桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 モーダルな事象 (文春文庫)
- 文藝春秋 (2008年8月5日発売)
本棚登録 : 354人
感想 : 46件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (608ページ) / ISBN・EAN: 9784167580025
みんなの感想まとめ
本作は、桑潟幸一助教授を中心に展開される物語で、彼の思惑とは裏腹に無名作家の作品に焦点を当てることから始まります。期待していた太宰治の項を奪われ、意気消沈するクワコーが、無名作家の溝口俊平の原稿を発見...
感想・レビュー・書評
-
金大生のための読書案内で展示していた図書です。
▼先生の推薦文はこちら
https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18358
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA8675320X詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この後に出る桑潟ものとは違い、重さと軽さが相半ばするうえ、というか、するのでか長い。
桑潟シリーズと思って読むと疲れます。 -
敷島学園麗華女子短期大学、通称「レータン」で日本近代文学の助教授を務める桑潟幸一(くわがた・こういち)通称「クワコー」は、『日本近代文学総覧』で太宰治の項を担当することを期待していました。しかし彼の思惑に反して、若手の批評家である高澤樹江(たかざわ・じゅこう)に太宰の担当をうばわれ、クワコーには春狂亭猫介(しゅんきょうてい・ねこすけ)など無名作家の項が割り当てられることになります。意気消沈するクワコーでしたが、彼が執筆した無名作家のなかに溝口俊平(みぞぐち・しゅんぺい)という童話作家がおり、そのことが機縁となって研修館書房で編集を担当している猿渡幹男(さるわたり・みきお)という男が彼を訪ね、溝口の未発表の原稿を雑誌『言霊』に発表するという計画をもちだします。
後日、同僚の蓑串暁義(みのぐし・あきよし)助教授から、溝口の原稿発見の経緯を問われたクワコーが、あらためて猿渡に問いあわせたところ、久貝島にある溝口の別荘が取り壊されるところを買い取ったのだと猿渡はいい、さらに遺稿の発見者は猿渡ではなくクワコーだったことにしてほしいと依頼され、クワコーはこれを了承します。
その後、天竺出版の編集長である新城貴文(しんじょう・たかふみ)が溝口の作品を刊行することになり、クワコーはライター兼ミュージシャンの北川アキの取材を受けて、彼の解説が付された溝口の本が出版されます。予想に反して本はヒットし、クワコーは一躍時の人となりますが、猿渡は失踪したあと首なしの死体となって発見され、北川アキとその元夫である諸橋倫敦(もろばし・ろんどん)の「元夫婦刑事」コンビが事件の謎を追いかけることになります。
本格ミステリとして、いちおう物語の結末はつけられており、その一方で幻想的な要素もふんだんに盛り込まれた作品になっています。ただ、この二つの要素が融合されているというよりも、叙述のスタイルによって明確に区分されており、読者としてはなかなかスタンスを定めがたい作品という印象を受けました。もっとも、このとらえどころのなさが本作の不思議な魅力を生み出しているのかもしれませんが。 -
4
-
何を読んでいるのかわからなくなる。ホラーなの?ミステリなの?妄想なの?幻想小説なの?おそらくいろいろなものが混然一体となったジャンルなんて飾りですよという小説。
-
+++
大阪のしがない短大助教授・桑潟のもとに、ある童話作家の遺稿が持ち込まれた。出版されるや瞬く間にベストセラーとなるが、関わった編集者たちは次々殺される。遺稿の謎を追う北川アキは「アトランチィスのコイン」と呼ばれる超物質の存在に行き着く…。ミステリをこよなく愛する芥川賞作家渾身の大作。
+++
600ページ近いボリュームである。しかもみっしりと活字が詰まっている。さらには、導入部は、愚にもつかない桑潟幸一准教授の暮らしぶりが延々と続き、思わず本を閉じそうになること多々。だが、次第に、何が何だか判らない、いつ、どんなわけで巻き込まれたのかも判然としない、不可思議な事件の渦中に呑み込まれ、これを解き明かすのかと思えばさにあらず、クワコー自身はただならぬものを感じながらも、相変わらず愚にもつかない生活を送っていて、北川アキと諸橋倫敦という元夫婦がコンビとなって、なぜか調査に乗り出すのである。いまが一体いつなのか、どれが本当にあったことで、どれが妄想なのか、何もかもが混沌としていて、めまいがしそうなのであるが、後半は、なぜか次の展開を早く知りたくなるから不思議なものである。軽く読める物語とは言えないし、クワコーに肩入れしたくもならないのだが、なぜか惹きつけられる一冊でもあった。 -
壮大なスケールで構築された小説…ミステリのようでSFのようで幻想小説のようで、不思議で複雑、そしておもしろい!
ユーモアミステリ『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』 とその続編『黄色い水着の謎』を読んだあと、「あれ?クワコーシリーズはもう1冊あったんだ!?」とみつけたのがこの本。このときはクワコーはまだ東大阪にいて、助教授だった。そして、まだそれほどビンボーじゃなかった!お正月には純米大吟醸を奮発したり、足りなくなった酒をコンビニに調達しに行ったりするようなブルジョワ生活を送っていたとは衝撃(笑)どこかでみた著者インタビューによれば、やはりクワコーのことを書くのがとっても楽しくて仕方がなかったとのこと。そしてその後の軽いクワコーシリーズが誕生したわけですね。ぜひ続けていただきたい。
こちらの本の本来の主人公は探偵役の女性ジャズシンガー。「鳥類学者のファンタジア」に出てきたジャズピアニスト、フォギーの仕事仲間だが、独り者だし、世代も同じ、酒好きで食い意地がはってていろいろ身もフタもない感じなど、完全にキャラクターかぶっているが、これは著者の好みか(笑)
奥泉光はこんだけややこしい小説を書き、どっかの大学で教鞭をとり、いとうせいこうと文芸漫談もやり、ジャズフルートをふかせれば素人はだしというから、本当にすごい人であるなぁ。芥川賞の選考委員にも名を連ねていらっしゃいます。 -
長篇で、凝った構成の作品ですが、面白いかは微妙です。やたら進行が遅くて思わせ振りなくせに本筋にはヒネリがなかったな。最後にサプライズがあるかと思いきや、それすら無かった…
なぜこんなに評価が高いのか、自分には理解できませんでした。 -
好きな本。殺人事件があり探偵がでてきたと思ったら不思議なコインや怪しい過去へのタイムスリップ的なものまで。何よりも登場人物がくだらなくて個人的にとても好き。
-
-
若干、人としてどうかと思うところも多い、短大准教授クワコーの知られざる(?)大阪時代。
近代文学、戦争、謎のコインなどさまざまな要素がちりばめられたミステリー小説です。
小説の舞台が大阪、東京、香川とあちこち移動し、どうやら時空も超えているようで、かなり読みごたえがありました。
じっくりと謎解きを楽しみたい人におすすめの1冊です。 -
世界の謎を追っていくスリルとユーモアがとても面白かったです。現実と虚構が区別なくえがかれているのだけど虚構のほうに真実があるのかなと思いました。
-
短大で近代文学を教える桑潟幸一助教授(通称クワコー)が、あるマイナー作家について解説を書いたことをきっかけに、その作家の遺稿集を出すことになった。
意外にも遺稿集はヒットするが、次々と殺人事件が周りで起き、クワコーは複雑怪奇な事件に巻き込まれる…。
すごく面白かった!
ミステリや幻想ファンタジー、メタフィクションの要素など、いろんなジャンルのごった煮、といった趣向の小説。
事実と虚構が絶妙に同居していて、すごく楽しんで読みました。
くどいのに流れるような描写も痛快で、奥泉節に終始酔わされてしまいます。
小物すぎるクワコーの卑屈な自虐っぷりには爆笑させられ、北川アキの元夫婦刑事コンビの活躍には伝統的な探偵小説の味わいも楽しめました。
終盤で何となくオチがつきましたが、ちょっとミステリの味付けが薄いかな?と思いました。
解かれるミステリというより、人物描写や伝奇ファンタジー要素を楽しむエンタメ小説という感じで、ミステリを解くことを主眼にしないで読んだほうがいいかも。
結構ボリュームがありますが、つまんない所が無かったです。
知的だけど猥雑で下品な感じの文章が、単に自分の好みなんだと思います。 -
「森娘の秘密」でクワコーを知ってその前作ということで読んでみた。二つの視点で語られる話が全く様相を呈していて、読んでるうちに不安定になる。話がどんどん広がっていくところは面白かった。
-
立て板に水の如くもうだらだら饒舌に紙面を埋め尽くす文章に窒息寸前、詰め込み過ぎの内容物に脳内混沌としながらも気づけばのめり込むほどに面白い。バラバラなセンテンスが読み進むうちに繋がる仕組み、緻密な構成力の成せる技量。これはすごい。桑幸の魅力はそのダメダメっぷりに尽きるのか‥と思ってたら最後にちゃんとやるべきこと成し遂げて、収まるべき姿に収まってよかったよかった。笑える。けど後味は相当不気味な小説。ともあれお腹いっぱい大満足である。高源さんの解説はよく分からんかった。
-
途中から「SF? ホラー?」と混乱しますが、物理的なものにはきちんとオチがつきます。意外とちゃんとした本格ミステリー。
-
内容の濃いミステリー。結構苦労したけど、満足度大。
-
桑潟幸一准教授、通称クワコーの初登場作品。
第2作に出てくるような滑稽な語り口調は、まだそれほどないものの、
文字の分量の割には読みやすいし、流れもはっきりしていてわかりやすい。
ミステリというか、サスペンスとしても十分おもしろい。
途中に入る、クワコーの妄想?(夢)の部分が少し邪魔だと思うが。 -
私は、これまで奥泉光のよい読者ではなかったが、今回再読の機会を得て(奥泉光なんて、全然知らんかったけど、たまたま手にとってみたら、の意)感じた第一の感想は、非常に理知的な文章だということです。
-
濃密な文章で綴られていく重厚なサスペンス。ミステリとしての驚きはないが、ただただ物語に引き込まれていく。事件に巻き込まれていくFラン最底辺女子短大助教授視点のオカルト-ホラーチックな描写と、諸橋倫敦、北川アキの元夫婦探偵視点のトラベルミステリチックな描写のパラレルな進行が面白い。また、俗っぽく最高に小市民な桑潟幸一助教授の心理描写がクセになる。
この本が好きな人におすすめの本
著者プロフィール
奥泉光の作品
