- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167586041
作品紹介・あらすじ
昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた女性運転手別宮みつ子。令嬢の英子はサッカレーの『虚栄の市』のヒロインにちなみ、彼女をベッキーさんと呼ぶ。新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」の三篇を収録。
感想・レビュー・書評
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またまた久しぶりの作家、北村薫の「街の灯」を読んだ。直木賞受賞の「鷺と雪」を読むための前段として読んだのだが、表題作の「街の灯」はよかった。
「寂れた家に住む人に幸福はないと思うのは、ひとつの傲慢だと思う」は全ての人が心に刻むべき名言だと思った。幸せの在り方をそれぞれが考える為に。
チャップリンの「街の灯」は素敵な映画だが、もう一度見方を変えて見てみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前半読みにくくて結構挫折したのですが時間が取れたので読み直し。時代背景と人物の相関関係がすっきりしたらスラスラと読めました。
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もう少し触れていたくなる、一冊。
昭和七年、上流階級のお嬢様とお付きの女性運転手が出会う日常の謎。
ハラハラドキドキなミステリも好きだけれど、こんな静かな日常の時間を切り取ったのも好き。
三編どれも謎解きはもちろんのこと、昭和初期の時代、上流階級の世界、生活を垣間見れたのが楽しかった。
銀座の当時の夜店の雰囲気にたっぷり酔いしれ、軽井沢の喧騒とは離れた自然界の描写に目を、醸し出される音に耳を傾ける。
そして謎とせつない言葉に心を傾ける。
このせつなさに出会う度、もう少し触れていたい気にさせられる、それがたまらない。 -
読み始め…17.4.27
読み終わり…17.4.28
昭和初期の華族・士族のお嬢さまたちのお話ですが
身分でこその品格のある世界観ではありながら
才覚も持ち合わせたお嬢さまの好奇心が炸裂する探偵もの。
「円紫さんと私」を思わせてくれるような軽快で微笑ましい謎解きを楽しみました。
主人公・士族上流家庭の御令嬢は花村英子。
明確ではありませんがたぶん14-5才でしょうか。
こちらのお嬢さまがなんてったって好奇心旺盛の才女で、不思議と感じたこと
疑問に思ったことはなんでも調べてみたくなる...というイメージの
とても大人びた印象の少女です。
そして相棒役となるのがお抱えの女運転手ベッキーさん。
このベッキーさんこそが優れた才覚の持ち主で、ただの女運転手なかれ。
なかなか侮れない頼もしい相棒なのです。
そして時々にしか登場しないのですが、英子のお父さまが素敵すぎて...!
娘を思う親心がなんとも紳士的で素晴らしすぎです♪
そこかしこに散りばめられているユーモアや笑いには品格があってとても美しい。
殺人事件が絡んでいてもどこかしら微笑ましくて爽やかです。
北村さんの著作はこれで三作品目になりますが、いずれにも
文学・芸術・芸能...それも伝統的古典的なものが必ず織り交ぜてあり
恥ずかしながら知らぬものが多くて、このたびもしっかりと
私に課題を与えてくださいました。
「虚栄の市」....知りませんでした...。
「虚栄の市」....サッカレーの文学より
映画「悪女」をぜひ観てみたいと思います。
「銀座八丁」....森鴎外「即興詩人」を絡めて
時計台の中に入ってみたいな。
「街の灯」....チャップリンの映画にちなんで
映画をまたもう一度観てみよう。 -
絵に描いたような上流家庭の娘花村英子の日常生活の描写から始まり、なんだか私にそぐわない作品なのかと思い始めた頃、家付の女性運転手別宮みつ子が現れ、話は一気に活気を帯びて面白くなってきた。
舞台は昭和7年に設定されていて、女性の社会進出が未熟なそんな時代に武術も一流な女性の運転手というのが奇異な存在だとされるが、そんな事を意に介さず、というよりもあえて雇ったのかもしれない英子の父親の言、「(女性の運転手を雇うのが)最初で悪いか、一番槍は武家の誉であろう」は実に気持ちよかった。 -
満州国の建国、五一五事件が起きた昭和7年の暗い時代を舞台に、士族出身の上流家庭の令嬢(花村英子)、花村家専属の女性運転手(ベッキーこと別宮みつ子)、東京地裁の検事を務める叔父(弓原太郎)らが不可解な事件に挑む、純文学の香りと本格ミステリ-が融合された「わたしのベッキ-」シリ-ズ第1弾。江戸川乱歩作品が解決の糸口となる『虚栄の市』、銀座4丁目の時計塔内覧会に始まる『銀座八丁』、チャップリンの名作映画をモチ-フにした『街の灯』の三篇は、いずれも繊細な優しさのこもった秀作揃い。
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昭和7年の上流家士族令嬢が主人公のミステリー。美しく、ほどよい毒があり大変面白かった。続編も読む。
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第一次世界大戦の好景気から一転して、アメリカの不況により不景気となり、戦争の足音が近づく日本。
大財閥の社長を父親に持つ花村英子のもとにやってきた女性運転手の別宮。英子は、親愛を込めてベッキーさんと呼ぶ。
ベッキーさんの力を借りながら、英子は謎を解いていくことになる。最後の「街の灯」については、戦前の身分制度のために引き起こされた殺人事件。英子は、世界を知ることで、世の中の理不尽を知ることになる。
「〘あのような家に住む者に幸福はない〙と思うのも、ひとつの傲慢たと思います」というベッキーさんの言葉。
幸福の形に絶対はないのですね。
英子とベッキーさんの関係を見ていると、主従関係を越えた信頼関係にあるのだなと感じました。 -
昭和七年、上流家庭の令嬢、英子とその運転手のベッキーさんこと別宮(べっく)くみこが様々な謎を解く連作短編。
昭和モダンの雰囲気が漂う短編集。北村さんはよく女性の一人称で物語を展開させますが、その一人称がこれほどまでぴたりとハマった時代設定はなかなかないのではないでしょうか。
魅力的ながらも世間ずれしてなくて、どこか浮世離れした印象の強い女性主人公が北村作品には多かったのですが、今回主人公を昭和の令嬢という設定にすることでその世間ずれしていない天真爛漫さがとてもその時代感を表しているように思いました。
そしてベッキーさんもかなり魅力的なキャラ。頭の良さや冷静な性格面だけでなく、武芸にも秀でていて女性ながらそのカッコよさには何度も惚れそうになります(笑)。
そして、二人が単なるホームズとワトソンではなく、ベッキーさんのさりげないヒントから英子が謎の真相に迫っていき、それによって世間ずれしていない英子が様々なことを知っていく、という構成になっているのも魅力的です。この二人の関係性は決して変わってほしくないなあ、と読んでいて強く思いました。 -
ミステリーではあるものの、戦前という時代の空気感を楽しむ小説だと思う。シリーズものなので今後の展開に期待。