タイムスリップ・コンビナート (文春文庫 し 30-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 155
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167592011

作品紹介・あらすじ

電話の主はマグロかスーパージェッターか? 時間と空間がとめどなく歪み崩れていく「海芝浦」への旅が始まった。芥川賞受賞の表題作他、「下落合の向こう」「シビレル夢の水」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 共感とか理解とか、はたまたストーリー性がどうとか、そんなのたした問題じゃない。
    この文体とうねるリズムに身を任せて、異世界に連れてってもらっちゃえばそれでいいと思うんですよね。
    だってマグロがしゃべりかけてくんだよ!

    学生時代に初めて読んだ時、しばらく海芝浦のことが頭から離れなかった思い出が。
    実際に行きはしなかったけれど。。
    笙野様の世界に初めて触れた一冊です。

  • 桃山学院大学附属図書館電子ブックへのリンク↓
    https://web.d-library.jp/momoyama1040/g0102/libcontentsinfo/?cid=JD201604000125

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  • めくるめく思考とスピード感、現実と妄想の境目がわからない、まさに文学でしか表現できないナニカ。

  • これはあかん芥川賞の方かなぁ。
    ブレードランナーを想起させるって、うーん、それは無理筋ってもんでしょう、という気がするのだけれども。
    そもそもお話があんまりそそられないなぁ。

  • 第111回芥川賞

  • 不条理な、心象風景の飛躍。シーンとしてはわかるけど、イマジネーションのジェットコースタームービーのようなめくるめく速さにはついて行けなかった。

  • 冒頭のインパクトがすごすぎるし、テーマも話もすごい。ことばの使い方や比喩が特殊でちょっと読むのに時間がかかったけども。
    もう、夢と現実の境界がわからなくなるとかそんなレベルの話じゃない。そういう二者を分ける概念はもはや無いような感じ。
    あとがきの対談で、そういう世界「もう一つの世界」を掘り起こすために「私」を使うんやっていよった。作者自身っぽい「私」を使うのは(私小説とはまた違う)何かしらの目的があってするテクニックやと思っとったけど、そういうのん言ってくれるのもめずらしくて、対談も興味深く読んだ。

    「シビレル夢ノ水」が猫小説かと思わせといて蚤でしたー三つの中ではいちばん好きやった。まじで蚤に取って代わられるかと思った。

  • タイトルはSFっぽいけど全然違う。
    冒頭から強烈。
    「去年の夏頃の話である。 マグロと恋愛する夢を見て悩んでいたある日、当のマグロともスーパージェッターとも判らんやつから、 いきなり、電話がかかって来て、ともかくどこかへ出掛けろとしつこく言い、結局海芝浦という駅に行かされる羽目になった。」
    日常風景と、
    時間・空間(距離感)のねじれた超現実的ヴィジョンが重なりあった世界を生々しく描いたシュルレアリスム的小説集。
    夢をリアリズムの手法で描いたらこうなった、
    と説明した方が当てはまるのかな。
    他人の夢の話を聞くほどつまらないものはないと言われているけれど、
    この人の夢語りには、全く当てはまらない。
    悪夢を見ている「私」の実像を、
    滑稽なものとして浮かび上がらせるメタ視点で描いているから、
    単純に読み物としても面白いと感じた。
    居候猫についていた蚤に対する、
    幻想的なまでの強迫観念を描いた「シビレル夢ノ水」も非常に印象深い。

  • 再読。

    表題作は恋愛用マグロと夢の中で恋をした主人公が謎の電話に命じられるまま「海芝浦」の駅まで出かける話。実在の駅とは驚いた。不条理。

    「下落合の向こう」は小品ながら、下落合という場所を知っているとなんとなくわかった気になってしまう。単に自分が一度だけ下落合に行った理由がちょっと妙だったからかもしれない。

    「シビレル夢ノ水」は、最初のうち猫の話かと思いきや、気付くと蚤の話になっていてとても生理的に怖い。自分の血を吸ってどんどん進化していく虫とか想像したらキャーってなる。

    「タイムスリップ・コンビナート」「下落合の向こう」「シビレル夢ノ水」

  • 1994年上半期芥川賞受賞作。一言で印象を語るなら「お気軽なカフカ」といった感じである。誰とも知れぬ者からの勧誘(あるいは半強制的な示唆)によって、鶴見線の海芝浦に向う私(沢野)の体験を綴る一種のロードノヴェル。目的地も、途中で経過すべき「オキナワ会館」もはっきりしていながら、そこに当然あるべき「何故」そこなのかは謎のままだ。では、当然そのことに付き纏う焦燥感は、といえばこれがまたあるようなないような「ユルさ」なのだ。そして、これこそがまさしく笙野頼子の文体であり、持ち味なのであろう。

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著者プロフィール

笙野頼子(しょうの よりこ)
1956年三重県生まれ。立命館大学法学部卒業。
81年「極楽」で群像新人文学賞受賞。91年『なにもしてない』で野間文芸新人賞、94年『二百回忌』で三島由紀夫賞、同年「タイムスリップ・コンビナート」で芥川龍之介賞、2001年『幽界森娘異聞』で泉鏡花文学賞、04年『水晶内制度』でセンス・オブ・ジェンダー大賞、05年『金毘羅』で伊藤整文学賞、14年『未闘病記―膠原病、「混合性結合組織病」の』で野間文芸賞をそれぞれ受賞。
著書に『ひょうすべの国―植民人喰い条約』『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』『ウラミズモ奴隷選挙』『会いに行って 静流藤娘紀行』『猫沼』『笙野頼子発禁小説集』『女肉男食 ジェンダーの怖い話』など多数。11年から16年まで立教大学大学院特任教授。

「2024年 『解禁随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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