トラッシュ (文春文庫 や 23-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (574ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167558017

作品紹介・あらすじ

人を愛した記憶はゴミのようには捨てられない。黒人の男「リック」を愛した「ココ」。愛が真実だったとしたら、なぜ二人は傷つき別れなければならなかったのか。男、女、ゲイ、黒人、白人-、ニューヨークに住むさまざまな人々の織りなす愛憎の形を、言葉を尽くして描く著者渾身の長篇。女流文学賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 江國香織さんがお薦めしていたため読んだ。痛々しくもとても美しい作品。

  • ココが一緒に暮らしていたリックは年上の男。
    彼はすぐアルコールに逃げるダメな男で、彼の息子のジェシーとココはいい感じの距離感で接していた。

    酒浸りのリックから、自分よりも若いランディに乗り換えることにしたココ。リックはココを手錠で繋いで暴力を振るうが、やがて現状を受け入れる。
    その後、リックは事故で亡くなってしまい、ジェシーは実の母親に引き取られる。

    ゲイの友人の部屋に転がり込んだココは、ランディとの恋愛を熱心に続ける。
    ジェシーがグレそうになっていると聞きつけたココ、ランディ、ゲイの友人は彼を部屋に招いて、熱い交流をする。

    ---------------------------------------

    たしかにジェシーはリックの息子で、ココには何の責任もないかもしれない。でも、ジェシーに対してのココの態度はちょっとどうなのかな、と思わずにはいられなかった。

    バッキーからケイに乗り換えたマリークのように、ココはずるさを人に見せるべきだと思った。
    都合のいいときだけココはジェシーの家族みたいに振る舞ってたけど、もっとジェシーに対して汚い部分を見せるべきだった。大人の男女の関係性を説くよりも何よりも、ココは自分が悪者になる勇気を持つべきだったんじゃないかな。

    酒浸りの男、リック。都合のいい女、ココ。子どもに手を出した無責任な女、スー。
    常識を持った大人はニューヨークにいないのだろうか。まともなのはバッキ―だけじゃないか。

  • 人を愛する甘美さも切なさも味わえる本。どうしようもないことが、一番愛おしい。舞台のニューヨークの空気も、本当にシビれます。

  • 折に触れ、何度も本棚から発掘しては読み返します。高校、大学、フリーター、社会人。ヒロインであるココを見上げていた私が、いつか追いつき、追い越していくこの不思議。
    どうしようもない黒人の中年男に恋するオリエンタルのココ。男の息子や前妻との話、そして別れ、新しい恋。みんなみんな、どうしようもなく「生きて」います。結婚や愛や死や、そういう人生における重要なものの価値観を、私に問い直してくれる本です。読むたびに感動する部分が違う。そして、必ず泣いてしまう。
    長さを感じさせない、ずっしりしっかりとした本です。出会えたことを誇りに思う。

  •  ニューヨークに暮らす日本人ココの恋愛を描いた小説。ココは子どものいる黒人男性リックと同棲していたが、新しい恋人を作り、リックの元を去る。しかし、リックの思い出は消えない。トラッシュとして捨てることが出来ない。人間が弱くて、悲しくて、愛おしい存在だと思える一冊。

  • こんな酒浸りの男とはさっさと別れないとダメだ、いやでもこの人を捨てていったらこの連れ子はどうなるのだ、いやでも自分の子じゃない、母親は別にいる、でもでも…ここまで単純ではないけれど、葛藤。

  • 読みごたえがありました。
    それは本が分厚いからというのではなく、内容がヘヴィーだったから。
    こんなにこんなに言葉を尽して他人と話したり自省したりするってことが、日本人はあまりないのではないだろうか。
    けれどアメリカでの評価は掘り込みが浅い、だったそうだ。
    欧米の恋愛は、または人間関係は、それほどにヘヴィーなのか。

    愛している男・リックとの生活に疲れ果てている女・ココ。
    ココはただ、リックを愛しているだけだ。
    愛を伝える。
    彼のために献身する。
    二人の時間を楽しみたい。
    しかし、そんなココの態度が、リックを追いつめる。

    黒人として生まれ、幸せだったと思うことなく大人になったリックは、愛情というものがわからない。
    いつも目に見えるものをしか信じない。
    ココが何を望んでいるか、薄々わかっているけれど、ぞれはリックにとってとても怖いこと。
    だって愛なんて見えないから。

    リックの息子ジェシーは、幼い頃から父母の喧嘩を見て育ち、大人を信じることができない。
    だけど、大人に面倒を見てもらわなければならない子どもであるという自覚はある。
    つまりとても賢い少年なので、ココに懐かない。
    ここにとってもジェシーは邪魔だ。
    なのに、何で親でもない自分ばかりがジェシーの面倒を見なくてはならないのか。

    そういう鬱屈から始まる物語。
    リックはココと対峙することができず、毎晩酒を飲みに出かけてしまう。

    ”世の中の父親は、おやすみを毎日聞く義務を持たないのである。それは母親の義務だ。そして、ジェシーは、その母親ととうに離ればなれになっていたのだ。”


    人種差別や、性的マイノリティに対する偏見など、頭ではわかっていても現実にはいろいろある。

    ”人間の社会は、思うよりもはるかに生理的なものに支配されていると、ココは、いつも考えるのだ。”

    リックといても幸せになれないのなら、リックに幸せを与えることができないのなら、別れた方がいいのではないかとココは思う。
    だけど、できない。
    愛しているから。
    しかし彼女の周囲では、愛し合っているのに不倫をしたり、気持ちが覚めたらさっさと次の人に乗り換えたりする人も多い。
    ココは優しすぎるのだが、それは彼女の長所であり、短所でもある。

    ”何気ない顔をして、人よりも先に幸福を手にする人間。そういう人は、他人を憎んだりもせずに、いつも暖かい雰囲気を漂わせている。”
    これはなかなか鋭い指摘だ。

    ”人間関係の中で、被害者である人間は加害者でもあるんだ。そのことの解らない人間は、愚かだよ。”
    これは難しい問題。
    いじめの被害者や虐待されている子どもに言うことはできないけれど、自分自身に対しては、絶対的被害者であることを免罪符にはしたくないと思う。

    読みながらウクライナとロシアのことをちょっと考えた。
    絶対的な被害者も絶対的な加害者もなくて、どちらにも言い分はあるという立場で話を聞かないと、何かを間違えてしまうのではないか。
    関係性の中にある、というのは、そういうことだと思う。

  • 懐かしい。昔の私の恋愛バイブルとも呼べる作品だった。でも、今読むと主人公や彼女を取り巻く人間の価値観がハッキリしすぎていて、押し付けがましく感じてしまった。もう今の私にはしんどいなあ。

  • 婚約までしてる彼と別れ話をしてる期間に読んだもの。
    とりあえず長い。後半すいすい進んだけど、前半つらかったなー。
    あと、登場人物のほとんどが不器用すぎる。
    ココの気持ちと不器用さが自分と重なって、ココ分かるよー!と共感する部分が多かった。

    そして、やっぱり山田詠美さんの描く若者は魅力的だな。ジェシーが、僕は勉強ができないの時田秀美に見えた瞬間もあり。山田詠美さんが若者に希望を見出してるのが伝わってくるような気がした。

  • 多分舞台はNYで、黒人の彼氏リックと、リックの前妻との間の息子ジェシーと住んでるココの物語。

    個人的にはココがいろんな場面で幼稚に思えた。
    なんのかんのと言っても結局子持ち&バツイチ男性と付き合う覚悟が足らなかったのでは?
    私は女だけど、ココのような女性とは仲良くなれないなあと思った次第。

    会話で進むので読みやすかった。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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