錆びる心 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 128
  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167602031

感想・レビュー・書評

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  • 作者の性別を意識しなければ、本作の印象もまた変わっていたことだろう。最初の「虫卵の配列」を読んだ瞬間に、なんてわかりやすく女性の心理を語ってくれるのだろうと思った。ただ、あくまで特殊な状況下でのこと、という注釈はつくが、それにしても状況や設定はどうであれ、女性の本音を暴露しているようでちょっと恐ろしかった。その他の短編にも言えることだが、女性が主役となった短編は、すべてにおいて、女性の隠された本音がでているような気がした。本作をもし男の作家が書いていたとしたら、何を知ったかしているのかと思ったかもしれない。

    全ての短編は、特別なトリックや衝撃があるわけではない。終わってみるとやけにあっさりとストレートに終わったなぁ、という印象の作品もある。特に「ジェイソン」などはただ男の酔っぱらい癖をもっともらしく、何か大きな秘密があるように描いているだけだ。結局は特別驚くようなことはなく、サラリと終わってしまった。「月下の楽園」も奇妙な不気味さというのはあるが、ラストのオチがちょっとあまりに急ぎすぎのような気もした。そう感じたのは、恐らくその他の、女性が主役の作品と比べると、心理的な描写にいまいち共感できなかったというのがあるのかもしれない。

    女性の真の恐ろしさは、何を考えているかわからない未知の部分が見えてきたときだ。それはある意味、魅力とも取れるかもしれないが、単純な男とくらべ、あらゆる意味で深く、そして嫉妬を交じった考え方というのはなかなか理解するのが難しい。そんな、複雑な女性心理を作者はあっさりと、随分簡単に描写しているような気がした。それでいて、的を射ているような気がするし、鳥肌がたつような恐ろしさもある。特に最後の「錆びる心」は長年積み重ねてきた怒りの理由、そして、その結果起こした行動が、自分のためではなく復讐というただその一点だけのためということに、恐ろしさを感じてしまった。

    女性の恐ろしさが垣間見える作品だ。

  • 人の闇を感じさせる話ばかりの6篇。

    ジェイソン。
    主人公がしでかしたことが主人公とともにだんだんと判明していく展開はおもしろく、読み進めるのが楽しかった。
    大学からの友人が何ひとつ言ってくれてないのが、一番の復讐だよなぁ。

    ネオン。
    終わり方、桜井のセリフがすべて。笑

    羊歯の庭。
    なかなかにイライラさせる主人公。

    虫卵の配列。
    美しく毅然とした瑞恵の正義が怖くていい。

  • 20190315 読了
    全6話構成の短編集

    覚書     
    虫の配列   元生物の教師 劇作家
    羊歯の庭   15年目の恋人 築百年の曰く付き農家
    ジェイソン  「マリアン」 大学時代 骨折
    月下の楽園  防空壕 荒れ果てた庭 ジル  
    ネオン    広島弁 仁義なき戦い ドンずら
    錆びる心   10年後の家出 住み込みお手伝い

    あっさりダーク、こってりダーク
    この短編集に限らず、この作家さんは女の嫌な部分の
    描写が上手い。同性の読み手の嫌悪感など気にしていない(笑)
    某シリーズでは、
    ご存知ですか?人間どこまでも落ちて行けるものなのですよ、と、
    わざわざ教えてくれる貴重な作家さん(笑)
    この短編集では、羊歯の庭&錆びる心が好みでした。

  • 全六篇、著者初の短編集。
    暴走する恋心、知らなかった自分の一面、様々な癖…。バラエティ豊かな内容です。
    さらりと読める短さですが、桐野さん“らしさ”がギュッと詰まっている気がしました。
    「ネオン」だけなんだか雰囲気が違うように感じられ、あまり好みではなかったです。

  • 私は桐野さんが好きです。
    好きな小説家は?と聞かれたら、桐野さんと答えます。

    でも、正直、この短編集は面白くなかったと思います・・・。
    解説で、ある文芸評論家が、「本書で桐野夏生が短編作家としても松本清張に匹敵する~」と書いていますが、そんなことないんじゃないかな。桐野さんはやっぱ長編なんじゃないかな、僭越ながら。

    それでも、絶賛離活中の私としては、表題作とか気になりました。
    主人公は、夫の心に自分の何かを印象的に、しかもくっきりと傷つける形で残そうとしていたというのは、夫に不満を抱えるママ友からたまに聞く話ではありますが、私にはそういう気持ちはありません。
    夫の心に私の何かを残したいとは思いません。
    離婚したら、夫とは、名実共に子育てという私にとって最重要事業の共同事業者という関係になるだけです。その信頼関係が残れば、他には何も望みません。
    夫の心に何かを残したいという話を聞くと、彼女はまだご主人に愛情があるのかなーと思います。

  • 2000年に第1刷されているのだが、この6話なる短編。
    沢山の人が読まれているのだろう。私の読んだ本は2005年で、第11刷であった。

    日常的な一コマが、少しずつ づれて来て、鬱々とした思いが、妄想に繋がったり、酒に溺れて前後不覚で、記憶が無くなったり、自分の趣味に没頭しすぎて、家庭を破壊するに迄至る話が、掲載してある。

    短篇の中で、職業が、教師なのが多い。
    生活で安定した給料が入るのに、心の隙間へ入り込む人間の欲望の葛藤がある。

    「虫卵の配列」「ジェイソン」「錆びる心」にしても、教師が、含まれているのだが、作者が、書きやすかった職業だったのかもしれない。
    人格者、給料安定、良き家庭が、下地にあるのに、人間の脆さ、危うさのギャップの違いを描いている。

    残虐的な話や犯罪的な事柄が、無いのだが、ミステリアスな、危険性をはらんだ作品であった。

  • 桐野夏生さんは初めてだと思います。大体ミステリーは読まないので。
    あることから興味を持って、桐野さんの作品を読むことにしたのですが、なるべくミステリーっぽくない本ということで、この本を選んだのですが。
    読後感は・・・。余り印象が無い。何か特別な仕掛けもないし、さほど情緒溢れる雰囲気でもないし。。。。
    どうも苦手な作家さんのようです。

  • そこまで私にはハマらなかった。
    どの話も暗め。
    世にも奇妙な物語みたいな感じ。

  • 6つの話からなる短編集。
    どの話もヒンヤリ感が漂い、事件が起こるわけでもないのに不気味で不安な気持ちになる。
    誰もが持つ心のダークサイドが日常、すぐそこにあることを目の当たりにして、ゾクッとする。そんな作品集。
    短編でも桐野夏生は桐野夏生だわ。

  • 日常に潜む狂気を描いた短編集。
    心の奥底に封じ込めていた歪んだ思いが、何かの拍子に表出する様子がリアル。
    現実的な事件はほとんど起こらないのですが、人が持つ薄暗い部分を浮き彫りにする描写は巧みで惹きつけられます。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、2011年同作で読売文学賞を受賞。2015年、紫綬褒章を受章した。近著に』『奴隷小説』『抱く女』『バラカ』など。

「2016年 『猿の見る夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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