てのひらの闇 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1009
レビュー : 120
  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167614027

感想・レビュー・書評

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  • 藤原伊織の作品を読むと、ひとつの目的に向かって、一心腐乱に貯金をしていた頃の自分を思い出す。月~金9時5時で派遣の仕事をしながら、夕方から3時間のバイトと週末のバイトをかけもって、とにかく稼いで貯めることしか頭になかった自分。冷静になってみると、余りにもさばさばと味気のない日々を送っていたものだと思います。どの職場でも積極的に交流をはかろうとしていなかった私に、何かと声をかけてくれて、いつしか一緒にご飯を食べたりするようになっていた先輩がいて、彼女が「藤原伊織、面白いよ」と教えてくれたのでした。

    休みを極限まですり減らして、本を読む余裕すらなくしかけていた時、その一言ですっと気が静まって、読みだした初めての藤原作品(たしかそれは「ひまわりの祝祭」だったと記憶)は、こわばっていた心を揺り動かしてくれました。大がかりな仕掛けのマジックを目の前で見るような感動。現実的ではない世界、だけれどそこには、自分と変わらない寂しさや揺れる心をもった人々が生きている、そんな親近感ももてる。

    『てのひらの闇』は、早期退職制度に従って、間もなく会社を去ろうとしている一人の男が主人公。サラリーマン生活にはまったく未練はなさそうな堀江が、最後までこだわり続けるのは、今時はやらない仁義。会社に拾ってもらうきっかけとなった会長の自殺に疑問を覚え、ただその謎を解明するために動き出す…

    遠い昔に決別したはずの自分の生い立ちと向き合わざるを得ないような状況に追い込まれ、謎の解決とともに、自分の境遇をしっかりと受け止めなおして、本当の意味での‘自分の人生’を歩み始める。ストーリー自体は切なく哀しいものだけれど、物語の終わりには、止まっていた時計が再び時を刻みだしそうな期待感というか、高揚感が感じられる。

  • 2019年1月26日読了。

    453ページ。

    飲料会社の宣伝部課長の堀江はある日、会長から偶然映した人命救助のビデオテープを観せられ、広告に使えないか?と相談される。

    しかし、そのテープはCGで作成されたものであり、それを指摘すると会長は自殺してしまう。

    堀江は自殺の謎を調べるが…

    と、いったストーリー。
    堀江にも過去があり、順風満帆のサラリーマン生活を送ってきたわけじゃない。

    会長も大きい人だが、同期入社の柿島もいい男。

  • 飲料会社宣伝部課長・堀江はある日、会長・石崎から人命救助の場面を偶然写したというビデオテープを渡され、これを広告に使えないかと打診されるが、それがCG合成である事を見抜き、指摘する。その夜、会長は自殺した!!堀江は20年前に石崎から受けたある恩に報いるため、その死の謎を解明すべく動き出すが…。

  • 飲料品メーカの課長堀江は、同社会長と20年前のCM撮影のあるトラブルで出会っていた。20年ぶりの再会の後、会長が自殺したことを知った堀江はその真相を探り始める。著者の作品としては、有名な「テロリストのパラソル」を読んだことがあり、好印象を持っていたが本作も劣らぬ出来。くたびれた中年男の意地を格好良く描いているので同世代には共感を呼びやすいのかもしれないが、その辺を抜きにしても構成、ラストの納得感、キャラの魅力いずれも高水準で読みやすい。

  • まさかのハードボイルド路線。中盤から特命係長っぽくなってきた。できればそっちじゃない方で読みたかった。そっちいっちゃうとご都合主義が通っちゃうんだよね。

  • サクサク読めた。
    読み心地はよかった。
    中年のおっさんのちょっぴりトキメキもあり、楽しくよめた。

  • てのひらの闇Ⅱ名残り火 を読むために再・再読

  • 恩義のある会長の死について、退職間近の主人公が調べていく。
    出身が同じだけあって、暴力団とも互角に渡り合う、ためらいのない暴力。ハードボイルド。
    高熱をおして動く前半は、やや必然性に欠けるが、熱も下がり、ものごとがいろいろ見え始めてからが面白い。

  • 石崎会長の自殺とCGで作られたビデオテープをCMに起用しようとした訳をリストラ寸前の草臥れたサラリーマン・堀江が調べていくうちに、様々な人間関係と堀江の過去が明らかになるというストーリーは奥深くて面白いです。
    ただ、『テロリストのパラソル』ほど疾走感がないのと、ハードボイルドにしてはややライトなところが残念です。

  • 直木賞作家、藤原伊織氏のミステリー。元電通社員だった頃に作家デビューしたそうで、広告代理店での経歴が活かされている。
    主人公は飲料メーカーを自主退職することに決めた、中年の会社員。仕事はでき人望もあるが、奥さんに逃げられ、私生活はイマイチ。ある日、会社の会長に呼ばれ、彼が撮影したテープを社のCMにしたいと言われるが、次の日にその会長は自殺する。彼の死の真相を探る。
    緻密で複雑な構成、ミステリーとしての完成度は非常に高い。読みやすく、内容と長さのバランスもちょうどいい。ちゃんと読者の裏をかくポイントもある。彼の本は「テロリストのパラソル」を読んだことがあるが、安定の面白さが期待できる。著者が早く亡くなってしまったのが残念である。

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