グロテスク 下 (文春文庫 き 19-10)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 428
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  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167602109

感想・レビュー・書評

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  • 下巻は「どうしてこうなった?」の解説パートだったのかなと。
    二人の女性を殺害した中国人の素性パートが意外と長いんですが、これもまたある意味で味わい深いものになっています。
    前段でAです。と説明されていたことが、後段で実はBでしたみたいな感じで覆されることがままあり、「え??」と思うこと多数。伏線と回収の仕込みがすごいので、じっくり読まないといけません。
    総じて面白かったとは思うのですが、表題の通りグロテスクなので、しばらくいいかなといった気分です。

  • 桐野夏生さん作品、初の読了。もっとイヤミスのドロドロした感じを想定していたが、思っていたほど読後の不快感はなかった。女性特有の心の中の毒っぽさが好きなので、上巻・下巻ともにするすると読めた。
    下巻の佐藤和恵の堕落していく様、そして主人公の最後の展開も、非常に面白かった。
    結局、女は容姿でマウントをとるしかないのだろうか…。恐ろしい。

  • ぐいぐいと物語に引き込む文章、構成。
    まじめな会社員としての顔と、水商売をする女としての顔を併せ持った女性の内面を書ききったのは圧巻。

    ただ、ひたすらに悪意に覆われた世界観が合わなかった。
    また、上記の女性についてはあまり良い人物として描かれていないのだが、実在する亡くなった人物をモデルにしており、本当のところは当人しか分からず、確認すべくもないことへのもやもや感が残った。

  • H30.01.26 読了。

    上・下巻通しての感想。

    壮絶過ぎる。
    世界観で言うとスケールは決して大きい様な話ではないんだけど、すごい。濃厚。
    そして悪意、妬み等の「負」のエネルギーのすごさ。
    今まで出会った事がないくらい満ち溢れている「負」感。
    なのに現実的。
    ファンタジーなくらいぶっ飛んでいても良い話のはずなのに、ノンフィクションでもおかしくないくらい現実的。

    解説を読んで初めて知ったが、実際にあった事件を元にしていたのね。

    とにかく、ずっと嫌〜な気持ちになりながらも「好奇心」で続きが気になり、なかなか読むのをやめられない作品だった。

  • 佐藤和恵の考え方が自分と似てて、読んでるとチクチクした…笑
    上下巻あるような小説を読み切ったのは久しぶり。
    面白かった。

  • 東電OL殺人事件をモデルにしていると知って気になっていた作品。すごく面白いけどオススメしにくい…というようなレビューが多くて躊躇していましたが、やっと読みました。結論、読んでよかったです。
    女性を取り巻く美醜の問題は今も根強く続いていると思いました。(なんならInstagramやTikTok、K-popの流行で男女問わず美醜に囚われるようになったかも?)
    怪物的美人のユリコも、不美人の和恵も、ビジュアル(に反応する周囲の人間)に翻弄され、最終的には同じ最期を辿ります。

    「他人と比べる」ことは人を不幸にするなぁとも。
    比べないようにすることはすごく難しいんだけども。

    東電OL殺人事件の被害者について、年収一千万のエリートがなんで売春なんか…??という疑問が、もし本書のような事情を抱えてたとしてたらなんら不思議じゃないなと思いました。

    物語自体は、カースト制度がある学園、怪物的な美少女の存在、家庭環境に問題アリなメインキャラクター達…と特殊な設定で繰り広げられるけれど、ここでの問題をバラしていくと、リアルな社会でも大小転がってる、人の苦悩にも通じていて、人ごとではないなと考えさせられました…。

  • 人の悪意に満ちた話。
    現実も多かれ少なかれ、そうなのだろう、と思ってみたり。
    日本に生まれただけて、すごいアドバンテージあるんだな、って反省しました。
    桐野さんの本を読んで、いつも思うのが、作者は、読書を傷つけようと思ってるのかな、なんて。
    もちろん、自分で選択して、読んでるんですけど。
    再読したいか、と問われたら、返答に困るかな…

  • 十年以上振りに再読。
    主人公が本当に気持ち悪い。
    ユリコ、木島高史、ミツル、マサエとジョンソン…繰り返し現れる醜くなり「価値がなくなった」人々を見てもまだ美醜に囚われ続ける。
    意味のないものだと何故気づかないんだろう?
    自分から目を逸らし、他者から自己の歪みを指摘されるとポカンとして知らない振りをする。
    かと思えばいきなり自己卑下をしだすしまた美を礼賛し百合雄を欲しがりどうしようもない。
    特にぞっとしたのは再開したミツルが野球選手の名前を出した時その選手、素敵なの?と見た目の話する所。
    一切話が通用しない人特有の怖さ。
    あと木島の息子が美しければ木島の価値は天にも昇るとか語るところ。怖すぎる!

    和恵は今の時代だと確実に発達障害の診断がおりそうだな…と再読して思う。感覚過敏とか。後天的なものも感じられるが。
    どうやっても平均にはなれない人が自分も普通になりたい、というか誰もが羨む素晴らしい人になりたいと願うことの滑稽さ。悲しい。
    ユリコは最近ツイッターで見かけた美形は美しい奇形という表現を思い出す。
    何年も前に書かれた作品なのに今と通じる価値観というか、美容整形当たり前の世の中で退化してるような人間の倫理観。美容整形の為に売春していることを隠そうともしない若年層をSNSで見かける事からもより一層思う。

    美醜から完全に逃れられなくとも、美しい羽根の色柄や角の大きさで競う動物とは違う肥大した脳みそを持つ人間なのだから理性を働かせるべきなのでは。

  • 心が貧しいが故に、周囲から人が離れる。寂しくなり、自分を必要としてくれる人を欲して、性交に走る。そして、自分を客観視できなくなり、見た目も中身も怪物になる。

    私自身、かなり治安の悪い地域で働いていた経験がある。その時にどうしようもない人を何人も見た。そして私はその度に「この人たちは若い頃どんな日々を過ごしていたのだろう」と考えを巡らせていた。この作品は、その答えの一例を見た様だった。

  • 登場人物の手記にしろ、主人公の語りにしろ
    誰ひとり真実に聞こえない
    自分勝手な語りのエグさ。

    読んでてイヤーな気持ちになった上に
    最後の章では、モヤっと感がマシマシ。

    結構読むのがしんどかった作品だった。

    文章は読みやすいんだけど、内容がしんどい。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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