桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 モーダルな事象 (文春文庫 お 23-2)
- 文藝春秋 (2008年8月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (605ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167580025
感想・レビュー・書評
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金大生のための読書案内で展示していた図書です。
▼先生の推薦文はこちら
https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18358
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA8675320X詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この後に出る桑潟ものとは違い、重さと軽さが相半ばするうえ、というか、するのでか長い。
桑潟シリーズと思って読むと疲れます。 -
敷島学園麗華女子短期大学、通称「レータン」で日本近代文学の助教授を務める桑潟幸一(くわがた・こういち)通称「クワコー」は、『日本近代文学総覧』で太宰治の項を担当することを期待していました。しかし彼の思惑に反して、若手の批評家である高澤樹江(たかざわ・じゅこう)に太宰の担当をうばわれ、クワコーには春狂亭猫介(しゅんきょうてい・ねこすけ)など無名作家の項が割り当てられることになります。意気消沈するクワコーでしたが、彼が執筆した無名作家のなかに溝口俊平(みぞぐち・しゅんぺい)という童話作家がおり、そのことが機縁となって研修館書房で編集を担当している猿渡幹男(さるわたり・みきお)という男が彼を訪ね、溝口の未発表の原稿を雑誌『言霊』に発表するという計画をもちだします。
後日、同僚の蓑串暁義(みのぐし・あきよし)助教授から、溝口の原稿発見の経緯を問われたクワコーが、あらためて猿渡に問いあわせたところ、久貝島にある溝口の別荘が取り壊されるところを買い取ったのだと猿渡はいい、さらに遺稿の発見者は猿渡ではなくクワコーだったことにしてほしいと依頼され、クワコーはこれを了承します。
その後、天竺出版の編集長である新城貴文(しんじょう・たかふみ)が溝口の作品を刊行することになり、クワコーはライター兼ミュージシャンの北川アキの取材を受けて、彼の解説が付された溝口の本が出版されます。予想に反して本はヒットし、クワコーは一躍時の人となりますが、猿渡は失踪したあと首なしの死体となって発見され、北川アキとその元夫である諸橋倫敦(もろばし・ろんどん)の「元夫婦刑事」コンビが事件の謎を追いかけることになります。
本格ミステリとして、いちおう物語の結末はつけられており、その一方で幻想的な要素もふんだんに盛り込まれた作品になっています。ただ、この二つの要素が融合されているというよりも、叙述のスタイルによって明確に区分されており、読者としてはなかなかスタンスを定めがたい作品という印象を受けました。もっとも、このとらえどころのなさが本作の不思議な魅力を生み出しているのかもしれませんが。 -
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何を読んでいるのかわからなくなる。ホラーなの?ミステリなの?妄想なの?幻想小説なの?おそらくいろいろなものが混然一体となったジャンルなんて飾りですよという小説。
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大阪のしがない短大助教授・桑潟のもとに、ある童話作家の遺稿が持ち込まれた。出版されるや瞬く間にベストセラーとなるが、関わった編集者たちは次々殺される。遺稿の謎を追う北川アキは「アトランチィスのコイン」と呼ばれる超物質の存在に行き着く…。ミステリをこよなく愛する芥川賞作家渾身の大作。
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600ページ近いボリュームである。しかもみっしりと活字が詰まっている。さらには、導入部は、愚にもつかない桑潟幸一准教授の暮らしぶりが延々と続き、思わず本を閉じそうになること多々。だが、次第に、何が何だか判らない、いつ、どんなわけで巻き込まれたのかも判然としない、不可思議な事件の渦中に呑み込まれ、これを解き明かすのかと思えばさにあらず、クワコー自身はただならぬものを感じながらも、相変わらず愚にもつかない生活を送っていて、北川アキと諸橋倫敦という元夫婦がコンビとなって、なぜか調査に乗り出すのである。いまが一体いつなのか、どれが本当にあったことで、どれが妄想なのか、何もかもが混沌としていて、めまいがしそうなのであるが、後半は、なぜか次の展開を早く知りたくなるから不思議なものである。軽く読める物語とは言えないし、クワコーに肩入れしたくもならないのだが、なぜか惹きつけられる一冊でもあった。 -
壮大なスケールで構築された小説…ミステリのようでSFのようで幻想小説のようで、不思議で複雑、そしておもしろい!
ユーモアミステリ『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』 とその続編『黄色い水着の謎』を読んだあと、「あれ?クワコーシリーズはもう1冊あったんだ!?」とみつけたのがこの本。このときはクワコーはまだ東大阪にいて、助教授だった。そして、まだそれほどビンボーじゃなかった!お正月には純米大吟醸を奮発したり、足りなくなった酒をコンビニに調達しに行ったりするようなブルジョワ生活を送っていたとは衝撃(笑)どこかでみた著者インタビューによれば、やはりクワコーのことを書くのがとっても楽しくて仕方がなかったとのこと。そしてその後の軽いクワコーシリーズが誕生したわけですね。ぜひ続けていただきたい。
こちらの本の本来の主人公は探偵役の女性ジャズシンガー。「鳥類学者のファンタジア」に出てきたジャズピアニスト、フォギーの仕事仲間だが、独り者だし、世代も同じ、酒好きで食い意地がはってていろいろ身もフタもない感じなど、完全にキャラクターかぶっているが、これは著者の好みか(笑)
奥泉光はこんだけややこしい小説を書き、どっかの大学で教鞭をとり、いとうせいこうと文芸漫談もやり、ジャズフルートをふかせれば素人はだしというから、本当にすごい人であるなぁ。芥川賞の選考委員にも名を連ねていらっしゃいます。 -
長篇で、凝った構成の作品ですが、面白いかは微妙です。やたら進行が遅くて思わせ振りなくせに本筋にはヒネリがなかったな。最後にサプライズがあるかと思いきや、それすら無かった…
なぜこんなに評価が高いのか、自分には理解できませんでした。 -
好きな本。殺人事件があり探偵がでてきたと思ったら不思議なコインや怪しい過去へのタイムスリップ的なものまで。何よりも登場人物がくだらなくて個人的にとても好き。