柔らかな頬 上 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 221
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167602062

感想・レビュー・書評

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  • 直木賞受賞作品♪

    主人公のカスミが、家族ぐるみで友人である石山の北海道の別荘に招かれる。実は、石山とは不倫関係。家族の目を盗んで逢引きした翌朝、娘の有香が失踪。罪悪感に苦しみ、石山と別れ、一人で娘を探し続ける…。

    上巻では、故郷を捨てたカスミが、子供を失って4年後、元刑事の内海と訪れた北海道で、元不倫相手の石山と再会するまでが描かれている。

    いずれは妻と離婚してカスミと一緒になりたい石山。反して、いつも心にポッカリと空いた穴を埋められず、塞ぐ何かを探し続けているカスミ。
    そんな二人の温度差が、別れた後の人生に表れている。
    倒産し離婚、現在は20歳以上年下の風俗嬢のヒモになり、借金取りから逃げ回る石山。
    しかし、カスミは表面上何も変わらない。

    この違いは何か。
    男と女の謎が、本を読み終える頃には解るのだろうか。

  • 「柔らかな頬」著:桐野 夏生

    友人が大量に送ってきた本の中にあった一冊です。私はストーリーそのものよりも、日本語の使い方や文章の一つ一つに感動するタイプなのですが、桐野さんの文章は、時々どきっとするくらい、素晴らしい文章に出会えます。

  • 東京と北海道が舞台。桐野夏生さん、初めて読んだぁ。
    表紙のデザインが2冊で一つの絵になってるん。
    熟れた美しい桃は蟻に蝕まれておる…なにか示唆するような図柄。
    ブクログ本棚に表示すると並び逆になるけどそのまま展示いたします。

    読んでて「ん?なんか聞いたことある…」って思ったら
    舞台になる別荘地「泉郷(いずみきょう)」ってあったよね?
    実際ニセコにあるんだよね。同名別の場所だろうけど、モデルかな?

    北海道の街の感じとか、ちょっとした方言とかなかなか
    感じでてる気がします。
    北海道人はあんまり自分ら、鈍ってないと思いがちですが
    こうやって文章にすると身につまされますなぁ。イントネーションでばれるよ。

    ストーリーは上巻の半分ぐらいから面白くなってきた感じ。
    ふむふむ。

  • 『ピクニック・アット・ハンギングロック』を読みたいなーなんて思っていたら、「そういえば、『OUT』を読もうとした時、『柔らかな頬』とどっちを読むか迷ったんだけど、あれ、確か失踪モノだったっけ」と思い出したのがきっかけ。

    そんな“代わりに”読んだ本だったんですけど、これ(上巻)はよかった。
    何がいいって、主要登場人物のカスミ、石山、道弘、典子、どれにも共感できちゃったのがよかったんでしょうね。
    ホントそれぞれ、「あー、わかる…」って感じ。

    といっても実際のところ、カスミはわからないんだろうなぁー(ていうか、実際に会ったらお互い大っ嫌い!ってタイプだと思うw)。
    ただ、“ここ(今)ではないどこかへ”という思いや渇望が自分の中にもあるのは間違いないだろう(ていうか、ない人はいないかw)。
    でも、その渇望を衝動として時々抑えられなくなっちゃうとまでなっちゃうとどうなんだろ?
    もちろん、時にはそういう“衝動”がないと、人間、生きていてつまんないでしょうけどね(笑)
    ただ、あそこまで強い思い込みで自分や周囲を追い込んでいっちゃう人って、「破滅型」としか言いようないんじゃないかと。
    ていうか、カスミの場合は自分(や周囲)を破滅させることで新たな“ここ(今)ではないどこか”を得たい、みたいなところがあるのかもしれませんね。
    って、思い出してみると、 (周囲には異常に思えちゃう)思い込みの強さで人間関係や自分をおかしくしちゃう人って、結構普通にいましたね。
    ていうか、自分自身にもあてはまったりして!?w

    “ここ(今)ではないどこかへ”という思いという意味では石山もそうなんでしょう。
    ただ、石山の場合は、そもそも“ここ(今)”に少なくとも表面的には不満はないから。カスミや借金で追われる身になるという具体的な何かがないと、自分がその欲望を持っているということに気がつかなかったのかな?
    そういう意味で、カスミに出遭うことで、彼女(という新しい世界?)に魅かれていく流れなんかはホント見事に描かれていると思います。
    セーターを買って途方に暮れているカスミに出会うシーンとか、日常に疲れたカスミがエレベーターに飛び込んできたシーンとか。
    あぁー、そりゃ落ちるわーって感じ(笑)
    不倫って、要は“道ならぬ恋”じゃないですか(爆)
    恋っていうのは洋の東西を問わず“落ちるもの”なわけで、人間が飛べない以上、そこに恋があったら落ちることしか出来ないんじゃないかと…www
    これは、あくまで日々世の汚濁にまみれているオトナの論理として書きますけどw、例えば会社の同僚等日頃見知っていて、お互い好感をもっている男女(既婚者orどちらかが既婚)がいたとして。例えば、その女性その日常に疲れ切っていて、何かでそれが耐え切れなくなり、何かのハプニングでカスミのように男性に飛び込んできたとして、それを倫理を盾に拒否するのってどうなんだろうとも思うんです。
    確かに男女の関係でいったら不倫であり不義なんだろうけど、男と女ではなく人と人の関係として見たら、相手を拒否しちゃうのは「冷たい」とも言えるわけです。
    いや、別に不倫を肯定しているわけじゃなくってw
    ていうか、何より自らの欲望に安直にのっているだけでは幸せや平穏な暮らしをつかめないというのは、下巻でカスミのお母さんのエピソードとして描かれていますよね。
    とはいえ、現代は情報というやっかいなものがあるがゆえに、カスミのお母さんのようには生きるのは難しいという面もあるわけです。
    他の異性を好きになり、離婚して再婚というのは普通にあることだし。付き合っている異性がいるのに別の異性を好きになることは、もっと普通にあると。
    つまり、それはいつ誰の身にも起こっても不思議ではない事なわけです。
    そういう誰に身にも起こりうる事を杓子定規(小学校の学級委員会的に?)に正解/不正解にしちゃう傾向が現代の生きづらさの原因の一つになっているんじゃないかと思うんだけどなぁー。

    それはともかく、わかるという面で言うと、普通の人にとって一番理解できるのが典子と道弘なんじゃないでしょうか。
    いや、石山も本来は典子や道弘と同ように理解しやすいタイプ、つまり、漠然とだけど幸せの雛型を知っていて、かつその雛型がほぼ同じという意味でカスミよりは典子や道弘の側に属していると思うんです。
    そう考えると、“ケ(日常)”にウンザリして“ハレ(非日常)”を求めて故郷を捨てたカスミの危うさに石山や道弘が魅かれてしまうというのがわかるし。
    逆に、カスミが“ハレ”より“ケ”を好む道弘との生活に次第に疲れていくというのもわかる。
    さらに言えば、石山が安定しきった典子に“女”としての魅力(面白味)を感じなくなってしまうのもわかると。

    …って、桐野夏生が書いたフィクションにわかるもわからないもないんでしょうけどね(笑)
    ただ、この4人の性格や関係性というのは、つくづく「あー、わかる…」と思ってしまうところに迫力を感じちゃうんでしょうね。
    支笏湖のあの雰囲気とか、道弘の印刷会社のある神田界隈とか、典子が石山にお金と時計を渡す高田馬場駅のホーム等々、個人的に馴染み深い舞台が次々と出てくることも含めて、やけに情景がリアルに浮かぶ上巻でした。

  • あらすじも何も頭に入れないまま読んだので
    行間に漂う仄暗い感覚と不倫劇から始まり
    娘が行方不明になるという展開に目が離せなくなりました。

    両親や周りの人の取り乱し方や諦め方、諦められなさ、接し方
    テレビに出たときの世間の反応、善意の第三者や悪意の人の意見に
    振り回される様子など、どれもリアルに感じます。

    カスミは良いお母さんではないかもしれませんし、
    愛情なのか執着なのかもわからなくなりますが
    人間は一辺倒ではなく、一面だけで善悪を語れないという
    一例であるとも言えます。

    感情移入はできないものの、今いる場所から逃げたくて
    その道を相手に見つける気持ちはわかる気がします。
    その人といるときだけ息ができるというような感覚。

    元警察官の内海の存在も、単なる善人ではなく
    かと言って悪巧みをしているというのでもなさそうな
    人間らしい描き方がリアルです。

    どのような解決を見せるのか、そもそも解決できずに終わるのか
    下巻が楽しみです。

  • 個人的には下巻の方が好きかなと思いました。なんでしょう、物語の間延び感が否めない。。それも最初はミステリー性を期待して読み始めた自分がいけないのですがね。桐野さんの人間の内面に滾る欲望をリアルに描いているのが味わえる作品だと思います。

  • 救いのない結末・・

  • この物語は、『好きじゃないけど、面白い』という、何とも複雑な気持ちにさせられる本。ストーリーは、主人公カスミがW不倫の最中、娘が失踪してしまい、娘探しの旅に出る....という。それだけ切り取れば「自業自得の最悪やん」となってしまうのだが、カスミにははそれほど嫌悪感を感じなかった。なぜなら、彼女は常に安穏の地なく、彷徨える宿命を背負った女であるというのがまざまざと伝わってきたから。という気持ちを抱えたまま下巻へ~

  • 桐野さんの代表作になりつつあるイメージの今作。
    しかしイマイチかな…。

    桐野さんの特徴である、クールで可愛げのない女性主人公は相変わらず。
    この女性主人公が好きになれるかなれないかで、作品の魅力を左右するような気が。

    カスミは家庭を持ちつつ、つかみどころのない女。
    そんなカスミが夢中になるほどの魅力を石山に感じない。
    カスミにとって、誰でもよかったのかもしれないけど。
    あと、有香がいなくなった理由に誰も獣害を挙げないのはどうして?
    語られてないところではあったのかもしれないが、少しだけでもいいから触れてほしかった。

    内海の病気が判明するまでの病院での過程、その分野に詳しいので相違を感じてそこもひっかかった。

    読みやすさは相変わらずだけど、それでも途中読むのに飽きたなぁと感じた時がある。
    下巻ではどうなるのかなぁ、展開と読むのに関して。

  • うーん、かなりいまいちっていうか嫌いなストーリーパターン。
    とはいえ、直木賞受賞作品!

    ミステリーというより家族をテーマにした純文学?
    しかし、主人公含め登場人物のだれにも共感できませんでした。

    上巻では
    故郷北海道を捨てたカスミの長女が北海道の別荘地で謎の失踪。
    実は、夫の友人の石山と不倫していて、2組の家族旅行という形で、その石山の別荘に遊びに行った際に事件発生!
    その別荘地で、家族の目を盗んで、あいびきしていたカスミは罪悪感に苦しみます。
    そして、娘を捜し続けます。
    4年後、癌に冒されて余命いくばくもない元刑事の内海と知り合って、さらに娘を捜す二人。
    事件の真相は?
    という展開です。

    会話の内容、雰囲気、登場人物の描写含めて、のめりこめません。
    本書内では、それぞれの登場人物の内情、心情を描いていますが、共感できませんでした。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、2011年同作で読売文学賞を受賞。2015年、紫綬褒章を受章した。近著に』『奴隷小説』『抱く女』『バラカ』など。

「2016年 『猿の見る夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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