白蛇教異端審問 (文春文庫 き 19-11)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167602116

感想・レビュー・書評

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  • 桐野夏生さんの作品はすごく面白くて好きだったけど、ご本人も好きになった。

    いくつかの小節にわかれているのだが、タイトルにもなっている白蛇教異端審問が1番面白く、桐野さんを尊敬した。

    あと私もアウト的な、危ない主婦の方なのだろうかとぼんやり考えていた。反省。

    東野圭吾さんの解説、寄稿も面白かったです。インタレスティング的な意味で。

    桐野夏生を好きな人も嫌いな人も、一度読むべきではないだろうか。
    にょろ。

  • 作家が何を言わんとするのかは、その作品から知るのである。作家のエッセイなどは読まないほうがいいかなと思っている。

    しかし、時には読んでみたくなる。読んで補足された気になるというか、ああそうだったのかと理解が進むというか、ぞき趣味というか、ようするに楽屋裏、屋敷内を知りたいというのである。作家自身の「苦手だ、あまり書かないなどという」フレーズが付いたものはなおさらだ。

    エッセイだから日常生活、直木賞を受けた時のこまごました日記、執筆に当たっての姿勢、逡巡、苦労などもちろん面白く読んだ。

    読み進むうちに桐野さんの「書評・映画評」の章で愕然となった。う、うまい。当然本職の物書きさんなのだから比べようも無いのだけれど、自分のがいやになった。

    「『<詩>の誘惑』井坂洋子」の書評で桐野さんは

    『書評することが気恥ずかしくてならない。いくら分析をしても的が外れているのではないかと疑い、どんな言葉を遣っても言い足りないのではないかと何度も後ろを振り返る。』

    と書いていらっしゃっるにもかかわらず、その書評の的確さ、テーマを展開させる面白さ、筋の通った論理に圧倒された。私の読書感想なんか、もうやめようかしらとまで思いつめてしまった。

    が、そこでちょっとうまいことが頭に浮かんだ。ネットで流している書評ともいえない感想が、本職の作家さんよりうまく書けていたら、職業を圧迫してしまうではないか。

    このエッセイ集にも「知」は対価を支払って手に入れるもの、新古書店のごときはなにごとぞ!と怒っていらっしゃる場面もある。(いわゆる105円で手に入れ、ほくほく状態になってる私たちはちと恥ずかしい)図書館も「知」の濫費に手を貸しているとおっしゃっている。(それはちょっと意味が違うと思うが…)からして、ネットという垂れ流しの場合は下手のほうがいいんだもん。

    私のささやかな家庭菜園は農業流通をば、つゆほど圧迫しないと思おうよ。気を取り直した。

    *****

    本題になった最後のエッセイ「白蛇教異端審問」は桐野さんの気迫に満ち満ちていて思わず拍手する。

    少しも知らなかったが、直木賞の「柔らかな頬」を駄作だといった批評があり、江戸川乱歩賞の「顔に降りかかる雨」に関するバッシングもあったらしい。論点についてはともかく、きっちりと反論するということはいいことだ。しかし、日本の文化はそれを異端とする。なさけないことに。

  • 数日前には「この強い女性の言葉は今読めない」と感じた文章だったが、今は読み易い。
    何度か引用している、大江さんのいうところの「読書のタイミング」が、まさしく今だったようだ。

    コラムの中に、お母様を亡くした時のことが書かれており、それも今ドンピシャだと感じる。
    その文章に触発されて数日前「なにをみてもなにかをおもいだす」という文章を書いたけれど、それはまだ公開していない(ちなみにこの言葉は、横田創の『亡霊カフェ』という文章の一文で、そこでの表記は「何を見ても何かを思い出す」だが、音として想起したので、ひらがなになっている)。
    読めばしゃべりたく(書きたく)なり、書きながら続きが読みたい文章。
    大江さんの文章以来の興奮じゃないだろうか。
    坂本龍一と村上龍の対談を読んだときもこんな感じになったかな(『EV.Caf´e』)。
    分野の区別でなく、「あっ」と思った文に出会うとどこかに写しておくことにしている。
    小説の時でも、対談やエッセイの時でも、詩でも、台詞でも、誰かが口にしたことでも。
    そうやってクリップしておきたくなる言葉があっても、それによってしゃべりたく(書きたく)なるとは限らない。いまは公演の製作日誌を書いてた余波で手が饒舌なのか、もう眠ろうと思ってベッドで本を読んでいると、興奮してリビングに戻り、パソコンにメモし、こんなことをしてる始末。
    いま早急に、かつ慎重に考えるべきことがふたつあって緊張してるせいもあるだろう。


    桐野夏生の小説は過去に借りた『魂萌え!』しか読んでおらず、それがあまりしっくり来なかったので余計に、この本が今これだけ自分にヒットしたことが驚きだ。


    ショート・コラム、エッセイ、短編小説、表題の「白蛇教異端審問」と通して読んでみての感想。
    この作家さんのは、小説よりも、コラムとかエッセイの方が好きだ。小説も決して悪くないけれど、硬質すぎるように感じる、少なくとも今のわたしには。

  • ショートコラム、日記、エッセイ、ショートストーリー、表題作となっている論戦などが収録されている作品。
    やはり桐野夏生さんは、とてもまっとうな方なのだと納得した。こういう人間としてのまっとうさを抜きにして、「OUT」や「グロテスク」のような圧倒的な作品は書けないだろう。

    それにしても方々で絶賛されるハイスミス作品、私は10年以上前に放り出していた。珍しい。でも今なら読めそうだ。

  • 桐野エッセイ。
    割と普通の人だなぁ。という感想。
    もう少し若い人かと思ってた。

    表題作は読み応えありました。
    他人の喧嘩は他人事なので。

    私は本は買う派です。
    売りません。

  • 著者初のエッセイとショート・ストーリー集。作家さんのプライベートに物凄い興味を抱く私としては必読の本です。この本で桐野先生の家族のこととかが知れて嬉しかったです。

  • 意外!

    桐野ねーさん、主婦だったんですね!
    いやーなんか、自分の母がこんな文章書くってw

  • 緑川先生から賜った。pp.16-17に図書館について言及がある。

  • やっぱりこの人素敵。

  • にょろ。桐野夏生、\"苛烈\"です。WEBで一文レビューしました。http://www.first-priority.yi.org/~siza/blog/2008/12/post_89.html

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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