花を運ぶ妹 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2003年4月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784167561062

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プレミアム

みんなの感想まとめ

テーマは、家族の絆と個々の苦悩を描いた物語であり、兄の逮捕を受けて妹が奔走する姿が印象的です。若くして成功を収めたイラストレーターの兄、哲郎がバリ島での事件に巻き込まれ、妹のカヲルが彼を救うために奮闘...

感想・レビュー・書評

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  • 祈りと魂の救済の物語。

    若くして名の知れたイラストレータとなった兄、哲郎は、ある事情でバリ島へ行き、そこでハメられてヘロインの売人として逮捕されてしまう。
    その知らせを聞いた妹のカヲルは、兄を助けるためにバリ島へ赴き、日本や慣れ親しんだフランスとの違いに戸惑い、怒りを覚え、孤独と闘いながらも、奔走する。

    物語は、妹、兄のふたりのモノローグが交互に描かれて進められる。
    兄のために奔走するカヲルの理路整然として丁寧な語り口と、自らを「おまえ」と呼び、内省していく哲郎。
    かみ合わない進行が時々交差する。

    哲郎がヘロインに苦しめられる様子の描写が、もう、なんというか、すごい。
    絶対に手を出してはいけないもんなんだなぁと。鳥肌が立った。
    それから、日本がいかに麻薬に対して甘い国であるかということも感じた。

    この作品は、いろんな角度からいろんな読み方が出来そうだ。
    バリ島がどういうところであるか、勘当した息子に対する両親の態度、
    兄と妹のつながり方、先進国と後進国の力関係、そして、信仰について。

    先進国には先進国の、バリ島にはバリ島のルールが流れている。
    善と悪は表裏一体。ひとは良いことだけを集めることはできない。
    私もバリ島に行った時に、ガイドさんから聞いた言葉。

    バロンとランダの戦いのように、善と悪が入れ替わりながら戦いを続けながらも共存させ
    バランスを取っていくことが、生きていくということなのかもしれない。

  • 第54回毎日出版文化賞
    著者:池澤夏樹(1945-、帯広市、小説家)
    解説:三浦雅士(1946-、弘前市、編集者)

  • 麻薬保持でインドネシアで捕まり冤罪をかけられて重罪となる兄と兄を助けるためにインドネシアへ行き釈放・減罪のために尽力する妹。
    それまであまりやりとりのなかった家族間での交流が深まり、生きるとは何か・家族とは何かについて考えてゆく。

    社会人となり、今まであまり話すことがなかった両親や妹・弟と話すことが格段に増え、あらためて家族とは特別な絆を持った関係なのだと感じていた時に読んだ一冊。状況は特殊かもしれないが、家族とは兄弟とは何なのか疑問に思った時に読んでみてもいいかもしれない。

  • アジアの湿度・匂い・雑踏が伝わってくる作品。
    アジアの文化では妹を未来を切り開く力を備えたものと表現し、事実哲郎の人生を二度の変化を与えた。
    それは偶然なのだろうけど、心のありかた次第で人は変わる事が出来るという事が伝わってくる。

  • 入りこむまで読みづらさがあるけれど、バリの生温かさをボンヤリ感じた。

  • 池澤文学では、最も素晴らしいと感じた。

  • 人生なんて、つまりのところ
    「孤独に捉われたどん底期」「孤独から逃れようとする運動期」「孤独から解放された(と心から思える)好調期」「孤独につかまらないように活動する継続期」のいずれかの時期を繰り返しているんではないか?と思う。

    その度にハッピーになったり、回りが全部敵に思えたり、意味なくやる気を出してみたり、自分の存在価値さえわからなくなったり、手ごたえを感じて感涙したり、不安に追い立てられたり。

    そしてそれが繰り返すということ自体が希望であり、
    またいつだって今自分が感じ考えているという現実より先のことは何もわからないのだ。

    主人公の1人、哲郎は売れっ子画家。なのにある罠にずるずるとはまってしまった背景には今まで積み上げてきた今の自分と絵のその先への期待と不安と、孤独があったのでしょう。

    もう1人の主人公、哲郎の妹であるカヲルは哲郎の巻き込まれた事件によって、高い理性と知性で戦いながらも一度は孤独のどん底に落ち苦しみます。

    このまま自分の存在が消えてなくなってしまえばいいと
    孤独のどん底で人は思います。
    けれど、また浮上したいともがき、やがて本当に浮上する力を得る「時」に出会います。

    その「時」とは
    人との出会いであったり
    過去の、人とのふれあいの記憶であったり
    壮大な自然の力であったり
    社会の中の変化であったり

    そして「時」との出会いが
    自分の身体の生命力をよみがえらせ
    知性理性を目覚めさせる。
    孤独から解き放たれたとき、人の目に映る世界は色とりどりで、良い香りが溢れ、人に感謝して、自分も行動を起こせる。

    なんかぐちゃぐちゃであっても
    理不尽であっても
    そのサイクルだけは純然と存在するということ。

    そんな希望と再生の物語。

  • 体の中から力が漲る作品だと思う、とても。
    古代から日本で兄妹は最強のパワーを持っていると考えられていたんじゃないかな。霊力をもつ妹が兄を助ける、まさにこの話である。
    でも不思議なパワーをもつのは妹ではなく南の島バリのほうだったのか。
    魅力いっぱいだな~

  • 池澤夏樹さんの作品て宇宙感が漂ってるような印象

  • 兄妹という設定が、まず感情移入せざるをえない。そんな個人的なことをもうひとつ付け加えるならば、アンコールワットがキーとして出てくる小説を、カンボジア旅行中に読む、という小さな偶然。まあメインの舞台はバリ、パリなんだけど。
    で、アジアとヨーロッパ。2つの世界の違いを下敷きにしつつ、再生の物語としても自然に読めて、よかった。ヘロインのトリップ(?)中の描写はこわいなー。

  • バリ島が舞台の長編小説。
    兄と妹の二人の視点から繰り広がれる話は夫々の視点で進む。
    漫然と読んでしまった。妹の苦悩、兄の苦悩、夫々の苦悩が同じことを源にしているのにお互いに共感がない。そうか、人間の苦悩というのは実は常に孤独な苦悩なのだ。

    でも、そこから脱するのはどこか第三者的な後押しみたいなのが付きまとう。それは祈るものにとっては神であり、超越者でるのかもしれない。

    またバリ島に行きたくなった。

  • 南国の風を感じたい時には池澤夏樹。
    しかし今回はちょっとばかり勝手がちがったようだ。

    『マシアス・ギリ』のときのような、いい意味でいつもの池澤節を若干進路変更してみせてくれた長編。
    彼のようなゆっくりとした、なだらかな海を思わせる様な丁寧な筆致は短編の方がむいているように思えたが、長編ではなるほどこんな粘性を発揮するのか。

    しかしクスリをキメるところはこれでもかというほどコワク的でまいった。しかもそうした、現世と天上の間をたゆたうようななんとも言えない快楽の描写が何ページも続くものだから、何だかイイモノなのかと思えてきてしまい、そんな自分が怖くなってあわてて体勢立て直す、の繰り返し。ハテこれはクスリをすすめる小説なのか??と誤解したくなるほどです。

    って言ったら池澤氏に怒られるかな;

  • スピンオフ作品(と言っていいのかな)がSWITCHに掲載されていたなあ。

  • 前半はあまり惹かれなかったが、170ページを越えたあたりから面白さが出てきた。
    カットバック方式は兄妹の違いが文体ではっきりわかる。哲郎が自分を引いて(呪って?)「おまえ」とぞんざいな言い方でカヲルは「ですます」調というのはやっぱり上手い。よく考えられている。
    「水」がキーワード。洗礼の水、ヘロインを溶かす水、海、シャワー、波、潮流、雨、川、湿度、涙、湖、潜りぬける水。(2007.10.24)

  • 国境をも越える兄弟愛。
    このインターナショナルなスケール感、池澤ワールド炸裂ってかんじ。
    一気に読みました。マジで。
    読後にかなりテンション上がった。

  • 2006.07.03

  • 初めて読んだ池澤夏樹さん。これでファンに。

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著者プロフィール

(いけざわ・なつき)
作家。1945年、北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。30代の3年をギリシャで、40~50代の10年を沖縄で、60代の5年をフランスで過ごす。ギリシャ時代より、詩と翻訳を起点に執筆活動に入る。1984年、『夏の朝の成層圏』で長篇小説デビュー。1987年発表の『スティル・ライフ』で第98回芥川賞を受賞。その後の作品に『母なる自然のおっぱい』(読売文学賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『楽しい終末』(伊藤整文学賞)、『静かな大地』(親鸞賞)、『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞)など。その他、自伝『一九四五年に生まれて――池澤夏樹 語る自伝』(聞き手・文 尾崎真理子)、編著に『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集』(全30巻)、『池澤夏樹=個人編集日本文学全集』(全30巻)などがある。

「2026年 『遙かな都』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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