東京駅物語 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2010年8月4日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784167576073

みんなの感想まとめ

明治から昭和にかけての激動の時代を背景に、東京駅を舞台にした人々の人生模様が描かれています。九つの短編は「グランドホテル形式」で構成され、各話が巧みに絡み合い、登場人物たちの運命が時代とともに流れてい...

感想・レビュー・書評

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  • 東京中央停車場(現在の東京駅)を舞台に、日露戦争が勃発した明治37年前後から昭和の終戦直後まで、主人公が移り変わりながら展開する九つの物語。

    とても面白く、物語同士がゆるやかに絡み合っているため、一気に読み進めてしまう。そして今回4回目くらいのリピート。たまにその世界観に入りたくなって読み返したくなる本。ただし、日露戦争、第一次世界大戦、日中戦争、第二次世界大戦と、時代背景に常に戦争の存在があるため、作品全体に重苦しく、物悲しい空気が漂っている。読後に爽やかさやすっきりとした感覚は残らないけれど、それでも東京駅という誰もが思い浮かべることのできる赤レンガの駅舎が舞台であるため、とても興味深く読める。

    印象に残ったのは第四話の終着駅。この話が一番物悲しい。悲しくてやりきれない気持ちになる。歴史背景は大正12年の関東大震災の時期。

    第五話の山手線は前橋から出てきたおばあちゃんが主人公。ずっと一人語りで話が進んで、喋る喋る。ずっとおばあちゃんのおしゃべりで話が終わる。この話し方がまんま杉村春子さんのイメージでずっと脳内で杉村春子さんが喋っていた。前の話に出てきた人のその後が垣間見れるのだけど、あー悲しいな。人間って特に男って弱いなって思う。このおばあちゃんは現実的でちゃんと今を生きていて生命力が強い。

    第七話から第九話までは一人称の人物は変わるけれど、須磨子という地味な女教師が出てくる。昼間は真面目な女教師をしていて、週末は濃い化粧をして自堕落な女を演じている。戦争に行くのは名誉だと担ぎ上げられ戦死させられた旦那さんのことをずっと忘れられず「戦え、胸を張ってお国のために死ねという」風潮に静かに怒りながら反発している。

    第八話は戦友 時期は第二次世界大戦まっただなかで、B29による東京への空襲がはじまりそうな頃。主人公は小学生の英輔。英輔は結核の父親と元気で明るい母親と暮らしていたけれど、母親が父親の実家である郡山へ疎開しようと切符を買いに有楽町駅に並んでいたときに悲劇が起こる。英輔の学校の先生として須磨子が出てくる。須磨子は仕事をしているときは地味な女教師。地味でおとなしいけれど、戦争を正義ととらえる男の教師たちに静かに抵抗している。大声を張り上げるわけではないけれど、嫌味をのらりくらりと受け流して子供達を守っている。戦争の真っただ中、お国のためにと国民が一丸とならないといけない時期に須磨子のこの反発は須磨子の心に渦巻くものすごい怒りや憤りを感じた。中身はとても強い女性だなと思った。

    第九話は、終戦後で戦争で身内や親しい人が死んでも、みんなそうなんだから誰かが死んでしまったことは、特別じゃないって言われていた頃。そんなことはないと言いたいけれど、戦争に向けての同調圧力と同じように、仕方ない仕方ないみんなそうなんだからあきらめろ、っていう同調圧力が戦後にもあったように思う。やりきれない思いはどこへやれば良いんだろう。戦争を経験した人たちはそんなやりきれない思いを抱えながら生きていかなくてはならなかったんだろうな。

    多くの人が行き交う東京駅は、きっと様々な人間模様を見てきたのだろうと想像が広がる。そして、戦争のやりきれなさや理不尽さについても深く考えさせられる。物悲しさはあるものの、生きるということは楽しく幸せなことばかりではないのだと、改めて思わされる。この連作短編集は東京駅で交差する市井の人の人生の一瞬を垣間見させてくれるものであり、「人生とは」とさまざまな想いを巡らせることが出来る物語だと思う。

  • 明治の時代に、新橋から横浜までの鉄道が初めて開通した後
    新たな路線の開通に伴い建設されることになった東京駅。
    その時代の東京駅を行き来きした人々の物語です。

    その時何が起こったのか....
    その頃(過去)に起きたいくつもの惨事は、すでに知っているだけに
    結末を読まずともどういうことが起きたのかわかってしまうと
    こればかりは、塗り替えることも作り替えることもできないせつなさに
    衝撃が走ります。それは人々の人生を狂わせてしまったと同時に
    東京駅の歴史をも狂わせてしまったのですね。

    九つの短編で語られる人生物語は、連作していてどこかで誰かと繋がっています。
    こういったお話はよくありますが、この構成を「グランドホテル形式」というとは
    初めて知りました。

    ステーションホテルの部屋から改札口が見える部屋。
    泊まってみたいですね~。でもきっと高そう。

    ステーションギャラリーの方は観覧すると、一つ高い位置から
    改札の往来を見降ろすことができます。そして、開通当時の
    レンガにも触れます。

  • 東京駅は八重洲口から見ると平凡な駅であるが、丸の内口から見るとレンガ造りのドームが偉容を誇っている。

    恩田陸さんの「ドミノ」は主に東京駅の内部が舞台の面白い話だった。
    この北原亜以子の「東京駅物語」はそのレンガ造りの建物が主役だ。

    主にその待合室にての人生模様がせつなく描かれている。東京駅が中央停車場としてまさに誕生しょうとした明治30年代から、昭和の敗戦一年後までを9話の章立てで物語が進む。

    第一話が時代物のようで、平凡だなーと思いつつ読み進んでいくと、どうしてどうして二話、三話と複雑に絡み合った人々の運命が時代とともに流れていく「グランドホテル形式」というらしい。ああ、こういうミステリーもあったのだと思う。

    第七話の主人公鳥尾須磨子が登場すると、その哀切にじーんとする。

    新しくなった丸ビル、「オアゾ」などが出来てますます変化していく丸の内側、駅舎も改修するとか…。よく利用する私が、図書館で題名に引かれて手に取った本だが、東京駅の歴史を垣間見せてもらった。

    初北原亜以子さんでもあった。

  • 東京駅の歴史を、明治大正昭和と、短編集で繋ぐ。
    「東京駅が見ていた人々」?
    建築にまつわる話、待合室、ステーションホテル…戦争、空襲…
    登場する人々の、ささやかなつながり、すれ違いなど。
    イケメン結婚詐欺師のなれの果てがコミカルでした。
    もっとこう、気取った本なのかと思ったら、私の好きな感じの、明治大正昭和でした。

    新しくなった東京駅、まだ行っていないなあ…
    今度ゆっくり行きたいと思います。

  • 明治から終戦直後までの東京駅にまつわるお話
    9作の短編集ですが、少しずつ繋がっています
    出会いや別れだけでない、時代の象徴としての東京駅が垣間見れました
    ⑧戦友 が良かった

  • 読み始めてすぐに時代小説風な内容に近かったと感じ読了できるか不安になったけれどなんとか読了。東京駅にまつわる話でその建設当時のことなど実際に駅舎を思い浮かべながら楽しめた。戦時中の話やいろんな人の人生が垣間見えたけれど、時代が前後したり登場する人物を整理しないと少し混乱する。再読したらすんなり頭に入ってくるかもしれない。こんな時代を経て今があると思うと感慨深い。

  • 少しずつ繋がっていて興味深く。

  • 短編ですが、繋がっている部分もあったり、一冊で年月の流れを感じられました。

    面白かったけど、どれも切ない終わり方でした。
    中でも『終着駅』が一番切なかった。

    どの登場人物もみんな幸せになって欲しいと思いました。

  • 東京駅を起点に、いろんな人の人生が交差して明治~昭和まで進んでいくお話です。

    終着駅が一番好きでした。
    一つ一つのお話は、ちょっと好みではないものもありましたが、他の話しで登場人物同士が絡んだりするので読み終えることが出来ました。
    ちょっと難しいところもあって、最後の時のかけらはよく分からずだったので、時間が経ったら再読してみたい一冊です。

  • 20160926読了
    #鉄道

  • 今の東京駅の話ではなく、東京駅創建の頃から、第二次世界大戦後の辺りまでのお話。創建に関わった人物に絡む人々、出来事が物語を織り成していく。

    不思議な感じの物語です。駅が旅や人生の起点・終点の象徴なんですね。

  • いいお話のように思いましたが、いまひとつ入り込めませんでした。いろいろな生き方があるんだな、と感じる一冊です。もう一度いつか読んでみたいと思います。

  • 2012年に改装され、1914年の竣工時そのままの姿で「東京の表玄関」の役割を担っている東京駅駅舎。新幹線利用時やショッピングなどで、東京駅を訪れることがあったが、中の電車のプラットフォームばかりでなく、ちょっと丸の内側へ出て、駅舎の外観を見たくなる。

    赤レンガの大きな駅舎。
    ほとんど竣工時そのままの姿と材質を使って、原型に忠実に再現されているという。見る人に旅の始まりと終わりと、すれ違う人々の人生ドラマを感じさせると思っていた。そんな東京駅を舞台にした人生ドラマの本が本当にあったので、驚いた。

    「東京駅物語」。
    まずは題名に魅かれて読んだのだが、時代小説の温かい人情小説を感じさせる文章でとても読みやすかった。

    1902年(明治35年)横浜から上京した25歳のパン職人立花新平と、有名女学校に入学したくて家を飛び出した萩本妙子が、東京駅で出会うところから物語は始まった。汽車にあこがれる妙子は当時「中央停車場」(東京駅原型)の建設現場で働きたいと想い、成り行き上、新平が工事現場で働くことになる。二人で落ち着いた生活をしていた頃、新平に召集令状が来て、新平は東京駅から戦場へ旅だった。残された妙子と工事にかかわった人たちが、東京駅の駅待合室で顔を合わせ、お互いにお互いの事情を知らぬまま、物語は新平・妙子・中央停車場の3つ要素でつながっていき、やがて終戦を迎える。

    それと並行して、駅の工事は、1908年(明治41年)から本格化し、1914年(大正3年)12月20日に開業。中央停車場は皇居(宮城)の正面の原野に設定され、「東京駅」と名付けられたという。その駅は、1945年(昭和20年)の東京大空襲により、一部が焼失した。その後、市民の熱い想いがあり、2003年には国の重要文化財になり、「赤レンガ駅舎の復原」になったという。

    東京駅の歴史もなぞりながら、そこで知り合い人生を交錯させた人たちの人生ドラマが面白く読みとれた。駅で起こる一瞬の出会いと別れ。駅のみが知る大切なドラマがいっぱいあるんだなと思った。

    ※余談※
    「丸の内再開発事情」もあり、赤レンガ駅舎が復原されたあとは、オフィス街の丸の内が見間違うばかりのショッピング・観光街になっている。

    駅舎オープン記念のときイベントの中にあった、映像作品「記憶~丸の内から未来へ~」を観た。
    幕末から現代にかけての丸の内の様子を8ミリビデオで撮影されたものを編集した映像作品だった。映像の中にはこの作品の人たちがいたのだなあと、今感慨深く思い出した。

    (東京駅ばかりが人生の出会いと別れの場、とは思っていない (^_^;)。念のため捕捉。)

  • 明治から終戦を迎える昭和までの東京を描いた物語。
    章ごとにメインの登場人物と時代が変わり、一人ひとりのストーリーは悲しいものが多いのですが、登場人物たちが、実は少しずつ関わっているという構成が好きでした。
    名前は出てこなくても、この人ってきっとあの時の人だ!とわくわくしながら読みました。

  • あんまし...。

  • タイトルに惹かれて手に取つた本。時代背景は明治から昭和の終戦あたりまで。
    文字通り東京駅にまつはる物語が連作短篇の形で綴られてゐます。登場人物は市井の庶民が中心で、皆それぞれに読者の分身たる部分を有してゐると思はれます。

    「質店の歌人」なる称号にこだはる女、自分は特別な存在と自惚れる男、名前と人格を捨てた詐欺師、自殺願望の男、戦死した冴えない男を忘れられぬ女...
    悪人らしい悪人は登場しません。しかしどこか自分に似てゐる人たちばかりで、身につまされる思ひがいたします。さういふ男女の無数の物語を、東京駅は何も語らずただ俯瞰するのみであります。
    丁寧な作りの職人仕事、といふ形容が浮かぶ小説『東京駅物語』です。

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-286.html

  • 10/08/21読了 登場人物が多すぎると感じたのはいまいち入り込めなかったからか。戦争を絡められるとどうしても・・・。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『化土記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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