ぶつぞう入門 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167579029

感想・レビュー・書評

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  •  『東京ラブストーリー』のマンガを描いた柴門ふみ。『島耕作』のマンガの著者弘兼憲史の嫁さんである。柴門ふみが、ぶつぞう入門という本を書いていたので、読んでみた。
    日本に戻ってから、寺院に行ったり、展示会に行って仏像をよく見る機会があるが、鑑賞対象としての仏像の見方がよくわからない。仏像と対峙すると流れている時間を感じることができる。
    やはり、私は運慶の仏像はすごいと思う。まぁ。運慶作と記されているので、運慶なんだと思ってみるからかもしれない。まだ、見分けがつかない。沢山見ることで、少しづつわかってきたが、やはり視点が定まらない。本書を読みながら、まぁ。あまり深く考えなくていいじゃないのということを知っただけでもいい。
     京都、奈良、鎌倉、高野山、東北など日本各地の50ヶ所のお寺などを訪ねる。そして、出会った仏像のイラストと柴門ふみが評価をしていく。自分ではひそかに第二の白州正子の座を狙い、編集部からはエッセイとイラストの描ける、女東海林さだおを目指せと言われる。なるほど。ロールモデルって必要だ。とにかく仏像を見ながら、大宝院の地蔵菩薩像は反町隆史に似てるとか、三十三間堂の風神像は岡村隆史に似てる、三十三間堂の婆藪仙人像は疲れ切った小泉純一郎、覚園寺の日光菩薩は、星飛雄馬の姉の明子に似ているという。聖林寺の11面観音は天海祐希タイプ、観音寺の11面観音は黒木瞳タイプという。漫画家の見方は顔の特徴をうまくとらえるのだなと思った。
     2000年秋に、京都駅に降り立ち、広隆寺、清水寺にいく。ここからスタートするのだが、弥勒菩薩半跏像を見て、「完璧すぎて、抽象化しすぎて、ちょっとゴメンナサイという気分になってしまう。とりつくシマもないスーパースター」という。どうも、あんまり好きじゃないようだ。やはり、仏像を見るには、好みなんだね。自分の感覚に合えばいいのだ。弥勒菩薩半跏像は、ドイツの実存主義者のヤスパースが誉めたという。
     結局柴門ふみの結論は、仏像見るなら東寺、三十三間堂、東大寺となる。
    そして、良い仏像とは、石井亜矢子師匠によれば、①バランスがとれている。②彫りが立っている。③ありがたいという。柴門ふみは、「好きなものは好きさ、人様から鑑識眼を疑われようがかまわないさ」という。まぁ。そういうもんだ。
     そしてベストテンを上げる。第1位。円成寺、大日如来。運慶作。凛々しく若さの息吹が伝わってきて、そこから生意気な自信まで感じられる。神々しいまでのありがたみがある。第2位。聖林寺11面観音。2m9cmもある。シンプルで中性ぽいのが好き。顔が11面あっても、美に昇華する仏教美術。天海祐希タイプ。第3位。東大寺戒壇院4天王広目天像。天平時代のミケランジェロ、国中連公麻呂作。これほどまでに凄みのあるガンを飛ばしている像は他にはない。顔面は超リアル。ミケランジェロに優っている。第4位。興福寺阿修羅像(八部衆)。将軍万福の作。眉根を寄せて苦しげな悲しげな表情がいいという。第5位。三十三間堂千手観音と28部衆。柴門ふみは慶派が好きで、550号の湛慶作がよい。そして摩和羅女像と婆薮仙人像がお気に入り。第6位。観心寺如意輪観音。膝を崩して目をとろんとさせたぽっちゃり美人。官能様である。鎌倉東慶寺の水月観音、泉涌寺の楊貴妃観音の2体を合わせて、セクシー3観音像。第7位。東大寺月光菩薩。国中連公麻呂作。ずっしりとした重量感と慈愛の母性が感じられ、白くてシンプルなものがいい。第8位。興福寺北円堂無着世親像。運慶作。運慶の作品では、重源上人像も見事。第9位。空也上人像。運慶の息子、康勝作。空也上人の苦しげな表情がいい。苦し気や悲し気が好きなのだ。第10位。浄土寺(兵庫県小野市)阿弥陀三尊像。快慶作。西陽を浴びて輝く阿弥陀像にはひれ伏す。
     柴門ふみは、「人間って弱いものなのだよ。なまけものだよ」という場所から出発している。人間の愚かさが、千年、2千年前から変わらないことを教えられた。仏教や仏像を求めたのは自分の心の弱さをなんとかしたいという動機があった。人間は悩み苦しむ弱き存在。そういう存在からは一生逃れられない。
     気軽に読めて、仏像をこんなふうに見るのだと教えられる。やっぱり、造形的に、運慶、そして快慶、慶派が匠みなんだね。国中連公麻呂は、初めて聞く名前。ふーむ。見てみたいものだ。

  • 読みやすかったので入門編としては良いかと。話題にのぼった仏像やお寺を調べてみたくなった。

  • お気軽仏像鑑賞紀行。

  • 2005年8月10日、初、並、帯
    2015年9月11日伊勢BF

  • 信仰心から拝んだり、知識・興味に基づいて鑑賞するのもいいけど、単純に心からの好悪で仏像を眺めるものあり!

  • 仏像の鑑賞については絵描き視点で私とは相容れないところもあるが、
    仏像と仏教に関する感じ方については大いに共感する。
    今まで信仰があったわけではないが、
    仏教についてもっと知りたくなった。

  • 柴門ふみ自身が素人なので、自分にとっての「入門」本を書いたというところ。好き嫌いで分類していくのだけれど、運慶・天平好きで定朝様今ひとつ、という感想は私の趣味と似ています。私の趣味はおばちゃんに近いのかも(笑)。モデルのはなさんだと、ここで飛鳥仏が入るんでしょうけどね。

  • 漫画家の柴門ふみ氏が日本全国のお寺を回り、目にした仏像について思うがままのことを書き綴った、言わばエッセイ。
    「入門」という名の示すが如く、「この仏像は芸能人の○○似」から始まり、本当に信仰心から仏像を拝む人が読めば怒り出すのではないかというような、非常に読みやすい語り口である。
    その中でも、仏像の魅力についての筆者の力説には、思わず頷かされてしまう。
    仏像にはこんな見方もあるのか。そう思わせられる一冊。形に捕らわれず、感じるままに芸術としての仏像を拝んでも良いのだ。

    受験生のころ、日本史の暗記が嫌で嫌で堪らなかった自分が楽しめるくらいだから、皆さんもきっと楽しめると思います。

  • マンガ家なだけに、仏像のスケッチはとても上手い。
    出版社編集部Y氏との見仏話は、大体が退屈かな?
    道成寺のページで、『安珍清姫』の縁起絵巻マンガや
    蟹満寺(かにまんじ)の名前と、この寺に伝わる縁起がオモロイ。
    そしてやはり、柴門ふみのベスト1仏像は、円成寺の大日如来!
    巻末の瀬戸内寂聴との対談は、なかなか楽しい。と言うか、かなり共感部分あり。
    最近のおばちゃんたち、大勢で着飾って美味しいもの食べて。。
    そんな暇とお金あったら、一人で寺に行っていた方がマシさっ!
    と言う勇気を貰う。決してストイックな意味ではなく、ダサイから。(笑
    仏像→偶像→アイドル→エロスの展開に、納得ww
    瀬戸内さんの「お釈迦さんというのは、あらゆる快楽を究め尽くした人です。」は、深い。

  • 文章スタイルはあまり好きじゃないが、まあまあ面白い

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著者プロフィール

1957年徳島県生まれ。お茶の水女子大学卒。79年漫画家デビュー。『東京ラブストーリー』『あすなろ白書』『同窓生 人は、三度、恋をする』『恋する母たち』など、著書多数。エッセイ集として『恋愛論』『大人の恋力』『そうだ、やっぱり愛なんだ』『老いては夫を従え』など多数。2016年、25年後の物語として描かれた『東京ラブストーリー  After 25 years』で柴門ふみブーム再燃。夫は弘兼憲史氏。

「2020年 『オトナのたしなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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