猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 4162
レビュー : 531
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167557034

感想・レビュー・書評

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  • …ワタシにとっては一生忘れられない本になりました。
    圧倒的な、傑作です。
    前にこの作家の話題になった「博士の愛した数式」を読んで、ちょびっとガッカリしていたので、なおさら驚きました。

    おそらく読んだ人は最初「ブリキの太鼓」を思い出すだろうし、他にもいわゆる”奇想”が盛りだくさんに出てくるけれど、でも、奇をてらった思いつきや、単純な人マネはひとつもありません。
    あらゆるアイデアは伏線となり、テーマとなって、何度も現れては綺麗に緻密に正確に折りたたまれていきます。まるで小さなピンセットで微細なオリガミが折られていくようです。文章のスミズミ、どの一文をとっても緊張と詩に満ちみちています。

    …と、ベタ褒めしましたが、ダレカレ見境なしに勧められる本でもないのかもしれないデス。
    特に、主人公が”ちっちゃいヒト”だったので、ワタシ的には入り込みやすかったのかも…^^
    amazonの”商品の説明”を読んで興味をひかれた方は、ぜひご一読を…

  • 11歳で大きくなることをやめ、身体的にはフリークスを思わせる青年リトル・アリョーヒン。
    読みやめることができないまま一気に最後まで読んでしまった。

    こんな世界をこの小さな本の中に顕してくれた、そんなことができた作者に感謝。

    考えつくもっとも窮屈な世界に私たちをぽんと置き、そこに居ながら広大無限の宇宙に旅立たせてくれた。緊迫と解放。身動きがとれない中で得る最高の自由。精神の自由。肉体の自由なんてどれほどの価値があるのか、と思うほど。

    フリークスの青年は生まれたときから、暖かく柔らかくどんな怒りも抵抗なく受け止めてくれる人に抱かれていた。まるで胎内にずっといて、この世になんて生まれてこなかったように。そんな生涯を終えた。

    彼とチェスの関係が心底羨ましい。彼にとってのチェスに、私も出会ってみたい。

  • 国籍と、年代も、わかるようでわからない、小川洋子の作品。

    時代の流れとともに茶色くくすんでしまったガラスケースに収まった世界で繰り広げられる出来事を、外から、目や耳や、指先の神経を研ぎ澄ましながら、注意深く見守っているような、そんな気分にさせる。

    その世界で繰り広げられる愛のかたちは、一般的な意味で幸福ではないかもしれない。少し不健康で、少し陰鬱で、少し変質的な、愛のかたち。

    そんなかたちの愛が秘める、力強さや純粋さ、気高さは、一般的には理解されにくいかもしれない。

    そんな愛のかたちをこんなにも繊細に、美しく表現できることに崇敬の念を抱く。

  • 日々を丁寧に生きようと思える作品。物語の中ではとても静かな時間が流れていて、何度でも読み返したくなります。

  • ダ・ヴィンチのブックオブイヤーで紹介されてて(たしか)なんとなく手に取ったら超面白かった。家族愛に泣ける〜。
    そんなことがないとあらすじもタイトルも、主人公の名前からして全く響かなかっただろうなあ。
    だから人のおすすめを読むのはやめられない。
    叔母に貸したらかなり気に入ったようなので、そのままあげた。

  • この本を色で例えると、表紙に載っているような白に近いグレーが話の最初から最後まで続く感じ。
    切なく静かな物語だが、ロウソクの灯りのような温かさも感じられる。

  • 「博士の愛した数式」にいまいちハマれず敬遠がちだったが、この作品で小川洋子の印象が180度変わった。何てったって美しい。久しぶりに2度読みしてしまった。「最強の手が最善とは限らない。チェス盤の上では、強いものより、善なるものの方が価値が高い」これって心理だよなぁ。


  • 人身事故でダイヤの乱れた電車の中で読み終わった。

    人は何かひとつその人だけのものがあると信じている。
    それを見つけ、続けること。
    私はその何かを探していて、見つからないかもしれないし、もう近くにあるのかもしれない。

    たくさんのことから逃げてきた。
    学校も仕事も趣味も。
    体も心もクセがついてしまったくらいに。

    リトル・アリョーヒンはチェスを見つけ、
    最後までチェスを続けた。
    私も死ぬまでに何かを見つけることができるだろうか。
    死ぬときに隣にあるものは何だろうか。

    電車の前に立った人は何もなかったのだろうか。

    今日は少し優しい気持ちで。
    最善の気持ちで。

  •  僕が読んだこの作者の長編の中では一番印象に残る作品だった。
     久しぶりに「物語」を読んだ気分に浸れたし、特異な人物群とストーリーの妙はジョン・アービングを思い出させてくれたりもした(ほめ過ぎ?)。
     物語の終盤に出てくる、老婆令嬢の「チェスを初めて教えてくれたのが、あなたでよかった~」というセリフがたまらない。
     大きな輪が収まるべき場所できちんと完結されたような気持になれた。
     そしてミイラがゴンドラですれ違う一瞬。
    「降参」の一文字が書かれた手紙を、総婦長さんの腕に抱かれたリトル・アリョーヒンに掲げる場面。
     切ない……。

  • チェスをやってみたくなった。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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