鷺と雪 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 178
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167586072

作品紹介・あらすじ

昭和十一年二月、運命の偶然が導く切なくて劇的な物語の幕切れ「鷺と雪」ほか、華族主人の失踪の謎を解く「不在の父」、補導され口をつぐむ良家の少年は夜中の上野で何をしたのかを探る「獅子と地下鉄」の三篇を収録した、昭和初期の上流階級を描くミステリ"ベッキーさん"シリーズ最終巻。第141回直木賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • "ベッキーさん"シリーズの最終章。華族・上流階級の好奇心旺盛なお嬢様の
    探偵好きが高じた三つの事件の謎解きが淡々と綴られていきますが――

    結末はなんとも切ない幕切れでした。
    この後の英子にどれだけの悲しみが待ち受けていたか....想像したくはないのに
    せずにはいられず、胸がギュッと締め付けられる思いが余韻として心に残りました。

    とはいえ、東京、銀座、上野を舞台に、三越百貨店、上野公園、上野動物園
    美術館、地下鉄など、実在の時代と風景とが織りなす情景にはすっかり魅了され
    知らない時代なのに自分もそこにいるかのような気分に浸れた素敵なお話でした。
    ベッキーさんの賢さと気転の良さのかっこいいこと! 惚れ惚れします。

    あとがきで、3つの謎解きのすべてにも実話が絡んでいたことを知って驚きました。

  • 柔らかく、優しいミステリーのベッキーさんシリーズの3作目、最後です。
    「鷺(さぎ)と雪」

    前作から数年を経て、昭和10年頃。
    上流階級は変わらず、穏やかな時の流れのなかにあるようですが、時勢は、太平洋戦争を向かって行きます。

     公、侯、伯、子、男。爵位の順位だそうです。維新の功績や、それ以前の石高で決まっていたらしい。全くもって、私がおよそ興味を持たないであろう世界が、こんなに面白く。また儚く、時にはうす暗く、読ませてもらいました。

    最後はあの事件で閉じます。図られた運命のように。

    このシリーズ、読めて良かったです。
    たまさんに感謝。


    1作目「街の灯」レビュー
    http://booklog.jp/users/kickarm/archives/1/4167586045

    2作目「玻璃の天」レビュー
    http://booklog.jp/users/kickarm/archives/1/4167586053

  • 最終話は繰り返して読んだ。
    雪と226事件。
    歴史を知っておくことが、読書に必要だなんて。
    本年度ベストであった。

  • 2019年4月10日読了。希望と不穏さが交じる昭和10年代で、華族のお嬢様英子とそのお抱え運転手ベッキーさんが探る一見不可思議な出来事たちの真相。第141回直木賞受賞作。「日常の謎」ミステリだが時代背景と丹念な世相の描写、リアルに感じられるモダンガールの思念などがミソ。ミステリ原理主義者からするとこれらの記述は冗長以外の何者でもないのだが、シンプルな謎解きミステリになんとも言えない余韻を残す…。3部作の3作目をいきなり読んでしまったのは残念、順番に読んでいくともっと深い読後感が得られたのかも。

  • オール讀物2008年1月号:不在の父、6月号:獅子と地下鉄、12月号:鷺と雪、の3つの連作短編を2009年4月文藝春秋から刊行。ベッキーさんシリーズ3作目。読み終わるのが惜しいほどの作品でした。2.26事件をもって、物語は終わります。2000年代には、まだ存命であってもおかしくない英子お嬢様のその後を読んでみたいと思いました。第141回(2009年上半期)直木賞受賞。直木賞に関しては、宮部みゆきさんが、選考委員に入られたことが大きいと思います。

  • ≪私≫シリーズで、北村さんのすごさを知り、ベッキーさんシリーズを読破。
    現代の話ではないので初めは読みにくかったけど、あれよあれよと引き込まれました。
    知らないことが多くて、勉強にもなるし、情景の描き方が素敵。
    主人公英子さんと、私シリーズの主人公がなんとなく似ていて、素敵で大好きな二人です。
    この後が気になるけど、ここで終わりなのがまた、なんとも!

  •  ベッキーさんシリーズが終わってしまった……!という感が。

     よく、ファンタジーやミステリなどで、勇者や名探偵が全て解決!というのがあるんだけれども、現実は異なる。どんなに優れていようが何が出来ようが、何でも出来る訳じゃない。(当たり前だけど)
     その無力感と、それでも底にほのぐらく照らされた希望の光がこの物語のイメージだろうか。

     読んでいて切ない。

  • ラストの一行が衝撃的でした。そうなってしまうのか、と。
    過去の出来事としてしか知らない自分に、明確に思い描けるわけではありませんが、それでも想像してしまいます。
    この余韻をなんと表現すればいいのか、見つけるまでもうちょっと時間がかかりそう。
    ミステリ要素を別にしても素敵な作品でした。大好きです。

  • これでベッキーさんシリーズが終わりとは惜しいような気もします。
    もっと英子ちゃんの物語を読んでいたいです。
    でもここまでというのが色々と考えさせてもらえて良いのかも・・

    「街の灯」の感想は大はしゃぎで
    「玻璃の天」で我に返ってきて
    この「鷺と雪」は、読み終わってもなかなか何も書けませんでした。
    シリーズを全て読んで、数年間で世の中がどんどんと変化していく様を見て怖いなあって思いました。
    それでも美しい物語で本当に素敵でした。読めて嬉しいなあ。

  • ☆5つでは足りないくらい。《ベッキーさんとわたし》シリーズ第3弾にして、完結編。

    最後に収められた表題作が、圧巻。シリーズ3作を立て続けに読んだせいもあるが、すべての物語が、まるで大きな時計を見ているかのように、ここに向かって刻々と運命の時を刻んでいたのだとわかる。第一作が「服部時計店」に始まり、この最終作がおなじ「服部時計店」で終わる構成も、そう思えば時計のように精巧だ。

    月、能面、カメラ……さまざまなメタファーを通じて、この『鷺と雪』では目にみえるものの向こうには、じつは広くて深い目にみえないものが存在していることが暗示される。ことばの向こう側に、ことばにできない「思い」を汲み取ること。それは、(目前に迫った)自由にものが言えない時代にこそ大切な「力」であり、また「生きる糧」ともなるだろう。それを、ベッキーさんはその職分を超えてまで、わたしに教え諭そうとする。

    「その日」を前にして、桐原侯爵の長男で軍人の「勝久」様が「ベッキーさん」に問いかけたことば、叩き上げの陸軍少尉「若月」が三冊の詩集を介して「わたし」に託したことば……。そのことばの向こうにある、思い。勝久と若月、ベッキーさんとわたしの、ドッペルゲンガー。そしてドッペルゲンガーには、不吉なイメージ、死の前兆が重なるという。

    ことばの向こうには思いが、ある。その思いは、往々にしてことば以上に多くを物語る。その思いをひとが汲み取る手がかりは、ただことばしかない。その意味で、北村薫というひとは「ことば」のもつ力を信じている。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、15年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している。近著に『八月の六日間』『太宰治の辞書』『中野のお父さん』など。

「2019年 『覆面作家の夢の家 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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