猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 4165
レビュー : 531
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167557034

感想・レビュー・書評

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  • 表現が秀逸でも喝采を浴びるようなシナリオでもない。

    けれど少年の物語にもっと寄り添っていたいと思うような思いやりがあったと思う。

    内容は史実と空想がおり混ざった、不思議な空気感。
    切ない物語。

  • 小川洋子さんの小説は、長時間のフライトの消灯時間などの閉塞的な時間に手元の小さいライトで一気に読んで、目的地についたら「あー、なんか妙な夢見たな…」みたいな感覚で意識の裏側にしまいたい…という感じの作品が多いと思います。
    この作品もそうで、グロテスクで暗くて静かで、透明感の強い美しい小説でした。
    閉塞世界の中にだけ広がる宇宙を描かせたら小川洋子さんの右に出る人は居ないと思います。

    11歳の時から成長の止まった身体に、唇からはもっさりと脛毛が生え散らかした異形の男がからくり人形の中にぎちぎちに身体を隠して、誰にも姿を見せずチェスをする……ってけっこう限界フェチ小説だと思います。しかし最終的にこれより美しい姿はないような気にさせられる…

    老婆令嬢が好きでした。
    駒を持つ手も震えて覚束ないような老貴婦人が、年齢にも見た目にも似合わないエネルギッシュで冒険的なチェスを指す…。
    本来少し不器用なルークを伸び伸び操って迫力をまき散らし、雪山を滑降するように、ハングライダーで大空を舞うようにチェス盤からはみ出るような棋譜を作る…
    最後はボケて自分がチェスプレイヤーだったことも、あんな美しい棋譜を残したことも分からなくなってしまいますが、最愛の駒だったルークを持ってこれが気に入ったわと言うシーンはほんとに美しかったと思います。

    フェチの世界に飲まれたいとき読みたい作家さんです。

  • 何ヶ月もかけて少しづつ読み、ずっと近くに置いておきたいような小説だった、それ故に最後は涙が止まらなかった。

  • 解説:山崎努

  • 人生の喜びと侘しさが染み渡る読後感。何度でも読める。

  • 何も語らずともチェスを見れば、その人の哲学も情緒も教養も品性も自我も欲望も記憶も未来全て分かる。それほどまでにチェスは人間とは何かを暗示する鏡であって、広くて深い海をいくゲーム。ピアノの世界に引き込まれてしまう「蜜蜂と遠雷」同様に、触れたこともないし全く分からないチェスの世界に自然と引き込まれてしまった。

    静かで、でも海のような深さがあり、そして世界のほんの片隅で狭く、小さく生きることを選んだリアルアリョーヒンを自然と先生を重ねてしまった。先生はこの本を読んでどう感じたんだろう。

  • 少しやるせないお話。

    おそらくチェスを理解してる方がより深く作品を味わえるでしょう。もちろん知らなくてもそれなりに楽しめます。←私。

    作者は何をこの作品で言いたかったのかな?

    成長する事の辛さ?ピュアなままでいる事の素晴らしさ?あるいは生きづらさ?

    いずれにしても作者は答えを示す事なく、静かな悲しいけど、これしかない終わらせ方で作品を締めくくっている。

  • 190124*読了
    小川洋子さんの小説は、静謐で穏やかなのに内容は突飛。どうやったら、こんな発想ができるだろう、と思います。
    まず、唇がひっついたまま生まれてきてしまって、その手術の時に違う部分の皮膚を移植したせいで、唇から脛毛生えてくるって!それだけ考えたら、滑稽だし笑ってしまうのに、小川さんの文章だとそうはならないのが不思議。太りすぎてバスから出られなくなったマスター、壁に挟まって出られなくなったミイラ。どれも滑稽なはずなのに。
    チェスの描写が巧みで、これだけチェスというゲームを文章で再現できるのも、やはり小川さんの才能ですね。目の前で試合が繰り広げられているよう。
    奇異な才能を持った人、という点では、博士の愛した数式と近しいものもあるなぁと、読みながら思いました。

  • 再読。チェスを打つ描写が静謐で美しくて悲しい。勝利を求めるチェスではなく、相手とのやり取りを美しい棋譜に記す、その美しさ。物語のあらすじよりも描写そのものに涙するのは年取ってきた証拠だろうな。

  • タイトルが秀逸ですね。

    ……しかし残念なことに、ここ数年ではめずらしく、途中で挫折を味わった一冊として記憶に残りました。

    ずっと何かが起こりそうな気配は漂っているのだけど、言葉の一つ一つが誠実すぎる分、

    ノロイ★

    この本のなかで流れるたっぷりとした時間感覚が、つらかったです。

    とは言うものの、小川洋子さんの本に魅力がなかったことなど一度もなく、傑作の予感を信じたい……。私には無理だったけれど、読書好きで気長な人に読んでもらい、感想を聞かせてほしいです。喜んで聞き手に回りますよ。…皆さんのレビューを読めばいいのかな。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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