猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 531
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167557034

感想・レビュー・書評

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  • 静謐な世界で繰り広げられる戯曲のような物語

    小川さんの本は、博士の愛した数式ぐらいしか読んだことがなかった。チェスがテーマだったことで今回手に取った。

    全体を流れる空気は、物悲しくもどこか温かさを感じる。
    アリョーヒンがチェスの手を考え、水の中に潜って行く感覚と同じように、どこか水の中にいるような
    光がやわらかく屈折して届くような
    そんな独特の世界観にどっぷりとのめり込むことができた。

    リトルアリョーヒンとマスター、チェスの出合い、ミイラとの再会、その先の淡い温かなやりとり…。


    ひっそりと、だけど、
    確かに彼の歩いてきた道を感じるラストは
    とても悲しいものだけど、心を打つ。

    熊野へ行く行き帰りで読了。
    どこか厳かな神秘的な感じがするのは、
    自分の読んだ環境が起因するのかもしれない。

  • 綺麗な言葉の宇宙に浮かんでいるような、穏やかに読み進められる一冊でした。
    チェスの説明で、キング、クイーン、ビショップ、ルークとナイト、それぞれを家族に見立てて説明している一節がとても好きでした。

    最後は少し切ないけれど、読み終わった後に題名の意味がわかって、心に澄み渡る一冊です。

  • 挽下の詩人。リトル・アリョーヒンの話。チェスを覚えるには、人から学ぶのがいいのかなと思う。コンピュータでやっていても面白くもなんともないし。

  • チェス盤上に音楽を奏でる、彼は盤下の小さな詩人。

    チェスのルールを知らなくても、きっと面白い。寓話のようで、優しくやわらかな雰囲気。屋上の象、回送バスの住人、からくり人形と一体化する少年、猫、鳩を肩にのせた少女、家具職人の祖父、布巾を手放さない祖母、弟。出てくるものがそれぞれ優しい雰囲気を醸し出す。乾いた、触れたら、ほろほろと崩れ落ちてしまいそうな繊細さも感じる。小川洋子らしいなと思った。

    チェスの海に潜っていく冒険、という表現から『ヒカルの碁』の碁盤の宇宙の絵を思い出した。ヒカ碁でもそういうイメージがあったけど、ボードゲームは対話するゲームで、描く棋譜にその人が表れる、もしくは音楽となるイメージは、私にとってしっくりくるものだった。

  • ゆっくり少しずつ読みました。
    物語として純粋にすごく面白かったです。

    リトル・アリョーヒンの生涯を丁寧に綴られていて、全体的に切ない雰囲気が漂っています。
    物語に引き込まれて、たとえばマスターとの思い出が読み進めていくうちに過去として実感されたりして、ほんとうにうまいなあ、と思いました。
    チェスだからと堅苦しく考えることなく、小川洋子さんが好きな人にはぜひ勧めたいし、小説好きな人ならみんな好きなはず!と断言できる作品です。

  • 変わったタイトルだな、と気になったので読んでみた作品

    苦手なファンタジー物?しかもチェスなんてルール知らないし…
    とゲンナリしたのは一瞬の事で不思議とすんなり世界に入れました
    静かに淡々としているのに続きが気になってどんどん読めてしまう
    温かく大きな愛情に包まれている感じが心地よく
    これは久しぶりに★5つかも!と読み進めましたが
    どうしても10、11章の雰囲気が好きになれず失速
    話の展開として仕方がないにしても、もっと別の方法は無かったのかな?と思ってしまいます

    私が読み手としてまだ未熟だから作品の真意が読み取れていない気がします
    10年後にもう一度チャレンジしてみたい

  • 重すぎてエレベーターに乗り込むことができず、デパートの屋上遊園地で一生を終えることになった象のインディラ、家と家の壁のすき間に入り込み、そのままミイラになってしまった女の子、そして妄想の中で象とミイラの女の子と話をするリトル・アリョーヒンは唇がくっついたままで生まれ、すねの皮膚を移植して手術をしたため唇からすね毛がはえる…ってなんじゃそりゃあ。
    私の苦手なファンタジーか?これは途中で投げ出すパターンかな、なーんて読み始めたら、これが結構おもしろい。想像の翼はファンタジーで本領発揮。
    題材はチェスなんだけど、チェスボードの小さな枠を超えて宇宙にまでグンと話がひろがる。チェスはスポーツ、チェスは詩、チェスは音楽、チェスは無限に広がる夢。チェスのことはまったくわからないし、小説内でもくわしいプレーの説明などはまったく出てこない。それでも上質のチェスを楽しんでいるような不思議な気分。
    どれだけチェスが夢あるゲームかって、冒頭の駒説明だけで充分伝えてきてくれる。
    キング……決して追いつめられてはならない長老。
        全方向に1マスずつ、思慮深く。
    クイーン…縦、横、斜め、どこへでも。
         最強の自由の象徴。
    ビショップ…斜め移動の孤独な賢者。祖先に象を戴く。ナイト……敵味方をくの字に飛び越えてゆくペガサス。
    ルーク……縦横に突進する戦車
    ポーン……決して後退しない、小さな勇者。 

    うまいなぁ、この人。「博士の愛した数式」も読みたくなってきた。

  • ちょいちょい涙ぐんだ。ココ、という泣かせ処が、というのじゃなくて、じわじわと。
    こういう読後感の本、わたしはすきだ。

  • すてきなチェスを指す少年とその短いけど美しい生涯のお話

  • 幻想的なそのタイトルに惹かれて購入。

    独特のその雰囲気にグッと引き込まれたし
    言葉の選び方や、表現の仕方はとても綺麗で繊細で
    場面ごとの温度や匂いまでが伝わってくるような
    筆致はとっても好みなのだけれど

    どうしてもこのお話の根底に流れる
    孤独感というか、薄暗い寒々しいような空気感に馴染めず
    話を読み進めるにつれて、息苦しくなってしまった。

    登場人物はいずれも個性的だけれど、魅力的。
    だけれども、なんだかみんな寂しそうで
    読んでるこちらも哀しくなってしまう。

    ただそんな寂しげな世界の中で、ひときわ
    暖かみを放っていたのが登場人物達の作るたべものたち。

    主人公のリトルアリョーヒンがデパートに遊びにいく際
    (文字通り「遊びにいく」のであって、買い物はしない)
    おばあちゃんの作ってくれる、砂糖入りのレモンティーと
    タルタルソースを塗ったサンドイッチや

    バスに住むマスターが作ってくれる
    手作りのカップケーキやスフレ、花林糖やケーキが
    とてもとても食べたくなった。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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