南の島のティオ (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 814
レビュー : 104
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167561024

作品紹介・あらすじ

南の島に住む少年ティオが出会う人々との不思議な出来事を中心に、つつましさのなかにも精神的な豊かさに溢れた島の暮らしを爽やかに描く連作短篇集。小学館文学賞受賞作。(神沢利子)

感想・レビュー・書評

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  • この本のおかげで、週末を幸せな気持ちで過ごせました。
    ひとたびページを開くと、南の島にひとっ飛び。
    魔法が、精霊が息づく、どこか懐かしい10編の物語です。

    きっと、昔はどこもこんな風に見えないものが信じられていたんでしょうね。
    文明が発展して便利になる一方で、失われてしまったものもたくさんあったのだと思います。神様がいて、精霊の声を聴く人がいて、生命の息吹を感じられる。魔法だって信じられる。そんな世界の存在自体が、こんなにも自分を癒してくれるなんて。

    「絵はがき屋さん」
    受け取った人は、必ず来たくなる。
    そんな魔法のような絵はがき。ものすごく、わくわくしませんか?
    ピップさんが語る渡り歩いた世界の話もわくわくするし、思わず旅先から絵はがきを出したくなりますね。

    「草色の空への水路」
    ちょっといたずら好きな、すこし子どもっぽい神様の存在が感じられるお話です。
    今でも神様に挨拶をしたり、お伺いを立てたりする風習は世界中で残っていますよね。神様が見せたあまりにも幻想的な風景にもうっとり。

    「十字路に埋めた宝物」
    幸せの連鎖って、あるんだろうな。
    そう思わせてくれる、いいお話。責める前に、耳を傾ける姿勢も、独り占めしない姿勢も、とても大切ですね。

    「帰りたくなかった二人」
    どうしてもその土地に惹かれて仕方がない、ということは、あるのかもしれないですね。
    仲良しな二人と冒険のような日々に心が温かくなります。

    「星が透けて見える大きな身体」
    これもまた幻想的なお話です。
    美しい子は神様に愛される、幼い頃に命を落とした子は神様が呼んだからだ、なんて言いますよね。
    大事な友達を取り戻すための勇気のお話。暗に親では呼び戻せないと示されてるのが実は切ない。

    「エミリオの出発」
    失われゆくものを大事に慈しむエミリオ。
    周りに流されることなく、自分がすべきことを見つめる強さに惚れ惚れします。
    楽をしようと思えばいくらでも楽ができるのに、そうしなかった彼の真摯さがすばらしい。

    ひたひたと心を満たす幸せな余韻。あとがきもとても素敵なんですよ。
    疲れた週末の読書におすすめの1冊でした。

  • 心がホクホクするとても暖かい短編集ですね♪10編ともに懐かしい暖かい優しい清々しい物語です。誰しもティオの島に行きたくなり暮らしてみたくなるに違いないなぁ

  • 「どうしてここがこんなに好きになっちゃったんだろう」
    (トム)

    読んでるうちにティオのホテルに宿泊してティオたちと一緒に海に遊びに行ったり釣りをしたりゆっくり過ごしている気持ちになれた。

  • 優しい語り口が良かった。
    多分、この本はもう一度読み直す日があると思う。

  • 重たい本を読んで、少しげんなりしていたので、小休止的な位置づけで読み始めたのですが、予想以上に癒されました。

    気分転換に日帰りの小旅行に出かけてきたみたいな読後感。
    目を閉じるとさらさらと波が浜辺に打ち寄せる音が聞こえてくる気がします。

    池澤夏樹先生の文章と世界観は児童文学として描かれた本作でもとても透き通っていて美しいのです。

    ティオの目を通してみた島での出来事が10篇にまとめられて、その1つ1つが共鳴し合い、心地よいハーモニーを創り出しています。

    『帰りたくなかった二人』が特に印象に残っています。
    私たちの内側に秘められた願望がぶわーっと溢れ出しているみたい。

    『絵はがき屋さん』で「大人になったときに、どうしても好きな人ができて、来て欲しくなったら投函」する手紙がどうなったのかが気になります。

    全体的にファンタジーのような不思議な出来事が次々と起こるのに、自然と人が、都会よりも密接に結びつくこの島ではどういうわけかありのままに、さらりと受け止められるのはなんでだろう。

    私もティオにこの島を案内してもらいたいなぁ。

    《所持》

  • 不思議な話もあり、人間としてのあり方を問う話もあり。
    南の島のティオという少年を主人公にした短編集。

  • 太陽、海、伝説、魔法、ホテル、島の暮らし、子供たち、大人たち、笑顔。童話チックなファンタジー。でも本当の意味での子供向けというよりはやっぱり大人向けの作品だと思う。南の島の生活が楽しそう。まさにスローライフでちょっと憧れる。一番最初の、受け取った人が必ず行ってみたくなる絵ハガキのストーリーが一番よかった。

  • <u><b>理想郷ではなく、私の住む世界の比喩としての「南の島」</b></u>

    <span style="color:#cc9966;">受け取る人が必ず訪ねてくるという不思議な絵ハガキを作る「絵ハガキ屋さん」、花火で「空いっぱいの大きな絵」を描いた黒い鞄の男などの個性的な人々とティオとの出会いを通して、つつましさのなかに精神的な豊かさに溢れた島の暮らしを爽やかに、かつ鮮やかに描き出す連作短篇集。</span>


    「つつましさのなかに精神的な豊かさに溢れた島」とあらすじには書いてあるけれども、その島はいつでも私たちが憧れる理想的なとしてに描かれているのではない(もちろんそういう部分もあるけれど)。「エミリオの出発」を読めばよくわかる。ティオは、南の島と比べククルイック島に「つつましさのなかに精神的な豊かさに溢れた島」という理想郷を見ているのだろう。そんなティオの住む南の島は、私たちにとって理想郷というより、「昔は良かったのに」を内に抱え込み、理想郷を夢見る私の住む世界の比喩と考えた方が良いだろう。あんまり”良くないヤツ”に”良いヤツ”、”変なヤツ””普通なヤツ”…いろんな人がいて、そこに住んでいる人はそれなりにそれぞれ、いろんなゴタゴタを抱えており、いろんな大事な物を抱えている。じっと読んでいると、自分の住んでいる世界と共通する部分がすっと見えてくる。[more]

    それにしても、池澤夏樹の言葉の使い回しってホント好きだ。カッコイイ。
    <blockquote>ぼくはどう返事をしていいかわからなかった。人生でやるべきことを一通りやってしまった時に、振り返って人が何を思うのか、そんなことは十四の少年にわかることではない。ぼくはただ人にはいろいろな人生があって、みんなそれぞれに誠実に生きようとしているのだということを少しだけのぞき見たような気がした。
                「ホセさんの尋ね人」</blockquote>

    <blockquote>たぶん勇気というのは男らしさや元気や無謀な冒険心とはまるで違う物で、ひょっとしたら愛と関係があるのかもしれないと僕は考えた。
        「星が透けて見える大きな身体」</blockquote>

    <blockquote><span style="color:#cc9966;"><b>目次</b>
    「絵はがき屋さん」
    「草色の空への水路」
    「空いっぱいの大きな絵」
    「十字路に埋めた宝物」
    「昔、天を支えた木」
    「地球に引っ張られた男」
    「帰りたくなかった二人」
    「ホセさんの尋ね人」
    「星が透けて見える大きな身体」
    「エミリオの出発」
    「あとがき、あるいはティオのあいさつ」</span></blockquote>

  • 不思議爽やか短編集だった。
    あーーーーーっ!!!!
    旅行行きてーーーーーー!!!!
    島でスローライフ送りてーーーーーー!!!!
    ってなります。

  • 清々しい青空の下で読みたい美しい短編集。星空の下も素敵かも。
    ティオの島に私も行ってみたい。童心に戻れる素敵な一冊でした。

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著者プロフィール

池澤夏樹(いけざわ なつき)
1945年、北海道帯広市生まれ。1964年に埼玉大学理工学部物理学科に入学し、1968年中退。
小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『花を運ぶ妹』『カデナ』『光の指で触れよ』『世界文学を読みほどく』『アトミック・ボックス』等多数。また池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』、同『日本文学全集』も多くの読者を得ている。旅と移住が多い。
2018年9月から、日本経済新聞にて連載小説「ワカタケル」を連載。

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