ハプスブルクの宝剣 上 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 393
レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167604011

作品紹介・あらすじ

18世紀前半のヨーロッパ戦国時代を駆け抜けた隻眼の風雲児エドゥアルト(エリヤーフー・ロートシルト)の波瀾に満ちた生涯。ユダヤ人ゲットーをのがれ、戦乱の渦中に身を投じ、ハプスブルク家マリア・テレジアとの恋の確執のなかで、たび重なる挫折を繰り返しながら、主君フランツとの友情を奉じつつ成長してゆく姿を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 私を認めさせる、それは、誰もが抱く野望。

    歴史小説であり、キャラクターものであり、恋愛小説であり。

    読むのはしんどい。がんばったことを認められない、自分ではどうしようもない部分で扉を閉ざされるエリヤーフーが辛すぎるから。自分のコミュニティの権威、認めてほしかったラビに真っ向から否定され、仕事も恋もままならず、愛する家族には理解されても迷惑をかけどおし。それがすべて、“ユダヤ”というアイデンティティーに起因するとしたら。“ユダヤ”を捨てて、自分を認めさせ、そしてその自分で”ユダヤ”を認めさせる。なんともしんどい野望である。

    読むのはしんどいけれど、それ以上にエリヤーフー改めエドゥアルド、エディの「認めさせる」という黒い炎が、読むのを引っ張ってくれる。近付いて、焦がれては否定される繰り返しを、ぐんぐんと読ませる。息がつまりそうになりながら、一気に読んでしまう。

    エディに向けるフランツの愛情が優しい。疑わないわけではないけど、信じたいという強い思いが温かい。立場も弱く、領地は奪われ、色々なものをどんどん手放していくフランツ。でも彼はそんな自分の運命を恨むわけではなく受け入れていく。そんなフランツだから、エディも一身に忠誠を誓い、ジャカンやヴァランタンだって、フランツの意に沿ってエディを助けた。ジャカンは、別にエディを陥れようというよりは、フランツを守ろうとしたのだと思う。すべては優しすぎる主のために。

    テレーゼは愚かだが、その愚かさがイライラさせつつ、でもこのエディに惹かれざるをえない読者の気持ちとリンクする。誰だって自分を正当化したいもの。テレーゼは自分が惹かれたのに、“ユダヤ”のエディが誘惑したと彼のせいにした。エディも自分のままならない運命を“ユダヤ”に起因するとした。

    宝塚で公演したからか、登場人物がこれでもかというイケメンぞろいな気がするんだよね。フリードリヒもオイゲン公子もバチャーニもゲオルク・カイトも。というわけで、歴史モノが好きな人だけでなく、イケメンてんこ盛りを楽しみたい人も読めばいいと思うよ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      面白そうですね、、、
      面白そうですね、、、
      2014/04/25
  • 登場人物みんながすごく人間的で
    それぞれに感情移入しながら、一気に読みきった。

    マリア・テリジア時代のオーストリアと
    怒涛の西洋の世界情勢を駆け抜ける
    ユダヤ人、エリヤーフーの野心と孤独。

    テレーゼとの愛憎
    フランツ、バチャーニとの友情
    フリードリヒへの羨望と裏切り
    ユダヤに残した家族の愛

    気品高い大河ドラマのようだった。
    面白かったし、勉強になりました。

  • とにかく登場人物が魅力的です。
    かっこいいわ麗しいわで…

    とくに主人公のエドゥアルトの活躍がめちゃくちゃ爽快!
    私が今まで惚れてきた数々の英雄たちのなかでも一番輝いてます。
    ルックスも問題なくかっこいい!!(←)

    物語の中心は本来ユダヤ人である自分に苦しみながら自分を真に理解してくれる友人、フランツ(後のマリア・テレジアの夫)とともにオーストリア人となるため獅子奮迅の活躍をするエドゥアルトと、
    彼らの上に立つ立場であるオーストリア女王、マリア・テレジアとの愛憎劇です。

    オーストリア、ハプスブルグ家の最高権力者であり、
    キリスト教徒の敬虔な信者として人々の上に君臨した女王である自分が、本来忌むべき存在である一人のユダヤ人を本気で愛してしまった・・・
    そんな中で苦しみまくるマリア・テレジアが愚かで、可哀想で、また愛らしいのです。

    他にも色々考えさせられる物語でした・・・
    自分の役目とは、自分の存在とは、愛とは、友情とは・・・
    こんな風に書くとただの綺麗事ーな感じがしますが、
    本を読めば分かります。 とにかくお勧め!

  • この本の主人公、エリヤーフーは私の永遠の憧れです。
    そして、この本でプロイセンのフリードリヒ大王に惚れて、今では彼は、私が世界史上もっとも好きな人物になりました。

    そして、去年、念願かなって彼のお墓と彼の愛したサンスーシ宮殿を見に行くことが出来ましたv

  • 歴史好きで、予てよりハプスブルク家に興味があり、既に何冊か歴史書を読んでいた為にタイトルに惹かれて読んでみた。
    若い頃、夢中になって本を読んでいた私だが、ここ最近は心に深く感じる本に出会う事が少なく、読書意欲もイマイチだったのだが、久しぶりに感動する本に出会った感である。
    私にとっての”藤本ひとみ”は、ティーンズ向けの青春小説作家であり、彼女が歴史小説を
    幾つも書いているなんて全く知らなかったので、最初はあまり期待していなかった。
    だが、実際に読み始めてみると、その筆力に驚いた。すぐに物語の世界へと引き込まれ、上下巻をあっという間に読み終えてしまっていた。
    後に残った読後感は、憤りと熱情と爽快さであった。

    物語は18世紀初頭のヨーロッパ。
    主人公はユダヤ人の青年。
    当時のユダヤ人は、どこの国でもユダヤ街に隔離されていて、社会から疎外されていた。
    彼は、比較的人種差別の少ないイタリアの大学で学び、ユダヤの閉鎖的な性質を変えてゆき、もっと心を開いていきさえすれば、他の民族に受け入れられると考えて、ユダヤ教典をドイツ語に翻訳する。だが、その行為を故郷の人々に非難され、尚且つ、地元の有力者の令嬢と恋に落ちたが為に、その婚約者から残虐な拷問を受け、片目を失う。
    拘束され、今にも死にそうな彼を救ったのは、その屋敷にたまたま滞在していた未来のオーストリア女帝マリー・テレジアの夫にして神聖ローマ帝国の皇帝となるべき人物だった。
    こうして、彼の、ハプスブルクの宝剣と呼ばれる人物になっていく、数々の苦労と恋と挫折と
    回生の物語が始まるのである。

    この小説で一番感動したのは、やはり主人公の魂の回生だと思う。同じユダヤ人から追放され、ユダヤを憎み、名前を変えてオーストリア人になろうと死ぬほどの努力をしたものの、結局はオーストリア人にはなれず、様々な挫折を繰り返していく中で、真実を見出していく姿に、胸が切なくなった。
    それと、この小説では、実に人物の書き分けがよくできており、外国人の名前なんて馴染み
    が薄い日本人にも、何度も前に戻って確認するなんて事がない位、明確に描かれていて、それがまた、実に魅力的なのだ。
    動乱のヨーロッパの時代だけに、有名どころも多く登場する。特に、オーストリア女帝の
    マリア・テレジアと主人公が恋に落ち、物語の運びにこの恋が大きく影響しているのだ。
    とにかく、最後まで退屈させない物語である。歴史に興味のない人も、楽しめる事間違い無しのお薦め作品である。

  • ユダヤの宿命に抗う主人公エドゥアルトと主君フランツの友情物語。物語前半で早くも主人公が瀕死の状況に…一章が短く物語のテンポが良く一気に読むことができる。波乱の人生に一喜一憂できる数少ない名著である。

  • コバルト文庫的な耽美かつ筋肉に溢れる男性たちの物語。ユダヤを捨て自由に生きることを選んだ主人公のエドゥアルトは最高にかっこいいのですが、いかんせん男に惚れやすい性質があり、一方で親友の妻にも惚れてしまうという器用さを持ち合わせているために、辛い運命を歩むのでした…。

  •  意外な快作。私は主人公が差別され一向に努力が実らないタイプの作品は苦手なのだが、これはすらすらと読むことができた。この作品は史実にスパイスを加えた複雑な人間関係のもとで形成される軍略モノ。中世ヨーロッパでは貴族や王族で婚姻を結んだことで姻戚関係がややこしくなるという現象はよくあったことなのだろう。藤本ひとみ先生はこの部分を上手く描いて仕上げている。

     しかし、てっきり軍事モノかと思っていたら、どちらかといえば恋愛色の方が強かったのことには驚いた。
     様々な人間関係の問題を下巻に持ち越すことになったのでそれを楽しみにしたい。

  • この本が藤本ひとみとの出会いでした。他のものが一切目に入らなくなるほど、読みふけった少女時代でした。

  • ブルボン・メデイチときて満を持した形でやってきたハプスブルク家の物語。それに主人公がユダヤ人とヒロイン格で出てくるのが女帝マリア・テレジア。ユダヤ人という迫害されていた主人公と女一つで欧州随一の大帝国を背負わないといけなかったマリア・テレジアの関係は惹かれあい、そして破綻してゆく。日本人にはあまり縁のない欧州大河小説。ぜひ下巻まで一気読みして欲しい。

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著者プロフィール

藤本 ひとみ(ふじもと ひとみ)
1951年、長野県生まれの作家。西洋史への深い造詣と綿密な取材に基づく歴史小説で脚光をあびる。フランス政府観光局親善大使。
国家公務員として厚生省に勤務し、その後は地方公務員に。兼業で少年・少女漫画の原作を手がけて、1984年集英社第4回コバルト・ノベル大賞を受賞。1992年に西洋史、犯罪を主題とした小説を描き始める。『侯爵サド』『ジャンヌダルク暗殺』で第19回および第23回吉川英治文学新人賞の最終候補。
ほかの代表作に、『新・三銃士』『皇妃エリザベート』『ハプスブルクの宝剣』『王妃マリー・アントワネット 華やかな悲劇のすべて』など多数。

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