猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 531
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167557034

感想・レビュー・書評

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  • 買ったはいいけど読んでなかった小説。
    長編を遠ざける癖があるのだ。悪い癖である。
    しかし憧れている図書館司書の方が「おもしろいですよ」とオススメしてくださったので読んでみることに。

    するとほんとにおもしろかった。なんで今まで買ったまま読んでなかったんだろう。

    悲しくて苦しいけど、優しくて美しいお話。
    主人公の人生って一見すると不幸なのに、簡単に同情してはいけないと思わされてしまう…。
    それは主人公の物事の捉え方とか、強さとか、そういったものに関係しているのかもしれない。

    何より、リトル・アリョーヒンは大きくならなかったから。
    彼にとって大きくなることは悲劇だから、大きくならなかったことで本当の悲劇を避けることができたのかもしれないね。

    そして最後、リトル・アリョーヒンは本当に実在していたのでは?と思わせる文章に驚いて、思わず読後すぐにそこだけ読み返してしまった。
    なんて不思議で、なんてあたたかい小説なんだろう。
    読めてよかった。素敵です。

  • チェスと少年の寂しさと優しさの話。登場人物全てが現状をそのまま静かに受け入れていて美しい。
    私はなんで仕事で「何で!おかしい!」ってくさくさしてるだろう。

  • 『 刹那、ため息がだらしなく開かれた唇から漏れた』

    私をこの作品に出会わせてくれたことを、チェスの神様に感謝したい。

    言葉はいらない。全ての物語はこの本の盤上ならぬ盤下に記されている。

    尊い作品でした。ありがとうございました。

  • 今まで読んだことのないタイプの本だった。久しぶりに一気に読んでしまった。
    最初は、かなり文学的で難しい本なのかと思っていたけど、文学的でありながら美しく、主人公の独特な世界観が自由に表現されていて、本当に面白かった。
    後のリトル・アリョーヒンは少年のときから、チェスに出会い、それが自分の一生になることがわかっていたのかもしれない。生まれたときから運命は決まっていたのだと思う。祖母が言っていたように、リトル・アリョーヒンには口がいらなかった、チェスで言葉以上のものを語れたというのは、本当にそうだと思う。
    また、ミイラとの出会いも運命だったのかもしれない。もしかしたらミイラのほうも何か感じていたのかもと思えてしまう。最後の方のミイラとの手紙のやり取りが意味深くて、2人は言葉以上の思いを交換していたんだということが伝わってきた。
    私は、老婆令嬢とキャリーバッグの老人のチェスの挿し方の表現が好き。特にキャリーバッグの老人の、普段はおしゃべりなのにチェスのときは本当の自分がさらけ出ていて、静かで落ち着いたチェスをする、という「静か」の表現がよかったと思う。
    後ろの解説を読んで、改めてこの本の趣旨がわかった気がした。

  • チェスの描写が本当に魅力的で詩的で、アリョーヒンが感じている心地よさや美しさがしんしんと伝わってくる様でした。
    自分も棋譜に刻まれた詩や歌を味わってみたくなるような、チェスをやってみたくなるような...。
    暗さとあたたかさが丁度良く同居しているような不思議なお話でした。

  • 盤下の棋士リトル・アリョーヒンの物語。
    この物語に出てくる人物は全員が狭い世界に籠っている。
    主人公もチェス盤の下という狭い世界に閉じこもっているがチェスを通して自由に世界を旅し、人と雄弁に会話をする。
    チェスのルールが大して分からなくともチェスの奥深さを感じることができるし、多彩な表現からは優しさも感じることができる良い作品だと思う。

  • たまには女性作家をと思い本作をチョイス。小川作品は『博士の愛した数式』以来2作目。本作は「チェス」がテーマで、ルールをいちおう知っているかな程度のわたしに読めるかどうか不安ではあったが、とくに問題はなかった。むろん、チェス好きのほうがより楽しく読むことができるだろう。また、チェスの歴史上広く知られたエピソードとして、「トルコ人」という実在していたチェス差し人形(?)がある。わたしはこのことを知っていたので、そういう智識もあるとよいかもしれない。ただ、知っていたがゆえに、かえってそればかりが気になってしまうということもある。人形の下に潜り込んで「リトル・アリョーヒン」を動かすというエピソードは、その「トルコ人」をそのままなぞっただけのものである。もうすこしアンダーグランド以外の、「まっとうな」チェス・プレイヤーとしてのエピソードが描かれるとおもしろかったが、本作は徹頭徹尾「リトル・アリョーヒン」なので、その点で不満は残る。本家は半世紀近く大衆を騙し続けたが、本作はそこまで秘密厳守を徹底している様子もなく、その点も疑問である。ミイラというのもどこか捉えどころがない感じで、本作はどこまで行ってもチェス界のメイン・ストリームとは無縁の世界が描き出されている。しかし、チェスはべつに隠れてコソコソやるような競技ではない。いくら秘密結社のようなところで差していても、その所属メンバーにも当然生活があるはずで、ずっと息を潜めているわけにもゆかない。べつに絢爛豪華なチェス界の王道を描けと要求するつもりもないが、そういったレヴェルとの交わりも、ほんのちょっとしたエピソードだけでもよいから、あったほうがよりよかったのではないかと個人的には思う。とはいえ、本作はとくにそのオチの部分がすばらしく、その点で「トルコ人」のたんなる飜案としての範疇を凌駕している。こういう結末が描けるから、やはり小川洋子は人気も実力もあるのであろう。

  • つつましくうつくしい。それに尽きます。デパートの屋上で宙づりにされた象インディラ。壁のすきまから出られなくなった少女ミイラ。回送バスのなかでマスターに教えてもらったチェス。猫のポーン。戦友である老婆令嬢。

    どんな強さも有限で、悲劇と情熱がありました。書き手の味なのかそのすべてがあまりに淡々としていてなんだか苦しい。冷徹に感じるけれど、その淡白さがかえって現実的に思える要因なのだと気づくとき、黙るしかなくなります。

  • リトル・アリョーヒンのことが知りたければ盤上を見なさい

  • 競技スポーツや勝負事をしている人は、特に男性は 戦い方で学ぶ点が多い本だと思います

    女性作家の男性主人公は 現実感なく妄想過大な事が多いですが、この本は 現実感がありました

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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