公判の経緯を題材にしている一方で、この4巻は時間が80年代以降となる。物語の舞台も沖縄に。戦中・占領期・現代の沖縄が直面している問題を、主人公=著者が聞き出していく物語。クライマックスは現在進行形で終わる。

    山崎豊子による文庫版のためのあとがきも、物語の一部を成している。

  • 第4巻は、弓成の、沖縄での苦闘、そして再生の物語となる。
    作者が、本当に描きたかったのは、この巻であり、沖縄についてであり、3巻までは、その序章であるかのような、力の入れ具合を感じる。
    特定秘密保護法が成立した、今こそ、山崎豊子のこの「運命の人」を読む時ではないかと思うのでありますが。
    政府は、この法が民間人に影響を与えることはありませんと、強弁しているが、そもそも、「国家の情報はだれのものかという意識に欠け」ており、国民の知る権利をなおざりにしている姿勢は、この小説の描いた時代から、何ら変わっていないのでは。
    前にも書いたが、泉下の山崎豊子は、現在の状況をどのように評するだろうか。

  • 秘密保護法案の議論に背中を押され、かねてより読みたかった本書を読み始めた。
    ぐいぐい引き込まれるストーリー展開に、思わず1週間で4冊を読了。現代を代表する社会派小説家:山崎豊子女史の筆に圧倒された。

    著者自身が新聞記者出身ということで、その記者の活動の描写の躍動感が、他の小説をずば抜けている。
    また、主人公が拘置されるシーンなどからは、著者の国家権力に対する本能的な「危険意識」が垣間見まれる。
    「権威」を向こうに回しての人間の生き方は、山崎文学を貫く一貫した姿勢であり、それがまた読者を惹きつけるのかもしれない。

    作中では、国民を代表して「知る権利」を行使する記者の立場より、「国家の秘密」に対して鋭い批判を展開する。

    ただし、一方で、国益のために公にされてはならない情報、「秘密」もやはり存在するわけで、その線引きはどこで行うべきなのかは、さらに関連する書籍をもって探求していく必要がある、と感じた。

    「知る権利」よりも「国家秘密」の強化が議論されているこの秋、改めて「権力を監視する」という意味を考察し直していきたい。

  • 本来、新聞ってのは、本当のことを国民に伝えるために、政治の嘘があればそれを暴くためにあるものなんだ、とか、なんだかちょっとはっとした感じで思った。今の新聞やテレビにはそういう姿勢はあるのかなあ。わたしなんかはもう、マスコミは政府が発表したいことを報道してる、それが当然、政府が国民に知らせたくないことは報道するわけない、っていうように思ってるふしがあるのだけれど。
    ラストで主人公が、なにがあろうとも記者として真実を伝えていこう、というようなことを心するところがあって、はじめて「運命の人」っていうタイトルの意味を納得した。

    テレビドラマをかなり熱心に見ていたので、読んでいてドラマの場面が逐一思い出され、それがよかったのかどうか。でも、おもしろく読めた。ドラマではあまり印象に残らなかった外交や裁判のあたりが詳しく読めたのがよかった。沖縄問題についてもあらためて考えさせられた。ちょっと知ったくらいで軽く言うことじゃないと思うけど、率直に言えば、沖縄の人たちに本当に申しわけないような気持ちになった。

    それにしても、歴史とか政治とか、普段たいして関心を持っていない(ダメダメだ)のにおもしろい小説になれば関心を持っていろいろ考えたりもするんだな、と。
    あとがきで著者が、多くの人に読んでもらいたいため文庫化を早くした、というようなことが書かれていたけれど、なんだかちょっと胸を打たれた。

    (で、やっぱり山崎豊子は読むべきかしら? むかーーーーし「白い巨塔」を読んだきりだけど。「大地の子」とか「沈まぬ太陽」とか。
    あと、「外交」について興味がわいたので「外交」テーマの小説とかあったら読みたいのだけれどなにかあるかな?)

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまさき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

山崎豊子の作品

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