錆びる心 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.22
  • (26)
  • (101)
  • (286)
  • (45)
  • (4)
本棚登録 : 1062
レビュー : 129
  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167602031

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 作者の性別を意識しなければ、本作の印象もまた変わっていたことだろう。最初の「虫卵の配列」を読んだ瞬間に、なんてわかりやすく女性の心理を語ってくれるのだろうと思った。ただ、あくまで特殊な状況下でのこと、という注釈はつくが、それにしても状況や設定はどうであれ、女性の本音を暴露しているようでちょっと恐ろしかった。その他の短編にも言えることだが、女性が主役となった短編は、すべてにおいて、女性の隠された本音がでているような気がした。本作をもし男の作家が書いていたとしたら、何を知ったかしているのかと思ったかもしれない。

    全ての短編は、特別なトリックや衝撃があるわけではない。終わってみるとやけにあっさりとストレートに終わったなぁ、という印象の作品もある。特に「ジェイソン」などはただ男の酔っぱらい癖をもっともらしく、何か大きな秘密があるように描いているだけだ。結局は特別驚くようなことはなく、サラリと終わってしまった。「月下の楽園」も奇妙な不気味さというのはあるが、ラストのオチがちょっとあまりに急ぎすぎのような気もした。そう感じたのは、恐らくその他の、女性が主役の作品と比べると、心理的な描写にいまいち共感できなかったというのがあるのかもしれない。

    女性の真の恐ろしさは、何を考えているかわからない未知の部分が見えてきたときだ。それはある意味、魅力とも取れるかもしれないが、単純な男とくらべ、あらゆる意味で深く、そして嫉妬を交じった考え方というのはなかなか理解するのが難しい。そんな、複雑な女性心理を作者はあっさりと、随分簡単に描写しているような気がした。それでいて、的を射ているような気がするし、鳥肌がたつような恐ろしさもある。特に最後の「錆びる心」は長年積み重ねてきた怒りの理由、そして、その結果起こした行動が、自分のためではなく復讐というただその一点だけのためということに、恐ろしさを感じてしまった。

    女性の恐ろしさが垣間見える作品だ。

  • そこまで私にはハマらなかった。
    どの話も暗め。
    世にも奇妙な物語みたいな感じ。

  • 6つの話からなる短編集。
    どの話もヒンヤリ感が漂い、事件が起こるわけでもないのに不気味で不安な気持ちになる。
    誰もが持つ心のダークサイドが日常、すぐそこにあることを目の当たりにして、ゾクッとする。そんな作品集。
    短編でも桐野夏生は桐野夏生だわ。

  • とある小さな図書館は、皆んなが読み終わり寄贈された本で運営されていた。そこで、桐野夏生と出会った。寄贈した誰かも、その場所で、同じ物語りに触れたのだろう。小説の面白さだけではなく、そんな感覚も、単純に楽しかった。

    本作は、短編で、私はあまり短編が好きではない。更に、物語りの最後にオチを持ってくる手法が取られるものも幾つか。そうなると、読みながら、オチを推測するような気持ちのノイズが入ってしまい、純粋に楽しめない。

    久々に読んだ桐野夏生は、少し残念だった。

  • 何年か放置していた本書を発掘したので読んでみた。
    やっぱりドロドロした人間関係。

  • 短編集。
    「虫卵の配列」が一番好き。

    桐野夏生さんは、誰よりも孤独を美しく描くことに長けている作家さんだと思います。
    また、闇のような暗さと気持ちがいいまでの救われなさに
    鳥肌が立ちます。

    人間の裏側にある、「狂気」が露呈する瞬間がなんとも言えず快感です。

  • 毒々しい~!嫌らしい! 好きな作家さんだけど短編になるとあんまり深みがないな。

  • 怖い…。
    読了後、なんともいえない気持ち悪さが残りました。人が隠したがっている汚いところや気持ち悪いところを見せられたよう。

  • 6話からなる短編集。
    それぞれの話の主人公の年齢・性別はもろもろで、題材も別々ですが・・・
    人の中に潜むぞっとする不気味さって言うか・・・まあ、全編、暗い、です。
    読んでいる最中はどうなるんだろうという面白さがあるんですが、後味はあまり良くないので、1度読めばいいかな、みたいな。

  • これは人間の心のひだに潜んだ狂気を書き表したホラー、とでも言おうか。短編が6編収められている本だが、どれも短いながらも読み終わった後に、人間って怖い、と思わされる作品ばかりが並んでいる。「思い込み」であるうちは問題がないのだろうけど、「思い込み」ではなく、それを「真実」だと信じてしまうことは怖い。しかし、誰もが一歩間違えるとその世界に生きてしまうのかもしれない。【2006年9月22日読了】

著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、2011年同作で読売文学賞を受賞。2015年、紫綬褒章を受章した。近著に』『奴隷小説』『抱く女』『バラカ』など。

「2016年 『猿の見る夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

錆びる心 (文春文庫)のその他の作品

錆びる心 (文春文庫) Kindle版 錆びる心 (文春文庫) 桐野夏生
錆びる心 単行本 錆びる心 桐野夏生

桐野夏生の作品

ツイートする