柔らかな頬 上 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 2864
レビュー : 224
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167602062

感想・レビュー・書評

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  • 以前にテレビで見ていつか読もうと思っていた作品。子供が行方不明の母親の気持ちを思うと苦しくなる。

  • 『ピクニック・アット・ハンギングロック』を読みたいなーなんて思っていたら、「そういえば、『OUT』を読もうとした時、『柔らかな頬』とどっちを読むか迷ったんだけど、あれ、確か失踪モノだったっけ」と思い出したのがきっかけ。

    そんな“代わりに”読んだ本だったんですけど、これ(上巻)はよかった。
    何がいいって、主要登場人物のカスミ、石山、道弘、典子、どれにも共感できちゃったのがよかったんでしょうね。
    ホントそれぞれ、「あー、わかる…」って感じ。

    といっても実際のところ、カスミはわからないんだろうなぁー(ていうか、実際に会ったらお互い大っ嫌い!ってタイプだと思うw)。
    ただ、“ここ(今)ではないどこかへ”という思いや渇望が自分の中にもあるのは間違いないだろう(ていうか、ない人はいないかw)。
    でも、その渇望を衝動として時々抑えられなくなっちゃうとまでなっちゃうとどうなんだろ?
    もちろん、時にはそういう“衝動”がないと、人間、生きていてつまんないでしょうけどね(笑)
    ただ、あそこまで強い思い込みで自分や周囲を追い込んでいっちゃう人って、「破滅型」としか言いようないんじゃないかと。
    ていうか、カスミの場合は自分(や周囲)を破滅させることで新たな“ここ(今)ではないどこか”を得たい、みたいなところがあるのかもしれませんね。
    って、思い出してみると、 (周囲には異常に思えちゃう)思い込みの強さで人間関係や自分をおかしくしちゃう人って、結構普通にいましたね。
    ていうか、自分自身にもあてはまったりして!?w

    “ここ(今)ではないどこかへ”という思いという意味では石山もそうなんでしょう。
    ただ、石山の場合は、そもそも“ここ(今)”に少なくとも表面的には不満はないから。カスミや借金で追われる身になるという具体的な何かがないと、自分がその欲望を持っているということに気がつかなかったのかな?
    そういう意味で、カスミに出遭うことで、彼女(という新しい世界?)に魅かれていく流れなんかはホント見事に描かれていると思います。
    セーターを買って途方に暮れているカスミに出会うシーンとか、日常に疲れたカスミがエレベーターに飛び込んできたシーンとか。
    あぁー、そりゃ落ちるわーって感じ(笑)
    不倫って、要は“道ならぬ恋”じゃないですか(爆)
    恋っていうのは洋の東西を問わず“落ちるもの”なわけで、人間が飛べない以上、そこに恋があったら落ちることしか出来ないんじゃないかと…www
    これは、あくまで日々世の汚濁にまみれているオトナの論理として書きますけどw、例えば会社の同僚等日頃見知っていて、お互い好感をもっている男女(既婚者orどちらかが既婚)がいたとして。例えば、その女性その日常に疲れ切っていて、何かでそれが耐え切れなくなり、何かのハプニングでカスミのように男性に飛び込んできたとして、それを倫理を盾に拒否するのってどうなんだろうとも思うんです。
    確かに男女の関係でいったら不倫であり不義なんだろうけど、男と女ではなく人と人の関係として見たら、相手を拒否しちゃうのは「冷たい」とも言えるわけです。
    いや、別に不倫を肯定しているわけじゃなくってw
    ていうか、何より自らの欲望に安直にのっているだけでは幸せや平穏な暮らしをつかめないというのは、下巻でカスミのお母さんのエピソードとして描かれていますよね。
    とはいえ、現代は情報というやっかいなものがあるがゆえに、カスミのお母さんのようには生きるのは難しいという面もあるわけです。
    他の異性を好きになり、離婚して再婚というのは普通にあることだし。付き合っている異性がいるのに別の異性を好きになることは、もっと普通にあると。
    つまり、それはいつ誰の身にも起こっても不思議ではない事なわけです。
    そういう誰に身にも起こりうる事を杓子定規(小学校の学級委員会的に?)に正解/不正解にしちゃう傾向が現代の生きづらさの原因の一つになっているんじゃないかと思うんだけどなぁー。

    それはともかく、わかるという面で言うと、普通の人にとって一番理解できるのが典子と道弘なんじゃないでしょうか。
    いや、石山も本来は典子や道弘と同ように理解しやすいタイプ、つまり、漠然とだけど幸せの雛型を知っていて、かつその雛型がほぼ同じという意味でカスミよりは典子や道弘の側に属していると思うんです。
    そう考えると、“ケ(日常)”にウンザリして“ハレ(非日常)”を求めて故郷を捨てたカスミの危うさに石山や道弘が魅かれてしまうというのがわかるし。
    逆に、カスミが“ハレ”より“ケ”を好む道弘との生活に次第に疲れていくというのもわかる。
    さらに言えば、石山が安定しきった典子に“女”としての魅力(面白味)を感じなくなってしまうのもわかると。

    …って、桐野夏生が書いたフィクションにわかるもわからないもないんでしょうけどね(笑)
    ただ、この4人の性格や関係性というのは、つくづく「あー、わかる…」と思ってしまうところに迫力を感じちゃうんでしょうね。
    支笏湖のあの雰囲気とか、道弘の印刷会社のある神田界隈とか、典子が石山にお金と時計を渡す高田馬場駅のホーム等々、個人的に馴染み深い舞台が次々と出てくることも含めて、やけに情景がリアルに浮かぶ上巻でした。

  • 読むのは二度目。でも内容は忘れていたのでまたドキドキしながら読んだ。面白かったー。カスミは勝手過ぎて好きになれないけど。

  • 天才探偵が颯爽と事件を解決するだけがミステリーではない。無意識の悪意や因果応報、現実に押し潰されていく人間達。この物語で唯一と言える無垢な瞳の持ち主が見たものとは何だったのか。この救いのない感じがたまらなく好き。

  • 5年ぶりの再読。全くストーリー展開を覚えていなかったことに衝撃を受け、あらためて桐野作品の魅力を知る。
    事件が起きる前も、事件が起きてからも、ジェットコースターのような展開で目が離せない。登場人物ひとりひとりのイメージも湧きやすいので、このまま下巻に期待!

  • 何故こんなにカスミの気持ちに共感してしまうのだろう。

  • 私の中では、桐野夏生の本はこれがダントツ一位。
    何度読んだかわからない。

    行方不明になった娘を捜し続け、悔やみ、霊能者やテレビ視聴者の情報にすがり、不倫相手との愛情はすっかり醒め、、、娘の失踪以来人生の時計が止まって漂流し続ける母親の心理描写が素晴らしいと思った。

    また、内海刑事や別荘の周りの人々、主人公の母親や不倫相手など他の登場人物の人生も垣間見る事が出来て、様々な立場から事件を見る事が出来る。

    小説の終わり方は好き嫌いがあると思うが、夢か幻か・・このモヤモヤとした感じがまたこの本の魅力かもしれない。

    ただ、私の中ではこれが犯人なのかな、と思う結論は出来たのだけど・・。最後まで否定される事がなかった詳細なストーリーが答えなのでは・・?

  • 直木賞受賞作。

    さすが桐野夏生、話の構成がとても面白い。
    長編ですが最後まで飽きずに一気に読めます!!

    話の内容は幼女が謎の失踪をしてしまうのですが、
    単なる事件物ではなく、そのまわりをとりまく大人達の心理状況を
    描いた作品です。
    大人のいろんな欲望がうずめき、引き込まれます。

  • 12月31日読了。「このミステリーがすごい!」2000年度の第5位の作品。不倫関係にあった男女、の情欲にまみれたお話と思いきや序盤に起きるある事件をきっかけに、それぞれの登場人物が抱える「脱出」に向けた思いが動き出す・・・。とにかく、人物描写が綿密!女性ならではのきめ細かさ、と言うべきか?展開も先が読めずスリリングで、ハラハラさせられる。面白い小説。下巻での結末はどうなるのか・・・?

  • おもろっ

著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、2011年同作で読売文学賞を受賞。2015年、紫綬褒章を受章した。近著に』『奴隷小説』『抱く女』『バラカ』など。

「2016年 『猿の見る夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桐野夏生の作品

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