にんげん住所録 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167587109

感想・レビュー・書評

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  • 「私の渡世日記(上・下)」に続き、映画女優の高峰秀子さんによるエッセイ集。女優を引退して70代になってから、それまでかかわった人たちとの思い出をつづっている。ここに紹介される人たちの多くは故人であり、彼女自身が人生の総まとめ・備忘録的に書いたようだ。
    子役で学校に行かれなかったから本人は「学が無い」というが、読書家であったこともあり教養があり、文章はこなれていて読みやすい。また、大女優だったという尊大さが全くない。黎明期の日本の映画業界の裏話や、誰もが知る有名な映画監督や演出家たち、芸術家や作家や政治家とのやり取りも興味深いが、一番面白かったのがタイに住む知人の話だった。
    彼女は独身のころ、今でいう毒親ともいえる養母との関係に悩んだようだが、晩年は素晴らしい伴侶と幸せに暮らせたようだ。彼女の人柄が良くわかるエッセイ集である。

  • 「高峰秀子」のエッセイ集『にんげん住所録』を読みました。

    「高峰秀子」作品は昨年10月に読んだ『おいしい人間』以来ですね。

    -----story-------------
    大切な人々とのかけがえのない思い出

    「小津先生」と行った御茶の水、「クロサワ」が手の甲に置いた「蚊」、「美智子妃」からの一筆など、極上の思い出を端正な語り口で綴った一冊
    -----------------------

    「高峰秀子」が、かけがえのない想い出… 「小津安二郎」と行った「お茶の水」、「黒澤明」が手の甲に置いた「蚊」、「木下恵介」が胸ポケットから取り出した一枚の写真、「佐藤栄作」夫人の「寛子さん」からの電話、そして「美智子妃」より思いがけぬ一筆など、大切な人々とのとっておきの記憶を、端正で歯切れのよい語り口で綴るエッセイ集です。

     ■あなた食べます
     ■店仕舞
     ■もうすぐ春です
     ■住所録
     ■人間スフィンクス
     ■クロさんのこと
     ■老いの花道
     ■私だけの弔辞
     ■私のご贔屓・松竹梅
     ■たけしの母と秀子の母
     ■栄作の妻
     ■五重塔と西部劇
     ■美智子さまへのファンレター
     ■呼び名
     ■身辺あれこれ・年金化粧
     ■私の死亡記事「往年の大女優ひっそりと」
     ■あとがき

    『私のご贔屓・松竹梅』で、「沢木耕太郎」作品の愛読者で、自分がテレビ局のCMスポンサーなら「スカッと爽やか耕太郎」というキャッチフレーズで登場してもらいたいと思っていたことと、自らの死亡記事を書いた『私の死亡記事「往年の大女優ひっそりと」』が印象的でしたね… 結果的に本作が遺作となってしまったんですから、ご自身の死を意識して書かれたんでしょうね、、、

    -----------------------
    女優・高峰秀子さんが三ケ月ほど前に死亡していたことが判明した。
    生前「葬式は無用、戒名も不要。人知れずひっそりと逝きたい」と言っていた。
    その想いを見事に実践したようだ。
    彼女は十八歳の時、盲腸炎の手術を受けて以来、その死までの数十年間、医師、病院の手を煩わすことは全くなく、健康保険証には一字の記載もなかった。
    故に死因は不明。
    死亡診断書を認めた医師は「病名はわかりません。強いていえば天寿でしょうね」と言った。
    昭和五十四年にスクリーンを退いたが、その死に至るまで多くのファンの親切と厚意に支えられ、高峰節といわれた達意の文章で随筆集を重ねてファンに応えた。
    「死んでたまるか」という文章も書いたが、相手が天寿では以って瞑すべし、しあわせな晩年であった。
    -----------------------

    これが全文です… 実際はひっそりと亡くなることはできなかったようですが、幸せな晩年を過ごされたんでしょうね。

    亡くなられたのは残念ですが、柔らかでユーモア溢れている文章は残りますからね… これからも時々、読ませてもらおうと思います。

  • 読み始め…12.4.1
    読み終わり…12.4.10

    高峰秀子さんは私にとっての2冊目です。
    こちらも初めの本と同じにんげんシリーズ。高峰さんと深くかかわりのある人々とのエピソードが高峰さん目線から気さくざっくばらんに語られています。

    これが高峰さんの本音なのでしょう。
    気取ったところがなくさばさばしてて。
    大好きです。

  • 女優と作家の2足のわらじを履いての作品かと思えば、引退後のエッセイストとしての読み応えのある作品だった。中身は大女優だった頃の大物との交流がふんだんに書かれてある。特に興味深かったのが佐藤栄作総理大臣の妻の項である。大物を身近に感じさせるエピソード、親しみやすい文体は読むものをひきつける。

  • 筆者が女優さんだって知らなくて、1番最初の話が料理ものだったから料理エッセイかなーと思って借りてきた。そういう意味では期待外れだったけど、絶対自分では選ばないだろう話を読めたからその点ではよかったかなー。
    女優ってやっぱ大変なんだろうけど、でも上からもの言ってる感がはんぱなかった。価値観の違いかなー。そりゃそうだよね

  • 敬愛する沢村貞子さんと、最近(今更ながら)とても興味を持っている著作との邂逅にちょっと感動。

  • 2013.7.17~23 読了
    熱烈ファンの行動が印象的だ。いわく柿の葉寿司を送らなくては気がすまない半ば押し売り的な奈良のファン、いわくタイ在住者で猛烈な勧誘攻勢でついにバンコックまで高峰秀子を呼び寄せた灰田勝彦の元・取り巻き。小津安二郎、黒澤明、木下恵介との映画製作を通じてのエピソード、淡谷のり子、佐藤栄作夫人・寛子の知られざる一面を示すエピソードも興味深い。特に子役時代に示した演技力の一端が紹介されているが名監督が使いたがった理由が分かる気がする。子役から大成した唯一の大女優の面目躍如。

  • 2012.1.29-2012.1.29
    昨年末に亡くなつた「往年の大女優」の本。単行本が出たのは平成14年7月だから、十年ほど前になる。
    世を去つた人の思ひ出話が多く、最後には「私の死亡記事」まであつて、雑誌に載せられた文章を集めたものだが、自分の人生の締め括りをしてゐるやうにも見える。
    高峰秀子さんの本は初めて読んだが、立派な文章で感心した。

  • この かろやかさ が
    たまらなく
    心地良い

    この かろやかさ の奥に
    どれほどの 叡智が含まれているのだろう
    と思うのも
    また 心地よい

    高峰さんの
    すぐそばに
    現れては去っていく
    その
    「風景」や
    「人」や
    「本」や
    「モノ」たちの
    なんと すてきなことか

    人生の達人とは
    このような人のことを
    言うのだろう

  • 前の本に続いて、高峰秀子シリーズ。高峰秀子の随筆集を読みました。

    物事のとらえ方、視点のするどさと、爽やかで媚のない、伸びやかな文章に惚れますね〜


    今度はこの人の出演作を見たいな。

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著者プロフィール

高峰 秀子(たかみね・ひでこ):女優、随筆家。1924年北海道生れ。5歳のとき映画『母』で子役デビュー。以後、『二十四の瞳』『浮雲』『名もなく貧しく美しく』など300本を超える作品に出演。キネマ旬報主演女優賞、毎日映画コンクール女優主演賞ほか、受賞数は日本映画界最多。55歳で引退。名随筆家としても知られ、『わたしの渡世日記』(上・下、新潮文庫)で第24回日本エッセイスト・クラブ賞受賞。2010年12月28日死去。享年86歳。

「2024年 『高峰秀子 夫婦の流儀 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高峰秀子の作品

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