蛇鏡 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (1997年6月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784167584016

作品紹介・あらすじ

永尾玲は婚約者の広樹と姉の七回忌のために故郷の奈良へ帰ってきた。結婚を目前にして姉の綾が首を吊った蔵の中で、玲は珍しい鏡を見つける……それが惨劇の始まりだった。(三橋暁)

みんなの感想まとめ

日本の伝奇小説として、土着的な雰囲気が漂う独特な世界観が魅力です。物語は、永尾玲が婚約者と共に故郷の奈良に帰省し、姉の自殺の場にあたる蔵で見つけた蛇をかたどった鏡から始まります。この鏡には、過去の悲劇...

感想・レビュー・書評

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  • 今年初めての一冊は、日本人でよかった~!と思える伝奇小説。坂東さんの狗神に衝撃を受けて、虜になってしまった。これも、日本的な湿った怪奇小説で、舞台が奈良の土着的なお話。とにかく世界観がドハマリなんです。好き嫌いあると思うけど、日本人でヨカッタ!

  • この人の小説は一筋縄ではいかない。予定調和で決して幕を閉じないのだ。
    人間の業はまだ終わらないというメッセージが共通して感じられる。

    そして、『死国』、『狗神』、この作品と3作品通して共通しているテーマが、死者の再生。失われた者たちが生者の心の隙間を利用して甦ってくるという設定が一貫して、ある。
    生を営む者たちが心の奥底に潜ませている愛という名の傲慢さを発揮した時に、再生を虎視眈々と狙っている死せる者達が牙を剥く。そして坂東眞砂子氏はこの生者たちが己の感情の赴くままに犯す過ちを描くのが非常に巧い。

    私を含め、すぐ隣にいる誰かが心に孕んでいる感情、それは凡人であるがゆえに説明できない気持ちや想いをこの人は実に的確に表現する。その心理描写は読中、ページを捲る手、文字を追う眼をはたっと止めるほどストレートに心に飛び込んでくる。恰もページから手が出てきて心臓を鷲掴みにされる、そんな感じだ。
    今回も読中、思い惑う表現がいくつかあった。いくつかピックアップしてみよう。

    ①主人公、玲が自身の性格について語るシーン。
    「多弁なのは、(人と喋るのが好きなのではなく)沈黙に耐え切れないからだ」

    ②同じく玲が婚約者広樹の性格について語るシーン。
    「この人は私を見ようとしていないのだ。(中略)それぞれ、相手への自らの愛情の深さをいとおしんでいるだけ」

    ③そして玲が親類の美佳伯母さんの性格を語るシーン。
    「気はいいのだが、自分の言動がどんなに他人を傷つけるのかがわからない女だった」

    これらを読むとドキッとする。そうそう、こういう人たちっているんだよなぁと思う反面、これは私のことを客観的に表現しているのではないかと。特に①は私にかなり当てはまる。
    こういう文章に遭遇するとき、この作者の人間観察の眼の確かさに感心するとともに戦慄が奔る。出来れば逢いたくない、とまで思ってしまう。

    またこの作者は実にドラマ作りが巧い。
    玲が一成と契りを交わした直後に、なかなか電話を掛けてこない婚約者広樹から電話が掛かってくる。そしてその台詞「ひどいな、玲ちゃん」の巧さ!
    そして首を吊った玲を助けに入るのが一成ではなく、想いが離れつつある広樹である所なんかも巧いなぁと思ってしまった。人物配置と小道具の使い方が非常に巧く、何一つ不自然さが無い。
    そして玲と一成の鏡池でのキスシーンの官能的な事!泥にまみれた二人の指が絡まるところは二人の止まらない愛情の激しさが行間から匂い立つようだった。

    これほどまでに構成がしっかりしているのに、結末をああいう形で終わらす事に実は私自身、戸惑いを感じているのだ。
    これこそこの作者の資質なんだろうが、個人的には余計な味付けだと思った。レストランに食事に行き、おいしい料理を堪能した後で、最後に出てきたデザートが陳腐だった、そんな感じがするのである。
    やはりここはあるべきところに収まって欲しかったなぁ。残念。

    あと最後に1つ。人が首吊り自殺した縄を腰に巻くと陣痛が軽くなるというエピソードが作中出てくるのだが、これは本当なのだろうか?
    もし嘘だとしたら、死と生を弄ぶがごときこの作者の想像力は恐ろしい。

  • 蒸し暑く、湿った空気の籠る土地の描写は良いのだが、ストーリーや登場人物については微妙。
    ラストシーンの匂わせ描写で著者の「狗神」を思い出す。
    狗神での恋愛描写はどうしようもない血の縛りを感じさせられる設定で「成程」と思ったが、蛇鏡の恋愛模様は主人公がただ「嫌な女」になって終わるのが残念。
    登場人物のベトベトした嫌な部分を見せるのは上手いけれど、この話に婚約者、もしくは初恋の相手の存在の両方が必要だったんだろうか…と思ってしまう

  • 紙版の本行方不明のため、2019/9/2 AmazonよりKindle UnlimitedでDL。
    2019/9/6〜9/10

     記憶が正しければ、坂東作品は「死国」と「狗神」は少なくとも読んでいるはずだが、記録には残っていない。恐らく20年以上ぶりの坂東作品。独特の薄気味悪さが伝わってきて、すぐに坂東ワールドに引き込まれた。いやあ、怖いわ。読書ローテーションに再び組み込まないと。

  • 死国ほどのインパクトを感じなかったのは彼女の作品も3作目になったからかなあ?悪くないんだけど主人公のキャラがどうにも好きになれないのがきつかった。ラストは意外な方向に来た。

  • こういう古代物の小説が好きなので読んでみたが、これはイマイチでした。
    田舎の因習も浅いし、全体的に軽めでした。
    最後のオチもはっきりと変化があるわけでもなく、ボンヤリと終わりました。
    せめて蛇の子が生まれるとか、一成が蛇神に乗っ取られるとかあれば良かったのに。
    坂東さんの作品は当たり外れが大きくて、これは自分好みではなかったです。

  • 地の神話と呪いの話。蛇神様が最後は彼に移ったのか、それとも・・・不気味でジワジワくるホラーなところが好き。主人公の気持ちも、相手の気持ちもどちらも恋愛感に「そうそう!わかる!」と思わず頷いてしまった。

  • 期待以上に面白かった!
    大好きな奈良と神話が題材となっていて物語にのめり込めた。
    玲の気持ちの変化も、丁寧に書かれていたし。
    ラストがん?という感じも、するけど良かった

  • 意識しての事ではないのだけれど、今年(巳年)に入ってから蛇に纏わる本を沢山読んでいる気がする。

    土地土地によって伝わっている事の差はあるものの、古代から蛇と人間は密接な関係にあるのですねー。

    現代に、こんな不思議な事が起こるわけないじゃん!
    と頭では思っていても何だかゾクっときてしまう。
    終わり方もスッキリしていて好みの本でした。

  • ミステリーというよりホラーかな。馴染みのある奈良が舞台なので、楽しく読めました。

  • 舞台は奈良。婚約者の広樹と共に姉の七回忌のため帰省した玲は、蔵で古い銀鼠色の鏡を見つける。不思議な蛇の浮き彫りが施されたその鏡は、姉が蔵で自殺した時、足元に落ちていたものだった。一目で鏡に魅せられた玲だが、この鏡との出会いがきっかけで、玲の運命は大きく変化し始める…。
    現代の恋愛のストーリーと、その土地古来の恐ろしい蛇神の伝説がリンクし、奥深い作品になっている。「山妣」ほどの迫力はないが、要所要所ではゾクッとさせられる。「日本書紀」なんかに書かれた神話の取り入れ方はやはりうまい。

  • 「蛇鏡」は幻想的な夢の場面から始まる。夕暮れ時の町を二人の姉妹がさまよっている。妹は、家に帰りたいとせがむが、姉はええとこ連れてったるからとあやすように答える。ええとこて、どこやのと妹が聞くと不意に妹の手の中で姉が消え、自分一人がとり残されている。
     主人公の玲は、姉の7回忌の法事のため婚約者と久方ぶりに帰省する車の中でこの夢を見た。結婚も決まっていた姉の綾は7年前に首吊り自殺したが、理由は判らずじまい。  
    かき消えるように玲の前からいなくなった姉に対する思いは、常に胸の痛みを伴った。
     東京に住む玲は仕事も順調で恋人の広樹とは婚約もすまし後は結婚を待つばかりだった。玲は幸せの絶頂だった。いや、少なくともその筈だった。しかし、実家の蔵で見つけた姉の遺品である浮き彫り模様の蛇が刻まれた銅製の古い鏡を見つけたことにより、彼女の運命は狂い始めた。  
     折りから発掘が行われていた遺跡では、主人公の帰郷を待っていたかのように、大学助手の田辺一成が体をくねらせて環を描く蛇の模様の水濠跡を発掘していた。
     近くの鏡作羽葉神社の鏡池には規則正しい環状の波が描かれ始めていた。蛇神復活を阻止するために建てられた鏡作羽葉神社にはこの環状の波が不気味な血の色に100回染まる時蛇神が蘇ると言い伝えられていた。血の色に変わるたびに刻みこまれた池の側にある石にはすでに99刻みこまれていた。神主の高遠はどうすれば復活を阻止出来るのかと思案していた。
     幸せの絶頂にいるはずの主人公だが、実は婚約者の態度にいらだっていた。思いを打ち明けるのは常に自分から、相手は決して自分の心を見せない。彼女の心に浮かんだジレンマは、婚約者への不満、不信へと膨らんでゆき、次第に彼女を蝕んでゆく。二人は本当に愛していたのだろうか?では、本当の愛とは、不変の愛とは?玲は心の中で激しく葛藤していた。それは、結婚をまじかに控えて幸せそうに見えた姉への思いへと重なっていく。
     蛇神を蘇らせる力を持つのは、女の迷いの心。時と死を越えて永遠の愛に惹かれる女の心。蛇鏡は、その女心を引き寄せる力があった。玲が見つけた鏡がまさにその蛇鏡だった。
     蛇鏡は八咫鏡をさかしま(鏡像)にして作られた鏡であった。八咫鏡が蛇神を封じ込める鏡なら、蛇鏡は蛇神を蘇生させる鏡であった。天照大神の八咫鏡によって冥界に追い葬られた蛇神は、常にこの世に戻る機会を窺っていた。蛇神は、蛇鏡を通して、冥界へ女を呼び寄せて妻にする。一人妻が増えるごとに、鏡の背面の蛇の鱗が一枚、赤く染まる。永遠を表す百の鱗がすべて赤く染まり、鏡の蛇が血の色に変わった時、この世に蛇神が蘇る。姉が言うええとことは蛇神の妻になること。身体の一部の鱗に成ることだった。
     玲が帰省し蛇鏡を見つけた時を起点に、様々な人間の思惑が絡み合う中、人間が蛇のように脱皮して生まれ変わるという旧暦の6月朔日に行われる「みぃさんの祭」に向かって、カウントダウンが始まっていたのだった……。 
     板東眞砂子は土俗的な神、それはどこにでもある神社を描くことにより、日本人の深層に眠るアミューズ的な神の恐れを呼び覚まさせる。それは、今なお<たたり>や<呪>いが跋扈する社会に対する風刺かも知れない。

  • 板東さんのホラーにはまっていた時に読んだ本。
    霧菜に、すごく共感してしまった。

    怜が元彼のことを考えている時の
    ・私は浮き輪のように彼にしがみついているだけなのかもしれないという言葉に考えさせられた。
    あぁあたしもしがみついてたのかも。

  • 古事記の話とからめてあり面白かった。
    続きがどうなるのか読みたくなる作品。

  • 思い詰めた車いすの少女(霧菜)が切なく心に残る

  • ひっそりと歩み寄る恐ろしさを感じる秀作。
    心の弱い部分につけ込まれるとどうしようもなくなる様は、共感できるだけにわかっていながらも罠に嵌っていく心境にさせられる。

  • 坂東真砂子初めて読んでみた。もっとこう、熱っぽいねっとりした作風かと思ってたけど、ひんやりしたねっとりだった。蛇だからなあ。あんまり好きな感じの話ではないけど、結構面白かった。しかし奈良が舞台っていうとこういう感じになっちゃうんですかねえ。

  • おどろおどろしぃ〜
    昔の金田一耕助風なドラマで描くとこわいぞ〜♪
    肝心なところなんだろうけれども、説明が長くって、つい斜め読みしちゃった…。
    落ちがちょっとありがち〜な気もした。
    退治できたほうがよかったなぁ。

  • 「四国」「狗神」路線まっしぐらでこの「蛇鏡」ですわ。いいかげん飽きますって。三日間カレー食わされたらw。でこの後「桃色浄土」という不味いカレーで奈落の底まで落とされます。この「蛇鏡」はそこそこ面白いんですけどね。
    んなことはどーでもいいけど真砂子、猫を虐待しておいて当たり前のことのように自分で言うか?タヒチでなんか打ってるだろ?!

  • 伝奇ものでこういう終わり方はとてもミステリィ

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著者プロフィール

高知県生まれ。奈良女子大学卒業後、イタリアで建築と美術を学ぶ。ライター、童話作家を経て、1996年『桜雨』で島清恋愛文学賞、同年『山妣』で直木賞、2002年『曼荼羅道』で柴田連三郎賞を受賞。著書に『死国』『狗神』『蟲』『桃色浄土』『傀儡』『ブギウギ』など多数。

「2013年 『ブギウギ 敗戦後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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